Ciconia (福井県自然保護センター研究報告) データベース

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表 題 福井県六呂師高原のトンボ相およびその環境の評価と整備
著者名 松村俊幸
掲載巻 Ciconia Vol.1
発表年 1992
分 類 昆虫類
要 約  福井県大野市と勝山市にまたがる六呂師高原にある馬取池,妻平湿原,池ケ原湿原において,1991年4月から12月にかけてトンボ相とその出現状況について調査を行なった.確認されたトンボ類は,六呂師高原全体で8科33種,2,246頭,各調査地域でみると馬取池で4科23種,495頭,妻平湿原で7科28種,1,262頑,池ケ原湿原で5科17種,489頭であった.トンボ類が最も多く観察されたのは妻平湿原であったが,これは環境の多様性と面積の広さによるものと考えられる.トンボ類の種多様度は,年間を通して主に0.50〜0.75の値を推移していた.馬取池では,8月初旬に種多様度の最高値を記録し,以後安定して高かった.また池ケ原湿原では,特に6月,9月において種多様度が低かった.モートンイトトンボ,キイトトンボ・アオイトトンボ,ヒウラカワトンボ,シオカラトンボ,シオヤトンボ,オオシオカラトンボ,ヨツボシトンボ,マユタテアカネ,リスアカネ,コノシメトンボ,コサナエは,調査区ごとのすみわけがみられた.同種内で,時期的なすみわけがみられた種は,シオヤトンボ,アキアカネであった.シオカラトンボとオオシオカラトンボは,シオヤトンボとの間に時期的なすみわけがみられ,さらにオオアオイトトンボとアオイトトンボの間にも同様のすみわけがみられた.六呂師高原のトンボ相は守山による生活型(1991)をもとにすると5つの型が存在した.その中では広い水面型,植生豊かな池沼型,木陰の多い池沼型のトンボ類が少なかった.また,梅雨明け後は大型のヤンマ類やトンボ類にとって生息状況が良好でなかった.これは,生息域の面積が狭いこと,挺水植物の繁茂による開水面の減少,周辺の林の環境や水質などの悪化が原因と考えられる.以上の結果から・豊かなトンボ相を維持していくために,開水面と周辺の林の造成・管理が重要であり,さらに大型のトンボ類の誘致のために,新たなトンボ池を整備するとよい.

Copyright (C) 福井県自然保護センター
出典「Ciconia(福井県自然保護センター研究報告)」(福井県自然保護センター発行)