2.福井県内で取り組まれる環境学習を見てみよう
つづいて、福井県内における環境学習への取組みについてご紹介します。
1)学校の事例
(1)福井市社西小学校(「総合的な学習の時間」をふまえた環境学習の実践)
新学習指導要領により、2002年より小・中・高校にて「総合的な学習の時間」が実施されます。福井市社西小学校はこれに先がけ、文部省・福井県教育委員会・福井市教育委員会の指定を受け、総合的な学習の時間のモデル校なりました。社西小学校では各学年にわたり、様々なテーマで総合的な学習の時間に取り組んでいます。
ここでは環境学習をテーマとした、小学校6年生の授業の取組みを紹介します。
概要
社西小学校の6年生の子供達は、はじめにこの時間を利用して「何をしたいか」をみんなで話し合いました。そして、さまざまな活動やインタビューを交えながら、地域に根付いた実践的活動を展開していきました。
「総合的な学習の時間」のねらいは、生きる力を育てること、自己の生き方を考えることができるようにすること、様々な知識や技能を関連づけて総合的に働くようにすることなどです。この活動はそうしたねらいをふまえて構成されています。
[1]活動のねらい
狐川を中心に、地域の環境に興味・関心を持ち多面的に追求する中で、自分たちの生活と環境との関わりの深さに気づく。さらに、この活動を通して、環境問題に対する考えを深め自分自身の生活を見つめ直すとともに、進んで解決方法を考え実践していこうとする。
[2]活動の流れ
オリエンテーション1時間
どんなことについて考えていきたいか話し合おう。子供の思いを最大限生かして子供と共に活動のテーマを決定する。 |
第1次 8時間
自分たちの地域を見つめて、問題を見つけよう。校区を4つにわけ、グループで希望する地域を選べるようにする。 |
環境に視点を当てて「まち探検」を行ったことで、日頃何気なく過ごしている地域を見つめ直し、多くの問題点を掘り起こすことができた。また、自分たちの足元から問題を発見したことは、環境を生活と関連づけて考える上でも効果的にはたらいた。しかし、その反面、地域にとらわれすぎてしまい、高学年として地球規模に広げて考えられるようにするためには支援が必要であった。
学年で話し合うことで、各自が見つけた問題の共有化と方向の決定を図る。
「まち探検」に出かけ、自分たちの地域や家庭を見つめよう。 |
見つけた問題点について話し合い、追求する課題を決めよう
第2次 10時間
狐川を中心に、水についてみんなで調べよう
狐川に入って水生昆虫の調査をしたり、パックテストをしたりした。このような直接体験を通して、汚れを肌で実感することにより、子供たちは様々な課題を持ち、意欲的に追求活動を展開していった。 |
狐川の様子をくわしく調べよう
水温 pH COD PO 溶存酸素 24度 8.2 20 0.2 5 |
社西地区以外の狐川の様子を調べたり外の川と狐川を比べたりしよう 実地調査に出かける。 │
水温 pH COD PO4 NO2 溶存
酸素狐川起点 21度 8 5 0.2 0.3 7.5 中流 25度 9 30 0.2 0.08 4 下流 22度 8.5 30 0.2 0.07 2 一乗谷川 15度 7 0 0.2 0.02 10
第3次 14時間
一人一人の調べたいことを追求しよう
課題解決のためにふさわしい方法や資料を選べるように準備・連絡する。|
さらに追求したいことを話し合い、グループで追求しよう。
様々な方を外部からゲストティーチャーとして、お招きし、お話をお聞きする場を持つことになった。
環境科学センター 内田さん
ユスリカをなくす会 杉本さん
環境問題に取り組むお母さん 養護教諭
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追求したことを学び合おう。 追求した価値を共有化したり、自分の生活を見直したりできるようにする。 |
<夏休みにみられた活動>
自由研究
地域環境ジュニアパトロール 1学期の活動を生かして
水生昆虫調査
子ども環境会議 |
第4次 17時間
できることから実践しよう|
1学期の学びをふりかえって、これからの方向について、話し合おう |
狐川の掃除をしたり、自分の家の排水をきれいにする工夫をしたりしよう。 |
学んできたことをもとに、狐川を守ることについて呼びかけよう。 | |
1組の活動
学校のみんなに呼びかけ、「クリーン大作戦」につなげよう。
こんなことを
狐川の様子・狐川の汚れ・汚れの原因・体に及ぼす影響・私たちにできること
こんな方法で
紙芝居・クイズ・実験・劇
2組の活動
バザーを利用して、地域の人たちに呼びかけよう。
こんなことを
狐川の歴史・狐川の汚れの様子・汚れの原因・努力している機関や人・私たちの取り組み・みんなにできること
こんな方法で
チラシ・新聞・気配り度チェック・製品紹介・クイズ・体験コーナー
これからどのように進もうか
これからどのように進もうか | |
琵琶湖博物館の人から、琵琶湖をきれいにするためにどんな取り組みを行ったのか話しを聞こう | |
第5次 16時間
「明日の社西」を考え、提案しよう。| |
もう一度地域を探検して、社西の環境で残したい点や改善したい点を見つけよう。
グループごとに外の地域の環境への取り組みを調べよう。
グループで提案の構想を立て調査しよう。
調べた取り組みについて発表しあおう。
<私たちの願い>
ゴミ改善プロジェクト
社西をゴミのないきれいな町にしたい。
K狐川 K環境 Pプロジェクト
みんなに愛され魚のすむ狐川にしたい
メダカ・ホタルプロジェクト
メダカ・ホタルの住める自然を残したい。
Road Side Tree Saveプロジェクト
地域にある豊かな並木道を残したい。
学んだことを共有化して、提案に向けて準備をしよう。
提案書づくり 原稿づくり 提案をわかりやすくする資料づくり
「市環境基本計画策定市民の会」に提案しよう。
ゴミ改善プロジェクト
市へ・公民館へK狐川 K環境 Pプロジェクト
市へ・公民館へメダカ・ホタルプロジェクト
市へ・公民館へRoad Side Tree Saveプロジェクト
市へ・公民館へ
今回の提案は、内容を決める段階から発表の準備に至るまで、できる限り子供の手に委ねた。
中には、突飛であったり、実現が困難であると考えられる内容もみられたが、それが子供なりの確かな調査に裏付けされたものであれば、子供の柔らかく面白い発想として良しとしたい。
提案という形は初めてであったが、どのグループも、これまでの下級生・地域に向けての発信や、「子ども環境会議」「地域環境ジュニアパトロール」での発表等の経験を生かし、自分たちの力で提案内容をまとめ上げるだけでなく、真剣に自分の住む社西のこれからの環境について考えていた。
また、その考えが、市や公民館の人に受け入れてもらえた満足感を十分に味わっていた。
第6次 4時間
活動を振り返ろう