V アメニティ像と基本目標

V−1 福井県全域のアメニティ像と基本目標

 この計画では、アメニティという言葉を「その土地ならではの住み心地の良さ」ととらえました。またアメニティづくりは、「地域らしさを知り、地域らしさをいかしながら」、「地域の望ましい暮らしを考え、一致協力して」、「地域への誇りと愛着を培いながら」、「将来を見据え、地道に」実践していくことが大切だと整理しました。
 これらを基本的条件とし、本県の環境特性や県民意識調査などを踏まえ、さらに「福井県新長期構想」の基本理念「美しく たくましい福井を」との整合を考えながら、本県のアメニティ像と基本目標を明らかにします。


(1) アメニティ像

 人々の価値観が「もの」から「こころ」へと変化し、日々の暮らしにゆとり、うるおい、やすらぎといったこころの豊かさを求める傾向が今後ますます強まるものと予想されます。
 このことから、私たちすべての県民が、県内のどこにいても住みやすさ、楽しさなどが享受でき、しかも、誇りをもてる豊かな郷土をつくっていく必要があります。
 そのためには、私たち自らが、身近な所からはじめることが必要です。
 私たちの身のまわりをもう一度ながめ、あたり前のこととして、何げなく見過ごしてきた身近にあるアメニティ資源「鎮守の森や街の目印となる大きな木や祠、野菜を洗う小川や湧水、歴史を感じさせる社寺や祭り、緑豊かな家並みや街かどのポケットスペース、うるおいのある公園や楽しく歩ける道路、それらを守りつくっている地域の人々のいきいきとした姿など」を発見し、これらを、郷土の誇りと感じ、自らの創意工夫により、郷土のアメニティをみがきあげていくといった、郷土を愛する豊かなこころを持つことが必要です。
 幸いにも、私たちの郷土は、「越山若水」という言葉に象徴される豊かな自然、情緒あふれる歴史や伝統文化など、多くのアメニティ資源に恵まれています。このような美しい郷土は、自信を持って誇れるものです。私たち県民一人ひとりが、郷土への愛着心を持って行動し、協力しあえば、より誇りある美しい郷土がつくられ、未来への財産として末長く、子孫に伝えていくことができます。


 このようなことから、福井県のアメニティ像を次のように設定します。

アメニティ像

将来像………誇りのもてる豊かな郷土 郷土を愛する豊かなこころ

 基本テーマ
ふれあい 発見 未来におくる 美しい福井

 ふれあいとは………県民一人ひとりが、郷土の豊かな自然や情緒あふれる歴史などにふれあい、語りあい、郷土を愛する豊かなこころを培っていきたい、という願いをこめたものです。

 発見とは………県民一人ひとりが、身近な環境の中で大切なものを発見し、また自らの創意工夫により、誇りのもてる豊かな郷土をつくっていきたい、という願いをこめたものです。

 美しい福井とは………未来への財産として、大切に守り育てつくっていくもの、すなわち本県の将来像「誇りのもてる豊かな郷土、郷土を愛する豊かなこころ」そのものです。

(2) 基本目標

 本県のアメニティに関する課題は、
 @ 豊かな自然と情緒あふれる歴史や伝統文化の保全と活用
 A 県民相互の協力と努力による、快適な生活空間の創出
 B 誇りと希望に満ちたアメニティづくりの推進
の3つに整理できます。

 このような課題を踏まえ、本県のアメニティ像『ふれあい 発見 未来にあくる美しい福井――誇りのもてる豊かな郷土 郷土を愛する豊かなこころ』を実現していくために、次の3つの基本目標を設定します。

郷土の自然や歴史を大切に守り、育てる
郷土ならではの住み心地の良いまちやむらをつくる
郷土を愛し、郷土を誇りに思うこころを育てる

 これらの基本目標は、県土のアメニティ像を実現していくための、「県民の生活、行動の背景となる自然や歴史」、「県民の生活、行動の場となるまちやむら」そして「アメニティづくりの担い手である県民の生活、行動そのもの」の3つの視点からのアプローチで、それぞれが相互に関連し、調和しあいながら向上させていくためのものです。

県全域アメニティ像
ふれあい 発見 未来におくる 美しい福井
誇りのもてる豊かな郷土 郷土を愛する豊かなこころ
・郷土の自然や歴史を
大切に守り、育てる
≪基本目標≫
・郷土ならではの住み心地の
良いまちやむらをつくる
・郷土を愛し、郷土を誇りに
思うこころを育てる
≪ゾーン別の基本目標≫

