V 環境教育の基本的考え方と取り組み
 V−1 環境教育の基本的考え方
  1 環境教育の趣旨
  2 環境教育の必要性
  3 環境教育の目標と基本方針
  4 環境教育における役割分担
 V−2 環境教育への取り組み
  1 学習や活動の内容
  2 学習や活動の進め方
  3 学習や活動の実践例
  4 学習や活動の支援


V.環境教育の基本的考え方と取り組み


V−1 環境教育の基本的考え方

 都市化が進み、生活利便性や快適性を求めるなかで、都市、生活型公害が増加するとともに、自然とふれ合う機会も失われがちとなっている。
 さらに、フロンガスによるオゾン層の破壊など、地球規模の環境問題に関する情報の量が増加するととに、この問題に我々の日常生活も密接にかかわっていることもあって、県民の環境に対する関心は休息に高まってきた。
 また県民の間では快適環境の創造を求める行動が目立ってきている。
 複雑・多様化の傾向を深めていく環境問題に適切に対応していくうえで、環境教育を推進し、県民一人ひとりが、人間と環境の好ましいかかわり合いについての理解や認識を深め活動していくことは、きわめて重要なことである。


1 環境教育の趣旨

 環境教育は、人間と環境とのかかわりについての認識を深め、責任ある行動がとれるように人々が学習、実践していくことを推進することである。
 県民一人ひとりが環境や環境問題に関心を持ち、人間活動と環境とのかかわりについて正しい知識を持って、環境の保全や自然の保護に配慮した行動をとるとともに、環境に関する活動に積極的に参加することが重要である。


2 環境教育の必要性

(1) 環境に配慮した生活の実践
 都市・生活型公害が目立ってきているが、これらの問題は、人々の日常生活そのものに起因して発生するものであることから、私たち一人ひとりが加害者となり、また被害者にもなるという関係にある。
 このような問題に対応するためには、法令による規制だけでは困難で、県民一人ひとりが人間活動と環境との関係について深い理解を持ち、環境を大切にする意識を高めるとともに、環境問題の発生をもたらしている社会、経済などの状況に目を向け、環境に配慮した生活の実践へと変えていく必要がある。

(2) 快適環境創造への住民協力
 住民の間には、豊かさを確かな実感として持てるような生活の質の向上を求めて、身近なところに豊かな自然環境をとりもどしたり、美しい街づくりを進めるなど、自主的な環境づくりについての関心が高まってきている。
 快適環境づくりは、美しさ、うるおい、やすらぎなどを高めるうえで欠くことのできないものであるが、快適性の評価には人々の間に差異が認められることもあり、広く地域住民の合意を得ながら快適環境づくりに向けての取り組みを進めていくことが求められている。

(3) 人間と自然環境との調和
 日本人の感性は、四季の変化に富んだ美しい自然環境によって影響を受け、自然とのふれ合いのなかで育くまれてきた。
 自然にふれる機会が失われると、自然の偉大さや貴重さ、自然に対する感動、自然を慈しむ心、思いやり等が失われがちとなり、人格形成の面でも懸念される。
 このため、自然界の動植物に親しむ機会を通じて、生命維持の仕組みや、自然の生物が生息していく環境を理解するとともに、その保護に努めていくなかで人間性豊かな人格の形成を育んでいくことが肝要である。


3 環境教育の目的と基本方向

(1) 環境教育の目標
 @ 環境教育についての認識の広がりを求める
 新しく環境教育に取り組むということから、まず環境教育の趣旨、必要性、役割分担、進め方などについて広く県民の理解を得るとともに、環境教育への関心や興味を高めていく必要がある。

 A 環境教育への取り組みの広がりを求める
 環境教育は、これに取り組む人々が増えることによって効果がさらに高まるものと考えられるので、取り組みにあたっては参加の呼びかけを積極的に勧めることが重要である。

 B 環境に配慮した行動の広がりを求める
 環境教育は具体的な活動の実践を期待するものであるので、学習と行動は運動している必要がある。また行動する人々が増加することによって、人間活動が環境に与える負担は軽減される。

