第1章 環境学習ってなんだろう?
1.環境学習の目的と役割とは?
1)世界の環境教育・環境学習の動き
環境教育や環境学習という言葉は、いつ頃から使われるようになったのでしょうか?また、国際社会では「環境教育」はどのように定義されているのでしょうか?
ここでは、国際的な動向を追いながら、これまで「環境教育」という言葉がどのように捉えられてきたのかを簡単に紹介します。
(1)環境教育はアメリカからはじまった(1970年環境教育法の制定)
「環境教育」という言葉は、1948年の国際自然保護連合(IUCN)の設立総会で初めて使われました。その背景には、アメリカの自然教育、野外教育、環境保全教育の長い歴史があります。
北米大陸の開拓後、アメリカでは短期間に大規模な自然破壊が行われました。その反動として始まったのが、自然保護運動や自然教育です。1800年代末には多くのナチュラリストや自然保護団体が生まれ、自然学習運動が始まりました。また、1872年には世界最初の国立公園として、イエローストーン国立公園が設置され、1920年には公園内の自然や歴史、文化についての解説活動が始まっています。
1962年、レイチェル・カーソンの「沈黙の春」が発表されると、様々な公害に対して各種の環境法が制定されます。IUCNの総会で用いられた「環境教育」という言葉が広く使われるようになったのはこの頃です。
そして、1970年には、世界で最初の環境教育法が制定されます(1990年には全米環境教育法が新たに制定されています)。とはいえ、これはアメリカでの法律です。国際的な環境教育の出発点は、次に述べる国連人間環境会議を待つことになります。