 やすらぐ山、それは郷土の存在感
 @ 山の貴重な自然を保護する
 A 山の景観の保全と創造を図る
 B 山に学び、出とのふれあいを促進する
 かがやく水、それは郷土の躍動感
 @ 美しい水と流れの保全を図る
 A 海、川、湖、湧水の水辺景観の保全と創造を図る
 B 水に親しみ、水とのふれあいを促進する
歴史 とけあう歴史、それは郷土の情緒感
 @ 歴史性に富んだ地区や建物等の保存を図る
 A 歴史的景観の保全と創造を図る
 B 歴史に学び、歴史とのふれあいを促進する
まち たのしむまち、それは郷土の満足感
 @ らしさを生かした魅力ある都市景観づくりをすすめる
 A 住民参加の活力あるまちづくりをすすめる
 B まちの中の緑、水、歴史の保全と創造を図る
 C 雪に強いまちの形成を図る
むら わかやぐむら、それは郷土の安心感
 @ 風土を生かした個性的な景観づくりをすすめる
 A 住民参加の活力あるむらづくりをすすめる
 B むらの中の緑、水、歴史の保全と創造を図る
 C 地域にあった生活基盤の整備を図る


V−2 ゾーン別の基本目標

(1) ゾーニング

 本県のアメニティ像である「ふれあい 発見 未来におくる美しい福井―誇りのもてる豊かな卿土 郷土を愛する豊かなこころ」は、県内共通のアメニティのめざすべき姿です。
 しかしながら、本県には、環境特性の異なるさまざまな地域があります。この基本目標をより効果的に実現していくため、それぞれの地域の人々が、それぞれの地域の性格、機能、構造などの環境特性を踏まえ、その特性に応じた目標、施策をたてる必要があります。

 本県は、周囲を石川、岐阜、滋賀、京都との県境を構成する山並と、越前海岸、若狭湾を形づくる日本海に囲まれています。このような山や海に囲まれた県土は、本県の歴史的な国造りの背景による、嶺北と嶺南の2つの地方、また広域行政圏による福井坂井、奥越、丹南、嶺南の4つの地域に区分されるのが一般的です。

 しかしながら、このような地方、広域圏による区分は、アメニティの構成要素である自然、歴史文化、社会生活の総合的視点からみると、必ずしも明確な環境特性により区分されたものとは言えず、いずれの地方、広域圏にも、水や緑などの豊かで多彩な自然、情緒あふれた歴史文化を持ち、また核となる都市があります。

 また、本プランのアメニティづくりの基本的考え方で示したように、アメニティづくりは、地域の住民が地域らしさをいかし、地域の望ましい暮らしを考えながら、一致協力して守り育てつくっていくことに意義があります。したがって、本プランではあえて面的で即地的な地域の類型化は行わず、地域の住民の自由な発想のもとに、地域の環境特性にあわせて、アメニティの目標や施策を組み合わせ展開できるよう、どの地域においても、選択できるような概念的なゾーニングとします。

以上を踏まえて、本県のゾーニングは

● 県民の生活、行動の背景となるゾーン
            …………「」、「」、「歴史
● 県民の生活、行動の場となるゾーン
            …………「まち」、「むら

の5つのゾーンで設定します。

山のゾーン
県境、市町村境などを構成する山と人々の身近な生活の場にある小山、小山群が対象です。山の緑、山の水、山の風景などは貴重なアメニティ資源です。いかに守り育て、いかしていくかがテーマとなります。

水のゾーン
 県土に面する海、県土をめぐる川、湖が対象です。水辺、水の流れ、水の風景などは貴重なアメニティ資源です。いかに守り育て、いかしていくかがテーマとなります。

歴史のゾーン
 県内の歴史的環境の豊かな地区、人々の身近な生活の場にある歴史性を感じさせるものが対象です。歴史的町並み、伝統行事などは貴重なアメニティ資源です。いかに守り育て、いかしていくかがテーマとなります。

まちのゾーン
 都市的機能の集積が高く、人口の多い地域が対象です。経済、文化、産業などにおいて、周辺地域の中心としての役割を担っている地域です。いかに、そのまちならではの住み心地の良さをつくっていくかがテーマとなります。

