第2章 地球規模の経済

(The Global Economy)

「私たちの世代が直面する最も悩ましくかつ複雑な課題のひとつは、
経済関係と環境の現実との実現可能な統合を見出すことです。」

-- Elizabeth Dowdeswell
国連環境計画(UNEP)事務局長

(▼クリックするとサブセクションにジャンプします。)

汚染者負担の原則
貧困とその環境への影響
産業と経済
国境を超えて:国際取引の成長
旅行による環境への影響

 売や経済に伴う相互作用ほど人間社会に本質的なものは他に少ないでし ょう。最初にある人がやぎとにわとりを取引して以来、私たちは必要を満 たすための商いにずっと従事してきました。

 地球上のすべての動物にとって、消費は生存の本質的側面です。しかし、歴史上、この消費は通常、基本的生存に直接必要なもの--食べ物、住みか、 敵や捕食者からの安全など--を得るために限られていました。その後、 経済と消費はとても複雑化してきました。北に始まり南に広がった産業革命の あと、人々の欲求は増大し、産業化された人間は次々と新しいものを欲しがる ようになりました。こうして、冷蔵庫やテレビのように新しく便利なものが 次々と私たちの生活を豊かにし、私たちはそれらに依存するようになりま した。どんなに辺境の地に住んでいても、今日たいていの人は車やバスに乗り、 金属フレームのめがねを着用し、電話をかけ、ラジオに耳を傾けます。これら すべてが産業革命の生み出したものです。

 人間活動と経済が密接な関係をもつのと同様に、経済と環境 も深く結びついています。economy(経済)という言葉は、もともとギリシャ語 の home(家庭)を意味する oikosと、law(きまり)を意味する nomosに由来します。 従って、economics(経済)とは、少なくともヨーロッパでは、ある種 の家庭のきまり、もしくは家庭管理を意味すると考えられます。この home (家庭)をふつうの住まいから地球全体へと拡大して考えると、良好な経済とは 地球の資源に責任をもち大切にすることにつながると言えるのです。

 経済にも環境にも多くの不確実性がありますが、両者に入り組んだ関係があ ることは明白です。また、両者の統合が環境の持続可能性達成にとって必要 なことも明らかです。すべての場所のすべての人々が、環境を損なうことなく、 快適で質の高い生活を送れるようにするためには、経済発展と社会的問題、 環境問題、そして平等の問題を統合して考えなければなりません。

 現代経済は、資源から製品が作られ、運搬され、売買され、そして消費され るというしくみでなりたっています。木材、鉱物、土壌、化石燃料などの生産、 消費、分配は生態系もしくは生物圏に依存し、同様に処分または廃棄物除去の ためにも環境を必要とします。生態学的観点からみると、現代経済は、 自然生物圏のプロセスに随伴、依存する、エネルギーと物質の一連の相互作用 であるとみなされるのです。

 過去においては、経済と生態系プロセスとの相互依存関係はしばしば見落とさ れ、無視されてきました。環境は生産のための資源の無尽蔵の宝庫、あるいは底の ないゴミ捨て穴とみなされたのです。人間活動の規模が生態系プロセス に比較して小さかったころは、その仮定もあてはまるものでしたが、今日では 経済と環境との相互依存関係が無視しえないことに、人々は次第に気づきはじめています。

 多くの経済学者は、現在の環境危機の多くは、地球資源の価値 が市場において十分評価されていないことに起因すると考えています。個人の レベルでは、大気や水、木々や野生生物の価値を当然認識できますが、市場ではそ れらの価値よりも需要と供給のバランスで価格がきまってしまうのです。

 この価格には、原材料の採取、栽培、製品化、包装、宣伝、 運搬のコストなどは含まれますが、製品の生産と配送に伴う環境コストは反映され ていません。環境コストは生産者の負担しない「外部コスト」になのです。 しかし、この外部コストは、しばしば生産とは無関係の人々や地域社会 に補償のない健康被害、費用負担、不幸をもたらします。例えば、大気汚 染により肺の病気が増え、地域社会に負担がかかっているのに、実際の汚染者 は関知しないということがあります。大気浄化の費用も、肺を病 んだ人の治療費も、汚染を発生した生産者は負担しないのです。このような場合、 生産された製品にはそれらのコストが含まれないため、生産者は汚染を防ご うとする経済的動機をもちえません。