 C 快適環境の創造に対する参加の広がりを求める
 環境に配慮した行動は、さらに快適環境の創造へ高めていくことが重要である。また快適性の評価については人々の間に差異があるので、その創造にあたっては積極的に住民の参加を求める必要がある。

(2) 環境教育の基本方向
 @ 学習や活動の実践
 学習や活動は、環境が人間にさまざまな恵みをもたらしていること。人間の行動と環境の間には密接なつながりがあることを認識し、環境に配慮した行動をとるとともにこのような人々の輪を広げていく方向で進められるべきものと考える。
 環境汚染には影響の少ないと思われていた日常生活が、地球規模の環境問題とも密接な関係を有しているなかで、県民一人ひとりが環境を大切にする生活ルールを確立し、実践していくことが重要である。

 A 学習や活動の支援
 県民が行う学習や活動の成果を高めるためには行政などが側面から積極的に支援していかなければならない。
 支援の方向としては、環境に関する情報が学習の基本となるので的確な情報をきめの細かい方法で効果的に提供するように努めなければならない。
 また学習や活動は、これに取り組む人々が増加していくことによって活発なものとなりその成果も高まるものと考えられるので、環境教育についての普及啓発活動を進める一方で、団体づくりを促進し、学習の場を整備するなどして、広く県民の間に環境教育が取り組まれていくような方向で支援を進める必要がある。

 B 実践と支援の関係
 学習や活動の成果は、これに取り組む主体相互の情報交換や交流を深めることによって高まっていくものと考えられる。
 また支援については、県と市町村とか教育関連部門などの相互の連携を深めることによってその効果を高めることができる。
 さらに実践と支援との関係を密にすることによって環境教育の効果が高まっていくものと期待される。
 したがって環境教育は、これに取り組むさまざまな主体相互の連絡を深めていくような方向で推進されることが重要である。


4 環境教育における役割分担

 環境教育を推進するにあたっては、住民、企業、民間団体、学校、行政、報道機関など多様な主体が連携をとりつつ多角的に展開していくことが肝要である。

(1) 住民の役割
 住民は環境教育推進の「主役」として積極的に取り組んでいくことが期待される。
 環境に関する学習や活動の成果は、単にその人々や団体の自己啓発にとどまらず、広く県民の環境保全に対する意識の高揚に果たす役割も大きいので、この面でも積極的に機能していくことが求められる。
 また活動の効果を高めるため、民間団体や行政に対する積極的な働きかけを行うことも重要である。

(2) 企業の役割
 企業は地域社会の一員として、環境の保全や快適な環境の創造に関しての役割を担うことが重要であると考えられるので、主体的に、あるいは地域住民と一体となって、環境教育を推進していくことが期待される。
 また、企業がその内部において環境教育を推進することは、企業に対する社会的陽性の観点からも極めて重要なことと思われる。

(3) 民間団体の役割
 民間団体は、県レベル、地域レベルにおいて環境教育の「主役」として、また情報の提供や活動参加の呼びかけなどを通じ、環境教育の「支援者」として大きな役割を果たしていくことが期待される。
 また民間団体は、地域性や主体性を生かすうえで望ましい役割を担うことが期待されるので、住民、企業、民間団体相互の連携を強めながら環境教育を推進していくことが求められる。

(4) 学校の役割
 環境教育の推進に学校が果たす役割は大きい。学校教育のなかで環境教育が体系化されていない状況にあって、これに取り組むうえでの制約が多いことは予想されるものの、環境教育は比較的低年齢層から始めるのが効果的であると考えられるので、さらに積極的な取り組みが展開されることを期待したい。
 また大学などの高等教育機関においては、環境問題や環境教育に関する教育、研究を通じて住民、企業、学校、行政などが取り組む環境教育の「支援者」としての役割を果たしていくことが求められる。

(5) 行政の役割
 行政は住民各層が行う環境に関する学習に必要な情報や学習の機会を提供するとともに、学習や実践活動が活発化するための条件整備を図るなど、側面からの支援措置を講じていく必要がある。
 また学校に対しては、環境教育に必要な情報や教材を提供するほか、その求めに応じて適切な支援を行うとともに、企業に対しては環境教育推進に関する情報の提供や協力の要請を行っていく必要があります。
 さらに行政は環境教育の実態を把握し、これを広く情報として提供するなど環境教育推進の「調整役」としての役割を果たしていくことが大切である。