むらのゾーン
 農村、山村、漁村が対象となります。地域の生活が生産活動と密接な関係にあり、また周辺の自然や近郊のまちの変化に影響を受けやすい地域です。保全と開発の調和を図り、いかにそのむらならではの住み心地の良さをつくっていくかがテーマとなります。

(2) 山のゾーンの基本目標

やすらぐ山、それは郷土の存在感

基本目標
●山の貴重な自然を保護する
●山の景観の保全と創造を図る
●山に学び、山とのふれあいを促進する

 多くの県民が「自然の緑」、「自然の景色」を今後も残しておきたいと思っています。(昭和62年「望ましい環境に対する意識調査」より)
 これは、地域の人々が地域の姿を思い浮かべる時、その背景には常に美しい県土の山並みがあり、また、身近な山に登り実体験した自然の緑の豊かさが、心のやすらぎとなっているからです。
 したがって、山の美しさ、自然の緑の豊かさが、いつまでも人々の心の中にとどまり、そして、山ならではの良さを次の世代におくるため、大切に守り、育て、いかしていくことが必要です。


◆ 福井の山の特徴

県境、市町村境を構成する山々

 石川県や岐阜県との県境付近は、白山火山地をはじめとして、標高1000〜2000mの山岳が並び、貴重な原生林や野生動物の生息域として自然の宝庫となっています。またこれらの山々は、多くが自然公園として指定され、自然を満喫できる場として、県民の誇りともなっています。
県内の山々の多くは地域の水資源涵養林、森林資源生産の場となっていると同時に、地域の遠景や地域のシンボルとして、またキャンプ場や自然遊歩道などのレクリエーション・スポーツの場として地域の人々に親しまれています。
 特に、近年では、ゴルフ場やスキー場などの大規模な開発が進められています。

身近な生活の場にある小山・小山群

 本県の主要都市には、必ずといっていいほど、その近郊に簡単に登れる小山・小山群があります。これらは、桜やつつじの花の名所、地域の展望台などの総合公園として、活用されている例が多くまた城跡、古墳、寺社林など、山そのものが歴史的資源として位置づけられているのも多く見られます。
 このように、都市近郊の小山・小山群は、身近な緑とのふれあいの場として、地域の人々にやすらぎを与えています。


◆ 福井の山の課題

豊かな山の環境を守る

・県境を構成する山々については、自然の宝庫、自然を満喫できる場として現状を保全し、次の世代に残していく必要があります。
・これら以外の山々については、生産の場や開発の場として重要視され、その本質的な環境特性(天然林、水源涵養林、生物の生息域、山の風景など)が見過ごされがちになります。
このため人々の生活に対する山の影響を十分認識し、保全と開発の調和を考えた上で、大切に守り育て、いかしていく必要があります。
・ 身近な生活の場にある小山・小山群は、日々の暮らしの中で人々に緑のうるおいや生物の息吹を感じさせ、また身近なシンボルとしても位置づけられます。これらの山の自然や風景は大切に守り、育て、いかしていく必要があります。

山とふれあい、山に学ぶ

・ 自然公園、自然遊歩道、自然体験の森などは、本物の自然にふれあい自然の営みを学ぶ場として、活用していく必要があります。
・ 小山・小山群は、身近にある自然とのふれあい、人と人とのふれあいの場として、また山に登り自分達のまちの姿を眺める場として、活用していく必要があります。
・ 山は、すべての人々やすべての生物にとって、共通の財産だという認識を深めるとともに、山の自然を守り、森林づくりに参加していく必要があります。


(3) 水のゾーンの基本目標

かがやく水、それは郷土の躍動感

基本目標
●美しい水と流れの保全を図る
●海、川、湖、湧水の水辺景観の保全と創造を図る
●水に親しみ、水とのふれあいを促進する

 県民の多くは、身の周りの環境を良くするためには、「川、池、海のきれいさ」、「水や水辺とのふれあい」といった水環境の整備が最も必要だと考えています。(昭和62年「望ましい環境に対する意識調査」より)
 これは本県の水環境が豊かなものの、親水性や美しさに欠けている結果といえます。
 したがって、透き通った水の輝きを守りあるいは回復し、海や湖の白い波、川の豊かな流れ、生物の息吹といった水ならではの良さを次の世代におくるため、水は共有財産だという意識を持ちながら、大切に守り、育て、いかしていくことが必要です。


