はじめに

 20世紀の「大量生産・大量消費・大量廃棄の社会」は、資源の枯渇や地球温暖化、オゾン層破壊など地球規模の環境問題を引き起こしました。そして現在、大量の廃棄物の処理に伴い、環境汚染、不法投棄、処分場のひっ迫など社会経済システムの行き詰まりが顕在化しています。
 21世紀は、「環境の世紀」といわれており、環境への負荷をできる限り少なくし、自然と共生しながら、資源・エネルギーを有効に活用する「持続可能な循環型の社会」へ転換することが求められています。全ての人々、事業者、行政が、現在の社会の構造、生活のあり方と価値観を環境の視点から見直し、自ら果たすべき役割に責任を持たなければなりません。
 循環型社会を早期に構築するために最も効果的な対応としては、廃棄物を極力出さないことです。しかしながら、発生抑制に向けて消費行動や生産活動を変えるためには、新たな制度、新たな技術、新たな事業など新たな社会システムの構築が必要になります。
 県民、事業者、行政がそれぞれの役割を分担し、相互協力のもと、廃棄物の発生抑制、リサイクルを推進する意識の醸成が不可欠になります。
 次世代の環境への負荷をできるだけ少なくするため、今以上に廃棄物処理技術やリサイクル技術を持つ環境関連産業を創造し振興することもあわせて必要です。
 平成14年1月4日に宣言した「環境立県 福井」において掲げた5つの重点的分野のうち、本計画では次の3つの分野について県民総ぐるみで環境と調和した循環型の社会づくりに積極的に取り組んでいきます。

 ○環境意識の醸成
 県民、事業者、行政が、「廃棄物を増やさない」、「廃棄物を安全に処理する」との共通意識を持ってそれぞれの責任を果たし、役割分担や相互協力のもと、発生抑制、リサイクル、適正処理に取り組む。
 ○資源の循環
 これまでの生活のあり方や価値観を見直し、廃棄物を不用物としないよう、生産、流通、消費、廃棄の各段階で、資源化に取り組む。
 ○環境関連産業の創造と振興
 廃棄物を安全かつ経済的に有効な資源として活用できるよう、環境関連技術を研究開発し、企業への浸透を図り、持続可能な循環型社会を目指す。

 県民、事業者の皆さんには、それぞれの立場で積極的に計画の目標実現に向けて取り組んでいただきますようお願いします。
 最後に、この計画策定に当たり、ご尽力をいただきました福井県廃棄物処理計画策定委員会の各委員をはじめ、貴重なご意見をいただきました県民の方々に厚くお礼申し上げます。

    平成14年3月
福井県知事 栗田 幸雄




第1章 計画策定の趣旨


1 福井県廃棄物処理計画策定の趣旨

ア これまでの廃棄物処理施策の展開
 公害問題の高まりを背景に、昭和45年に「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(以下「廃棄物処理法」という。)等関係法令が整備され、高度経済成長にあわせた大量生産、大量消費、大量廃棄社会のもとで、いかに廃棄物を適正に処理するかに重点を置き、本格的な廃棄物行政が始まった。
 本県では昭和48年に「福井県産業廃棄物処理計画」(以下「産廃計画」という。)を策定し、その中で県内初の中間処理施設および最終処分場からなる「総合産業廃棄物処理施設」を公共関与により整備することとし、昭和57年に財団法人福井県産業廃棄物処理公社として開設した。
 平成に入り、これまでの高度経済成長にかげりが出るようになったこともあり、逓増傾向にあった廃棄物を減量化し、再生利用を図ることに重点を置かれるようになった。
 本県では、平成4年度に一般廃棄物については「廃棄物減量化・再生利用推進計画」の策定、産業廃棄物については「第4次産廃計画」の策定を行い、平成6年に「産業廃棄物減量化指導員制度」の創設、平成8年に「福井県産業廃棄物等適正処理指導要綱」(以下「指導要綱」という。)の制定を行ってきた。
 その後、ダイオキシン問題や最終処分場の整備が困難になりつつある状況から、平成10年に「福井県ごみ処理広域化計画」および「第5次産廃計画」を策定し、これまでの施策の一層の推進を図った。
 さらに、「資源循環型社会」を早期に構築するため、他県に先駆け、一般廃棄物について、「福井県ごみ減量化・リサイクル日本一推進計画」(以下「日本一計画」という。)を平成11年に策定し、ごみの減量化とリサイクルの推進に向けて、総合的に諸施策を展開してきた。

