U アメニティからみた福井県の現況

U−1 環境特性とアメニティづくりの現況

(1) 福井県の概要
@ 沿革
 古代、北陸地方は『若狭』および『越(こし)』とよばれ、特に、現在の本県にあたる越前と若狭の地は北陸道の入口にあたり、いち早く畿内文化が波及してきました。県下の古墳の数が、本県以北の各県と比べてはるかに多いもの、そのことを物語っています。
 また、角鹿(現在の敦賀市)や三国では、大陸沿海州付近におこった渤海国の使節の送迎が行われるなど、大陸文化の流入みられました。
 大化前代の国造制では、本県にあてはまる地域には若狭、高志、三国、角鹿の4国造が行政体としておかれていましたが、大化の改新によって国郡制が確立し、越前、若狭の2国になりました。若狭については、今と変わりませんが、越前は現在より広く、今の石川県を含んでいました。その後、平安時代までに、能登国、加賀国が越前から分離されました。鎌倉時代以降は、それぞれに守護がおかれ、戦国時代には、越前を朝倉氏が、若狭を武田氏が治めました。
 江戸時代に入ると、徳川幕府は越前には結城秀康を、若狭には京極高次を封じました。その後、越前は削封、分封、移封が相継ぎ、最終的には、福井に松平氏、丸岡に有馬氏、大野に土井氏、勝山に小笠原氏、鯖江に間部氏、敦賀に酒井氏が封を受けました。
 明治2年6月版藩奉還とともに、8藩が旧領地に置かれましたが、明治4年の廃藩置県により、福井県(同年12月に足羽県と改称)と敦賀県が設けられました。明治6年1月、足羽県は敦賀県に合併され、越前・若狭の地が1つの行政区として、初めて統合されたものの、明治9年8月には、敦賀県が廃止され、嶺北7郡は石川県に、嶺南7郡は滋賀県に分属しています。そして、明治14年2月7日、藩制時代の越前、若狭の地をもって福井県を建て、ここにおいて、『越山若水』として親しまれる自然環境の豊かな福井県が誕生し、現在に至っています。

アメニティ・トピックス

〈万葉集にも詠まれた福井の自然美!〉
 本県の自然環境の美しさは、遠い昔から多くの人々に親しまれてきました。
 このようなすぐれた自然を背景として、県土のアメニティづくりを考えていくことが必要である。
若狭なる  三方の海の  はま清み
       いゆきかへらひ  見れどあかぬかも

                  (万葉集:詠み人知らず)

A 位置
 本県は、本州日本海側のほぼ中央に位置しており、北は石川県に接し、東南から西南にかけては岐阜県、滋賀県、京都府に隣接しています。
 県土の総面積は4,187.33kuであり、全国総面積の1.1%を占めています。(昭和63年10月1日現在)

福井県の位置 福井県地形区分図
(資料:福井県自然環境保全
基礎調査報告書―福井県―)
極 東 大野郡和泉村油坂峠東南 1,550m 東経136度50分 6秒2
極 西 大飯郡高浜町鎌倉西北 500m 東経135度27分 7秒6
極 南 遠敷郡名田庄村染ヶ谷東南 2,000m   北緯 35度20分27秒7
極 北 坂井郡芦原町北潟見当山北 750m 北緯 36度17分34秒7 

B 地勢
 敦賀市の北東にある山中峠から木ノ芽峠を経て、栃ノ木峠に至る峠で嶺北、嶺南といわれる2つの地域に分けられ、地形や気候の面でそれぞれ異なった特徴を有しています。
 嶺北地方は、九頭竜川、日野川、足羽川の土砂の堆積による福井平野を中心に、大野、勝山盆地、九頭竜川中流河谷や丹生山地、越前中央山地、岐阜県境に広くつらなる越美山地、石川県にそびえる白山火山地とそれに続く加越山地等から形成されています。
 嶺南地域は、変化に富むリアス式海岸が続き、断層によって残された山地と平野が交互に並列しており、各湾や入江の奥には、地溝を埋めた狭い堆積地が、敦賀、美方、小浜の小平野を形づくっています。

気温、降水量の月変化図(昭和63年) 平均気温、降水量の分布図
(昭和63年)
(資料:福井地方気象台)

C 気候
 日本海に面し、北陸の西端に位置している本県は、冬期に曇りや雪の多い日本海式気候に属しています。しかし、地形や季節風の影響の違いなどにより、嶺南地域は山陰海岸型の気候で、冬の降水量は少なく温暖ですが、これに対して、嶺北地域の奥越では、北陸山地型の気候で気温は低く、冬期の降雪が多くなっています。また、福井平野は、海岸に近い位置にありながら、海の影響ノ少ない内陸性気候を示しています。


D 交通
 本県における交通体系は、陸上交通においては北陸自動車道や国道8号、27号を主軸とした道路網が形成され、鉄道ではJR北陸本線を中心に小浜線、越美北線および地方鉄道によって交通網が形成されています。
 また、現在、福井空港の拡張整備をはじめとして北陸新幹線や近畿自動車道敦賀線、中部縦貫自動車道などの建設整備計画が進められており、これらを中心とした高速交通体系の確立が急がれています。

アメニティ・トピックス

〈TAKEDAじょんころファンタジア〉
 丸岡町竹田地区の「光と音のゆきまつり」TAKEDAじょんころファンタジアは昭和61年以来5回を数え、馬ぞりやスノーモービル、そば作り体験など、毎年多彩な催しものをくりひろげ、町内外から多くの家族連れがつめかけ、雪に親しんでいます。

       お らい し
〈粟田部の蓮莱祀曳き廻し〉
 この神事は今立町粟田部の岡太神社を中心に同町ゆかりの継体天皇の遺徳をしのんで、昭和59年に再興されて以来毎年行われています。五穀豊穣を願った飾り物を乗せた、修羅というそり状の山車を引く「曳き廻し」は、雪の中を粟田部音頭にあわせて、地区の人たちが綱を引いて、町内を練り歩きます。

E 社会状況
【人口】
 本県の人口は、昭和45年まで減少傾向を示していましたが、その後は増加傾向に転じ、昭和63年度の推計人口は822,462人(全国で45位)となっています。
 年齢別構成においては、年少人口比率が20.0%、生産年齢人口比率が66.3%、老年人口比率13.7%となっており、特に老年人口比率は、全国平均の11.2%に比べて2.5ポイント高く、平均12年には県民の5.5人に1人が高齢者(構成比18.4%)となる本格的な長寿社会を迎えるものと予想されています。
 また、人工集中地区(DID地区)における人口は、昭和60年10月1日現在で293,664人で、総人口の35.9%を占めています。

人口集中地区(DID地区)における人口、人口増減

地  域 人  口 昭和55年〜60年の人口増減
(△は減少)
面 積
(ku)
人口密度
(1ku当たり)
昭和60年 昭和55年
         (組替)
実  数 率(%) 昭和60年 昭和60年
福井県 DIDs
市  部 DIDs
郡  部 DIDs

福井市 DIDs
敦賀市 DIDs
武生市 DIDs
小浜市 DIDs
大野市 DIDs
勝山市 DIDs
鯖江市 DIDs

松岡町 DIDs
三国町 DIDs
金津町 DIDs
丸岡町 DIDs
春江町 DIDs
293,664  293,336
260,131  260,036
33,533    33,301

143,981  142,169
32,385    32,390
22,993    24,128
13,650    14,309
17,571    17,623
12,326    12,820
17,225    16,596

5,264    5,457
9,637    9,046
5,395    5,497
7,719    7,569
5,518    5,732
328
96
232

1,812
△   5
△1,135
△ 659
△   52
△ 494
629

△ 193
591
△ 102
150
△ 214
0.1
0.0
0.7

1.3
△ 0.0
△ 4.7
△ 4.6
△ 0.3
△ 3.9
3.8

△ 3.5
6.5
△ 1.9
2.0
△ 3.7
55.3
48.0
7.3

23.5
6.5
4.8
3.0
3.4
2.6
4.2

1.4
1.9
1.2
1.7
1.1
5,310.4
5,419.4
4,593.6

6,126.9
4,982.3
4,790.2
4,550.0
5,167.9
4,740.8
4,101.2

3,760.0
5,072.1
4,495.8
4,540.6
5,016.4
(資料:各年国勢調査)

【経済・産業】

・県内総生産
 本県の経済は、国の経済が安定成長へ移行する中で、昭和53年度に1兆5,880億円(昭和60年価格)であった県内総生産は、昭和63年度には2兆3,440億円となり、この間、国の実質年平均成長率とほぼ同程度の4.0%の発展を遂げています。
 産業別の県内総生産では、第一次産業の比重の減少傾向が続き、第三次産業の比重が増加しています。特に、電気業、卸小売業、運輸通信業などネットワーク部門が高い伸びを示しています。

・一人当たり県民所得
 本県の一人当たり県民所得は、昭和53年度の137万円(名目)から昭和63年度には、222万円となり、85万円増加しました。この間、一人当たり国民所得に対する比率は、92%から94%へ2ポイント上昇しています。

