最終更新日 2004年4月29日 

トップ > 「福井県の絶滅のおそれのある野生植物」  > 「福井県の絶滅のおそれのある野生植物」について−(3)評価の基準                           

 

2「福井県の絶滅のおそれのある野生植物」について

(3)    評価の基準

評価基準は,環境省のカテゴリーの定性的要件(別表参照)を基本としながら,福井県が現時点で有する評価のための情報を考慮して表のとおり定めた.

また,個々の種の評価にあたっては,本書に掲載した種が環境省のレッドデータブックに掲載されている場合,原則としてそのランクを環境省のカテゴリー以上とした.

 

福井県レッドデータブックカテゴリーの定義

県域絶滅

 ○ 福井県内では野生では絶滅したと考えられる種

 過去に福井県に生息したことが確認されているが, 福井県において野生ではすでに絶滅したと考えられる種

  【確実な情報があるもの】

(1) 信頼できる調査や記録により, すでに野生で絶滅したことが確認されている.

(2) 信頼できる複数の調査によっても, 生息が確認できなかった.

【情報量が少ないもの】

(3) 過去50 年間前後の間に, 信頼できる生息の情報が得られていない.

 

●県域絶滅危惧T

 絶滅の危機に瀕している種  

  ○ 現在の状態をもたらした圧迫要因が引続き作用する場合, 野生での存続が困難なもの.

 次のいずれかに該当する種

  【確実な情報があるもの】

(1)既知のすべての個体群で危機的水準にまで減少している.  

(2)既知のすべての生息地で, 生息条件が著しく悪化している.   

(3)既知のすべての個体群がその再生産能力を上回る捕獲・採取圧にさらされている.

(4)ほとんどの分布域に交雑のおそれのある別種が侵入している.

 【情報量が少ないもの】 

(5) それほど遠くない過去(30 年〜50 年) の生息記録以後確認情報がなく, その後信頼すべき調査が行われていないため, 絶滅したかどうかの判断が困難なもの.

 

●県域絶滅危惧U  

 ○ 絶滅の危険が増大している種

  ○ 現在の状態をもたらした圧迫要因が引続き作用する場合, 近い将来「絶滅危惧T類」のランクに移行することが確実と考えられるもの.

次のいずれかに該当する種

  【確実な情報があるもの】

(1)大部分の個体群で個体数が大幅に減少している.

(2)大部分の生息地で生息条件が明らかに悪化しつつある.   

(3)大部分の個体群がその再生産能力を上回る捕獲・採取圧にさらされている.   

(4)分布域の相当部分に交雑可能な別種が侵入している.

 

県域準絶滅危惧  

存続基盤が脆弱な種  

現時点での絶滅危険度は小さいが, 生息条件の変化によっては「絶滅危惧」として上位ランクに移行する要素を有するもの.

 次に該当する種 

  生息状況の推移から見て, 種の存続への圧迫が強まっていると判断されるもの. 具体的には, 分布域の一部において, 次のいずれかの傾向が顕著であり, 今後さらに進行するおそれがあるもの.

  a 個体数が減少している.

  b 生息条件が悪化している.

  c 過度の捕獲・採取圧による圧迫を受けている.

  d 交雑可能な別種が侵入している.

 

要注目  

評価するだけの情報が不足している種

 ○ 地域的に孤立しており, 地域レベルでの絶滅のおそれが高い個体群

環境条件の変化によって, 容易に絶滅危惧のカテゴリーに移行し得る属性(具体的には, 次のいずれかの要素)を有しているが, 生息状況をはじめとして, ランクを判定するに足る情報が得られていない種

a) どの生息地においても生息密度が低く希少である.

b) 生息地が局限されている.

c) 生物地理上, 孤立した分布特性を有する( 分布域がごく限られれた固有種等)

d) 生活史の一部または全部で特殊な環境条件を必要としている.

e) 生息状況, 学術的価値等の観点から, レッドデータブック掲載種に準じて扱うべきと判断される種の地域個体群で, 生息域が孤立しており, 地域レベルで見た場合, 絶滅に瀕しているかその危険が増大していると判断されるもの.

f) 地方型としての特徴を有し, 生物地理学的観点から見て重要と判断される地域個体群で, 絶滅に瀕しているか, その危険が増大していると判断されるもの.

