福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
鳥  類
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名   称 タンチョウ
学   名 Grus japonensis
分 類 1 鳥類
分 類 2 ツル目ツル科
位   置
(2kmメッシュ番号)
特定せず
選定理由 保護上重要な種・亜種
区   分 A(全国レベルで重要、または県レベルで特に重要なもの)
  • 文化財保護法     :特別天然記念物
  • 鳥獣保護法      :非狩猟鳥類
  • 種の保存法      :国内希少野生動植物種
  • レッドリスト(環境省):絶滅危惧U類(VU)
  • ワシントン条約    :附属書T
解   説  中国東北部から極東ロシアおよび国後島と日本の北海道東部で繁殖する.中国の長江から黄河までの沿岸部や朝鮮半島で越冬するが,日本の個体群は,冬期もその近辺に留まり大きな移動はしない.大陸に約1,500 羽,日本に約600 羽が生存していると推定されている.日本では,繁殖個体群のほかに稀に大陸から日本の各地へ渡ってくる個体もいる.本県でも,冬期に迷鳥として数回記録されている.主な生息地はヨシ原などの湿地である.しかし,北海道に分布する群れは,秋期に,降雪や結氷のため湿原を離れ,耕作地や人工給餌場などに集まって冬を過ごす.食性は雑食で,ヨシ,スゲなどの根や新芽,セリ,ハコベなどの葉から,ミミズ類,エビ,ザリガニなどの甲殻類,タニシなどの軟体動物,ヤチウグイ,ドジョウなどの魚類まで,幅広い餌を食べる.また,秋・冬期は,畑に残るニンジン,ソバやトウモロコシなども採食する.3 〜4 月に産卵し,生まれた雛は親と一緒に行動し,その関係は冬期まで続く.
保護の現状
 と留意点
 現在,「文化財保護法」,「鳥獣保護法」および「種の保存法」で本種の捕獲,飼養,譲渡などが規制されている.日本において,本種はかつてサルルンカムイ(ヨシ原の神)とアイヌの人々に親しまれていたが,江戸末期から明治にかけて混乱期の,乱獲や開発などによる生息地の悪化や消失により30 〜40 羽にまで減少した.北海道東部の個体群は,農薬の影響を受けることも少なくコウノトリやトキの二の舞にならず生き残り,現在,多くの人々の努力で絶滅の危機を脱してはいる.しかし,生息地である湿原の減少や環境悪化,給餌場への集中で流行性の病気などによる群れの崩壊の危険,限られたつがいをもとに個体数が増えたことによる遺伝的多様性の喪失などの問題が存在している.本種の保護のためには,新しい繁殖地や越冬地の確保が考えられる.本県にもごく稀に飛来するが,その際には安心して採食や休息ができるように地元の理解を得て周辺への立ち入りを規制するなどの対応が必要であろう.事前に,その他の種も含めた湿地性の大型の希少鳥類の飛来に対する「対応・保護マニュアル」を作成しておくことも重要である.

(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)