 もう一つの例をみてみましょう。化学会社があり、その排水が川や湖に流れ こんでいます。この排水は猛毒で、地域の水棲生物の死滅や飲料水の汚染 など多くの環境破壊を引き起こしています。その会社は適正な排水処 理のコストを節約したのです。その会社が水を浄化するためのコストを負担 しないかぎり、製品である化学物質の価格には生産のための真のコストは反映 されません。もし会社がその浄化コストを負担するならば製品価格が上昇し、 消費者は別製品を探して離れていくでしょう。 そうなればその会社は有毒な排水を低減する方法を考えようとするでしょう。

汚染者負担の原則

 外部コストの問題に対処する新しい考え方が国際的に発展してきまし た。しかし、まだそれは適切に実行されるに至るまでの支持は得ていません。 その「汚染者負担の原則」は、環境を傷つけた責任者がそれに伴うコストを負担 すべきであると規定します。この原則は一見明瞭ですが、実現は必ずし も容易ではありません。というのは、環境劣化の責任者が果たしてだれなのか が、しばしば不明瞭だからです。

 市場取引においては売る人と買う人がいて両者ともなんらかの利益を得 ています。もし製品の生産により何らかの環境劣化が生じたとすれば、両者 ともある程度の責任があるといえます。なぜならば、両者のどちらかが取引への 参加を拒んでいれば環境劣化も生じなかっただろうからです。従って両者とも何らかの 形で問題の防止または解決のためのコストを負担する必要があります。 環境に悪影響を及ぼさない製品の生産には、しばしば高いコストが伴うのです。

 ある組織は次のように考えています。すなわち、環境劣化に伴うコストは、 環境劣化をもたらした活動で得られる利益に比例して負担されるべきであると。 この場合、環境劣化のコストは、資源に対する現実的な価格づけや 、税金とか許可料のような経済的手法を通じて市場価格に盛り込まれます。 このような手法は、環境に有害な生産と消費に伴うコストを その活動に関与する人々に分配することにより、外部的環境コスト を「内部化」します。こうして、完全な価格化およびコストの完全な内部化が 実現すれば、あとは市場原理が働いて汚染度の高いあるいは廃棄物の 多い産業は次第に衰退し、環境に健全な産業が振興するのです。

世界貿易輸出の成長
(単位:米国10億ドル)

出典:国際金融基金(IMF), 国際財政統計年鑑 (Washington, D.C.: various years); current dollars were allocated using the IMF's export value index; 1993 estimate based on IMF, World Economic Outlook, October 1993. Dollar values are 1990.

貧困とその環境への影響

 非効率的な経済と産業が、環境に対してマイナスの影響を与えるのと同様に、 経済活動ないし産業の欠乏もまた、環境に対してマイナスに働きます。1972年 のストックホルム国連人間環境会議において、前のインド首相 Indira Gandhi は貧困と環境劣化を結びつけ、汚染は主として貧困と未開発に起因すると述べ ました。また、これを聴いた多くの開発途上国は、環境の目標追求が開発の達成を 損ないはしないかという懸念を表明しました。

 このストックホルム会議の時点では、世界中でおよそ9.44億の人が貧困の中 にくらしていました。科学者や政治家は、長年の無責任な産業開発の結果、環境 劣化がこの惑星を傷つけつつあることに気づきはじめていましたが、貧困と環 境問題との関係については、まだよくわかっていなかったのです。

 しかし、今日両者の関係は十分明らかになりました。世界人口の約40%が、 貧困の中でくらしています。10億人以上が極度の貧困状態にあり、 毎日およそ4万人の子供が病気や栄養不良で死亡しています。

 貧困の中にくらす人々は生きのびることに精一杯で、とても環境のことなど かまっていられません。資源を持続可能な仕方で利用するという余裕がないので す。しばしば、食糧と燃料の切迫した必要が、環境の過剰利用を強制します。 森林破壊、土壌侵食、砂漠化などの環境問題は、極端な貧困に由来することが 多いのです。

このように、環境劣化と貧困とは密接に関係します。貧困が環境を圧迫し、 それがまた貧困を招くという悪循環を生んでいるのです。 この悪循環から抜け出すには、持続可能な経済開発と現代技術の効率的活用以外に 道はありません。

 市場での成功を測る伝統的な経済指標は、しばしば環境の補充なしに、 自然資源を食糧、住まい、安全等のために利用することを促します。 GNPの計算には、自然資源の枯渇や劣化は入っていません。 そのために、進歩を過大評価し、環境破壊につながる政策を助長するのです。

