第4章 土地利用の適正化 第1節 適正な土地利用の推進 第2節 土地利用の現況と推移 第3節 土地対策の概要 第4節 生活空間の適正な土地利用 第5節 土地利用転換の適正化 第1節 適正な土地利用の推進 「母なる大地」といわれるように、土地は人間にとって 、基盤的な“営みの場”である。土地は農産物、林産物の 生産に決定的な影響をもたらすばかりでなく、その利用の あり方は人間をはじめとする自然生態系に影響をもたらす 。土地もまた水や大気と同様生活の共通の基盤として、わ たしたちの生活環境を構成する重要な要素であるというこ とができる。 ところで、土地は水や大気とは異なり、大部分が誰かの 所有物となっている。しかし、それは便宜上区画されて個 々に所有されているのであって、まったく独立して存在し ているのではない。それぞれの区画は本来連続しており、 個々の所有者の土地利用のあり方は近隣の土地やそこに生 活する人々の生活に直接的、間接的に影響を与え、新たな 環境を形成してしまうという性格を有している。こうした 相互性、相隣性という土地の性質から、土地利用対策が必 要なのであり、健康で文化的な生活環境を確保するために は、地域の自然、社会、経済、文化を配慮した総合的かつ 計画的な土地利用に努めることが重要である。 第2節 土地利用の現況と推移 平成5年の県土利用の現況をみると、減少傾向をみせて いるとはいうものの農用地10.9%、森林74.9%と農林業 的土地利用が県土の約86%を占めている。(表3−4−1 ) この利用形態を全国、三大都市圏および地方圏と比較す ると、森林の構成比はかなり高く、農用地については低く なっている。(表3−4−2) 表3−4−1 県土の土地利用の現況と推移 (単位:ha,%) 区 分 平成元年 平成3年 平成5年 農用地 46,869( 11.2) 46,200( 11.0) 45,644( 10.9) 森林 314,970( 75.2) 314,193( 75.0) 313,832( 74.9) 原野 136( 0.0) 136( 0.0) 10( 0.0) 河川・水路 14,692( 3.5) 14,558( 3.5) 14,590( 3.5) 道路 11,573( 2.8) 11,728( 2.8) 12,245( 2.9) 宅地 15,309( 3.7) 16,159( 3.9) 16,733( 4.0) その他 15,209( 3.6) 15,822( 3.8) 15,784( 3.8) 計 418,758(100.0) 418,796(100.0) 418,838(100.0) (資料:地域振興課) 表3−4−2 土地利用構成の比較(平成5年、単位:%) 農用地 森林・原野 水面・河川・水路 道路 宅地 その他 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 全 国 13.8 67.4 3.5 3.1 4.4 7.8 3,778万ha 三大都市圏 14.7 52.0 3.9 5.4 12.9 11.1 393万ha 地方圏 13.7 69.2 3.4 2.9 3.4 7.4 3,385万ha 福井県 10.9 74.9 3.5 2.9 4.0 3.8 42万ha −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− (注)三大都市圏:埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、三重、京都、大阪、 兵庫の1都2府6県 地 方 圏:三大都市圏を除く地域 資 料:国土庁、「土地利用現況調書」(平成5年10月1日現在) 第3節 土地対策の概要 土地対策については都市計画法、農業振興地域の整備に 関する法律、森林法、自然公園法および自然環境保全法等 に基づき、それぞれの立場から各種の開発計画や土地利用 計画を策定するとともに、区域の指定等を通じ、各種の土 地利用の規制を実施している。(表3−4−3) 表3−4−3 土地対策の概要図 +−−−−−−+ |国土利用計画| +−−−−−−+ | +−−−−−−−−+ |土地利用基本計画| +−−−−−−−−+ | +−−−−−−−−−−+ +−−−−−−−+ | | 都市地域 | | 市街化区域 | |−+−−−−−−−−−−+ +−−−−−−−+ | | 都市計画 |−−|市街化調整区域| | +−−−−−−−−−−+ +−−−−−−−+ | | その他の区域 | | +−−−−−−−+ | +−−−−−−−−−−+ | | 農業地域 | |−+−−−−−−−−−−+ +−−−−−−−+ +−−−−−−+ | |農業振興地域整備計画|−−| 農業振興地域 |−| 農用地区域 | | +−−−−−−−−−−+ +−−−−−−−+ +−−−−−−+ | |その他の区域| | +−−−−−−+ | +−−−−−−−−−−+ | | 森林地域 | |−+−−−−−−−−−−+ +−−−−−−−+ +−−−−−−+ | | 地域森林計画 |−−| 森林計画区 |−| 保安林 | | +−−−−−−−−−−+ +−−−−−−−+ +−−−−−−+ | |その他の森林| | +−−−−−−+ | +−−−−−−−−−−+ +−−−−−−−+ +−−−−−−+ | | 自然公園地域 | | 特別地域 | |特別保護地区| |−+−−−−−−−−−−+−−| |−+−−−−−−+ | | 公園計画 | +−−−−−−−+ |その他の地区| | +−−−−−−−−−−+ | 普通地域 | +−−−−−−+ | +−−−−−−−+ | | +−−−−−−−−−−+ +−−−−−−−−−−+ | | 自然保全地域 | |原生自然環境保全地域| └−| |−−+−−−−−−−−−−+ +−−−−+ +−−−−−−−−−−+ | 自然環境保全地域 |−|特別地区| +−−−−−−−−−−+ +−−−−+ |普通地区| +−−−−+ また、国土利用計画法では、これらの各個別法による計 画や規制に対して、総合的観点から国土の利用に関する基 本的方向を示す上位計画として国土利用計画および土地利 用基本計画を定めるとともに、地価の安定と適正かつ合理 的な土地利用を図るため、土地取引の規制、遊休土地の利 用促進を行っている。国土利用計画法に基づいて行われて いる諸施策の概要は次のとおりである。 (1) 国土利用計画 国土利用計画は、国土の総合的かつ計画的な利用を確保 するため、国、県および市町村が長期的な観点に立って、 国土資源の有限性を前提に、公共の福祉を優先させ、自然 環境の保全、歴史的文化的諸条件に配慮して、健康で文化 的な生活環境の確保と国土の均衡ある発展を図ることを基 本理念として安定した均衡ある国土利用を確保することを 目的としている。 福井県国土利用計画は、昭和52年6月に昭和60年を目標 年次として第1次計画が、昭和61年7月に平成7年を目標 年次として第2次計画が策定されたが、目標年次が到来し たことから、福井県国土利用計画(第3次)の策定に向け て現在準備中である。 市町村計画は、県計画を基本とし、地方自治法に基づく 市町村の基本構想に則しつつ、住民の意向を十分に反映さ せたうえで、議会の議決を経て策定されるものである。県 では、市町村計画が地域に密着した計画として、国土利用 計画体系の中で極めて重要な位置付けにあるとの認識のも とで、広域的、全県的な観点から整合性を確保するため、 必要な指導や調整を行っている。 (2) 土地利用基本計画 土地利用基本計画は、国土利用計画(全国計画および県 計画)を基本とし、都市地域、農業地域、森林地域、自然 公園地域および自然保全地域の5地域ならびに土地利用の 調整等に関する事項を内容として定めるものであり、土地 取引、開発行為の規制、遊休土地の利用促進、その他適正 かつ合理的な土地利用を図るための基本となる計画である 。 本県では、昭和50年5月に当初の福井県土地利用基本計 画(原計画)を策定した。その後、昭和56年4月に改訂し 、さらに昭和61年7月に国土利用計画(第2次計画)が策 定されたのに伴い昭和62年3月に改定、その後も5地域の 見直しに伴い、毎年、土地利用基本計画を内閣総理大臣の 承認を得て変更している。(表3−4−4) 表3−4−4 土地利用基本計画図5地域区分面積(平成7年3月末現在) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 区 分 | 面積 (ha)| 割合 (%) −−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−+−−−−−−− 五| 都市地域 | 93,381| 22.3 |−−−−−−−−−−+−−−−−−−−+−−−−−−− | 農業地域 | 90,520| 21.6 |−−−−−−−−−−+−−−−−−−−+−−−−−−− 地| 森林地域 | 315,745| 75.4 |−−−−−−−−−−+−−−−−−−−+−−−−−−− | 自然公園地域 | 61,585| 14.7 |−−−−−−−−−−+−−−−−−−−+−−−−−−− 域| 自然保全地域 | 253| 0.1 −−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−+−−−−−−− 計 | 563,556| 134.6 −−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−+−−−−−−− 白地地域 | 2,072| 0.5 −−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−+−−−−−−− 