(6) マスメディアの役割
 新聞、テレビ、ラジオ等のマスメディアによる環境保全についての取り組みは、広く県民の意識を高揚するために大きく貢献しており、今後とも環境教育の推進役として主体的な役割が期待される。


V−2 環境教育への取り組み

 環境教育への取り組みにあたっては「環境教育の基本的考え方」に沿って、学習や活動の成果を高めていく必要がある。
 環境教育の目標、基本的方向や役割分担を踏まえて、学習や活動、支援を進めるとともに、取り組みの方法は多種・多様に及ぶので、工夫を重ねて効果的に進められるようにつとめていかなければならない。


1 学習や活動の内容

 学習の対象となる環境は、大気、水、動植物、森林などの自然環境、道路、河川、公園、まちの景観などの社会的、文化的環境など多種多様で範囲が広い。またこれらは、複雑に影響しあいながら総合体としての環境を形づくっている。
 環境は人間にさまざまな恵みをもたらすとともに、人間活動に影響を受けやすいという性質を有している。
 こうしたことから学習の内容としては、環境の状況、環境が資源として有する価値、環境の問題などが考えられる。
 これらの学習内容は、生活、文化、経済、科学などとらえ方の違いによって幅の広いものとなってくる。
 環境教育においては「人間と環境の好ましいかかわり合い」に視点をおくとともに環境の問題に関しては、これらの発生をもたらしている社会、経済などの背景に目を向けた内容としていくことが望ましい。
学習や活動の内容の例としては次のようなものが考えられる。

〈自然環境が人間にもたらしている恩恵を調べ、自然環境の重要性を認識する〉
 ・大気……動植物の呼吸、物の燃焼、地球の保護など
 ・水 ……炊事、洗濯などの日常生活、動植物の成長など
 ・森林……水資源のかん養、国土の保全、森林資源の供給など

〈環境の現在の状況と移りかわりを調べてみる〉
 ・大気汚染、水質汚濁などの公害の状況
 ・森林や貴重な野生生物などの自然環境の状況
 ・道路、河川などの公共施設やまちの景観

〈環境問題を調べ、環境保全の重要性を認識する〉
 ・生活雑排水、近隣騒音、空き缶の散乱、ごみの処理などの生活型公害
 ・湖沼や河川の水質汚濁、スパイクタイヤによる粉じんなどの公害
 ・自然環境や景観の保全、貴重な野生生物の保護
 ・酸性雨、オゾン層の破壊、温暖化など地球規模の環境問題

〈環境の保全について調べ、対策への理解や認識を深める〉
 ・行政における対策
 ・工場・事業場における対策
 ・日常生活でできる対策

〈快適環境の創造について考え、快適環境創造への理解や認識を深める〉
 ・地域のよさや地域らしさ
 ・快適環境創造の事例
 ・快適環境創造への県民の役割と参加の方法


2 学習や活動の進め方

 学習や活動の成果を高めるためには、的確な情報を正しく理解することが基本となる。収集した情報を選別し、正しい情報として学習に活用する必要があり、このためには、情報の提供先に確認するとか、助言者や専門機関を活用することなどが重要である。
 また仲間との共同学習や他のグループなどとの情報交換、交流を深めることも学習成果を高めるものと考えられる。

学習や活動を具体的に進める方法としては次のようなものが考えられる。

〈図書、資料や情報媒体によるもの〉
 ・環境に関する雑誌、図書など
 ・国、県などの環境白書、行政資料、広報資料など
 ・教育、研究機関の報告書
 ・企業のパンフレットや製品カタログなど
 ・新聞、テレビ、ラジオなどのマスメディア

〈県、市町村、団体などの講習会、展示会などによるもの〉
 ・野鳥とのふれあいの集い、自然観察会、スターウォッチング、消費生活展、環境パネル展など

〈施設などの見学や利用によるもの〉
 ・自然保護センター(平成2年7月中旬オープン)、少年自然の家など
 ・ごみ焼却場、汚水処理場、浄水場などの生活環境施設
 ・公害センター、農業試験場、グリーンセンター、水産試験場などの試験・研究機関
 ・公民館、図書館、博物館、資料館などの社会教育施設
 ・工場や給食センターなどの事業場