・就業構造
 本県の就業者数は、昭和60年の国勢調査によると43万4千人であり、15歳以上人口64万1千人に占める割合(就業率)は、68%と高い値を示しています。
 職業別にみると、第一次産業の就業者数の減少が著しく、第三次産業の増加が目立っています。第二次産業では、構成比が39.9%と全国平均の33.1%よりも高くなっており、第二次産業の構成比は全国的に低下傾向であるのに対し、本県では増加傾向にあります。

・第一次産業
 おいしい米として全国的に有名な「コシヒカリ」の生誕県である本県は、農用地に占める田の面積割合は91.1%であり、全国平均の54.5%と比べて非常に高い米作県となっています。
 一方、近年では都市近郊農業として野菜、果樹、花き栽培が進むとともに、地域林業と畜産業の活性化、栽培漁業等の水産技術の開発・普及が進められています。

・第二次産業
 本県の地場産業としては、基幹産業としての繊維をはじめ、機械、化学、プラスチック工業などがあげられますが、特に、合成繊維織物や眼鏡枠などでは全国一位の生産量を誇っています。
 また、本県の伝統工芸品産業としては、今立町の越前和紙や鯖江市の越前漆器、小浜市の若狭漆器・塗箸・若狭めのう、武生市の越前打刃物、宮崎村や織田町の越前焼などがありますが、伝統を守る一方で、現代の感覚にマッチした作品づくりなどの工夫が進められています。

・第三次産業
 本県の産業・サービス業は、県都の福井市をはじめとする各都市を中心に、店舗の集積がなされています。最近では、コンベンションやリゾートを核に、観光等の第三次産業活性化の動きが顕著になってきています。

アメニティ・トピックス
〈一村一品運動〉
 名田庄村には、村おこしの拠点として、全国に先がけて第三セクター方式による商会が設立されています。この商会の出資は村、農協、森林組合、商工会、木材組合の五団体〈資本金200万円〉からなっており、村は資金面で、経済団体からは資金と物づくり、民間は現場の第一線といった、文字通り村ぐるみの第三セクターとなっています。
 主な事業は、特産品開発、生産販売、市場調査、住民所得の向上、就業機会の増大と幅広く、村民会社といった認識にたって、事業活動が進められています。
【全国からみた福井県】

項          目 全   国 福 井 県 全国
順位
出         典



面積(63年次) 377,719.36ku 4,187.33ku 34 国土地理院「全国都道府県市区町村別面積調べ」
森林面積割合(60年次) 67.34% 75.02% 12 農林水産省「林野面責統計」
可住地面積割合(62年次) 32.0% 24.7% 36 国土地理院「全国都道府県市区町村別面積調べ」
自然公園面積割合(63年次) 14.0% 14.6% 22 環境庁自然保護局「自然公園の面積」
年平均気温(62年次) 14.6℃ 34 気象庁「気象庁年報」
年平均相対湿度(62年次) 74.0℃ 8 気象庁「気象庁年報」
日照時間(62年次) 1,735時間 39 気象庁「気象庁年報」
年間降水量(62年次) 1,645o 17 気象庁「気象庁年報」




人口(63年次) 122,782,930人 822,462人 45 総務庁「推計人口」
人口密度〈1ku当たり〉(63年次) 329.3人 196.2人 34 総務庁「推計人口」
人口増加率(63年次) 0.425% 0.082% 28 総務庁「推計人口」
転入率(63年次) 2.555% 1.587% 42 総務庁「住民基本台帳人口移動報告年俸」
転出率(63年次) 2.555% 1.806% 42 総務庁「住民基本台帳人口移動報告年俸」
老齢人口比率〈65才以上人口〉(63年次) 11.2% 13.7% 20 総務庁「推計人口」
核家族世帯割合(60年次) 62.5% 51.5% 45 総務庁「国勢調査」
高齢者〈65才以上〉のいる世帯割合(60年次) 25.4% 36.4% 5 総務庁「国勢調査」

1人当たり県民所得(61年次) 2,238千円 2,063千円 20 経済企画庁「国民・県民経済計算年報」
県民総生産(61年次) 332,235,671百万円 2,182,330百万円 40 経済企画庁「国民・県民経済計算年報」
農家1世帯当たり農家所得(62年次) 5,611.9千円 7,548.1千円 4 農林水産省「農家経済調査報告」
農業粗生産額〈就業者1人当たり〉(62年次) 173.5万円 157.6万円 25 農林水産省「生産農業所得統計」
林産物素材生産量(63年次) 30,930千u 212千u 35 農林水産省「木材需供量調査」
海面漁業漁獲量(63年次) 11,259,202t 25,362t 37 農林水産省「漁業生産統計調査」
製造品出荷額等〈従業者1人当たり〉(62年次) 2,361.0万円 1,622.1万円 34 通商産業省「工業統計調査」
商業販売額〈従業者1人当たり〉(59年次) 4,359.1万円 2,843.8万円 16 通商産業省「商業統計調査」
一世帯当たり電灯年間使用量(63年次) 3.77千kwh 4.81千kwh 1 電気事業連合会「電気事業便覧」
月間実労働時間数(63年次) 175.9時間 183.1時間 4 労働省「毎月勤労統計調査年報」



持ち家比率(63年次) 61.4% 79.5% 5 総務庁「住宅統計調査」
1人当たり畳数〈持ち家主世帯〉(63年次) 10.75畳 11.54畳 14 総務庁「住宅統計調査」
水道普及率(63年次) 94.2% 91.1% 29 厚生省「水道統計」
下水道普及率(63年次) 40.0% 31.3% 13 日本下水道協会「下水道統計」
人口1000人当たり小売店数〈飲食店以外〉
(61年次)
14.19店 16.91店 9 総務庁「事業所統計調査報告」
総面積1ku当たり道路実延長(63年次) 2.95q 2.18q 40 建設省「道路統計年報」
主要道路舗装率(63年次) 92.8% 94.5% 29 建設省「道路統計年報」
生活道路〈市町村道〉舗装率(63年次) 61.6% 81.1% 5 建設省「道路統計年報」
人口1000人当たり自家用乗用車台数(63年次) 248.1台 278.0台 11 運輸省「自動車保有車両数」
人口1人当たり都市公園面積(62年次) 5.43u 10.88u 3 建設省「都市緑化年報」
人口100万人当たり公民館数(62年次) 142.6館 256.8館 17 文部省「社会教育調査報告書」
人口100万人当たり図書館数(62年次) 14.7館 43.8館 2 文部省「社会教育調査報告書」
人口100万人当たり体育館数(60年次) 52.0館 115.0館 8 文部省「我が国の体育・スポーツ施設」
人口100万人当たり博物館数(62年次) 6.0館 9.7館 10 文部省「社会教育調査報告書」




人口10万人当たり一般病院数(63年次) 7.3所 11.1所 8 厚生省「医療施設調査・病院報告」
人口10万人当たり医師数(63年次) 157.7人 147.0人 26 厚生省「医師、歯科医師、薬剤師調査」
人口10万人当たり消防ポンプ自動車等現有数
(63年次)
93.1台 132.2台 21 消防庁「消防年報」
人口10万人当たり交通事故発生件数(63年次) 500.5件 556.1件 16 警察庁「交通統計」
人口10万人当たり交通事故死傷者数(63年次) 621.6人 749.3人 11 警察庁「交通統計」

(2) 自然環境
@ 地形、地質
 嶺北地域では、造山活動による隆起地形が広く分布しているのに対して、嶺南地域では、若狭湾の陥没による沈降地形の特色を示しています。
 また、本県の地質は飛騨片麻岩類と古生代以降の各地質時代の地層から構成されており、北陸の他地域に比べて比較的豊かな地史的内容となっています。
 なお、化石産地は、主として嶺北地域に散布しています。
 このような特色ある本県の地形、地質において、学術的、景観的にすぐれているものは、特に「みどりのデータ・バンク(昭和60年)」“特異な地形・地質”
、“すぐれた景観”として整理されています。
(巻末資料参照)
 一方、火山岩からつくられたみごとな柱状節理がみられる東尋坊では、約19,000uを園地化する環境整備事業が昭和52年度より実施され、特異な地形や景観にふれあえる快適な環境づくりが行われました。
 また、歩道の緑石や公園内の石垣に笏谷石を用いるなど、本県では自然性や風土性にすぐれた地形、地質をアメニティ資源として利用している事例がみられます。
 今後、これらのすぐれた地形、地質の保全と活用を図っていくとともに、ふれあいの場の創造を進めていくことが必要です。

アメニティ・トピックス

〈恐竜のまち構想〉
 勝山市北谷町の杉山川沿いの岩壁では、「日本で始めて」のタイトルがつく恐竜化石が、平成元年より相次いで見つかっています。
 同市のように、複数の恐竜化石が大量に発見された例はなく、文字通り日本一の恐竜の里として知られるようになっています。
 また、同市では恐竜を素材とした地域のイメージ・アップを図ろうと『恐竜のまち構想』が検討されており、自然とふれあえるアメニティ資源としての有効な利用をすすめています。

