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総合的なモデル作成技術とシナリオは、
環境と開発に関する政策の準備や立案にとって
とても有用な道具となりえます。
【モデル分析の主要な結果】 |
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変化の要因 |
モデル分析において、変化をもたらすおもな要因とみなされているのは
人口増加と資源利用の増加です。
前者については十分認知されており、詳しい予測もされています(下図参照)。
それによれば、世界の人口は、来世紀半ばまでに 47億人増えて 100億人ちょっとに
達する見込みです。増加の 95%は開発途上国におけるものです。
今後すべての地域においてサービス業が成長し、
農業や工業の国内総生産への寄与率は減少すると推定されます。
ラテンアメリカと東アジアにおける1人あたりの所得は、来世紀後半には
現在のOECD加盟ヨーロッパ諸国の水準を上回るでしょう。
また、アジア、太平洋地域における1人あたりの所得は、
1990年から2050年の間に、先進国を上回る割合で増加し、
その他の開発途上国では、1990年から2015年の間に、より緩やかに増加するでしょう。
しかし、このような推定にもかかわらず、開発途上国と先進国との所得差は
さらに広がるものと予想されます。
人口と経済に関するこれらの推定の結果は、将来の食料、水、エネルギーの需要、
さらに、いくつかの環境問題の動向についての予測を可能にします。
気候変動と酸性化 |
工業化が進む国々では、エネルギー需要が、2050年までに5倍に増えると
予測されます。それはおもに化石燃料によってまかなわれるでしょう。
モデル分析では、次に、排出量の増大と低減政策の効果を考察します。
低減政策としては、OECD諸国で合意された低減、および他地域では
2050年までに 50%の低減を見込みます。
ヨーロッパおよびアジアにおける二酸化硫黄排出量の推移を予測した結果は
下図のとおりです。
低減政策の効果を仮定しても、開発途上国における経済成長の影響は、
先進国における排出量の低減または安定化を上回ると考えられます。
二酸化炭素の世界的な排出量は増加を続け、硫黄酸化物と窒素酸化物の
低減傾向も増加に転じるでしょう。
その結果はとても重大です。2050年までに気候変動と酸性化の双方により、
ヨーロッパの陸地の 12.5%、アジアの陸地の 7.3%が深刻な影響を受ける可能性が
あります。
この研究は、酸性化と気候変動の相互関係を考察することの重要性、
および、使用する化石燃料の量と性状を変えることの決定的重要性を
示しています。
土地利用 |
今後必要な農地の拡大は、残された自然の生息域に、
そして生物多様性に負の影響をおよぼすでしょう。
ここでもまた、別分野の相互関連性を考察する必要性が提起されています。
自然の生息域への圧迫 |
食料需要の増大と気候変動が生物多様性におよぼす影響に対処するには、
総合的で、分野を横断する取組が不可欠と考えられます。
【自然地域が陸地全体に占める割合】 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
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人間の健康 |
GEO-1は、今後の国々の発展に伴い、環境が健康にどのように影響するかについて 考察しています。鍵となる要素は水供給です(グラフ参照)。 水供給は、2050年までに多くの人にとって問題となるでしょう。 しかし、それでもなお健康と寿命は向上すると予想されます。 これはおもに経済成長に伴う健康資源の増加によるものです。 世界の平均寿命は、2050年までに約70歳に達し、 食物や水供給、および昆虫媒介病の健康への影響は次第に重要度が減るでしょう。 しかし、多くの開発途上国は平均に遅れをとるでしょう。 あるいは、先進国におけると同様の社会的環境的発展への投資をしないならば、 世界的な向上とは無縁であるかもしれません。 健全な食料と清浄な水は「すべての人に健康を」という国連の目標の 前提条件です。
代替政策 |
GEOでは現在の政策をそのまま継続した場合(基準ケース)と
代替政策を採用した場合の差異を比較検討しています。
代替ケース1では、利用可能な最良の技術がエネルギーと農業において20年以内に
世界的に導入された場合を想定しています。
代替ケース2では、それに加えて、2050年までに世界のエネルギー供給の55%が
更新可能なエネルギー源を利用するものとなり、さらに20年以内に
肉の消費量が50%減少する場合を想定しています。
結果のいくつかは下表のとおりです。数字はあくまで推定値であり、仮定が
非現実的であることは念を押すべきですが、生活様式の基本的変化によって
人間の環境への圧迫を大きく減らすことが可能だというメッセージは明瞭です。
【代替政策の効果】 | ||||||||||||||||||||||||||||
CO2排出量はエネルギー生産および産業によるもの; |