福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
鳥獣の重要な生息地
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名   称 丹生山地
学   名
分 類 1 鳥獣の重要な生息地
分 類 2
位   置
(2kmメッシュ番号)
福井市武生市越前町(旧朝日町)越前町(旧宮崎村)越前町(旧越前町)越廼村越前町(旧織田町)清水町:(742,743,781,782,847,848,849,878,879)
選定理由 渡り鳥の渡来地または中継地、猛禽類の多様な地域
区   分 B(県レベルで重要なもの)
解   説  福井市の国見岳(656.1m )付近を北東端として南条山地に連なる,最高峰の六所山(698.3m )を含む標高500 〜600m の山稜は丹生山地と呼ばれている.ここは,多くの鳥類が渡ってゆく場所として,県下はもちろん全国的にも知られている.そのため,1973 年に,六所山から小六所山に連なる鞍部に,環境庁によって「織田山一級鳥類観測ステ−ション」が開設され,主に秋期に標識調査が継続されている.このステーションで1996 年までに計75 種71,416 羽の鳥類が標識・放野されており,種数は本県で記録されている総種数の24%に達する.多く捕獲されている種は,順にカシラダカ,アオジ,メジロ,シロハラ,メボソムシクイ,マミチャジナイ,ウグイス,シジュウカラ,ルリビタキ,クロジなどであり,上位10 種で総個体数の90%を占めている.逆に過去24 年間で標識例が一例しかない種は,ハイタカ,イワツバメ,セグロセキレイ,キレンジャク,コルリ,ノビタキ,エゾセンニュウ,ゴジュウカラ,コホウアカの9 種で,また10 例未満のものは,エゾビタキ,サメビタキ,コガラ,チョウセンメジロ,ベニヒワ,アカマシコ,オオマシコ,イカル,スズメ,ヤマシギ,キジバト,アオバト,キセキレイ,ヨタカ,ヒレンジャク,ミソサザイ,ヤマヒバリ,カヤクグリ,キマユムシクイである.

最も注目される変化は,カシラダカの減少とアオジの増加である.ステーション開設当初には全体の約30%を占めていたカシラダカが,1987 年以降は,1991 年を除き一桁の数に落ち込み,1996 年には3 羽にまで減少してしまった.この変化と期を一にして,アオジの標識個体数が徐々に増加してきている.これらの変化は全国的な動向で,特にアオジの増加は顕著である.現在までに,ステーションの周辺環境は,伐採・植林がなされて人工林の占める割合が高くなってきているが,2 種の標識個体数の変化は,この環境変化と関係はないのか,または,あるとすればどの要素がどのように影響しているのか,現在のところは不明である.

この24 年間に,観測の開始日と最終日を微妙にずらすことで主な種の渡りがどう変わるかがわかっている.多くの鳥類は10 月下旬から11 月初旬にかけて本山地を通過し,11 月下旬になるとその個体数は急激に減少する.しかし,渡りの最盛期は種によって若干のずれがある.アオジは11 月初頭に渡りのピ−クがあり,ルリビタキは,10 月下旬頃に散発的に通過し,そのピ−クは11 月10 日前後になる.ウソは,11 月上旬から中旬にかけて群れが通過し,その後にベニマシコの群れが通過し秋の渡りが終息を迎える.また,小鳥類の渡りの時期を熟知しているかのように,ハイタカ,ツミ,ノスリなどの猛禽類が観察される.その他,本山地では,ミサゴ,ハチクマ,トビ,オオタカ,ツミ,ハイタカ,ケアシノスリ,ノスリ,サシバ,クマタカ,ハイイロチュウヒ,チュウヒ,ハヤブサ,コチョウゲンボウ,チョウゲンボウなどのワシタカ類が記録されている.その多くは,通過または一時飛来であるが,数種は繁殖している可能性があり,特にクマタカは繁殖期に最大3 ペアが記録されている.以上のように,本山地は,本県でも,全国的にも鳥類相の豊富な地域である.
経年変化
経年変化2
保護の現状
 と留意点
 現在,本地域の一部では,「鳥獣保護法」により狩猟が,「自然公園法」により開発行為などが規制されている.ここでは,杉の植林などによる環境の変化が,渡来・通過する鳥類の種・個体数の変化とつながっている可能性があり,今後は,できるだけ大規模な自然改変は避け,共存を考えた森林施業を取り入れることが望まれる.

(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)