ロシアタンカー油流出事故に係る環境影響調査報告書
平成11年3月
福井県環境保全技術対策プロジェクトチーム
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はじめに
平成9年1月2日、島根県沖の日本海において、ロシア船籍タンカー
「ナホトカ」号(C重油約1.9万キロリットルを積載)が破断、沈没した。
折損した船首部分は、北西の強い季節風の影響を受けて漂流し、
1月7日三国町安島沖に着底した。
流出した重油は、日本海沿岸の広範囲に漂着し、本県では沿岸12市町村
すべての海岸に大量の重油が押し寄せた。
重油が漂着した海域では、環境への影響はもとより、沿岸の採貝藻漁場や
沖合いでの漁業操業への支障など漁業や観光などに大きな被害をもたらした。
県では、重油漂着と同時に「災害対策本部」を設置し、漁業関係者、
地元住民、関係市町村および国の関係機関と協力して、情報の収集・提供や
資機材の支援に当たるとともに、様々の対策を実施してきた。
1月16日には、庁内に「環境保全技術対策プロジェクトチーム」を設置し、
海洋環境や水産などの専門家の助言と指導を得ながら、水質・底質や
大気、自然・水産生物等に対する環境影響を調査してきた。
この報告書は、プロジェクトチーム発足以来、広範囲に実施してきた
環境影響調査について取りまとめたものである。
目次
T 油流出事故の概要 (ru1.pdf)
U 環境影響調査の概要 (ru2.pdf)
V 大気・水質等環境影響調査 (ru3.pdf)
1 大気環境調査
2 沿岸域の水質・底質汚染調査
W 植生影響調査 (ru4.pdf)
1 海岸植生への影響調査
2 森林等への影響調査
X 水産生物影響調査 (ru5.pdf)
1 汚染実態調査
2 水産生物影響調査
Y 栄養剤添加による重油分解・除去技術試験 (ru6.pdf)
1 屋外における模擬試験
2 室内補足実験
3 模擬潮汐による室内実験
(資料)
1 「みどりネット」による情報提供 (s1.pdf)
2 タンカー油流出事故に伴う水鳥救護体制について (s2.pdf)
3 海岸部漂着油の除去に関する標準的指針 (s3.pdf)
4 ロシア船籍タンカー油流出事故に関する環境保全技術対策プロジェクトチーム設置要綱 (s4.pdf)
以下は、目次のT、Uの抜粋です。目次に示した pdf ファイルには、全体が掲載されています。
T 油流出事故の概要
- 1 事故発生日時
- 平成9年1月2日 午前2時40分(日本時間)
- 2 事故発生場所
- 島根県隠岐島白島碕燈台北北東約106km(北緯37度10分、東経133度52分)
- 3 ナホトカ号の概要
- 船名 NAKHODKA(ナホトカ)
- 旗国 ロシア
- 総トン数 13,157t
- 載荷重量 20,000t
- 建造年 1970年
- 積載油 C重油19,000kl
- 4 事故の経過
年月日 | 主 な 経 過 |
9年1月 2日 |
・ 2時40分頃、右舷前部に向波の直撃を受け、激しい衝撃とともに
船体前部が破断し、約6,240klの重油が流出
・ 8時20分頃、船尾部は、約10,000klの重油を積んだまま沈没
・ 船首部は、約2,800klの重油を抱えて漂流
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7日 |
・ 14時30分頃、船首部が三国町安島の約200m沖に着底
・ 同日、流出重油が三国町に漂着し、1月21日までに県内沿岸12市
町村全てに漂着
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- 5 事故対策の経過
年月日 | 主 な 経 過 |
9年1月 4日 | 県庁内に「タンカー油流出事故庁内連絡会議」設置 |
7日 | 災害対策基本法に基づき、県に「福井県災害対策本部」設置 |
8日 | 住民、ボランティアによる回収作業開始
環境影響調査(大気)開始 |
9日 | ボランティア窓口の設置 |
10日 | 政府に「ナホトカ号海難・油流出災害対策本部」設置 |
16日 | 船首部の重油抜取り作業開始