 しかし、長期的には環境の損失が決算勘定に表れてきます。その損失は社会 に、そして開発途上国、先進国双方の経済に重くのしかかってきます。農 業生産の落ち込み、漁獲量の減少、有毒廃棄物の処理費用、医療給付、飢餓 救済費などが他の利益を相殺し、オーストラリアからジンバブエに至るまでの各国 ・各地域の経済に環境劣化の圧迫がおしよせます。経済のしくみが環境の過 剰利用を警告するのはあまりに遅く、開発途上国では生産の減少が生活水準の 低下を招き、貧困がさらに悪化するのです。

 同様に土地の不足、というよりもむしろ不公平な分配が、貧しい人々を乏しい 環境の過剰利用へと追いやっています。大部分の農地はふつう少数の特権階級 の人々の手に握られ、輸出用作物の栽培に使用されます。貧しい人たちは、劣 悪な土地へと追いやられるのです。こうして生じている圧迫は、人口増 大とあいまって土壌侵食、水源損失など多くの環境問題を引き起こしています。

 世界には絶対的貧困をなくし、巨大かつ増大する人類の福祉への主要な脅威 をとり除くだけの能力があります。貧しい人々が貧困の悪循環をたちきる手段 と機会を与えられるとき、真の持続可能な開発が現実のものとなるのです。

産業と経済

 現在、世界で支配的な経済システムは、消費と成長という2つの潜在的に自 己破壊的で環境に有害な--と私たちが気づき始めている--原理に基づいて います。ほとんどの経済活動の中心は資源の消費であり、かつ、この活動 は消費の成長の持続に依存しています。経済の「健康」を維持するため、毎年、 前年以上の製品生産や鉱物採掘が行われるのです。

 開発と経済成長は必要なものですが、産業は同時に多くの環境問題を引き起こして います。産業活動は世界全体のエネルギーの37%を消費し、二酸化炭素 の50%、硫黄酸化物の90%、およびオゾン層を枯渇させる多くの化学物質 を放出しています。また、産業活動から毎年20億トン以上の固 体廃棄物と3.38億トンの有害廃棄物が発生しています。

 産業活動の大部分は先進国におけるものですが、開発途上国においても「開 発」がしばしば非持続可能な形で進んでいます。最近の世界銀行とGATT の報告書によれば、開発途上国ではこの20年間、産業に伴う「汚い」副産物が 着実に増加しています。また、この増加は開発途上国における工業化の度合と 最も深い関係があり、それは環境基準のより緩い国々へ移転しようという、い くつかの産業の願望とも関連すると示唆されています。

 よい知らせがあります。それは、産業界が、処理や貯蔵が必要になる以前の最 初の段階において、廃棄物の発生を防ぐ必要があると気づきはじめていること です。いくつかの会社は、主要な環境管理システムとして、よりクリーン な生産システムを導入し、それが経済的にも環境的にも利益をもたらすことを 実証しています。

 しかし、限られた資金と低い利益率の制約が、企業や産業における 環境保護の優先度向上を困難にしています。 決算表を見るとき、売上高は死活問題であることが 多いのです。投資の対象は、それがすぐにどのような成果をもたらすかの計算から 決定されます。測定可能な評価基準の必要性から、伝統的手法は、環境配慮を 計画に取り入れることが長期的にどのような好機をもたらすかよりも、短期的な成果 をより強調します。この傾向に対抗するため、多くの会社の株主が経営者に対し、 社会的、環境的コストに配慮しながら同時に短期的利益を生み出すよう求めています。

 消費者に商品選択の幅がある国では、コミュニティはしばしば、優れた環境方針を 持つ会社を擁護し、あるいは、有害な環境方針を持つ会社をボイコットしています。 会社にとって、自社の環境原則が公衆に受け入れられず、製品の売上げが急減すると いう事態は、会社活動を見直すきっかけになるのです。

 しかしこの方法は、消費者に商品選択の幅がある先進国ではとても有効ですが、 消費者の選択の幅が少ない開発途上国ではしばしば事情が大きく異なります。 いくつかの問題として、認識不足、不十分な商品表示、不十分な環境規制 が挙げられます。たとえ環境規制があったとしても実効性に欠けるのです。 罰金が軽く、最小限の罪で済むため、会社にとっては、違法行為を続ける ほうが、環境を守り、浄化を行うよりもしばしば安上がりなのです。