◆ 福井の海、川、湖の特徴

変化に富んだ越前若狭の海岸

 本県の海岸は自然海岸が多いため、変化に富んだすばらしい景観を呈し、海水浴や釣り、ドライブなどのレクリエーションの場となっています。また、好漁場でもあり、日本海の幸は、地域の人々の生活の糧となっています。

県土をうるおす河川、湖

 かっては、いくたびかの水害にみまわれましたが、治水に力が入れられたことから、近年では、河川の氾濫は少なくなってきています。川は、その豊富な水の流れ自体が貴重な資源ですが、そこに生息する野鳥や魚なども、自然の豊かさを感じさせてくれる資源です。
 代表的な湖としては、三方五湖や北潟湖の自然湖、九頭竜湖などのダム湖があり、これらの美しい景観は、地域の人々や観光者に親しまれています。
 しかし、三方五湖や北潟湖は、富栄養化が進行し、地域の人々が一体となった水質改善策が進められています。

身近な生活の場にある小川、水路等

 本県は、気候特性や豊かな森林資源により、水資源に恵まれています。また、古くから大きな用排水路がつくられたことから、まちやむらには必ずといっていいほど小川が流れ、魚が勢いよく泳ぎ、子供たちの遊び場や学習の場となり、さらに野菜洗いや洗濯などを通して、人々のコミュニティ形成の場となっていました。
 しかし、その多くは機能性や安全性が重視され、コンクリートなどによる改修が進み、魚や昆虫たちの生息の場は失われました。このため、人々は遠ざかり、単に水が流れる水路としての機能しかもたなくなっています。また、これらの水路の多くは生活雑排水、ゴミや空き缶などにより、水質と水辺景観の悪化が問題となっています。


◆ 福井の水の課題

清らかな水の環境を守る

・ 本県の海や河川の水質は、総じて清浄だと評価されています。この清浄な水を今後も維持し、次の世代に残していく必要があります。
・ 本県の海や河川、湖等の自然の恵みは、地域の人々に生活へのうるおいだけでなく、こころのうるおいを与えてきました。このため機能性や安全性だけでなく、海や河川、湖等の自然性を十分認識した上で、大切に守り育て、いかしていく必要があります。
・ ダムの建設にあたっては、治水、水資源涵養、景観保全、親水施設などについて、総合的な視点のもとに、周辺施設との調和を図る必要があります。
・ 身近な生活の場にある小川や水路の多くは、味気なく、また汚れつつあります。今あるきれいな小川は大切に守り、また汚れた小 川、水路は、きれいな水が流れ、また生物がよみがえるよう努力していく必要があります。

水とふれあい、水に学ぶ

・ 海や河川については、海浜公園、河川敷公園、自然遊歩道、サイクリングロードなどを自然とのふれあい、自然の営みを学ぶ場として活用していく必要があります。
・ 身近な生活の場にある小川や水路は、水と遊び、人と語りあう場として活用していく必要があります。
・ 水は、すべての人々、すべての生物の共有財産だという意識をもつことが大切です。


(4) 歴史のゾーンの基本目標

とけあう歴史、それは郷土の情緒感

基本日標
●歴史性に富んだ地区や建物等の保存を図る
●歴史的景観の保全と創造を図る
●歴史に学び、歴史とのふれあいを促進する

 多くの県民が、「神社や寺」、「伝統行事」を今後も残して置きたいと思っています。(昭和62年「望ましい環境に対する意識調査」より)
 これは、このような歴史的資源が、地域の人々の精神文化と密接に関係しており、先人に対する思いやり、行事や祭祀を通しての人と人、人と季節とのふれあいが、人々の生活と真にとけあっているからです。
 したがって、誇りある歴史、趣きのある歴史が、人々のこころの中にとどまり、そして、歴史ならではの良さを次の世代におくるため、地域の歴史は共有財産だという意識を持ちながら、大切に守り、育て、いかしていくことが必要です。


◆ 福井の歴史、伝統の特徴

歴史を今に伝える文化財

 本県は、古くから畿内文化、大陸文化の影響を受け、数々の歴史的文化財があります。小浜市、武生市、大野市などは、戦災や震災の難をのがれたこともあり、寺社を中心とした貴重な歴史的建築物が多く残り、まち中やその周辺の家並みにも当時の面影が残っています。
 また、県を代表する寺として曹洞宗大本山永平寺があり、毎年多くの参拝客が訪れ県民の誇りともなっています。