県庁内に「環境保全技術対策プロジェクトチーム」設置 |
2月10日 | 海上からの船首部重油の抜き取り完了(回収量2,450kl) |
25日 | 仮設道路から」の船首部重油の抜取り完了(全回収量2,831kl) |
3月31日 | ボランティア受付終了 |
4月20日 | 船首部引き上げ |
30日 | 「福井県災害対策本部」を廃止し、「福井県タンカー油流出被害
回復推進会議」を設置 |
- 6 県における環境影響調査体制
(1) 環境保全技術対策プロジェクトチーム
ア 設置日 平成9年1月16日
イ 構成員 県庁内の技術職員12名(資料参照)
ウ 報告書 「ナホトカ号油流出事故に係る環境影響調査について(中間報告)」(H9.10)
エ 会議開催経過
会議開催日 | 検 討 事 項 | 備 考 |
第1回目 (9.1.16) |
○緊急的(8年度中)に調査対応すべき事項の検討
○中長期的に対応すべき方向性 |
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第2回目 (9.1.23) | ○緊急調査の実施計画
○調査研究を進める上での情報収集事項 |
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第3回目 (9.1.31) | ○環境保全技術専門アドバイザーの選定
○関係省庁の取組状況についての情報交換 |
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第4回目 (9.2.16) | ○環境保全技術専門アドバイザーからの指導・助言 ・県ならびに国の緊急調査
| アドバイザー との合同会議 |
第5回目 (9.3.24) | ○環境保全技術専門アドバイザーからの指導・助言
・緊急調査結果および平成9年度調査計画
| アドバイザー との合同会議 |
第6回目 (9.4.11) | ○災害対策本部会議におけるチーム報告内容の検討
・これまでの取組と今後の方向 |
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第7回目 (9.9.17) | ○環境保全技術専門アドバイザーからの指導・助言
・環境影響調査中間報告(案)
・バイオ・レメディエーション共同実験
| アドバイザー との合同会議 |
第8回目 (10.3.26) | ○環境保全技術専門アドバイザーからの指導・助言
・環境影響調査結果および平成10年度調査計画
・バイオ・レメディエーション共同実験中間報告
| アドバイザー との合同会議 |
第9回目 (11.3.11) | ○10年度までの調査結果の取りまとめ
・10年度の調査結果と報告書(案) |
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(2) 環境保全技術専門アドバイザー
ア 設置日 平成9年2月16日
イ 構成員 学識経験者6名(資料参照)
ウ 目 的 環境保全技術対策プロジェクトチームが、環境調査方法の検討や調査
結果のの評価を行うに当たって、専門的立場から指導、助言を得る。
- 7 国における環境影響調査体制
[環境庁]
(1) ナホトカ号油流出事故環境影響評価総合検討会
ア 設置日 平成9年2月7日
イ 構成員 学識経験者16名
ウ 報告書 「ナホトカ号油流出事故環境影響評価総合検討会中間報告書」(H10.4)
(2) ナホトカ号油流出事故による海域・海浜生物等への影響に関する調査検討委員会
ア 設置日 平成9年5月
イ 構成員 学識経験者9名
ウ 報告書 「平成9年度ナホトカ号油流出事故に伴う国立・国定公園等における
自然環境への影響に関する調査」(H10.3)
「生態系多様性地域調査(日本海沿岸中部)」(H10.3)
[水産庁]
(3) ナホトカ号油流出事故に係る現地連絡協議会
ア 設置日 平成9年1月9日
イ 構成員 水産庁、中央水産研究所、日本海区水産研究所、福井県水産試験場、
石川県水産総合センター、京都府立海洋センター、兵庫県但馬水産事
務所、鳥取県水産試験場、富山県水産試験場、島根県水産試験場、山