合計 | 563,556| 134.6 −−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−+−−−−−−− 県土面積 | 418,838| 100.0 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− (資料:地域振興課) 第4節 生活空間の適正な土地利用 人口や産業の都市への集中が進む中で、都市およびその 周辺地域では、無秩序な開発などにより不良な市街地が形 成され、あるいは職住の混在による環境の悪化、公共投資 の効率の低下など、計画性を欠いた都市化が進行すると様 々な問題が発生してくる。県民の約85%が居住する都市計 画区域においては、このような問題を未然に防止し、都市 の成長、発展を適正に誘導していくために、総合的な土地 利用計画を策定し、これに基づく規制を行うとともに、都 市計画事業の実施により人々が安全で快適な都市生活を営 めるように、計画的な都市形成を図っている。 現在福井県においては、10の都市計画区域が指定されて おり、7市13町1村が含まれている。 都市計画による土地利用計画においては、まず都市計画 区域を市街化区域と市街化調整区域に区分し、計画的に都 市化を促進する区域と市街化を抑制し自然環境の保護や農 林業等の振興を図る区域に区域区分する線引き制度がある 。福井県では福井都市計画区域について線引きを行ってい る。 次に都市計画区域のうち、市街化区域またはそれに相当 する区域において、住宅と工場の近接による騒音等の公害 の防止など、異種用途建築物の混在による様々な環境悪化 を防止するため、第1種低層住居専用地域、第1種住居地 域、商業地域、工業地域などの用途地域が定められ、都市 機能を適正に配置することにより、良好な都市環境の形成 を図っている。本県ではすべての都市計画区域で用途地域 が定められている。 さらに、用途地域制度を補完するため、必要に応じて防 火地域や特別用途地区、風致地区などを指定している。 また、最近では地域の特色に合ったル−ルづくりをめざ した地区計画制度を活用して、きめ細かく適正な土地利用 を誘導することにより、個性のある良好な都市環境の形成 を図っている地域もある。 例えば、福井市の木田地区では、都 心機能の一端を担う公共施設(福井商 (写真)(略) 工会議所、福井保健所等)の整備と併 せて土地の望ましい高度利用と都市機 能の更新を図るため、地区施設の配置 や敷地面積の最低限度、建築物の高さ の最高および最低限度、外壁の色調な どを定めている。 福井商工会議所(福井市西木田) 第5節 土地利用転換の適正化 県土の無秩序な土地利用転換を抑制するため、次のよう な施策により、規制誘導を行い、適正な県土利用を推進し ている。 (1) 国土利用計画法に基づく土地取引の規制 土地の投機的取引および地価の高騰が国民生活に及ぼす 弊害を除去し、適正かつ合理的な土地利用の確保を図るた め、一定規模(市街化区域 2,000u、その他の都市計画 区域 5,000u、都市計画区域外 10,000u)以上の土地 取引について、取引価格等を知事に届出るものである。 また、大規模な土地取得(2ha以上の宅地開発等または 10ha以上のゴルフ場、スキー場、遊園地等のレクリエーシ ョン施設等の土地取得)を行う場合は、福井県土地利用指 導要綱に基づき届出の前に知事に事前協議することとして おり、開発行為の適正な誘導を通じて、県土の無秩序な開 発の防止と安全で良好な生活環境の確保に努めている。 (2) 農業振興地域の整備に関する法律および農地法 に基づく規制 農業振興地域の整備に関する法律に基づく各市町村の農 業振興地域整備計画において、農業用地の確保、農業基盤 整備の計画的な実施およびその効果の維持保全を図るため に定められた農用地区域においては、農業以外の土地利用 に供することができないこととされている。したがって、 農地法に基づき農地を農地以外のものにする場合、知事ま たは農林水産大臣の農地転用許可を受ける必要があるが、 農用地区域内の農地については農地転用許可はできないも のである。 (3) 都市計画法に基づく開発許可制度 都市計画区域内での無秩序な市街化を抑制し、新しい開 発地が適正な市街地としての水準を確保するように、開発 行為について規制または誘導を行っている。未線引き都市 計画区域や市街化区域については、開発面積や予定建築物 に応じて、技術基準に適合した道路、公園、排水施設等を 整備することにより良好な市街地環境の形成を図っている 。また、市街化調整区域での開発行為については、原則と して許可されない。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−