福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
地形地質
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名   称 高浜町の自然貝層
学   名
分 類 1 地形地質
分 類 2
位   置
(2kmメッシュ番号)
高浜町:宮崎,岩神(1147)
選定理由 その他地質学的に貴重な地点
区   分 B(県レベルで重要なもの)
解   説  高浜貝層は,1991 年1 月に高浜病院増築工事の際の掘削により見つかった自然貝層で,炭素同位体による年代測定から約5,000 〜1,000 年前のものであることが明らかになっている.ハマグリ,サルボウガイ,ウメノハナガイ,シオヤガイ,ムラサキガイ,オキシジミ,カワアイガイ,ウミニナ,イボウミニナ,シマモツボ,コゲツノブエガイ,アラムシロガイなど117 種の貝化石,Ammonia beccarii など47 種の有孔虫化石,Loxoconcha japonica ,Cythere nishinipponicaなど72 種の介形虫化石,Callianassa japonica など3種のカニ化石が報告されている.中でもコゲツノブエガイ,カニノテムシロガイ,ハイガイ,シオヤガイは現在の若狭湾には生息しない温暖種である.これらの貝は福井とほぼ同じ緯度にある関東地方においては5,000 〜4,000 年前頃には消滅した種である.この高浜貝層の研究から数千年前の日本海側が現在に比べ,対馬海流の影響がもっと強く温暖であったことが明らかになった.産出した貝化石は潮間帯から水深10m までの内湾に生息しているものが多く,これらの貝が死後内湾内で集積して貝の密集層を形成した.また,貝化石群集の変遷から内湾→干潟→潟→湖沼という古環境の変遷が読み取れる.岩神の自然貝層は,1991 年6 月に高浜町岩神で見つかった自然貝層である.そこに多産する貝化石や有効虫化石として,サザエ,イボウミニナ,シマモツボ,コゲツノブエガイ,ハマグリ,サルボウガイ,シオヤガイ,オキシジミなど31 種の貝化石,Ammonia beccarii をはじめ13種類の有孔虫化石が報告されている.中でもカニノテムシロガイやシオヤガイは紀伊半島以南に生息域を持つ貝で,現在の若狭湾には生息しない.高浜貝層と比べるとサザエなどの岩礁性の貝が多く産出する.このことは,堆積時に近くに岩礁域があったことを示唆している.
保護の現状
 と留意点
 現在は,岩神自然貝層も高浜貝層も観察することはできない.しかし,高浜地域においては広く自然貝層が広がっているものと考えられる.


 (図上のNO.193ポイント)


(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)