〈野外活動などの体験によるもの〉
 ・自然公園、森林、河川での自然観察、探鳥会、オリエンテーリングなど

〈実践活動によるもの〉
 ・環境美化・清掃活動、不用品の分別回収、リサイクル運動、花いっぱい運動、自然保護活動、魚の放流、河川の愛護活動、緑化活動など


3 学習や活動の実践例

 学習や活動の進め方はきわめて多様であるので、大気、水、自然、廃棄物、消費生活を例に取って実践例として示す異にした。

(1) 大気の状況
 @ 学習や活動の内容
 〈大気が果たしている役割を調べ、大気の重要性を認識する〉
  ・生物の呼吸や物の燃焼、生物や地球の保護に果たす役割
  ・さわやかさ、おいしさなど、人の感覚と大気の状態の関係

 〈大気汚染の現在の状況とこれまでの変化を調べてみる〉
  ・汚染物質の大気中の濃度と環境基準〈p41参照〉
  ・汚染物質の発生源や発生のメカニズム

 〈大気汚染が及ぼす影響を調べ、大気環境保全の重要性を認識する〉
  ・汚染物質ごとの環境や動植物に及ぼす影響
  ・地球環境に及ぼす影響

 〈大気汚染の防止について調べ、防止対策への理解や認識を深める〉
  ・法律や条例による対策
  ・工場・事業場における対策
  ・日常生活でできる対策

 〈大気汚染の環境問題を調べ、環境保全の重要性を認識する。〉
  ・我が国における大気汚染問題
  ・酸性雨や温暖化などの地球規模の環境問題

 A 学習や活動の進め方
 〈観察や体験によるもの〉
  ・星の観察 …星の見え具合を調べて空のきれいさを知る。旅行先での観察と比べてみることも興味深い。
  ・視界の調査 …ビルの屋上などからまちをながめて、どこまで見えるかを観察し大気の状況を知る。
  ・植物の観察 …アサガオやホウレンソウなど汚染物質に反応しやすい植物を利用して被害の出かたを観察する。(p41参照)
  ・大気汚染調査 …フィルターバッジ〈簡易測定法〉を使って身近な大気の状況を調べる。
検知管を使って自動車などの排気ガス濃度を調べる。
  ・大気浄化調査 …樹木の呼吸作用による大気浄化能力度を調べる。

 〈見学によるもの〉
  ・工場、事業場の見学…工場やごみ焼却場などを見学し汚染物質の除去やその処理について学習する。
  ・公害センターの見学…県の公害センターなどを見学し大気汚染の状況や大気環境保全対策について学習する。

大気汚染 :大気中にいろいろな汚染物質があって、そのままでは人の健康や生活環境に良くない影響が生じてくるような状態をいう。
 主な汚染物質として、いおう酸化物、窒素酸化物、一酸化炭素、浮遊粒子状物質、光化学オキシダントがある。
環境基準 :人の健康の保護や生活環境の保全のうえで、維持されることが望ましい環境の状態を定めた基準である。
汚染物質に比較的弱い植物  アサガオ、ホウレンソウ、レタス、ソバ、ミツバなど
 アカマツ、スギ、シイ、ケヤキ、ザクロ、クリなど

(2) 水質の状況
 @ 学習や活動の内容
 〈水がもたらすさまざまな恩恵を調べ、水の重要性を認識する〉
  ・炊事や洗濯など日常生活の面での機能
  ・農業、工業、発電など産業活動や水質資源の成長などの機能
  ・レクリエーションや憩いの場としての機能

 〈水質汚濁の現在の状況と、これまでの変化を調べてみる〉
  ・公共用水質(川、湖、海)の水質汚濁と環境基準(p43参照)
  ・汚濁物質の発生源

 〈水質汚濁が及ぼす影響を調べ、水質保全の重要性を認識する〉
  ・汚濁物質の人間や動植物への影響
  ・農林水産業や工業など産業に与える影響
  ・レクリエーションへの影響