形県水産試験場、秋田県水産振興センター、青森県水産試験場
ウ 報告書 「ナホトカ号重油流出事故に係る水産資源および生態系影響調査
(中間報告書)」(H10.1)
「ナホトカ号重油流出事故に係る水産資源および生態系影響調査
(最終報告書)(H11.2)
- 8 国の油事故関連調査検討会への参加
[環境庁]
(1) 海岸の油汚染に関するバイオレメディエーション利用指針作成検討会(平成10年度〜)
ア 実施機関 環境庁(社団法人環境情報科学センター委託)
イ 目 的 海岸の流出油汚染に対するバイオレメディエーションの摘要につい
て、安全性の両面から評価手法等を確立する
(2) 流出油回収等に係る海及び海陸境界域のGIS構築分科会(平成9〜10年度)
ア 実施機関 環境庁国立環境研究所(株式会社パスコ委託)
イ 目 的 海陸境界域の環境データ等を収集・整備し、流出油回収等に有効利
用するための地図情報システムを構築する。
- 9 流出油の回収
(1) 流出油の回収
ア 回収状況
平成9年1月8日、三国町で住民やボランティアによる回収作業が開始され、1月
15日には沿岸12市町村すべてで回収が始まった。
また、海上では、運輸省の油回収船「清龍丸」や船舶(漁船、海上保安庁、海
上災害防止センターや県の手配した民間借上船等)による回収が行われた。
イ 回収量
回収量累計 19,020kl(平成9年8月3日集計)
(内訳) 市町村等の回収 16,809
海上回収 1,129
県回収(テトラポット下) 934
その他(原子力発電所) 148
(2) 回収油の保管および搬出
ア 保管方法
@ ドラム缶に入れ、一時保管所で保管
A バキューム車等で回収し、臨時ピットで保管
イ 搬出方法
@ ドラム缶保管油は、海上輸送(船)、陸上輸送(トラック)、鉄道輸送によ
り、広島県、福岡県などの処理業者へ搬出
A ピット保管油は、船(直接吸引またはフレコン袋)により、処理業者へ搬出
- 10 漂着重油の残留状況
海面や潮間帯に漂着した重油の量は、日数の経過と共に着実に減少していき、現
時点では、岩礁に付着した重油の痕跡が認められる程度である。
この岩礁に付着した重油は、徐々に薄くなっているものの、これ以上の回復には
かなりの時間がかかるものと見られる。
なお、付着した重油が溶け出て、生物等に直接影響を及ぼす危険性は、すでに考
えにくい。
(1) 重油残留状況調査
ア 調査概要
福井県水産試験場において、事故直後から平成10年3月まで、沿岸の代表地点で、
漂着重油の量、質および海面への溶出状況を調査
イ 評価方法
次の重油残留レベルにより評価
5 :漂着油(油塊、油膜)が海面を漂い、海面一面を覆う。
4 :海岸に油の付着が濃く、広く認められる。
3 :海岸に油の付着がはっきり認められる。
2 :よくみると海岸に斑状に油の付着が認められる。
1 :海岸には油の付着が認められないが、少し掘ると油の滲出が認められる。
岩礁部では凹部に油が認められる。
0 :海岸には油の付着が認められず、少し掘っても油の滲出が認められない。
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ウ 結果概要
@ 三国町
最も汚染の激しかった安島を中心とした崎と雄島橋東では、ほぼ1年後の平成9年12
月の時点でもレベル3またはレベル2にあった。
その後、平成10年3月の調査では、冬季に波によって洗われたことなどにより、レ
ベル2からレベル1まで回復していたものの、飛沫帯近くのテトラポット上では、依然
としてレベル3の状態にあった。
A 三国町以外
平成9年8月には、残留はいずれの調査点においても少なくなっていた。しかし、回
収しきれない漂着油は磯浜の上部、あるいは汀線部に残留していた。
平成10年3月の観察では、越前町左右、美浜町日向において、レベル2に減少し、大
飯町大島では、レベル0となっていた。
その他の定点では、レベル1であった。
(2) 漂着重油の自然浄化観察
ア 調査概要
福井県水産試験場において、平成9年9月から平成10年10月まで、敦賀市立石の定点
岩礁で、付着重油の自然浄化経過を写真で記録
イ 写真撮影時期