A 山岳
 本県には、岐阜県境に広く連なる越美山地や石川県境にそびえる白山火山地をはじめとして、加越山地、越前中央山地、丹生山地、南条山地、野坂山地、三遠山地、若丹山地、青葉火山地など、多くの山地があり、県土の75%が森林となっています。特に、奥越地方の山々は自然環境にすぐれており、県土面積の9.2%に相当する38,445haが白山国立公園と奥越高原県立自然公園に指定されています。
 これらの山々は、古くから林業などの生産活動の場として利用されてきましたが、遠景の緑や地域のシンボルとして、郷土性や季節感を育む資源として、あるいは豊かな自然とのふれあいの場としても親しまれています。
 今後、林業の活性化や山村の振興を進める中で、緑のオーナー制度や分収育林制度などを活用した山々の保全を図るとともに、レクリェーション需要の多様化に対応した自然環境享受型のリゾート開発の推進や、季節感のある里山づくりなどの多彩なふれあいの場づくりを進めていくことが必要です。

シンボルとなっている若狭富士(青葉山) シンボルとなっている越前富士(日野山)

九頭竜国民休養地
アメニティ・トピックス

〈森林浴の森100選〉
 自然との共生を目指す緑の文明学会と緑の文明総合研究所は環境庁、林野庁、建設省、日本新聞協会の協力により、全国公募の中から「森林浴の森100選」を昭和61年4月に選定しています。
 その中で、本県においては『九頭竜国民休養地』と『八ヶ峰自然休養村』が選ばれています。
 森林浴は、木々の発散するテルペン等の発揮物質(フィトンチッド)を浴びることや、四季折々の景観や野鳥の鳴き声等の影響によって健康が培われるなどの効用があり、近年注目されています。

B 河川

福井県主要河川図

 本県は、一般河川157(流路総延長1,094.714q)、二級河川39(流路総延長247.674q)を有し、豊かな水の流れに恵まれています。(平成2年3月末現在)
 このような本県の河川は、古来より農耕用の水資源として、また、河川水運の交通路として人々の生活に関わってきました。現在では、上水道、工業、灌漑、漁業、電力などの資源として広く利用されていると同時に、県内外から多くのアユ釣り客が訪れ、観光レクリェーションの場ともなっています。
 また、地形と一体となった独特の河川景観や、都市の数少ない広々とした自然空間は、地域のシンボル、水とのふれあいの場となり、アメニティ資源として人々にうるおいとやすらぎを与えています。近年では、これらの河川空間を活用した河川高水敷の公園化、親水護岸化や堤防等の緑化が県内各河川で進められるとともに、いかだ流しなどの水とふれあうイベントも催されるようになっています。
 しかしながら、一方では、人々の身近な生活の場にある中小河川は、コンクリート護岸等により親水性が失われています。また、都市河川は、依然として水質汚濁が改善されず、農村部の河川も水辺にゴミや空き缶が目立ち、河川景観をそこねています。
 このことから、近年では水辺の機能が再認識され、河川環境の保全と利用計画(河川環境管理基本計画)の策定や親水護岸などの工夫が一部の地域で進められています。また、コイの放流を通じて、水質浄化への関心を高めようとする地域住民の自主的取り組みも、敦賀市の二夜の川や鯖江市の弁天川など、各地で展開されています。
 この他、人々の身近な生活の場となっている小川や湧水は、地域のシンボル、コミュニティ形成の場として、貴重なアメニティ資源であり、その保全を図るとともに、名水公園や共同洗い場として活用していく必要があります。

九頭竜川でのアユ釣り(上志比村) 九頭竜川いかだ流し(松岡町)

アメニティ・トピックス

〈全国名水百選〉
 環境庁は、昭和59年に全国名水百選を認定しています。これは、古くから名水として引き継がれており、地域住民等によって、その水環境の保全が図られているものの中から、優良な湧水や河川を100ヶ所選定したものです。

・大野市のお清水(湧水)
 大野市は、非常に地下水の豊富なまちですが、その中で「お清水」は、1年を通じて12〜14度の涌き水が出ており、飲料水としてだけでなく、野菜の洗い場、洗濯の場、市民の憩いの場として利用されています。また、観光名所ともなっており、昭和63年には、洗い場が新装されています。

・上中町の瓜割の滝(涌水)
 上中町は、嶺南地域のほぼ中央に位置した自然豊かな地域ですが、その中で天徳寺の寺領内にある「瓜割の滝」は、その涌き水の冷たさや清冽さで有名であり、また、名水歴史公園として整備されています。
 “瓜割”の名称については、ある時、瓜を冷やしたところ、水の冷たさによって瓜が割れたという古事からといわれています。

・小浜市の鵜の瀬(河川)
 小浜市遠敷川沿いの鵜の瀬では、毎年3月2日にお水送りという行事が行われています。これは、奈良二月堂のお水取りの香水用に、鵜の瀬の水を送るものであり、1200年以上も続けられている伝統ある行事です。
 なお、その昔、鵜の群れがこの地で遊んでいたことから、この地名がつけられています。
カヌー競技の普及(芦原町)

C 湖沼
 本県の主な湖沼としては、北潟湖(面積2.04ku)や三方五湖(面積10.63ku)をはじめとして、武周ヶ池、刈込池や夜叉ヶ池、ならびにダム湖としての九頭竜湖や麻耶姫湖などがあげられます。
 沿岸部に位置する北潟湖や三方五湖は、古くから漁業の場として利用されてきましたが、近年では、湖周辺の環境変化や生活の向上に伴う排水によって、閉鎖性水域特有の富栄養化による汚濁が進んでおり、湖の一部では景観悪化等の問題も生じております。
 本県では、昭和62年度から全国に先がけて、地元住民の協力を得て「生活雑排水浄化推進員制度」を発足させるとともに、また、平成元年度からは「北潟湖・三方五湖水質保全総合対策事業」を積極的に進めています。
 北潟湖、三方五湖はいずれも国定公園に指定されており、遊覧船観光やドライブコースとしての道路整備等が行われています。近年では、蓮如上人の遺徳をしのぶ吉崎舟まいりの復活(金津町)やカヌー競技の普及(芦原町)などにみられるように、湖面を舞台としたイベントの開催やスポーツの振興等も図られています。また、麻耶姫湖や龍ヶ鼻ダムなどもハイキング、キャンプ場の整備が整えられています。
 今後、積極的に水質浄化活動や浄化意識の普及に取り組んでいくとともに、湖周辺地域の風土と歴史をいかした、アメニティ資源としての利用を進めていく必要があります。

アメニティ・トピックス

〈吉崎舟まいりの復活〉
 金津町では、毎年4月23日から5月2日までの10日間、吉崎御坊で蓮如忌が営まれていますが、昭和62年度に30年ぶりに吉崎舟まいりが復活されました。
 昔懐かしい渡し船を復活させるほか、肉付き面太鼓や地元民話の紙芝居披露、吉崎名物販売の物産コーナーなど、湖面を中心とした多彩なイベントが催されています。
海岸線の区分比較
(資料:自然環境保全基礎調査(79'.84'))

D 海岸
 本県の海岸線延長は約360qですが、この中で自然海岸の割合は比較的高く、また、国定公園の指定によって、すぐれた自然環境の保全が図られています。
 嶺南地域の海岸線には、見事な段丘が発達しており、これらの海岸線が侵食されてできた海蝕崖と奇岩が造る男性的な隆起性の岩石海岸は、越前加賀海岸国定公園に指定され、本県を代表する観光資源としての利用が図られています。
 また、領南地域は、典型的なリアス式海岸の景勝の地に恵まれ、海岸全体が若狭湾国定公園に指定されています。
 このように、すぐれた自然景観を有する本県の海岸の保全を進めるとともに、アメニティ資源としての健全な利用の促進を図るため、県では東尋坊こおける環境整備事業や越前海岸旅情公園化事業に取り組んでいます。
 さらに、海水浴や海釣り、花火大会などのイベントの場としての利用をはじめ、小浜市鯉川における人工養浜による公園化、三国町における海浜自然公園整備など、アメニティ資源としての様々な利用が図られています。
 一方、港湾においても、従来の物流拠点としての利用のみにとどまらず、港での人の交流・憩い・遊びといった生活、レジャー機能の導入を目指した「敦賀港ポートルネッサンス21(敦賀市)」などの取り組みがみられています。
 また、海岸護岸についても小浜市日吉海岸では、カラーブロックやカラフルな絵を設置した修景護岸が取り組まれるなど、市民が憩える場としての工夫が進められています。
 今後、海岸のすぐれた景観の保全を図っていくとともに、それらとのふれあいの場の創造を目指して、護岸や道路沿線の修景化などの環境整備を積極的に進めていくことが必要です。