イ 廃棄物対策をめぐる情勢の変化
 廃棄物問題は、最終処分場の残余容量のひっ迫および住民の不信感の増大、不法投棄の悪質化などによりますます困難化しており、廃棄物処理中心の対策ではなく、製造、流通、消費、廃棄の各段階での総合的な取組みによるリサイクルの推進が必要となってきた。
 限りある天然資源の消費を抑制し、環境への負荷を低減する循環型社会の形成を目指すため、平成12年に「循環型社会形成推進基本法」をはじめ建設、食品リサイクル法など関連法(以下「循環諸法」という。)が成立した。
 各都道府県は、国の定める「廃棄物の減量その他その適正な処理に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本的な方針」(以下「国の基本方針」という。)に即して、県域内の廃棄物の減量その他その適正な処理に関する計画(廃棄物処理計画)を策定することが廃棄物処理法で定められた。
 本計画は、「第5次産廃計画」および「日本一計画」を継承し、短期的にはこれまでの福井県独自の廃棄物・リサイクル対策を一層促進するとともに、中期的にはリサイクルの推進を図って最終処分量を減らすことで環境への負荷を減らし、長期的には廃棄物の発生を抑制することを基本とする。(図1「循環型社会」のあり方参照


図1 「循環型社会」のあり方



2 本計画と他の廃棄物・リサイクル計画との体系

 本計画は、廃棄物処理法をはじめ循環諸法に基づき定められた他の計画と連携して、施策や目標を調整しながら取り組む。(図2 計画の体系図参照)


3 計画の期間

 本計画は、平成14年度から平成18年度までの5年間を計画期間とし、目標年度は国の基本方針に即し平成22年度(2010年度)に設定する。
 なお、この目標値については、中間目標年度を平成17年度(2005年度)とし、その達成状況等を踏まえて平成18年度に見直しを行う。


図2 廃棄物の適正処理に関する計画的取組の体系







第2章 廃棄物の現状と排出抑制・リサイクルの目標


1 福井県における廃棄物の発生および処理の現状

 一般廃棄物については、全国でも上位にある「少ない排出量」と「高いリサイクル率」を誇っている。
 産業廃棄物については、国の基本方針で示された平成22年度目標値を10年早く達成している。

表1 国の基本方針で示されたリサイクルの推進と最終処分の削減の目標値
 一般廃棄物 

平成9年度
(平成12年度)注2 
  平成17年度      平成22年度  
1人1日当たり
排出量 注1
1,112g
 (975g)
1,070g 1,028g
リサイクル率 11%
 (16.8%)
20% 24%
リサイクル量を倍増
最終処分率 23%
 (16.4%)
15% 13%
最終処分量を半減

 産業廃棄物

平成9年度
(平成12年度)注2 
  平成17年度      平成22年度
発生量 注3 100 107 112
リサイクル率 41%
 (47.3%)
47% 47%
最終処分率 16%
 (4.7%)
8% 7%
最終処分量を半減
注1 国の基本方針では、総排出量で示されているが、福井県と比較するため、1人1日当たり排出量で示している。なお、将来の人口は平成9年度と同じとして計算している。
注2 ( )は福井県の平成12年度実績値。
注3 発生量は、平成9年度を100とした場合の指数。



