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第2章 さあ、環境学習をはじめよう


 この章は「実践編」ということでまとめています。この章の目的はこの本を読むみなさんがリーダーとなり、実際に環境学習を進めるためにどのようにすればよいかを書いたものです。実践に際しては、参加者に何を理解して欲しいかを考えた上で、自分でオリジナルなものを創ることが大切です。

第2章の構成は次のようになります。

1.
環境学習の手法と考え方
実際にプログラムを組み立てる前に、環境学習を実践する際に必要となる考え方と手法について解説します。
2.
プログラムを組み立てる
プログラムの要素について解説し、プログラムを組み立てる際の要点や手法について解説します。
3.
環境学習プログラムの例
実際に実施しているプログラムの例を紹介します。
4.
指導者の役割
環境学習の指導者の役割と心得について解説します。
5.
さらに環境学習を充実させるために
以上をふまえた上で環境学習を実践する場合、どのような情報があればより充実した内容になるかを解説します。



1.環境学習の手法と考え方

 環境学習プログラムの作り方を解説する前に、少しだけ「環境学習を実践する際に必要となる基本的な考え方」について解説します。


1)自然への感性と人間への愛情をはぐくむために

 環境教育は、時間に追われ、物に囲まれ、自然への感性と人間関係を失いつつある現代社会に対し、「真の豊かさとは何か」「幸福とは何か」という人間の生き方を問い直すことにもつながる教育です。
こうした目的を持つ環境教育の基盤となるのは、自然に対する豊かな感性と、人間に対する愛情と考えられます。
 しかし、自然に対する感性は本を読むだけでは育ちません。自然に対する本当の理解や配慮は、自然が命を生み出すことを感受し、その審美的な意味を理解することからはじまります。自然の中で自然を感じること、自然や人間に関する知識を養うこと、そして、一見バラバラに見える全てのもののつながりを発見すること、これを環境教育ではin about for(〜中で、〜について、〜ための)の教育といい、環境教育を実施する際の基本的な要素として捉えています。(阿部治1993)

(1)in about forの教育
[1]環境(自然)の中で行う in 学習

 「in」は"in nature"または"in environment" という意味で自然環境の「中で」実施する環境学習のことを意味します。ここでは、自然の中での野外活動を通じ、自然に対する感性をはぐくむことが大切とされています。
 しかし、単に自然の中で行えばよいというわけではありません。その証拠に今まで環境破壊を推し進めてきたのは、自然環境の中で育った人々です。

[2]知識を伝受するabout学習
 「about」は、"about nature"、"about environment"、"about human life"など自然のしくみや働き、人間を取り囲む環境や人間そのものの生活など何かに「ついて」学ぶことを意味します。
 ここでは、環境に関する知識や技術を習得することが大切とされています。
 しかし、知識や技術を知っていればそれで全てが解決するわけではありません。
 多くの人が環境問題の現状について知っているのに、未だにゴミを分別しなかったり、森林を伐採したりということが行われています。「知識」=「行動」とは直結しないようです。

[3]環境との関わりを実践する for学習
 「for」は、"for environment" つまり、環境(=他者)の「ために」行動できるようになる活動を意味します。
 「知識だけ知っていても何もできない」「現実に応用できない」という具合では、せっかく様々なことを学んでも何にもなりません。
 大切なのは学んだ知識が自分の生活に活かされていくこと、一見バラバラに見える知識につながりを持たせていくことです。そのための手法として、環境学習では、体験型の学習を通じて、学びのプロセスでの「どう感じたか」「何を考えたか」を大切にしています。(小野三津子1996)


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