 〈水質汚濁の防止について調べ、防止対策への理解や認識を深める〉
  ・法律や条例による対策
  ・工場・事業場における対策
  ・下水道等、生活環境施設の整備と維持管理
  ・農・畜産業における対策
  ・日常生活でできる対策

 〈水質汚濁の環境問題を調べ、水質保全の重要性を認識する〉
  ・生活雑排水による河川や湖の水質汚濁
  ・水質汚濁による水道、農業、漁業の生涯
  ・水俣病やイタイタイ病などの健康被害

 A 学習や活動の進め方
 〈観察や体験によるもの〉
  ・感覚による調査 …水の色、におい、透明度、温度などを調べて、水の汚れを知る。
  ・水生生物調査 …川や池の魚、昆虫、プランクトン、水生植物などを調べて水の汚れを知る。(p43参照)

 〈講習会、展示会によるもの〉
  ・石けんづくり講習会 …水質汚濁につながるてんぷら油など食用廃油を使った石けんづくりを進める。
  ・河川生物講習会 …水生生物などにより水の汚れを知る。
  ・消費生活展 …消費生活のあり方についての展示会

 〈活動の参加によるもの〉
  ・町内の清掃、河川・公園の清掃、廃品回収、不用品の交換会などに参加して水質汚濁について考えたり話し合いをする。

 〈買物や台所で……〉
  ・商品や包装などと水の関係について考えてみる。
  ・台所、風呂などから流れ出る水の浄化について考える。

 〈見学によるもの〉
  ・工場、事業場の見学 …給食センター、浄水場、汚水処理場などを見学し水を浄化する方法などを学習するとともに、これに取り組む人々の様子を知る。
  ・公害センターなどの見学 …県の公害センターなどを見学し、水質汚濁の状況や水質保全対策などを学習する。
  ・試験、研究機関の見学 …農業試験場、水質試験場などを見学し、産業と水の関係を学習する。

水質汚濁 :河川、湖沼、海域の水や地下水に有害な物質が含まれたり、水の状態が悪化したりして、人の健康や生活環境によくない影響が生じてくるような状態をいう。
環境基準 :公共用水域の水質について達成維持することが望ましい基準で、健康項目と生活環境項目がある。
 環境項目は人の健康の保護に関する基準で、カドミウム、シアンなど9項目について河川、湖沼、海域に一津に定められている。
 生活環境項目は生活環境の保全に関する項目で代表的なものとしてBOD、CODなどが定められている。
BOD (生物化学的酸素要求量):水中の有機物が、微生物の働きによって分解されるときに消費される酸素の量で、河川の有機汚濁を測る代表的な指標である。
COD (化学的酸素要求量):水中の有機物を酸素剤で化学的に分解した際に消費される酸素の量で、湖沼、海域の有機汚濁を測る代表的な指標である。
水生生物 :(きれいな水)トビケラ、カゲロウ、サワガニ、カワニナ、マルタニシ、ヤマメ、イワナ、アユ、サケ、マスなど
 (よごれた水)ユスリカ、ミズムシ、サカマキガイ、ヒメタニシ、コイ、フナ、ナマズなど

(3) 自然(森林)の状況
 @ 学習や活動の内容
 〈森林がもっている価値を調べ、その重要性を認識する〉(p46参照)
  ・治山、治水、防風、防雪、水資源のかん養、大気や水の浄化など
  ・木材、パルプ、きのこ、竹材など林産物の生産
  ・レクリェーション、野生動物の生息、自然環境の宝庫

 〈森林の現在の状況とこれまでの変化を調べてみる〉
  ・森林の面積、造林面積、樹種別森林面積
  ・木材やきのこなどの林産物生産高、消費量、輸出入の状況
  ・森林に生息する昆虫、野鳥、けものなどの状況

 〈森林荒廃が及ぼす影響を調べ、森林保全の重要性を認識する〉
  ・国土や環境に及ぼす影響
  ・砂漠化などの地球環境への影響

 〈森林の保全に取り組む人々の様子や保全対策を調べ、森林保全への理解や認識を深める〉
  ・山村の入口や年齢構成、生活などについての現状とこれまでの変化
  ・造林、保育、収穫の方法や労働力の状況
  ・森林法、自然環境保全法、自然公園法、都市緑地保全法などの内容