身近な生活の場にある古城、神社、祠、地蔵堂

 本県は、古城や城跡が数多くあり、まちのシンボルとなっています。また、集落や古くからの街道沿いには、必ずといっていいほど神社、祠、地蔵堂があり、地域のシンボルとなっていると同時に、祭礼、盆おどりなどを通してコミュニティ形成の場ともなっています。これらの多くはその周りが鎮守の森となって、大木が生い茂り、歴史の年輪を感じさせてくれます。

情緒あふれる伝統文化

 豊かな自然に恵まれた本県の風土は、各地に独特の人情、風習、芸能、祭りなどを育んでいます。これらは、先人たちが日々の生活から編みだした、素朴で、しかも情感あふれる伝統文化で、地方色豊かな伝統行事となっているものも数多くあります。


◆ 福井の歴史、伝統の課題

情緒のある歴史を伝え、いかす

・ 本県は、全域的に歴史的資源が豊富にあります。このような情緒ある歴史的資源は、今後とも維持管理し、次の世代に伝えていく必要があります。
・ 本県には、歴史的建築物は数多くありますが、これらが集中している例は少なく、多くは分散しています。これらの施設の周辺では、歴史性との調和を考えながら、創意工夫し、積極的に歴史的雰囲気を守り、つくっていく必要があります。
・ 身近な生活の場にある歴史的資源は、地域のコミュニティの場、地域のシンボルとして守り、育て、いかしていく必要があります。

歴史とのふれあい、歴史に学ぶ

・ 歴史、伝統については、特別史跡一乗谷朝倉遺跡のような歴史公園や、歴史散策路などにより、歴史とのふれあいの場、郷土の歴史を学ぶ場として活用していく必要があります。
・ 地域の歴史を活用したイベントや祭りを開催し、地域の歴史性をアピールしていく必要があります。
・ 地域の歴史や歴史的寡囲気は、地域の共有財産だという意識を持つことが大切です。


(5) まちのゾーンの基本目標

たのしむまち、それは郷土の満足感

基本目標
●らしさをいかした魅力ある都市景観づくりをすすめる
●住民参加の活力あるまちづくりをすすめる
●まちの中の緑、水、歴史の保会と創造を図る
●雪に強いまちの形成を図る

 まちは、地域の中心として多くの人々が集まる所です。このため、まちには、地域の顔としての象徴性や華やかさといった、非日常的なまちの機能を楽しむ空間が求められます。
 また、まちは多くの人々が居住する所です。このため、日常生活の場としての開放感と落ち着きのある寡囲気といった、日々の生活を楽しむ空間も求められます。
 したがって、出会いの場としてのまちのにぎわい、生活の場としてのまちのうるおい、やすらぎなど、まちならではの良さを次の世代におくるため、まちは共有財産だという意識を持ちながら、人々が満足できるまちをつくることが必要です。


◆ 福井のまちの特徴

地域の中心7都市

 本県の7市は、地形、交通、産業立地や歴史的背景などによって、それぞれの都市の寡囲気を形成しています。また、各都市周辺のまちやむらに対しては、経済、文化、産業などにおいて、中心的な役割を担っています。
 これらの都市の街路、公園、区画整理などの都市基盤は、比較的高い水準に達していますが、近年、都市中心部は郊外への都市機能の分散等により、都市活力の低下がみられます。

都市周辺のまち

 本県の都市周辺のまちは、上記の7都市の影響を受けつつも、地域の行政、文化、交通の中心として、また、地形や歴史的背景などにより、それぞれのまちの寡囲気を形成しています。これらのまちでは、福井市近郊の一部を除いて、人口が停滞、あるいは減少していますが、近年はこれに歯止めをかけ、まちに人を呼び戻そうと、多くのまちが、独自の方法でまちの活性化に取り組んでいます。

まちの身近な生活の場の雰囲気

 本県のまち周辺は、自然が豊かで、車で行けば短時間で自然に親しむことができます。また、人々は近所に買物に行くときや職場に行くときも車を使います。このように、本県の生活は車への依存度が高く、そのため、まちの姿も車社会に対応した機能性や利便性に重きをおいたものになりがちです。また、積雪地であるため、建物のつくり、庭のつくりも雪に対応した機能性や安全性が重要視され、その結果、町並みも比較的単調なものになっています。

◆ 福井のまちの課題

まちの顔をつくる

・ 県内の都市中心部は、多くが鉄道駅周辺にあり、各都市の玄関口として位置づけられます。このため、都市中心部では、都市の顔として、その都市らしい都市景観を形成し、イメージの向上、にぎわいの復活を図る必要があります。