アメニティ・トピックス

(白砂青松を守れ!(松原サミット))
 昭和63年、敦賀市において「第2回松原友好市町交流会議」(松原サミット)が開催されました。(第1回は昭和62年、兵庫県西淡町で開催)
 この会議は、美しい松原を持ち、白砂青松を誇る全国五市町(福井県敦賀市、静岡県清水市、香川県津田町、高知県大方町、兵庫県西淡町)の各市長、町長、教育長らが集い、松原の景観保存法などについて意見や情報を交換しあう場となっています。
 なお、敦賀市の「気比の松原」と美浜町の「根上がり松群」は、白砂青松100選(日本の松の緑を守る会)に選ばれています。

E 植物
 福井県は、白山山系の西の端にあり、また対馬海流の北上やリマン海流の南下する日本海に面しています。このため、白山山系からは北方系の植物が入り、逆に南からは暖地性の植物が入り込むなど、植物分布上も興味ある地域となっています。
 植生の面からみると、日本海沿岸の島や社叢ではタブやスタジイ、ツバキを主とする照葉樹林が認められています。低山帯はクロマツ林に続いてアカマツ林やコナラ、クリなどの二次林となっていますが、近年は植林が進みその大部分はスギ林となっています。
 奥越の山岳地帯はブナ林に代表される紅葉の美しい夏緑広葉樹林となっており、山項部の一部には、高山植物の花畑もみることができます。
 また、本県には2つの特色ある原生林が分布し、このうち暖帯林については、小浜湾の蒼島や三国町の雄島が特にすぐれており、ナタオレノキ、ムサシアブミ、ヤブニッケイなどの暖地性の植物をみることができます。
 一方、ブナ林については、県境付近や自然公園内の赤兎山〜経ケ岳、西方ケ岳、蠑螺ケ岳に比較的豊かに残っていますが、全県的には、近年、著しく減少してきています。
 県では、池田町の楢俣地区や敦賀市の池ノ河内地区を自然環境保全地域に指定するとともに、特に大野市刈込池周辺のブナ林については土地の買い上げを行うなど、その保全に努めています。
 このように、多彩な植生分布がみられる本県では、県の花としては水仙が、県の木として松が指定されているとともに、各市町村においても、その地域の代表的な植生を反映した植物を「市町村の木、花」として指定しています。
 これらの市町村の木、花は、大野市のこぶし通りに見られるように、街路樹として植樹した上で通り名とされたり、また、各地においては公園の樹木や花壇に用いるなど、郷土らしさを演出したアメニティ資源としての利用が進められています。
 今後、貴重な植生の保全を図っていくとともに、市の木、花の有効利用や地域活動における花いっぱい運動などを通して、身近に緑にふれあうことのできるアメニティづくりを進めていくことが必要です。

県の木 「松」
 清そで、岩や砂地にもたくましく育つ生命力は、質実剛健な県民性の象徴といわれています。
(昭和41年9月指定)

県の花 「水仙」
 日本海のきびしい風雪に耐え、寒中に咲くこの花の忍耐強さは、県民性に通ずるといわれています。
(昭和29年5月指定)

市町村の木、花一覧表

市町村名 市町村の木 市町村の花 市町村名 市町村の木 市町村の花
福 井 市 あじさい 今 立 町 もくせい さくら
敦 賀 市 はぎ 池 田 町 しゃくなげ
武 生 市 南 条 町
小 浜 市 もみじ つつじ 今 庄 町 とちの木 しやくなげ
大 野 市 けやき こぶし 河 野 村 水仙
勝 山 市 さつき 朝 日 町 さざんか
鯖 江 市 つつじ つつじ 宮 崎 村 山ぼうし、花しょうぶ
美 山 町 つつじ 越 前 町 水仙
松 岡 町 越 廼 村 トベラ 水仙
永平寺町 けやき あじさい 織 田 町 もくせい
上志比村 けやき 清 水 町 きんもくせい きんもくせい
和 泉 村 ぶな しゃくなげ 三 方 町 しい
三 国 町 黒松 あじさい 美 浜 町 つつじ
芦 原 町 花しょうぶ 上 中 町 赤松 あじさい
金 津 町 名田庄村 しゃくなげ
丸 岡 町 もみじ 花しょうぶ 高 浜 町 杜仲 はまなす
春 江 町 いちい ゆり 大 飯 町 やまもも つつじ
坂 井 町 けやき



県の鳥 「つぐみ」
 毎年、晩秋になるとシベリアから日本海の荒波を越えて、多くのつぐみが本県にわたってきます。
(昭和42年12月指定)

F 動物
 ・鳥 獣
 本県は、県鳥のツグミをはじめとして、大陸圏に繁殖地を持つ数多くの冬鳥の主要な渡来経路にあたっており、県内の林野は、その休息地あるいは越冬地となっています。また、日本列島を往来する鳥類も、中部山岳地帯を境として、日本海側を移動する多くの種類が知られ、特に、シジュウカラ、ヤマガラをはじめとする森林性の鳥類は豊富に見ることができます。これらの渡り鳥は、県内で記録される全鳥類の3分の2を超えています。
 また、昭和41年には武生や小浜で全国的に貴重なコウノトリが見かけられましたが、現在ではその姿を見ることはできません。
 特色ある鳥類としては、若狭地方の三方五湖を中心に希少なオオワシ、オジロワシなどの飛来が例年記録されているほか、イヌワシが少数ですが山岳部に生息し、貴重な存在となっています。
 獣類では、特徴的なものはありませんが、山地部においては天然記念物のニホンカモシカ、ヤマネをはじめ、ニホンツキノワグマ、ニホンザルなど、数多い種類の生息が確認されています。
 これら本県の鳥獣は、自然の豊かさや四季の変化を県民に感じさせるものであり、その保護を推進していくとともに、野鳥観察の森や施設整備を通して、鳥獣とのふれあいの場の創造を図っていくことが必要です。

アメニティ・トピックス

(身近にみられる野鳥)
 本県には、いろいろな場所で数多くの野鳥が生息していますが、この内、身近にみられる野鳥の種類は30種ぐらいといわれています
 これらの野鳥は、美しい鳴き声で県民の生活にうるおいややすらぎをもたらしてくれるとともに、種類や数の多さは県土の自然の豊かさの象徴でもあり、身近なアメニティ資源として位置づけられます。
 県内でも、探鳥会等の同好会が各地につくられ、バードウォッチングなどの施設も三方五湖や敦賀市猪ケ池、織田町六所山などにつくられています。
 また、三国町に福井県支部を置く日本野鳥の会では、例年、野鳥の数量調査(日野川の水鳥、越前海岸のワシ・タカ類など)や展示会・会報の発行等、様々な活動を行っています。
 近年、こうした愛鳥活動の普及等によって、工場敷地内に野鳥を呼び寄せるための巣箱やエサ場を設置している事例が見受けられるようになりました。
 下の表は、福井市に住む野鳥をとりまとめたもので、この中でアンダーラインで表示された野鳥は、身近に見られる30種です。


一年中見られる野鳥
(留鳥)
春から夏にかけて
見られる鳥(夏鳥)
秋から冬にかけて
見られる鳥(冬鳥)



スズメ ムクドリ
カワラヒワ
 オナガ
キジバト
 トビ
ハシボソガラス
ツバメ

コシアカツバメ

ジョウビタキ






ヒヨドリ ホオジロ
モズ
 シジュウカラ
ヤマガラ
 コゲラ
セグロセキレイ
 キジ
カケス
 ヒバリ
フクロウ アオゲラ
ケリ ハシブトガラス
エナガ メジロ
サシバ

アマサギ

アオバズク


サンショウクイ
ツグミ ウグイス
イカル シメ
ルリビタキ タゲリ
ウソ アオジ
カシラダカ シロハラ
ミヤマホオジロ
マヒワ アトリ
ハクセキレイ





コサギ アオサギ
カルガモ
 キセキレイ
カワセミ ヤマセミ
ゴイサギ カイツブリ
イソシギ
オオヨシキリ
ササゴイ コチドリ
イカルチドリ
コアジサシ
マガモ コガモ
ヒドリガモ
オナガガモ ヨシガモ
ハシビロガモ マガン
キンクロハジロ
スズガモ ヒシクイ
コハクチョウ
カンムリカイツブリ
海辺
 の
野鳥
イソヒヨドリ ミサゴ
クロサギ ウミネコ
ハヤブサ

イワツバメ
カモメ ユリカモメ
ウミウ カワウ
ヒメウ



イヌワシ クマタカ
ハイタカ ツミ
ヤマドリ アカゲラ
トラツグミ コガラ
ゴジュウカラ ヒガラ
ミソサザイ
コノハズク
アカショウビン
キビタキ コルリ
ブッポウソウ
サンコウチョウ
クロツグミ オオルリ

(表は、福井市を中心に作成したものです。) (資料:自然はともだち―ふくいの野鳥―)

県の魚 「越前がに」
 荒々しい日本海で培われ、福井の味として広く定着しており冬の味覚の王者として親しまれています。
(平成元年3月指定)