 〈森林保全のために配慮すべきことがらや活動について考える〉
  ・住宅地の樹木をめぐるトラブルの事例や解決方法を調べてみる。
  ・森林保全、緑地推進、自然保護などに関する活動の状況

 A 学習や活動の進め方
 〈学習会や活動の参加によるもの〉
  ・みどりの週間(4/23〜29)みどりの日(4/29)木の日(10/8)の各種行事
  ・グリーンセンターのみどりの教室、越前若狭の産業展など
  ・自然観察会、野鳥とのふれあいの集い、バードウォッチングなど
  ・自然保護センターの観察会、自然教室、講習会など

 〈森林や自然公園に手向いて……〉
  ・木の名前、樹齢、種類ごとの分布状況を調べる。
  ・きのこ、昆虫、野鳥など野生生物の名前や生息している様子を調べる。
  ・林業に従事している人々の仕事の様子を見る。
  ・森林浴を楽しみ自然の恩恵にふれる。(p46参照)

 〈まちを歩いて……〉
  ・街路樹や公園のみどりは、やすらぎとか景観の面でどのような状況か
  ・樹木や草花に寄りつく昆虫の様子

 〈見学によるもの〉
  ・グリーンセンターの見学 …展示温室、植物園、庭木展示園、展示ホールなどの見学、緑の相談所での相談などにより緑化の重要性や栽培方法などについて学習する。
  ・自然保護センターの見学 …大展示室、Q&Aコーナー、どっきりコーナー、自然観察室、自然観察の森などを見学し、自然を科学的に学習する。また、プラネタリウムや全国屈指の天体望遠鏡による観察を楽しむこともできる。〈平成2年7月中旬オープン〉

森林面積: 315.157ha(県土面積の約75%)
 民有林 274.645ha(森林面積の約87%)
 国有林 40.512ha(    〃   13%)

主な樹種: 針葉樹…スギ、ヒノキ、マツ
広葉樹…コナラ、ミズナラ、カエデ、ブナ、クリ、カシ、シデ

林産物の状況: 林産物として木材をはじめ、きのこ類、山菜、薬草、樹実類等が産出される。
用     材…スギ、ヒノキ、マツ、ケヤキなど
特用林産物…シイタケ、ナメコ、エノキタケ、ヒラタケ、マイタケ、マツタケなど
山菜 、薬草…ワラビ、ゼンマイ、ワサビ、オウレン、キハダなど
樹     実…クリ、ギンナン、クルミなど

保安林 :森林の持つ各種の機能を高度に発揮させ、保安で豊かな県土を将来とも維持造成するため、森林を目的別に保安林として指定する。

県内では次の8種類の保安林が指定されている。
水源かん養保安林
土砂崩壊防備保安林
なだれ防止保安林
保 健 保 安 林
土砂流出防備保安林
潮 害 防 備 保 安 林
魚 つ き 保 安 林
風  致  保  安  林

森林浴 :樹木の葉や幹から発散する香り、これはフィトンチッドといわれ、揮発性の物質で人体に有効な動きがあるといわれている。
 森林の香気を浴び適度な運動などによって生活のリズムとバランスを保ち心身ともにリフレッシュするのが森林浴である。

(4) 廃棄物の状況
 @ 学習や活動の内容
 〈廃棄物の現状と処理を調べ、適正な処理の重要性を認識する〉(p48参照)
  ・廃棄物の種類や排出量
  ・廃棄物の発生現と種類別の処理方法
  ・廃棄物の処理に携わる人々の仕事の様子とそれに要する費用

 〈廃棄物処理施設の機能を調べ、環境や生活に及ぼす影響を理解する〉
  ・処理施設の種類とその仕組み
  ・処理施設が環境に及ぼす影響とその対策
  ・処理施設が生活に与える恩恵
  ・処理施設の整備と管理および問題点

 〈排出の抑制、資源化・有効利用について調べ、その必要性を認識する〉
  ・再生利用ができるもの、またその利用法法
  ・行政における対策
  ・製造業、販売業における対策
  ・家庭における対策