歩いて楽しいまちをつくる

・ 緑や水といった自然環境との調和、そのまちがもつ歴史、伝統の活用、建造物のデザイン化により、そのまちらしさをいかした個性あるまちをつくる必要があります。
・ 街路の緑化、修景により、ジョギングや散歩などが楽しくできる歩行者空間をつくる必要があります。
・ まちにおける緑の拠点として、人々の余暇活動の多様化に対応した、公園や広場の整備拡充を図る必要があります。

いきいきとしたまちをつくる

・ 雪に強い道づくり、雪に強い建物づくりを堆進するとともに、雪を教材とした学習、住民が参加する冬のスポーツ・レクリエーションの普及、雪まつりなどの行事の開催により、積極的に雪を利用し楽しむことによって、冬期のまちの活性化を図る必要があります。
・ まちは人々の共有財産だという意識を持つとともに、行政と民間が一体となったまちづくりを堆進する必要があります。


(6) むらのゾーンの基本目標

わかやぐむら、それは郷土の安心感

基本日標
●風土をいかした個性的な景観つくりをすすめる
●住民参加の活力あるむらづくりをすすめる
●むらの中の緑、水、歴史の保全と創造を図る
●地域にあった生活基盤の整備を図る

 むらは、近年の一次産業の不安定化などにより、過疎化、高齢化が進行し、若者の定住化が求められています。また、その定住の条件を整えるための、むらの活性化や生活基盤の充実が求められています。
 しかしながら、豊かな自然、人情の厚いむらは、そこに生活している人はもとより、むらを離れた人々にも、美しいふるさとの原風景として安心感をもたらしています。
 したがって、若者がいるいきいきとしたむら、自然とふれあえる生産の場としてのむらといった、むらならではの良さを、次の世代におくるため、むらは共有財産だという意識を持ちながら、人々が安心できるむらをつくることが必要です。


◆福井のむらの特徴

土のかおる農村

 本県の農村は、地域のまちを中心として、その周辺に分散して位置しています。近年、農家の兼業化や就業者の減少、高齢化が進んでいます。しかしながら、コシヒカリを中心とした良質で低コストの米づくりや観光農業、特産品づくりなどの積極的な農業が展開されています。
 また、混住化の進展により、農業にたずさわらない人の数が増加しつつあり、農村の人々の生活に対する意識も多様化してきています。

木のかおる山村

 近年、人工林面積は横ばい傾向にあり、林業経営の低下がうかがえますが、一方では、豊かな森林づくりが進められているとともに、間伐材、山菜などの森林資源をいかした特産品づくりが進められています。
 本県の山村は、県境や市町村境を構成する山地の谷あいに位置していますが、その大半は農業にも従事しているため、生活環境としては農村と大きな相違はありません。

潮のかおる漁村

 本県は、長い海岸線と好漁場に恵まれ、多くの漁村があります。しかしながら、水産資源の減少や漁場環境の悪化等が憂慮され、とる漁業からつくり育てる漁業への転換が進められています。
 また、本県の沿岸は恵まれた自然景観を呈していることから、これらの漁村には、多くの民宿や旅館などがあり、海洋性レクリエーションの基地となっています。


◆福井のむらの課題

風土と調和したむらをつくる

・ むらは、まちに比べて豊かな生活空間を有しており、自然環境にも恵まれていますが、利便性の観点からみると、必ずしも快適とはいえません。このため、生産環境と生活環境が調和した土地利用を図りながら、生産基盤の整備や集落道路、農・漁村下水道などの生活基盤の整備を計画的に行っていく必要があります。
・ また、これらの施設をつくっていくにあたっては、むらがもっている自然や歴史をいかしながら、文化的、景観的な面にも配慮していく必要があります。

いきいきとしたむらをつくる

・ むらの景観、自然、暮らし方など、むらならではの良さを再認識し、住民自らが創意工夫しながら、むらづくりを進めていく必要があります。
・ ふれあい学習や体験学習など、むらの産物を利用したふれあいの機会、外部との交流の機会をつくり、むらの良さを積極的にアピールしていく必要があります。
・ 自然や景観をいかした公園づくりや集落センターなど、人々が交流できる場をつくる必要があります。
・ むらは従来から、小集団としての連帯感が強く、身の周りの環境についての共有意識が残っています。この意識を大切にし、むらの活性化を図っていく必要があります。