2 一般廃棄物の排出および処理の現状

ア 一般廃棄物の排出状況
 平成12年度における県内の一般廃棄物の総排出量(市町村のごみ処理施設で処理される量)は約29万8千トンであり、平成11年度(約28万5千トン)と比較して約1万3千トン増加した。総排出量は、平成4年度以降概ね横ばいで推移してきたが、平成10年度以降増加に転じている。
 これは、ダイオキシン類対策のための家庭用小型ごみ焼却炉の廃止の影響が考えられ、さらに平成12年度の急増は、平成13年度4月からの家電リサイクル法の施行を前に、市町村の粗大ごみ処理施設に、廃家電が殺到したためと考えられる。
 福井県は、共働き率が高く、また車社会であるため、まとめ買いや惣菜の購入の割合が高く、ごみ排出量の増加の潜在的要因となっていると考えられる。
 また、中小企業の割合が多く、事業系ごみが市町村で処理される割合が高く、一人当たりごみ排出量を押し上げている。
 一般廃棄物の総排出量を家庭から排出される生活系ごみと、事業所から排出される事業系ごみに区分すると、生活系ごみは208千トン(69.8%)、事業系ごみ90千トン(30.2%)となり、この割合はここ数年ほぼ同じとなっている。

図3 福井県の一般廃棄物排出量の年度別推移


イ 一般廃棄物の排出抑制、リサイクルの状況
 本県のリサイクル率は上昇傾向にあり、平成12年度は前年比0.3ポイント増加し、16.8%となっている。
 なお、本県のリサイクル率は全国的にみて高く、平成11年度で全国8位である。これは、取組品目の違いはあるものの、全市町村で分別収集が行われており、県民のリサイクルについての意識が高いためと考えられる。
 事業系ごみの排出抑制については、事業所内での発生量177千トンのうち、19千トンが分別、焼却などで自家処理され、6千トンが再生利用されている。
 自家処理の焼却残さを含め、66千トンが処理業者や再生業者に委託処理され、うち7割がリサイクルされている。

図4


 市町村の粗大ごみ処理施設では粗大ごみから鉄、アルミなどの有用資源の回収が行われている。また、分別収集によるリサイクル量のほか、自治会やPTAなどによる集団回収量も毎年増加してきている。
 しかし、古紙は全国的に供給過剰傾向にあり、回収頻度、価格等が影響を受け、従来行われてきた集団回収も実施頻度が下がっている。
 古繊維についても同様で、集団回収に一部停滞がみられる。

ウ 一般廃棄物の処理状況
 市町村では、通常、収集されたごみを、焼却、破砕、資源化等の中間処理をし、その残さなどを埋め立て処分している。
 ごみの減量処理率は平成12年度96.1%(平成11年度96.3%)であり、中間処理によるごみの減容化が中心である。
 中間処理されたごみ28万6千トンのうち、直接焼却された割合は79.1%である。また、焼却以外の中間処理(破砕・選別による資源化等)の割合は20.9%である。
 一方、直接埋め立てされるごみの量は約1万2千トン(平成11年度1万トン)で、割合は3.9%である。また、焼却残さ等の埋立てを合わせた埋立総量は4万9千トンであり、この量は減少傾向にあったが、近年は横ばい傾向を示している(平成11年度4万9千トン、平成10年度5万トン)。
 *収集されたごみの量に対する焼却・破砕・資源化等の中間処理を行ったごみの量の割合

図5


エ 一般廃棄物処理体制の現状
 一般廃棄物の処理は、各市町村(一部事務組合を含む。)が焼却施設14、最終処分場16(使用中止と未使用を含む。)などを設置し、処理している。
 しかし、焼却施設や最終処分場がない、あるいは残余容量がひっ迫している自治体もあり、新たな処理施設の整備が必要となっているが、ごみ処理施設の立地は、地元、周辺住民の理解を得ることが困難になってきている。


3 一般廃棄物の将来予測
 過去4年間の排出量の推移状況、分別収集および集団回収の見込量から、1人1日当たりごみ排出量、リサイクル率、最終処分量について、以下のとおり見込む。

図6


図7

備考 リサイクル率=リサイクル量(資源化量+集団回収量)÷(ごみ排出量+集団回収量)

図8


4 一般廃棄物の廃棄物処理、リサイクルの課題
 これまでの「日本一計画」による事業の取組みで明らかになった点や、一般廃棄物の処理状況、リサイクルの現状と将来予測、県民パブリックコメント制度による意見を踏まえると、以下の課題がある。