・ 昆 虫
 県下各地域の昆虫相は、現在、なお豊かさを保っています。しかし、その変貌は著しく、昭和10年頃に各地で見られた大型昆虫の中には、激減したものが少なくなく、クロツバメシジミなど、その姿を全く見ることができなくなったものさえあります。
 これらの昆虫は、植物の受精を助けたり、県民に四季の変化を感じさせるなど、県土の豊かな自然環境の大切な構成員として重要な役割を果たしています。

・ 魚類等
 特色ある淡水魚では、大野市本願清水の陸封型イトヨ、九頭竜川中流域に生息するアラレガコが知られています。また、イワナ、ヤマメ、アマゴなどの上流河川に住む魚類は、各地に見ることができ、近年、九頭竜川では放流したサケの回帰も見られます。
 両生類では、国指定の特別天然記念物のオオサンショウウオが県下でも発見されています。また、モリアオガエルは各地で見ることができます。
 爬虫類では、分布が限られているシロマダラが見られます。

アメニティ・トピックス

(トンボの渡る道―「湖北・敦賀回廊」)
 丹生山地や丹南地方から滋賀県湖北地方への経路は、古くからツグミやタカなど、鳥類の「渡りコース」として知られていますが、昆虫の「トンボ」にとっても重要な渡りコースであることはあまり知られていません。
 大阪の尾花らの「ルリボシヤンマやハネビロトンボ等の研究(1969)」によると、敦賀市池ノ河内湿原は、『東北日本と西南日本を結ぷ位置』であることを指摘し、この周辺地域のことを「湖北(敦賀)回廊」と呼んでいます。
 これは、良好な湿原があるばかりではなく、周辺のクヌギやミズナラなどの広葉樹林がよく残されている影響だと思われます。

〈福井県の地名がついた昆虫〉
・フクイアナバチ
 1953年、福井県で発見された後、約30年間その生存が不明でしたが、数年前より、再び福井市郊外や坂井郡で確認されております。

・ヤシャゲンゴロウ
 今庄町夜叉ケ池だけに生息が知られており、メススジゲンゴロウに近い固定種と近年認定されています。
〈資料:自然はともだち―ふくいの昆虫―〉

G 自然公園
 本県の自然公園には、白山山系の山岳公園である白山国立公園、嶺北地域海岸部の越前加賀海岸国定公園、嶺南地域のリアス式海岸である若狭湾国定公園および奥越高原県立自然公園があります。これらの4公園で、面積は合計61,024.5haであり、県土面積の14.6%を占めています。
なお、若狭湾国定公園には三方海中公園地区が指定されています。

自然公園の概況
公  園  名 面 積 特 別 地 域 普通地域 海中公園
特別保護地区 第1・2・3種
特別地域
白山国定公園
越前加賀海岸国定公園
若狭湾国定公園
奥越高原県立自然公園
5,206.0
7,314.9
15,264.6
33,239.0
220.0
100.2
6.4
− 
4,986.0
7,012.8
15,041.2
19,927.0
− 
201.9
217.0
13,312.0
− 
− 
30.2
− 
合      計 61,024.5 326.6 46,967.0 13,730.9 30.2
自然公園等位置図
(資料:平成元年度
環境白書―福井県―)

 近年、自然公園内において、ゴミや空き缶等の投げ捨てがみられ、県では自然景観や風致の保全のために、自然公園監視員を配置して監視体制を確立するとともに、自然公園利用者に呼びかける運動して、『自然公園クリーンデー』の活動を行っています。
 一方、これらの自然保譲活動とともに、自然公園内においては園地、野営場、遊歩道、駐車場などの施設整備を進めており、アメニティ資源としてのふれあいの場づくりが行われています。
 今後、自然保護思想の普及や遊歩道などの施設整備の堆進を図るとともに、自然についての解説や利用方法の指導拠点となる自然公園ビジターセンターなどの設置を行っていく必要があります。

福井県の自然公園
白山国立公園 越前加賀海岸国定公園 若狭湾国定公園 奥越高原県立自然公園

(3) 生活・文化環境
@ 道路
 本県における道路実延長(国県市町村道)は9,137.6kmで、その舗装率(簡易領装を含む)は84.4%となっています。
 これは、全国平均の舗装率66.6%を大きく上回っており、舗装率の高さでは全国5位に位置しています。(昭和63年4月現在)
 一般に、道路は都市施設の中でも最も基本的なものの一つであり、まちやむらの骨格を形成するとともに、県民の生活軸(通勤・通学、買物)としての機能や、避難地・避難路として、さらに上下水道や電線類の埋設空間などとして、県民の安全性や利便性の上から大切な役割を担っています。
 また、近年では、福井市のシンボルロード(電線地中化事業など)や宮崎村のジョギングロード(歩道部のカラー舗装化など)にみられるように、魅力ある景観を創出したものや、各市町村で実施されているフラワーロードづくりといった、道路空間を利用した環境創造に関わる施策が取り組まれています。
 今後、ゆとりとうるおいに満ちた歩行者空間の形成、周辺の景観と調和した道路環境づくりなどの視点にたった、道路空間の積極的な整備が望まれます。
 さらに、福井市の九十九橋や桜橋にみられるように、県民が憩う場としての環境整備や、シンボルとしてのライトアップなど、橋梁においても景観に配慮した整備が進められています。
 街路樹は、道路景観の構成要素、緑陰効果、大気浄化、防火等、アメニティ資源として様々な機能を有しています。道路空間におけるアメニティづくりにおいては、そのいかし方が重要なポイントとなっています。
 本県では、国道、県道および市町村道における術路樹の植栽率は、4.3%となっており、全国平均(5.0%)に比べると量的には不足している状況です。
 また、全国的には地域にマッチした常緑樹の植樹が増加している中で、本県でよく使用される樹種はアメリカフウ、プラタナス、イチョウといった落葉広葉樹が9割以上を占めています。
 本県における街路樹の剪定は、ほとんどの場合、夏期または冬期に施されていますが、必ずしも美しい樹木の剪定が施されているとはいえません。緑豊かな道路空間の視点に立てば、樹木本来の姿を整えるための剪定の実施が望まれるところです。
 このように、本県における街路樹の整備については量的な確保とともに、維持管理の工夫、「市町村の木・花」などを利用した特色ある緑化景観の形成など、様々な課題があります。
 これらを踏まえて、本県では昭和63年度より街路樹緑化事業が実施されており、道路空間におけるアメニティづくりに積極的に取り組んでいます。

電線類の地中化と歩道空間の修景(福井市) 道路法面の修景(金津町) 橋 粱の修景化と橋を利用したイベント(福井市)
ふるさと散歩道(武生市) 緑豊かな街路樹(福井市)

中宮平泉寺参道(勝山市)
アメニティ・トピックス

(日本の道100選)
 建設省では、昭和61年度から8月10日を「道の日」と制定し、これを記念して、昭和61、62年度の2ケ年にわたり日本の道100選を選定しました。昭和61年度は、歴史性と親愛性をテーマに53道が選ばれ、本県では、中宮平泉寺参道が選ばれています。昭和62年度は美観性と機動性をテーマに51道が選ばれ、本県では、三方五湖周遊道路が選ばれています。
 中宮平泉寺参道は、白山神社菩提林の中を通る千年前の石畳の舗装道路で、途中に牛岩、馬岩もあり、趣のある歴史性を感じさせてくれます。
 三方五湖周遊道路は、若狭湾国定公園内の名勝三方五湖を周遊する道路であり、水鳥やたたき網漁等の四季折々の穏やかな風物を味わいながら、散策やサイクリングが楽しめる道路となっています。

A 公園
 本県における県民一人当たりの都市公園面積は10.88uとなっており、全国平均の5.43uを大きく上向り、全国3位に位置しています。(昭和63年3月現在)
 一般に、これらの都市公園は環境保全や大気の浄化をはじめとして、県民のレクリェーション活動の場、身近に緑や水辺にふれあえる場、災害時の避難場所など、県民にうるおいややすらぎをもたらす重要な役割を担っています。
 都市基幹公園として位置づけられる総合公園や運動公園については、平成元年3月末現在で県内18箇所(419.5ha)で供用されています。さらに若狭総合公園、奥越ふれあい公園などの公園整備が進められており、県民の総合的なレクリェーション活動の需要に対して、積極的な対応が図られています。
 今後、福井市足羽山公園や鯖江市西山公園、敦賀市松原公園などにみられるような、身近な緑化をいかした総合公園や運動公園の整備が望まれます。
 県民の日常的な利用に供する住区基幹公園(児童公園や近隣公園など)は、都市郊外の新市街地では、土地区画整理事業を中心とした面的整備事業によって、計画的に配置されているものの、駅周辺をはじめとした都市中心部では、全般的に不足している状況です。
 今後、都市中心部においても面的整備事業等による公園の確保や、街路事業等に伴う残地や公共空間等をいかした小公園(ポケットパーク)の整備等によって、まちの中の緑や憩いの空間を確保することが必要となっています。
 一方、紫式部公園(武生市)や越前陶芸公園(宮崎村)などの、地域の歴史や産業等の環境特性をいかした公園づくりや、上中町にみられる、各集落の個性をいかした集落公園づくりなど、特色ある公園づくりが進められています。また、福井市では福井運動公園と足羽山を結ぶ和風庭園を取り入れた緑道(延長約600m、幅員約20m)整備に取り組んでいます。
 今後、これらの事例にみられるように、各地域の環境特性をいかした公園づくりや、地域住民に親しまれる開放的な公園づくりが望まれます。
 また、公園全般の課題としては雑草やゴミ、イヌの糞等の維持管理上の問題があげられますが、これらについては周辺住民が主体となって行う清挿活動や美化意識の普及・啓発活動の推進が必要となっています。

