環境学習ガイドブック(福井県)
発行:福井県福祉環境部環境政策課 (平成12年10月)



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はじめに

 1997年1月2日、ロシアのタンカー「ナホトカ号」が座礁した事故を、皆さんは覚えているでしょうか?重油を積んだナホトカ号は、島根県隠岐島の北北東約106qで座礁し、2つに割れた船体からは、約6,240キロリットルの重油が流れ出ました。
 1月7日には、ナホトカ号の船首部分が福井県坂井郡三国町の安島地先まで流され、2,800キロリットルの重油は、その日の内に三国町の安島から梶を中心に漂着しました。
重油を回収するボランティア達の写真
 この事故を知り、全国から多くのボランティアの人々が集まりました。ボランティアの人々は、重油で真っ黒になりながらも回収作業を続け、その結果、1月中には2,312キロリットルの重油が回収されました。一方、多くの水鳥たちが重油にまみれましたが、飛べない水鳥の救護活動やリハビリテーションにも、多くのボランティアが活躍しました。

 なぜ、このような事故が起こったのでしょうか?
 なぜ、荒天の中「ナホトカ号」は、大量の重油を運ばなくてはならなかったのでしょうか?
 この重油は、何に使われる予定だったのでしょうか?
 事故を未然に防ぐことは、できないのでしょうか?
 そして、このような事故がおきたとき、私たちに何ができるのでしょうか?
 こうした素朴な疑問「なぜ」から、自分とまわりの物事(環境)とのつながりを発見し、どのように行動するかを考えていくのが、環境学習です。

重油にまみれた水鳥の写真
 私たちの生活は、ここ何十年かで非常に豊かで便利なものとなりました。
 しかし、一方では地球環境が破壊され、多くの動物たちが命を失い、私たち自身の存在までもが危ぶまれています。当たり前に感じている私たちの快適な生活の裏側には、「ナホトカ号」のような海洋汚染の問題をはじめ、石油など天然資源の減少と枯渇、地球温暖化、オゾン層の破壊、砂漠化などの問題が山積みされています。
 そしてこれらの全ての問題は、実は私たち一人ひとりの生活と深い関わりがあると考えられています。

 環境学習で大切なことは、他の人から強制されるのではなく、自分で考えることです。自分自身で考え、今の私たちの生活を見つめ直し、身のまわりの自然や地球、生命あるもの全てと、一人ひとりのつながりを発見し、それらを認識することに意義があります。そして、このことが自分の生活を考え直し、持続可能な社会形成へ向けて行動するきっかけとなれば、こんなに素晴らしいことはありません。


「環境教育」・「環境学習」の用語の意味

 環境基本法では、「環境教育」と「環境学習」について、その意義や国の役割を定めていますが、これらの用語の意味は次のように考えられています。

「環境教育」
 学校での教育、家庭での教育、勤労場所での教育、公民館、図書館、博物館、町内会、ボーイスカウト等地域で行われる環境について知る教育を指します。

「環境学習」
 「学習」には「教育」の受け手として行われる「学習」という意味と、自然とふれあうことなど環境と関わる自らの活動を通じて自発的に行われる「学習」という意味の双方を持ちますが、後者のより主体的に学ぶという方向に特色があります。

 別な表現をすれば、環境についての学習の機会を与える主体の側の教育活動が「環境教育」、学習をする主体の側の学習活動が「環境学習」ということになります。


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