国境を越えて:国際取引の成長

 以前は別々のものであった各国経済が、今やひとつの巨大な相互依存経 済に合体しつつあります。GATTウルグアイラウンドの施行およびWTO: 国際取引機構の設立は、世界経済に毎年何十億ドルもの取引量をもたらし、国 際取引と市場の様相を一変させるでしょう。WTOは各国経済を世界経 済に織り込むことを意図しています。このような経済の基本的変革に対して、 環境の側に立つ人々、環境を思いやる人々は、無責任な事業者や産業活動が環 境破壊を引きおこさないよう監視し、調査しなければなりません。

 新しい国際経済秩序の根幹には相互依存と相対的利益の概念があります。 つまり、ある商品を多量かつ安価に生産可能な国や地域はその 生産活動に専念し、他の必要物質については国際取引に依存するべきであるとい う考えです。例えば、コスタリカはコーヒーを生産し、それをブラジルが生産を より得意とする砂糖と取引するのです。

 この考えには確かに利点がありますが、同時に国内・国際間の自由取引を脅 かす重大な問題をもたらす可能性があります。そのひとつは、国際間 の商品・サービス供給の安全性の問題です。国際取引の増加により輸送と 配達の必要性が増大し、商品がより遠方に運搬されるようになるのに伴い、より多 くの環境汚染が生じる可能性があります。また、地球規模の経済システム は、地域レベルの自給能力を損ないかねません。国際市場で競争できない農民や その他の一次品生産者者は、貧困に追いやられるおそれがあります。

 すべての国には、国境を超えた協力を通じて発展可能な能力、あるいは潜在的 能力があります。何人かの経済学者は、公平な利益と地球規模の安定 の確保のために、オープンな国際取引につながるものは、たとえそれが直接 的な利益の分配において、各国間で同一・公平でなくても、すべてプラスなも のとしてみなされるべきであると述べています。

 持続可能な開発の目標に効果的に貢献可能なひとつの活動は、多国籍企 業(TNC)の活動です。地域社会における雇用と投資、地域からの資材購入等により、TNCは受け入れ国の経済発展にしばしば プラスに貢献しています。また、生産品の多くが輸出され、その結果、受け入れ 国の外貨獲得量の増加、バランスシートの向上に役立っています。

 このように概してTNCは、受け入れ国の経済・社会発展に寄与しています が、中にはそうでない例もあります。いくつかのTNCは規制がなければ、 人的および自然資源を過剰利用しようとします。そのうえ、多くの開発途上 国では先進国では到底許されないようなTNCの活動が見のがされてしまう のです。最悪の場合、経済成長とTNCの直接投資への開発途上国側の熱望が、 環境保護と人々の安全への最大の関心を上回ってしまうこともあります。

 幸い、次第に多くの企業が自発的な活動原則を守ろうとしています。一例は、 国際商工会議所の「持続可能な開発のための企業憲章」です。その中では、健 全な環境管理を通じて、企業活動を環境により配慮したものとすることが強く 勧められています。日本の「よい企業活動のための憲章」や「地球環境憲章」 のようなそれぞれの国における活動原則も同様に、TNCが国内外を問わず責 任ある良心的企業活動を行うよう勧めています。しかしなお、TNCが地球 環境を脅かすことなく公正な経済体系の実現に寄与することを保証する ためには、多くのことがなされなければなりません。

旅行による環境への影響(ケーススタディ)

 旅行業は、石油産業に次ぐ世界第2位の巨大産業です。それはまた、世界で 最も急速に成長している産業であり、世界最大の雇用源でもあります。 この20年間に世界中の旅行者の数は3倍に増え、毎年約6億人の旅行者がホテ ル、別荘、宿舎、キャンプ等を利用しています。世界旅行機構(WTO)によれ ば、1994年に旅行者が使った金額は3.2兆ドルで、世界労働人口の10%に仕事を 供給しました。

 しかし、旅行や余暇活動は次第に地球に対する環境圧迫源になりつつあります。 ホテルや飲食店、道路や乗り物など、旅行には高い環境負荷が伴います 。実際、旅行者のニーズが地域社会のニーズに取ってか わり、後者がしばしば損なわれることもあります。

 通常、最も環境被害をもたらしているのは「太陽と砂」を求める旅行です。 それは、南太平洋から東アフリカに至る行楽地の 水資源、エネルギー、下水処理設備を圧迫して います。例えば、チュニジアでは旅行者の水需要のため地下水の水位が下がり、 多くの家庭で一日数時間水枯れ状態を生じています。カリブ海地域の多くの砂 浜は、下水による汚染のため今や海水浴に不適となっています。