西山公園(鯖江市) 紫式部公園(武生市) 越前陶芸公園(宮崎村)

アメニティ・トピックス

(日本の都市公園100選)
 祉団法人日本公園緑地協会と緑の文明学会が平成元年7月、地域の人々が親しみ、誇りとしている都市公園の中から選定しました。選定は、都市に住む人々の身近にある公園緑地に対する愛護意識を喚起し、公園整備の推進を図るため実施され、本県からは、宮崎村の越前陶芸公園が選ばれています。越前陶芸公園は、趣前陶芸村整備構想の一環として、県が昭和48年から整備に着手したものです。

B 上下水道
 本県の水道普及率は、昭和63年度で91.1%、給水人口は746,248人となっています。また、施設別では上水道が80.9%を占め、簡易水道は18.9%となっています。
 ー方、平成元年3月末現在の本県の下水道事業は、九頭竜川流域下水道(1市6町)のほか、6市11町1村1事業組合で公共下水道と特定環境保全公共下水道が、4市1町で都市下水路が実施されています。
 しかし、現在処理を開始しているのは、5市7町1事業組合であり、下水道普及率は31.3%で、全国平均の40%を下回っています。
 これらの上下水道は、生活基盤となるアメニティ資源であり、今後も積極的な整備推進を図っていくことが必要です。


C まちの景観
 まちの景観は、道路や建築物等の人工的景観と、山や海、河川などの自然的景観によって構成されています。また、その地域の歴史や伝統文化に培われた「まちの雰囲気」も、景観の一要素と考えられます。
 このようなまちの景観は、県民が日常生活の中で常にふれあうアメニティ資源であり、アメニティづくりにおいて重要な位置づけが必要となります。
 本県におけるまちの景観をそこねている要因としては、
・自然的景観が大きな背景となっているものの、有効にいかされていない
・駅周辺や中心商業地では、建物等の形態や色彩等が様々で、秩序のない景観となっているまちが多い
・全般的に緑の量が少なく、うるおいややすらぎのあるまちの景観とはなっていない
・新市街地等では画一的な都市基盤が形成されているまちが多く、まちの魅力や個性が乏しい
・空き缶やゴミの散在、看板や広告物等の氾濫が景観を損ねているまちが多い
・道路に面する商店や住宅等の建物周辺の整理整頓がゆきとどいていない
などがあげられ、総じて美しいまちの景観が形成されているとは言いがたい状況です。
 一方、近年、これらの現状を踏まえて、県内ではシンボルロード整備事業による電線類の地中化などや道路緑化・修景化(福井市)、役場の建物や周辺道路の修景化(宮崎村)、彫刻のあるまちづくり(福井市、美浜町)、都市景観奨励賞(福井市)、まちなみ景観賞(県文化振興事業団)による顕彰など、魅力にあふれた景観形成への取り組みが行われています。
 さらに、福井市では平成元年7月に『福井市都市景観基本計画』を策定しており、長期的、総合的視点に立って都市景観整備の基本的方向を明確にしています。
 なお、県では景観形成のガイドプラン(マスタープラン)を策定する予定であり、今後はこれに基づいて、地域らしさをいかした個性的で魅力にあふれた景観づくりを進めていくことが求められています。
 また、景観形成には県民の主体性と協力意識が必要であり、各市町村においてこれらの意識の普及・啓発活動を積極的に行っていくことが望まれます。

放置自転車 水路のよごれ 緑化協定による緑豊かな住宅景観の形成(福井市)

アメニティ・トピックス

(美のまちづくりを提言!)
 福井市まちづくり・都市景観懇談会(会長・玉置伸a福井大学教授)は、昭和63年3月「魅力ある福井市の都市景観の実現のために」と題する提言書を市長に提出しています。
同提言書は、「道路や橋等都市整備において機能性のみを追及した“用”や“強”から“美”を重視する方向」へと発想の転換を求めており、次の4項目からなっています。
1 都市景観整備基本計画の策定
     (平成元年策定済み)
2 都市景観条例の制定
3 組織体制の強化
4 市民意識の高揚

D 歴史的環境
 城(跡)や伝統的な町並みなどの歴史的環境資源は、その地域独特の環境を形成するものであり、貴重なアメニティ資源として位置づけられます。
・ 城(跡)、史跡
 本県には、天守が国指定重要文化財に指定されている丸岡城(丸岡町)をはじめ、国指定特別史跡となっている一乗谷朝倉氏遺跡(福井市)や国指定史跡となっている金ケ崎城跡(敦賀市)などの史跡が、数多く存在しています。
 また、大野市や丸岡町など、城下町としての風情が残されている地域も多い状況です。
 本県では、近年、一乗谷史跡公園(福井市)や古城と一体化した霞ケ城公園(丸岡町)、城跡と海岸環境を利用した城山公園(高浜町)などにみられるように、城(跡)等をアメニティ資源としてとらえ、より多くの県民がふれあえるような場の創出が盛んに行われています。
 今後、本県の城(跡)等については、公園との一体化や歴史館・資料館等の施設整備を推進するとともに、イベント等の開催によって、各地域独自の歴史性、卿土性にふれあえる機会づくりに取り組んでいくことが必要です。

城山公園(高浜町) 一乗谷施跡公園(福井市)

アメニティ・トピックス

(北陸の小京都)
本県では、大野市と小浜市が「北陸の小京都」として親しまれています。(全国京都会議資料)
・ 大野市
 九頭竜川の上流、四方を山に囲まれた大野は、碁磐の目に区画された町並み、今も昔ながらに行われている素朴な朝市での人々の会話、涌き水の清らかさ、梵鐘の音色、吹く風にも人情の厚いしっとりとした城下町を感じます。
・ 小浜市
 『海のある奈良』とも呼ばれています。古都らしい、町家風の住居が並び、市内には国宝の本堂や三重塔を持つ明通寺など古い仏閣が数多くあり、潮の香りがするそぞろ歩きが楽しめます。
近世の旧街道図

・ 旧街道
 本県の旧街道は、古くは京にのぼる道として、江戸時代には参勤交代の道として、また永平寺や吉崎御坊への参道として整備されました。
 県内の主要な街道としては、北国街道(今庄町板取から武生、福井を経て金津町細呂木まで)、西近江道(今庄町から木の芽峠、敦賀を経て近江海津まで)、若狭街道(小浜市から上中町熊川を経て琵琶湖北岸の今津まで)があげられます。
 これらの旧街道には、街道沿いの宿場町の面影をとどめる古い町並み、一里塚等の道標、祠、並木等が現在も残され、歴史を身近に感じさせるアメニティ資源として位置づけられます。
 今後、地域の人々がこれらの歴史に誇りと愛着を感じられるよう、住民、行政相互の理解と協力を通して、周辺環境を保全していく必要があります。

・ 伝統的町並み
 本県の伝統的町並みの代表的なものとしては、上中町熊川や今庄町板取があげられ、これらの古い町並みは、町の条例や地元住民による町並み保存会等により保護・保存されています。この他にも、県内各地にすぐれた町並みや集落が残っており、これらは周辺と調和した歴史的景観、また地域独特の表情をかもしだすシンボルとしてのアメニティ資源として位置づけられます。
 現状では、これらの歴史的建造物に現に生活している場合があるため、それらの保存意識の普及・啓発活動を行う必要があるとともに、外観の保全・修復等に対する行政の支援も必要となります。
 また、これら町並みの周辺環境の整備(公園や録地との一体化、ストリートファニチュアの工夫など)にも取り組んでいく必要があります。

アメニティ・トピックス

(江戸時代の『熊川宿』を再現!)
 遠敷郡上中町では、平成2年1月に同町熊川に若狭鯖街道文化資料館を建設・オープンしています。
 この資料館は、江戸時代の宿場町の熊川宿や鯖街道、くらしの民具を紹介しており、建物外観も古い町屋風となっています。管理は、地元の熊川地区老人会が担当しており、地域住民ぐるみで歴史とふれあえる環境づくりが行われています。

