福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
地形地質
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名   称 笹生川ダム付近
学   名
分 類 1 地形地質
分 類 2
位   置
(2kmメッシュ番号)
大野市:本戸,秋生,笹生川(193,194)
選定理由 その他地質学的に貴重な地点,地形形成史から見て典型的な地形
区   分 B(県レベルで重要なもの)
解   説  笹生川ダムの地域は県内の秘境のひとつである.過去には秋生,小沢の小集落が存在していた.このダムに注がれる河川水は,岐阜県根尾村と境する1,000m 級の分水嶺から北側の地域に降った雨水であり,小沢川,蝿帽子川,笹生川等によって運ばれてくる.これらの河川は,現地形に支配されて,東西に流路を有する笹生川におおよそ南から流れ込んいる.この河川系のパターンは地質構造に大きく左右されている.笹生川の東の源流である伊勢峠と秋生の低地は,東西に延びる断層によって造られた地形であることは言うまでもなく,これを境にして南側と北側の地層が大きく異なっている.すなわち,地質学的には,河合(1956 ),小林(1954 )らが述べる,九頭竜帯の南限を画する箱ケ瀬―伊勢峠―秋生―巣原の断層は,東は油坂峠から,西は池田町の月ケ瀬を経て武生市の吉野瀬川断層に至り,やがて越前海岸の高佐に達する.福井県の地質を至るところで二分する大構造帯の断層が笹生川に沿って発達しているのである.笹生川に沿ってダムから東進すると,南方の小沢貯水湖が見え,西南の山稜が大崩壊し,落下した石灰岩の巨岩群が散在している.やがて,地形に沿って直線上に延びる林道は,秋生―伊勢峠―伊勢に達する.この林道に沿った露頭では,頁岩は千枚岩化しており,板状に剥離する.そのため破砕帯や崩壊が至る所で見られる.ダム堰堤の周辺は,緑色岩と石灰岩,および砂岩と頁岩の互層が分布する.石灰岩は数p〜数10 pのサイズで塊状に入るものと,層厚が10 〜20m で地層の延びに沿ってレンズ状に産出するものとがある.ダムの河口周辺では,結晶質石灰岩となって化石の存在は確認できない.地層の走向・傾斜は,やや北東―南西方向から,ダムを過ぎると東西方向から北西ー南東に湾曲する.
保護の現状
 と留意点
 笹生川ダムは,真名川を経て中島公園から伊勢そして九頭竜ダムに達する途上にあり,その周辺は奥越高原県立自然公園に指定されている.豪雪地帯で,冬季は入山を拒むが,その他の季節には自然が満喫でき秋の紅葉は格別である.至る所で深山の自然を感じ取る光景に遭遇する.地質学上では,手取層群や本戸層の地層のみならず,未調査と思われる地層や興味深い地質構造が発達しており,今後,新しい発見や地質学的な解析に重要な役割を秘めている地域と思われる.





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出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)