 〈不法投棄や散乱の防止について調べ、環境保全の重要性を認識する〉
  ・環境汚染の問題
  ・行政における対策
  ・製造業、販売業者の意識と行動
  ・一人ひとりの意識と行動

 〈し尿・生活廃水処理の方法を調べ、水質汚濁防止の重要性を認識する〉
  ・下水道、浄化槽の仕組み
  ・行政における対策
  ・日常生活でできる対策

 A 学習や活動の進め方
 〈体験、観察によるもの〉
  ・廃棄物の集積場などを見て正しいごみの出し方について学習する。
  ・道路、河川、公園などでの廃棄物の散乱状況を調べてみる。
  ・廃棄物がどのように処理されていくか、収集から最終処分までを追跡し、その処理の流れを学習する。

 〈活動の参加によるもの〉
  ・道路、河川、公園等の清掃、廃品回収、不用品交換会等に参加し、廃業物問題に学習する。

 〈家庭のなかで……〉
  ・日常生活からどのような不用品がどのくらい排出されるか、またその中に有効利用できるものはないかなど考えてみる。
  ・日常の買い物の中で、廃棄物が増加する原因となる過剰包装紙や使い捨て容器等について考えてみる。
  ・トイレ、台所、風呂などからの生活廃水が、川や海などの水質汚濁に及ぼす影響を考える。

 〈見学によるもの〉
  ・ごみ焼却場や埋立処分場を見学し、その処分について学習する。
  ・廃棄物の再資源化や有効利用をしている事務所や工場等を見学する。
廃棄物: ごみ、汚でい、廃油などの汚物または不要物であって固形状または液状のものをいい、一般廃棄物と産業廃棄物に区別される。
一般廃棄物: 日常生活に伴って発生するごみとし尿のことをいい、その処理は主として市町村で行われている。
産業廃棄物: 産業活動に伴って発生する廃棄物のうち汚でい、燃えがら、廃油、廃プラスチック類などの19種類の廃棄物をいい、その処理は主として排出事業者やその委託を受けた処理業者によって行われている。
廃棄物処理施設: 廃棄物を破砕や焼却する中間処理施設、焼却灰や不燃物などを埋め立てる査収処分場、資源化するための施設があり、構造や維持管理について守るべき基準が定められている。
分別収集: 処理方法の違いによって廃棄物を分類して収集することで、燃えるもの、燃えないもの、粗大ごみ、資源ごみ等に分けられ、さらに、紙、缶類、びん類等細かく分ける場合もある。

(5) 消費生活と環境のかかわり
 @ 学習や活動の内容
 〈消費生活が環境に及ぼす影響を調べてみる〉
  ・台所などからの生活雑排水が河川や湖沼の水質に及ぼす影響
  ・家庭から出されるごみの処理が大気や水質に及ぼす影響
  ・自動車などが大気や生活上の環境に及ぼす影響
  ・日常生活が地球環境に及ぼしている影響

 〈消費生活の変化と環境汚染の関係を調べてみる〉
  ・食事、炊事など食生活の向上
  ・暖、冷房などエネルギー使用量
  ・炊事、洗たくなど水の使用量
  ・販売方法の変化や消費の拡大に伴うごみの増加

 〈環境に配慮した生活の工夫を考える〉
  ・生活雑排水をできるだけ家庭内で浄化する工夫(p51参照)
  ・水やエネルギーのむだをなくす工夫
  ・不用品の交換など資源再利用の工夫
  ・ごみを減らす工夫
  ・環境に配慮した商品を選択するなど消費での工夫

 〈日常生活に伴う環境問題を調べて少なくするための方法を考える〉
  ・依然としてあとを絶たない空き缶、空きびんなどの散乱
  ・生活雑排水による河川や湖沼の水質汚濁
  ・ごみ出しの一部不徹底や犬、猫などの飼育に伴うペット公害
    日常生活に伴う環境問題は、一人ひとりの小さな行為によってひき起こされている。これらを少なくしていくにはどうしたらよいのだろうか。