主要な伝統的建造物群一覧表

名    称 所     在     地 備       考
三 国 坂井郡三国町 湊町
勝 山 勝山市本町・元町ほか 城下町
小 原 勝山市小原 山間の農村集落
大 野 大野市元町・本町・明倫町ほか 城下町
鯖 江 鯖江市(旧街道沿ほか) 門前町から城下町
武 生 武生市京町・本町・若竹町ほか 城下町
大 本 今立郡池田町 山間の農村集落
定友・岩本 今立郡今立町 紙すきの集落
河 野 南条郡河野村 漁村および舟持の家並
今 庄 南条郡今庄町 宿場町
板 取 南条郡今庄町 宿場町
敦 賀 敦賀市(市街地北西部) 湊と交通要衡の町
佐 柿 三方郡美浜町 国吉城下から宿場町
日 向 三方郡美浜町 漁村集落
北 庄 三方郡三方町 舟小星
熊 川 遠敷郡上中町 宿場町
遠 敷 小浜市遠敷 門前・宿場町
三丁まち 小浜市飛鳥 城下町(旧遊郭)
高 浜 大飯郡高浜町 在郷町

(資料:福井県の伝統的建造物群 福井県史資料編)
三丁まち(小浜市) 三国(三国町)
熊川(上中町)
今庄(今庄町)

古墳公園(朝日町)

・ 古 墳
 本県には、いち早く畿内文化が波及した経緯により、脇袋古墳群(上中町)、中郷古墳群(敦賀市)、王山古墳群(鯖江市)、手繰ケ城山古墳群(松岡町、永平寺町)、六呂瀬山古墳群(丸岡町)などの国指定の古墳群を始めとして数多くの古墳が存在しています。
 これらの古墳は、その地域の歴史を探る糸口であるとともに、朝日町古墳公園などにみられるように、地域の歴史とふれあいながら憩える場として活用されるなど、アメニティ資源としての位置づけも重要です。
 今後、歴史的遺産としての保全と調和を図った上で、県民が想える場としての整備を進めていくとともに、丸岡町の「越まほろば物語」にみられるように、地域らしさをいかしたイベント等を開催して、より多くの県民が本県の歴史にふれあえるような利用を図ってくいことが必要です。

アメニティ・トピックス

(越まほろば物語!)
 丸岡町では、平成元年9月22〜24日の3日間、『越まほろば物語』というイベントが開催されました。
 これは、地域の歴史を背景としたまちづくり・コミュニティづくりを担うものであり、継体天皇と千六百年前に越前を治めた越の王の王墓である六呂三頼山古墳群との関係を探る「越の国シンポジウム」や、九頭竜川から古墳までを約4千人の手造りによる石運び(古代山頂古墳造営法)などが催されています。

・ 神社・仏閣
 国宝に指定されている明通寺本堂・三重塔(小浜市)や国指定文化財となっている滝谷寺鎮守堂(三国町)をはじめとして、本県には文化財として、貴重な神社・仏閣が数多く存在しています。
 これらの神社・仏閣は、その地域の歴史とのふれあいの場であるとともに、日常の散策における安らぎの場、住民間のコミュニティ育成の場、祭祀を行う場など、アメニティ資源として様々な役割を担っています。
 今後、神社・仏閣の周辺建築物においては、歴史性のある景観づくりを行うことや、地域住民が主体となった緑化活動、ゴミの持ち帰りや破損行為の禁止など、保全にかかる意識の普及・啓発活動に取り組んでいくことが必要です。

・ 伝統芸能、伝統行事
 豊かな緑と紺碧の海に囲まれた本県の風土は、各地に独特の人情、風習、芸能等を育んでいます。
 これらは、先人たちが恵まれた自然環境の中で、日々の生活から編み出した素朴でしかも情感あふれる伝統文化であり、また地域らしさの中でコミュニティを育成する行事となっているものも多く、貴重なアメニティ資源として位置づけられます。(「主な年中行事」巻末資料参照)
 今後、これらの民俗文化財をはじめとして、県内各地で古来から継承されている年中行事や祭等の調査・保存に努めていくことが必要です。
 快適さには、すがすがしい空気や清らかな水辺、周囲の静けさや清潔さなどの環境が備わっている必要があります。

水海の田楽・能舞(池田町) 越前万歳(武生市) 水中綱引き(美浜町) あっぽっしゃ(越廼村)

・ 大気汚染
 環境基準が定められている二酸化硫黄、二酸化窒素および一酸化炭素については、いずれも基準を達成しており、良好な大気環境が維持されています。また、光化学オキシダントについては、各観測局で環境基準を超える濃度がみられますが、注意報等の発令レベルには達していません。
 一方、スパイクタイヤの使用による粉塵が環境問題となっていますが、昭和59年12月に「福井県スパイクタイヤ使用自粛要綱」が制定され、県民の積極的対応が求められています。

・ 水質汚濁
 昭和63年度の公共用水域の水質測定結果をみると、人の健康の保護に関する項目については、河川、湖沼、海域ですべて不検出であり、環境基準に適合しています。生活環境の保全に関する項目については、汚濁の代表的な水質指標(河川ではBDD、湖沼および海域ではCOD)でみると、その達成状況は、河川については95%、海域については97%と、一部を除き達成していますが、都市河川の馬渡川、底喰川、狐川においては、かなりの汚濁がみられています。
 また、環境基準が定められている北潟湖と三方五湖については、富栄養化現象のため、達成率が悪い状況となっています。
 一方、地下水質については、一部地域でトリクロロエチレン等が、水道水の暫定水質基準を超えており、その対策が進められるとともに、ゴルフ場の農薬使用による周辺環境等への汚染が懸念されています。
 このような水質汚濁を改善していくには、県、市町村、工場・事業者、住民が一体となって水質浄化の取り組みを進めていくことが必要です。

・ 騒音、振動、悪臭
 騒音、振動、悪臭は感覚公害といわれ、日常生活と深い関わりをもっています。発生源は多種多様にわたり、公害苦情件数でも上位を占めています。
 騒音についての苦情件数が第1位となっていますが、これらの苦情は、社会情勢や生活様式の変化、隣人関係の感情問題もからみ、一人ひとりのモラルにかかわるものも多いと考えられます。
 振動についての苦情は、建築、土木工事にかかわるものが最も多く、
次いで工場・事業場となっています。
 悪臭についての苦情は、製造業にかかわるものが最も多く、次いで畜産関係となっています。悪臭は、原因となる物質が複合している場合が多く、また、その発生源も多様化しています。

・ 地盤沈下
 昭和50年10月に「福井県地盤沈下対策要綱」を制定して、地盤沈下の著しい福井市南部地域(約14ku)を対象地域に指定し、地下水採取者に対して、地下水採取量の報告の徹底、地下水の新規採取の抑制や水利用の節水合理化の推進等、行政指導を強力に進めています。
 一方、監視面では広く面的に地盤の変動状況を把握するため、福井平野の水準測量を昭和50年から実施していますが、昭和63年度の測定結果では年間1p以上の沈下が計測された地点はありません。
 しかし、地下水は限りある環境資源として、融雪用水の節水や工業用水の合理化、水質源涵養林の保全等に、今後とも積極的に取り組んでいく必要があります。

・ 土壌汚染
 農用地から検出される有害物質として、現在、規定されているものは、カドミウム、鋼、ひ素、亜鉛の貴金属です。昭和54年度から「土壌環境基礎調査」により、70地点の観測点を設けて調査していますが、いずれの地域でも汚染は認められていません。

・ 廃棄物等
 一般廃棄物は、ゴミとし尿とに区分されます。ゴミの排出量は経済の安定成長を反映して増加傾向にありますが、その再資源化も着実に進んでいます。
 し尿は、し尿処理施設、浄化槽および公共下水道等により処理されており、計画処理人口の内訳は水洗化人口(公共下水道および浄化槽等人口)51%、非水洗化人口(収集人口および自家処理人口)49%となっています。
 一方、近年、空き缶に代表される散在性ゴミも社会的な問題となっていますが、県民一人ひとりの意識が重要となっています。
 また、本県では現在12基の原子力発電所が稼働していますが、原子力関係法令により厳しく規制されており、放射能による環境安全上の問題のないことが確認されています。

アメニティ・トピックス

(あおぞらの街・星空の街)
 昭和60年度、環境庁が全国一斉に実施した『どこまで見える?あおぞらコンテスト』において、本県では小浜市が『あおぞらの街』として指定され、平成元年度に、あおぞららくがき大会のイベントも開催されました。
 また、昭和62年度に環境庁が実施したスター・ウォッチング『星空の街コンテスト』では、福井市と大野市が『星空の街』として指定されています。


U−2 アメニティづくりに関する県民の意識と活動

(1) 意識調査
 昭和62年に実施された「望ましい環境に関する意識調査」の概要は、次の通りです。
@ 調査の概要
実施期間:昭和62年3月〜4月
対象地域:県下全域
対 象 者 :満20才以上の男女 900名
抽出方法:層化2段無作為抽出方法
調査方法:郵送法
回 収 数 :600名 (回収率67%)

A 住まいの周辺環境に関する満足度

【すがすがしさと静けさ】
県全体での満足度は約80%であり、すがすがしさと静けさに対する意識としては概ね満足していると考えられます。地域別では、漁村や農山村地域の満足度が約90%であるのに対して、商工業地域では約60%と低い状況です。