 多くの開発途上国が、輸入代金支払いや借入金返済にあてる外資を獲得するため、 旅行業に力を入れています。この戦略は経済的に有効なものです。 現在、国際旅行者の約20%が開発途上国を訪れています。 WTOでは、2020年までに旅行者の数は1年あたり9.37億人になり、 次第に多くの人々が開発途上国を訪れると予測しています。

 旅行業の振興はいくつかの国々では選択肢の一つですが、ある国々ではほとんど 必須になっています。例えば、ネパールはその豊富な文化資産を十分に 保全してゆくだけの財力に乏しいため、ヒマラヤの王国を夢見る多くの旅 行者に依存せざるをえません。

 旅行業は、適切に行われればその国の自然・文化遺産の保存に役立ちます 。旅行者を誘うためには、自然資源だけでなく、建造物や文化的記念物を 破壊行為、窃盗、汚染、戦争、過剰開発などから守る必要があります。しかし、 皮肉なことに、破壊のいくつかが旅行自身から生じうるのです。

 旅行による環境破壊に対する代替案の1つがエコツーリズムです。エコツー リズム--生態学的に責任ある旅行--を主唱する人々は、それが自然公 園や他の保全地域の慢性的資金不足の解決策となり、同時に持続可能な 経済開発の中心要素になりうると考えています。同時に、地域社会が 森林伐採よりも、森林の自然美を求める旅行者の誘致のほうが 利益が大きいということを知れば、環境保全の機運もきっと高まるでしょう。

 WTOは、次第に盛んになろうとしているエコツーリズムに関して、 大量の旅行者が生態学的・文化的に敏感な地域を訪れた場合には、 破壊的な影響が生じうることを警告しています。 例えば、ネパールのエベレスト山岳地域におけるトレッキングや登 山の振興は、地域でまかないきれないほどの燃料用木材の消費と廃棄物の発生を もたらしています。 パキスタンのK2やペルーのカミノ・インカの登山道は、ハイカー達のちらかし たゴミでいっぱいです。このようにエコツーリズムは魅力ある代替案ではあり ますが、それでもなお集団的旅行を持続可能なものにしていく必要性がありま す。なぜなら、旅行業の大部分が、常に集団的旅行だからです。

 UNEP産業環境局長 Jacqueline Aloisi de Larderel は現在、旅行がもたら している環境への負の影響をくい止めるには、慎重な計画と管理以外にはないと述 べています。旅行業者と政府、コミュニティ組織のすべてが協力して、旅行を持続可能 なものとしていかねばなりません。でなければ、旅行は生態学的に最も敏感な 世界のいくつかの地域を破壊と汚染へと追いやってしまいかねない、と彼女は 述べています。

照会先:

World Tourism Organization
Environment Projects
Capitan Haya, 42
28020 Madrid SPAIN
Tel: (34-1) 571-0628
Fax: (34-1) 571-3733


参考文献

- 50 Simple Things Your Business Can Do to Save the Earth, The Earth Works Group, The Earth Works Press, Berkeley, California, 1991
- 101 Ways to Really Save the World, BBC Wildlife Magazine's Ultimate Guide to Getting Involved, Baines, Chris, BBC Wildlife Magazine, London, March 1993
- 1992 Development Report, World Bank, Washington, D.C.
- A Primer on Environmental Citizenship, Environment Canada, Ottawa, 1993.
- Asking How Much Is Enough, Worldwatch Institute, Washington, DC, 1990
- Attacking Poverty, Building Solidarity, Creating Jobs, UNEP Feature 1995/1, Nairobi, Kenya, 1995
- Can Business Save the Environment?, Russell, Dick, de Long, Owen and Pelt, Eve, E Magazine, USA, Nov/Dec 1991
- Impoverishment and Sustainable Development: A Systems Approach, Gilberto C. Gallopin, The International Institute for Sustainable Development, 1994.
- Trade-off of a Heavy Burden, Financial Times, Business and the Environment, 22 May 1991
- Madison Avenue Goes Green; Letto, Jay, Buzzworm, USA, Sept/Oct 1991
- Transnational Corporations and the Consumer Interest, Consumers International, The Hague, Netherlands, 1993
- World Consumer, Issue No. 212, Consumers International, Santiago, Chile, Feb 1994
- World Resources, 1994-95: A Guide to the Global Environment, a report by the World Resources Institute in collaboration with UNEP and the United Nations Development Programme, Oxford University Press, 1994
- Youth Action Guide on Sustainable Development, Hrabar, Dean and Ciparis, Ramona, AIESEC International, London, 1990.



すべての写真、文、イラストの著作権は国連環境計画に帰属します。 (c)1996