 A 学習や活動の進め方
 〈講習会、展示会の参加によるもの〉
  ・石けんづくり講習会…水質汚濁につながるてんぷら油など食用廃油を使った石けんづくり
  ・消費生活展…消費生活のあり方についての展示会
  ・公民館などで行われる講座や学級など
  ・その他、県、市町村、団体などが実施する講演会、研修会、展示会など

 〈活動の参加によるもの〉
  ・町内の清掃、河川・公園の清掃、花いっぱい運動など
  ・消費生活、資源リサイクル活動など

 〈家庭のなかで……〉
  ・日用品や電気器具等は正しく使っているだろうか。
  ・台所やふろなどの排水口からごみを流さない工夫を考える。
  ・台所のごみなどを見てごみを減らす工夫を考える。
  ・環境に配慮した生活の工夫について家庭で話し合いをする。

 〈買物のなかで……〉
  ・環境に配慮した商品(エコマーク商品など)について考える。
  ・ラベルや説明書などによって商品の特徴をよく調べる。
  ・包装のあり方について考える。

 (見学によるもの)
  ・工場、事業上の見学 …工場、給食センター、浄水場、下水処理場、廃棄物処理場などを見学し、大気や水を浄化するための方法や、これに取り組む人々の様子を知る。
  ・公害センターなどの見学 …県の公害センターや生活科学センターなどを見学し、日常生活と環境との関係について学習する。

家庭でできる生活雑排水対策

台所での対策:
  ・食べ残しのないように必要な量だけ調理する。
  ・調理くずや食べ残しは流し台から流さないようにして、生ごみとして処分する。
  ・食器や鍋の汚れは紙などで拭き取ってから洗う。
  ・不用の食用油は紙に吸わせてごみとして出すか、石けんとして再利用する。
  ・米のとぎ汁等は花木へのまき水に利用する。

洗濯時の対策:
  ・石けんやリンを含まない洗剤を使用する。
  ・洗剤は適正量を確かめて計量カップで量って使用する。

風呂での対策:
  ・風呂の残り湯は洗濯や掃除に再利用する。

4 学習や活動の支援
 学習や活動の支援にあたっては、適格な情報を効果的かつ効率的に提供していく必要がある。
 情報の効果的な提供を集めるためには、学習や活動の目的、内容などを考慮して、場面に応じたきめの細かい配慮が求められるとともに、情報の効率的な提供を進めるためには、情報のデータベース化を推進していくことが重要である。
 また、環境教育に取り組む人々の輪を広げるためには、地域の中心となるリーダーを育成するとともに、団体に対する支援を強化する必要がある。
 さらに、学習や活動に取り組む人たちが交流を深めたり、学習をする場の整備を進めなければならない。

具体的な支援の方法としては、次のようなものが考えられる。

情報の提供
 ・定期刊行物、パンフレット、広報誌の配布など
 ・VTRや副読本などの教材の提供
 ・新聞、テレビ、ラジオなどマスメディアの積極的な活用
 ・展示会、講演会、見学会などの開催
 ・県民、市町村民総グルミ運動の展開

指導者の育成
 ・指導者の発掘、確保
 ・指導者に対する情報の提供
 ・指導者研修会や交流会の開催
 ・講師、、助言者紹介のための人材バンクの整備
 ・センターの設置とモニターの研修

活動団体に対する支援
 ・情報の提供
 ・リーダーに対する講座の開催
 ・人材の紹介、活動の場の提供
 ・活動内容の紹介
 ・環境保全活動などへの参加の呼びかけ

学習や交流の拠点の整備
 ・環境教育の中心となる拠点の整備
 ・地域における環境教育の中心となる拠点の整備
 ・公民館、図書館、博物館、資料館などの社会教育施設での情報コーナーの設置
 ・社会教育施設での講座の開設

情報の整備
 ・情報に関する情報の収集や資料の開発、蓄積
 ・情報の加工やデータベース化による情報の効率的利用の促進
 ・情報ネットワークの整備による情報の利用拡大

推進体制の整備
 ・環境教育推進のための組合の設置
 ・県、市町村、民間の相互の連携強化のための定期的会議の設置
 ・環境保全基金事業、自然保護基金事業、みどりと水の森林基金事業の活用