平成9年9月、10月、11月、12月
平成10年1年、2月、3月、5月、8月、10月
ウ 観察結果
平成9年9月から6か月後の平成10年3月の間に、明かな回復傾向が認められるが、そ
の後の平成10年10月までの変化は小さい。
U 環境影響調査の概要
1 大気、水質等環境影響調査
(1) 大気調査(調査期間 平成9年1〜3月)
- 炭化水素濃度は、1月中旬、一時的にやや高い傾向が認められたが、それ以降は
一般環境と同レベルとなった。
- ベンゼンなど炭化水素を構成する成分の濃度は、一般環境と同レベルであった。
- 油ミスト濃度は、重油の影響が考えられない地点の値と同レベルであった。
なお、大気環境については、流出事故前の状態に戻ったと判断されたため、3月
中旬に調査を終了した。
(2) 水質調査(調査期間 平成9年2月〜平成10年10月)
- 油分(四塩化炭素抽出物質)は、平成9年2月に11地点で検出されたが、その後、
同年3月から5月にかけては、いずれの地点においても油分は検出されなかったが、
同年6月から12月には1〜2地点で低濃度ではあるが検出された。
- 10年度は、9年度までの調査で油分が検出された地点を中心に調査したが、いず
れの地点からも検出されなかった。
- 油処理在剤は、全ての月においていずれの地点からも検出されなかった。
- 重油含有成分であるベンゼンおよびニッケルは、全ての月においていずれの地点
からも検出されなかった。また、バナジウムは一部の地点で0.002mg/l検出されたが、
自然界の海水で通常検出される濃度レベルであった。
(3) 底質調査(調査期間 平成9年2月〜平成10年2月)
- 油分(四塩化炭素抽出物質)は、敦賀湾内の2地点で毎日検出されたが、両地点の
底質は泥質であったことから、流入河川の底質の影響によるものと思われる。
また、船首部が漂着した安島地区の1地点で、平成9年5月と10月に比較的高い濃度
(0.119、0.069mg/g)の油分が検出されたが、この両検体は他の月の試料と異なる
性状であったことから、漂着重油の影響とは考えられない。
- 油処理剤は、全ての月においていずれの地点からも検出されなかった。
- ニッケル、バナジウムは多くの地点で検出されたが、元来地質中に存在する金属
元素であり、重油による影響とは認めがたい。
2 海岸植生および森林等への影響調査
(1) 海岸植生(調査期間 平成9年1月〜平成11年2月)
- 三国町雄島と福井市三里浜に計5つの調査区を設置して、重油汚染が海岸植生に
与えた影響を調査した結果、どの調査区においても植生域に多量の油塊が漂着した
形跡は確認されなかった。
また、漂着した油塊も、その多くが初期において人の手で除去されたため、植生
の近くに多量の重油が留まることもなかった。
ただし、雄島では、汀線近くに生育していたハマウド、ハマボッス、マルバシャ
リンバイなどの植物に、波のしぶきあるいは回収作業の過程で重油が付着したもの
が多数確認された。それらの汚染の程度は様々であったが、ほぼ全体に重油が付着
した植物は、作業路沿いのマルバシャリンバイなど小数であった。
- 雄島で、ほぼ植物体全体に重油が付着したマルバシャリンバイ3個体は、ハマボッ
ス5個体を含む計3種14個体に標識をつけ、継続的に観察した。
その結果、どの個体にも短期間に枯れや落葉が進行する様子は見られなかったこ
とから、重油の付着が植物に与えた影響は小さかったと考えられる。
また、平成9年7月15日と平成10年6月24日、標識をつけた個体を含むハマウドの
多くが果実が熟す前に枯れ、さらに平成11年2月5日にはマルバシャリンバイ1個体
が枯れていた。しかし、汚染を受けてからかなりの時間が経過している上、病気や
潮風害の可能性があったため、枯れた原因を重油汚染とは特定できなかった。
- 三里浜の定線上の植生を平成9年10月29日と平成10年10月9日で比較したところ、
群落の種組成や分布には大きな変化はなかった。
また、これらは平成7年のほぼ同じ場所での調査結果とも類似していたことから、
調査地の植生は事故以前から安定した状態で存続しており、重油汚染や回収作業の
影響はほとんど受けなかったと考えられる。