 

 

(別表)環境省のカテゴリー(環境庁,1997

区分及び基本概念

定性的要件

定量的要件

絶滅 

ExtinctEX

我が国ではすでに絶滅したと考えられる種(注1)

過去に我が国に生息したことが確認されており,飼育・栽培下を含め,我が国ではすでに絶滅したと考えられる種

 

野生絶滅

ExtinctintheWild(EW)

飼育・栽培下でのみ存続している種

過去に我が国に生息したことが確認されており,飼育・栽培下では存続しているが,我が国において野生ではすでに絶滅したと考えられる種

 

【確実な情報があるもの】

1.信頼できる調査や記録により,すでに野生で絶滅したことが確認されている.

2.信頼できる複数の調査によっても,生息が確認できなかった.

【情報量が少ないもの】

3.過去50年間前後の間に,信頼できる生息の情報が得られていない.

 

 

区分及び基本概念

定性的要件

 

定量的要件

 

T

H

R

E

A

T

E

N

E

D

絶滅危惧T類

CREN

絶滅の危機に瀕している種

 

現在の状態をもたらした圧迫要因が引き続き作用する場合,野生での存続が困難なもの.

次のいずれかに該当する種

【確実な情報があるもの】

1.既知のすべての個体群で,危機的水準にまで減少している.

2.既知のすべての生息地で,生息条件が著しく悪化している.

3.既知のすべての個体群がその再生産能力を上回る捕獲・採取圧にさらされている.

4.ほとんどの分布域に交雑のおそれのある別種が侵入している.

【情報量が少ないもの】

5.それほど遠くない過去(30年〜50)の生息記録以後確認情報がなく,その後信頼すべき調査が行われていないため,絶滅したかどうかの判断が困難なもの.

絶滅危惧TA類

Critically EndangeredCR

ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの.

絶滅危惧TA類(CR

A.次のいずれかの形で個体群の減少がみられる場合.

1.最近10年間もしくは3世代のどちらか長い期間(注2)を通じて,80%以上の減少があったと推定される.

2.今後10年間もしくは3世代のどちらか長い期間を通じて,80%以上の減少があると予測される.

B.出現範囲が100k未満もしくは生息地面積が10k未満であると推定されるほか,次のうち2つ以上の兆候が見られる場合.

1.生息地が過度に分断されているか, ただ1カ所の地点に限定されている.

2.出現範囲,生息地面積,成熟個体数等に継続的な減少が予測される.

3.出現範囲,生息地面積,成熟個体数等に極度の減少が見られる.

C.個体群の成熟個体数が250未満であると推定され,さらに次のいずれかの条件が加わる場合.

1.3年間もしくは1世代のどちらか長い期間に25%以上の継続的な減少が推定される.

2.成熟個体数の継続的な減少が観察, もしくは推定・予測され,かつ個体群が構造的に過度の分断を受けるか全ての個体が1つの亜個体群に含まれる状況にある.

D.成熟個体数が50未満であると推定される個体群である場合.

E.数量解析により,10年間,もしくは3 世代のどちらか長い期間における絶滅の可能性が50%以上と予測される場合.

 

 

絶滅危惧TB類

Endangered (EN)

TA類ほどではないが,近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの

絶滅危惧TB類(EN

A.次のいずれかの形で個体群の減少が見られる場合.

1.最近10年間もしくは3世代のどちらか長い期間を通じて,50%以上の減少があったと推定される.

2.今後10年間もしくは3世代のどちらか長い期間を通じて,50%以上の減少があると予測される.

B.出現範囲が5,000k未満もしくは生息地面積が500k未満であると推定されるほか,次のうち2つ以上の兆候が見られる場合.

1.生息地が過度に分断されているか,5以下の地点に限定されている。

2.出現範囲,生息地面積,成熟個体数等に継続的な減少が予測される.

3.出現範囲,生息地面積,成熟個体数等に極度の減少が見られる.

C.個体群の成熟個体数が2,500未満であると推定され,さらに次のいずれかの条件が加わる場合.

1.5年間もしくは2世代のどちらか長い期間に20%以上の継続的な減少が推定される.

2.成熟個体数の継続的な減少が観察,もしくは推定・予測され,かつ個体群が構造的に過度の分断を受けるか全ての個体が1つの亜個体群に含まれる状況にある.