【自然とのふれあい】
県全体での満足度は約80%であり、自然とのふれあいに対する意識としては概ね満足していると考えられます。地域別では、漁村や農山村地域の満足度が約90%以上であるのに対して、商工業や住居地域では約70%となっています。

【美しさとゆとり】
県全体での満足度は60%未満となっており、上記2項目と比べると満足度は低い結果となっています。地域別では、農山村地域が約70%で最も高く、逆に商工業地域では約40%と低く、格差が大きくなっています。

【環境全般】
県全体での満足度は約80%となっているものの、『やや満足』と答えた人が60%以上を占めています。地域別では漁村や農山村地域jこおける満足度が商工業や住居地域の満足度より少し下まわっていますが、これは利便面に対する不満さによると考えられます。
【満足度:「満足」あるいは「やや満足」と答えた人の占める比率】

【すがすがしさと静けさ】

◆ 空気のきれいさ
・県全体での満足度は約80%となっており、空気のきれいさに対する意識としては概ね満足していると考えられます。
・地域別では、漁村地域の満足度が90%余りで最も高く、また商工業地域は60%ほどで格差が著しくなっています。

◆ 川、池、海のきれいさ
・県全体での満尽度は約60%であり、他の要素と比べるとかなり低いものとなっています。
・地域別の満足度では、それほどの格差は生じていません。

◆ 周辺の静けさ
・県全体での満足度は約80%であり、周辺の静けさに対する意識としては満足していると考えられます。
・しかし、地域別でみると商工業地域における満足度は50%程度であり、約半数の人が不満を感じている状況です。

◆ 必要度
・商工業地域では『空気のきれいさ』に対する必要度が最も高くなっていますが、他の地域では『川、池、海のきれいさ』が60%以上を占めています。

【自然とのふれあい】

◆ 緑とのふれあい
・県全体での満足度は約80%程度であり、緑とのふれあいにおいては概ね満たされていると考えられます。
・地域別では、特に商工業や住居地域では『満足』と答えた人が20%程度と低く、緑とのふれあいが少ないことがうかがえます。

◆ 水や水辺とのふれあい
・県全体での満足度は70%程度であり、他の項目の満足度と比べるとかなり低いものとなっています。
・特に、商工業や住培地域における満足度は50%程度であり、また 商工業地域では『不満』と答えた人が20%近くを占めています。

◆ 野山などの自然の景色
・県全体での満足度は90%近くを占めており、野山などの自然の景色については概ね満たされていると考えられます。

◆ 必要度
・商工業地域では『緑とのふれあい』が50%以上を占めているものの、その他の地域では『水や水辺とのふれあい』が最も高くなっています。

【美しさとゆとり】

◆ 調和のとれた美しさ
・県全体での満足度は60%未満となっており、建築物の統一性の欠如や乱雑な看板などに不満を持っている人が多いようです。

◆ ゆとりのある空間
・県全体での満足度は約60%となっており、地域別では農山村地域が約70%であるのに対して、商工業地域で約40%と低く、格差が著しくなっています。

◆ 清潔さ
・県全体での満足度は50%未満であり、他の項目と比べると最も低くなっています。
・地域別では農山村地域が約60%で最も高いが、商工業地域では30%未満となっており、格差が著しくなっています。

◆ 必要度
・いずれの地域においても『清潔さ』が占める比率が最も高く、特に漁村地域においては60%近くを占めています。

【環薦全般】

◆ 快適性
・快適性に対する満足度は全般的に高く、県全体で80%以上であり、地域別では漁村や農山村地域が90%以上、商工業や住居地域でも約70%となっています。

◆ 安全面
・県全体での満足度は約70%であり、快適面での満足度と比べると少し下回るものの、安全面についても概ね満たされていると考えられます。

◆ 衛生面
・県全体での満足度は約70%であり、衛生面についても概ね満たされていると考えられます。
・地域別では商工業地域が80%以上と最も高く、漁村や農山村地域では70%未満となっています。

◆ 利便面
・県全体での満足度は約60%であり、他の項目と比べると低い状況です。
・地域別では、商工業や住居地域では80%以上と高い満足度を示しているのに対して、漁村地域が約30%、農山村地域が約40%と低い状況です。

B 住まいの周辺で残しておきたいもの(いくつでも選択)
1 自然の緑
2 公園や広場
3 神社、お寺、教会
4 街路樹
5 庭や生け垣の緑
6 河川敷や堤防
7 小川
8 池や沼
9 海辺
10 まち並み
11 のびのびと歩ける道
12 自然の景色
13 遺跡や史跡
14 まつりや伝統行事
15 こまやかな人情
16 親しみのある町名や通りの名まえ


C 住まいの周辺であったらよいと思うもの(いくつでも選択)
1 企園や広場
2 神社やお寺の緑
3 街路樹
4 庭や生け垣
5 河川敷や堤防
6 小川や池
7 親しめる海辺
8 美しいまち並み
9 のぴのぴと歩ける道
10 まつりなどのふるさとの行事
11 親しみのある町名や通りの名まえ


D 住まいの周辺で行われる活動で、参加したり協力したりしようと思うもの(いくつでも選択)
1 近所迷惑になるような騒音は出さない
2 公園、川等の清掃作業等に参加する
3 ゴミ、空き缶等の投げ捨てなどをしない
4 自宅の周囲に花や木を植える
5 合成洗剤やリンを含む洗剤は、なるべく使わない
6 塀や外壁をつくる際に周囲との調和を考える
7 流しに水切りなどをつけて調理くずを流さない
8 街路樹の世話をする
9 スパイクタイヤをなるべく使用しない
10 空き缶の投げ捨てなど環境を汚すような行為をしている人をみかけたら注意をする
11 自然を守るなど環境を良くするための募金に協力する



(2) 地域活動
 アメニティづくりは、子供から高齢者まで、県民一人ひとりが、郷土に誇りと愛着を持って、住み心地の良い環境やうるおいとやすらぎに満ちたまちやむらを創造していくことが必要です。そして、このようなアメニティづくりの主要な担い手は住民と地方公共団体であり、とりわけその地域で生活を営む住民自らが果たすべき役割は大きいと考えられます。
 これまでにも、町内会や公民館を単位とした公園や河川の清掃活動が行われており、環境美化に対する意識や活動への参加と協力の意識が高まりつつあります。
 近年においては、各地域におけるフラワーロードづくりや福井市高木町にみられる連続した生け垣づくりなどの緑化活動、福井宝さがし運動や越前勝山探検隊などのわがまち再発見運動、さらに、これら運動の成果によるまちづくりの推進活動など、地域住民の豊かな発想による積極的な活動が展開されており、住民主体のアメニティづくりの輪がひろがっています。
 このように、県内各地で環境創造、環境美化活動が展開されていますが、全県的な規模と組織で行われているものとしては、以下のようなものがあげられます。
・ 環境週間における“県民総ぐるみ空き缶回収運動”
・ 伸びゆく県民運動推進協議会による地域活動
・ 生活雑排水浄化推進運動
・ 福井デザインフォーラム推進協議会による“福井宝さがし運動活動”

アメニティ・トピックス

(住みたくなる町3600運動)
 伸びゆく福井県民運動推進協議会では、『学びあい ふれあい 創ろう わがまちを』をスローガンとして、福井県下3600区・町内を対象とした、住みたくなる町3600運動を推進しています。これは、昭和62年度から平成6年度を事業期間として、360区・町内のモデル地区を設定し、それぞれの活動に対して助成および情報提供等に努めるもので、指定された区・町内では、学習会をはじめ、交通安全運動や体力づくり、環境美化活動や文化活動が展開されています。

(福井宝さがし運動)
 福井デザインフォーラム推進協議会では「県民が誇りを持って生活設計できる福井の創造」を推進することにより、産官学住の行動ベクトルを一つの方向に向け、人的パワーの結集を図り、地域の活性化を図るという背景のもとに、その第一歩として、平成元年度「宝さがし運動」を起こしました。宝さがしとは、福井県が持ち続けてきたいろいろなことをもう一度身近なところから意識し、発掘し、県民一人ひとりか『誇り』を持つことを目的としています。

(「公徳心の町」宣言)
 観光立地をめざす高浜町は、心の面でも観光客受入れの条件整備を、住民運動として盛り上げようと平成2年3月「公徳心を高める都市宣言」を行いました。心の問題を取りあげた都市宣言は全国的にもユニークな試みです。
 宣言文は、高浜町を「美しい自然と地域の和と人の心を大切にした人間性ゆたかな町にしたい」として、町民の共有財産である郷土を“公徳心を高める都市”に築きあげることを町民の名において宣言するとうたっています。

道路美化活動(南条町) 海岸美化(高浜町) リサイクル運動(鯖江市) 緑の少年隊による緑化活動(宮崎村)
ニシキゴイの放流(福井市) 河川美化活動(坂井町) まちの再発見運動(県内全域) まちの再発見運動(勝山市)