- 雄島では、平成9年9月17日および平成10年9月26日、汀線近くのハマゴウ、スス
キ、ヨモギなどが大量に枯れていたが、どちらも強い潮風や波の影響であったと考
えられる。
海岸の植物にはある程度の潮風害はさけられず、今後、重要汚染の影響を調査す
る場合には植物影響の内容を区別して考えなければならない。
(2)森林等(調査期間 平成9年1〜6月)
- 1月24日に採取した安島のクロマツ葉から油分が検出された。この原因として、
北西の季節風により重油が飛散し付着した可能性もあるが、大気中油ミストの測定
結果を考慮すると、断定的評価はできない。また、雄島のヤブニッケイの葉から重
油含有成分であるニッケルが検出されたが、回収作業に伴い人為的に付着した可能
性が高いと考えられる。
なお、油分およびニッケルの検出濃度はいずれも低い値であり、樹木への影響は
ないものと考えられる。
- クロマツに重油を噴霧または塗布してその影響を調べた結果、異常は認められず、
付着重油が葉の生理活動等に及ぼした影響は、特になかったと判断される。
3 水産生物影響調査[沿岸岩礁への影響]
(1)潮間帯調査(調査期間 平成9年1月〜平成10年3月)
- 潮間帯に生息している代表的な動植物のうち、長期間にわたって油塊に覆われた
場所では、平成9年1〜2月に、カサガイ類、小型巻貝等の付着力低下、生息数の減
少ならびに死骸が観察された。
しかし、油塊が少ない、あるいはごく短時間しか油塊に覆われなかった場所では
潮間帯生物への影響は少なかったとみられる。
- イワノリや石灰藻などの枯死がみられたが、これらは、春季における潮汐の低下
が原因と考えられた。
- 平成9年5月以降の調査では、潮間帯生物の大きな変化は認められず、平成10年3
月(重油漂着後1年2ヶ月経過)においても、特に異常な状況は観察されなかった。
(2)潮下帯調査(調査期間 平成9年1月〜平成10年8月)
ア. 三国地区
<動物>
- 平成9年の2〜3月に極沿岸域ではバフンウニや貝類の死骸が散見されたものの、
これ以降の調査において、有用植物の生息密度は従来と大きく異なることはなかっ
た。また、平成10年の出現種類数および湿重量は、9年より多かった。
- 平成10年の漁期前のバフンウニ最大生息密度は、ほぼ平年並と考えられ、さらに
平成10年生まれの稚ウニの出現数は337個体/m2であり、9年に比べ約2.6倍と多か
った。
<海藻>
- 平成10年の出現種類数および種組成は、9年とほぼ同様であった。
- ほとんどの海藻は5月下旬ごろに流出し始め、8月下旬ごろからアカモク等の幼芽
が多数確認され、次世代の生育がみられた。
- 全体としては、平成10年の動物および海藻の状況は9年と大きく変化しておらず、
特に変わった現象もみられなかった。
イ. その他の県全域
<大型海藻の分布状況>
- 調査海域の全域ではホンダワラ類、クロメ等の大型海藻が生育し、観察枠内では
高い被度を示して密生状態にある地点が多かった。
また、海底基質によって海藻の繁茂状況は異なっていた。
<有用動物の分布状況>
- アワビ類ではクロアワビの出現個体数が0.25〜1個体/m2、メガイアワビが0.25
〜0.5個体/m2であった。
- サザエの出現個体数は越前地区で多く、日向地区で少なく、その密度は0.2〜5.6
個体/m2であった。
- ウニ類はバフンウニ、ムラサキウニ、アカウニが出現し、バフンウニでは越廼地
区、大飯地区で確認されたが、局在する傾向がみられ、生息密度は0〜26.5個体/m2
であった。
- その他、海藻の繁茂状況、有用動物の出現状況で特に異常とみられる現象はみら
れなかった。
(3)漁獲状況
- 平成9年および10年の三国地区における磯根漁業の漁獲漁については、船首漂着
海域および仮設道路海域を除いて、質、量ともに重油の影響とみられる報告はない。
今後、水産生物に対する流出重油の影響を長期的に調査する必要があることから、
磯根資源維持調査事業の中で取り組んでいく。
ERC.PREF.FUKUI.JP
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