D.成熟個体数が250未満であると推定される個体群である場合.

E.数量解析により,20年間,もしくは5世代のどちらか長い期間における絶滅の可能性が20%以上と予測される場合.

絶滅危惧U類

Vulnerable (VU)

絶滅の危険が増大している種

 

現在の状態をもたらした圧迫要因が引き続き作用する場合, 近い将来「絶滅危惧T類」のランクに移行することが確実と考えられるもの.

次のいずれかに該当する種

【確実な情報があるもの】

1.大部分の個体群で個体数が大幅に減少している.

2.大部分の生息地で生息条件が明らかに悪化しつつある.

3.大部分の個体群がその再生産能力を上回る捕獲・採取圧にさらされている.

4.分布域の相当部分に交雑可能な別種が侵入している.

A.次のいずれかの形で個体群の減少が見られる場合.

1.最近10年間もしくは3世代のどちらか長い期間を通じて,20%以上の減少があったと推定される.

2.今後10年間もしくは3世代のどちらか長い期間を通じて,20%以上の減少があると予測される.

B.出現範囲が20,000k未満もしくは生息地面積が2,000k未満であると推定され,また次のうち2つ以上の兆候が見られる場合.

1.生息地が過度に分断されているか,10以下の地点に限定されている.

2.出現範囲,生息地面積,成熟個体数等について,継続的な減少が予測される.

3.出現範囲,生息地面積,成熟個体数等に極度の減少が見られる.

C.個体群の成熟個体数が10,000未満であると推定され,さらに次のいずれかの条件が加わる場合.

1.10年間もしくは3世代のどちらか長い期間内に10%以上の継続的な減少が推定される.

2.成熟個体数の継続的な減少が観察,もしくは推定・予測され,かつ個体群が構造的に過度の分断を受けるか全ての個体が1つの亜個体群に含まれる状況にある.

D.個体群が極めて小さく,成熟個体数が1,000未満と推定されるか,生息地面積あるいは分布地点が極めて限定されている場合.

E.数量解析により,100年間における絶滅の可能性が10%以上と予測される場合.

準絶滅危惧

NearThreatened (NT)

存続基盤が脆弱な種現時点での絶滅危険度は小さいが, 生息条件の変化によっては「絶滅危惧」として上位ランクに移行する要素を有するもの.

次に該当する種

生息状況の推移から見て, 種の存続への圧迫が強まっていると判断されるもの. 具体的には, 分布域の一部において, 次のいずれかの傾向が顕著であり, 今後さらに進行するおそれがあるもの.

a) 個体数が減少している.

b) 生息条件が悪化している.

c) 過度の捕獲・採取圧による圧迫を受けている.

d) 交雑可能な別種が侵入している.

 

情報不足

DataDeficient (DD)

評価するだけの情報が不足している種

環境条件の変化によって,容易に絶滅危惧のカテゴリーに移行し得る属性(具体的には, 次のいずれかの要素)を有しているが,生息状況をはじめとして, ランクを判定するに足る情報が得られていない種

a どの生息地においても生息密度が低く希少である.

b 生息地が局限されている.

c 生物地理上, 孤立した分布特性を有する(分布域がごく限られた固有種等).

d 生活史の一部または全部で特殊な環境条件を必要としている.

 

 

注1) 種: 動物では種及び亜種, 植物では種, 亜種及び変種を示す.

注2) 最近10年間もしくは3 世代:1 世代が短く3 世代に要する期間が10年未満のものは年数を,1 世代が長く3 世代に要する期間が10年を越えるものは世代数を採用する.

 

●付属資料

区分及び基本概念

定性的要件

定量的要件

絶滅のおそれのある地域個体群

Threatened LocalPopulation (LP)

地域的に孤立している個体群で,絶滅のおそれが高いもの.

次のいずれかに該当する地域個体群

1.生息状況,学術的価値等の観点から,レッドデータブック掲載種に準じて扱うべきと判断される種の地域個体群で,生息域が孤立しており,地域レベルで見た場合絶滅に瀕しているかその危険が増大していると判断されるもの.

2.地方型としての特徴を有し,生物地理学的観点から見て重要と判断される地域個体群で,絶滅に瀕しているか,その危険が増大していると判断されるもの.

 

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