ア 増加傾向にあるごみ排出量の抑制に対する取組み強化
 ダイオキシン問題をきっかけとした平成9年度の小型焼却炉の使用自粛等により、削減傾向にあった排出量が増加傾向に転じており、今後も増加が見込まれる。
 ごみ排出量の4割を占める生ごみについて、生ごみ処理機の補助制度の充実や住民団体の自主的取組みにより、生ごみの堆肥化は進んでいるが、自家消費には限界があるため、回収方策や利用先の確保など確実に再資源化される体制の整備が必要である。

イ リサイクルの一層の推進
 リサイクル量は今後も増えていくと見込まれるものの、古紙などのりサイクル市況によっては、集団回収が停滞することも予想される。
 これまでの分別回収の促進や拡大、分別ルールの統一化をさらに推進するに当たり、リサイクル製品に関する情報不足、各市町村のごみ処理施設の能力や財源問題などの課題がある。

ウ 将来の最終処分場不足に対する検討の実施
 将来、最終処分量は減少すると見込まれるが、一部自治体において他都道府県等の施設に埋立てを依存していたり、最終処分場の残余年数が少なくなっているところがある。

エ 県民への意識啓発活動
  ごみ減量化やリサイクルの推進は、県民1人ひとりの取組みが不可欠であり、県は市町村は、取組み方針を明らかにし、県民の理解を得るための啓発活動をさらに行う必要がある。

オ 不適正処理の防止強化
 野外焼却の禁止や家電リサイクル法の施行などにより、今後、不法投棄が増加するおそれがある。


5 一般廃棄物の目標値の設定
 平成22年度の1人1日当たりごみ排出量、リサイクル率の目標値は、平成11年度に策定した「日本一計画」の目標値と同じとする。
 また、新たに最終処分量の目標値を設定し、平成22年度には、平成12年度最終処分量を半減する。

@1人1日当たりごみ排出量
 本計画期間内は以下の方策により、1人1日当たりごみ排出量68グラムの減量を目指す。

平成12年度1人1日当たりごみ排出量 975グラム

ごみ減量化の方策
  ・発生抑制、排出抑制の意識啓発
  ・生活系ごみの5%削減       △12千トン
  ・事業系ごみの10%削減       △9千トン
目標値

平成17年度1人1日当たりごみ排出量 930グラム
           (平成17年度予測値 998グラム)

図9


A 一般廃棄物リサイクル率
 本計画期間内は、以下の方策により、リサイクル量の増加を図り、リサイクル率を26.8%まで引き上げる。

平成12年度リサイクル率      16.8%

リサイクル推進の方策
 ・集団回収、ステーション回収の徹底
 ・分別収集量の増大           +13千トン
 ・生ごみの堆肥化等による活用     +7千トン
目標値

平成17年度リサイクル率       26.8%
       (平成17年度予測値   19.0%)

図10

参考 リサイクル率=リサイクル量(資源化量+集団回収量)÷(ごみ排出量+集団回収量)

B 一般廃棄物最終処分量
 本計画期間内は、ごみ減量化の方策、リサイクル推進の方策および埋立量削減の方策により、平成12年度一般廃棄物最終処分量を平成22年度には半減する。

平成12年度最終処分量    49千トン

ごみ減量化の方策、リサイクル推進の法策
埋め立て削減の方策
         ・ごみ選別、中間処理の徹底
         ・溶解炉の導入、焼却灰の再資源化
目標値

平成17年度最終処分量    35千トン
平成22年度最終処分量    24千トン

図11



6 産業廃棄物の発生および処理の現状

ア 産業廃棄物の発生状況
 平成12年度産業廃棄物発生量は、平成7年度291万1千トンに比べ約21%増加し、353万トンとなっている。種類別に平成7年度と比較すると、汚泥、がれき類、ばいじんの増加が著しいが、これは、製造業、下水道からの汚泥、建設業からのがれき類、電気業からの ばいじんの発生量増加が影響している。

図12


イ 産業廃棄物の発生抑制、リサイクルの取組状況
 平成7年度から発生量は増加しているが、直接埋立処分委託量は5年間で37千トン減少し68千トンになっており、排出事業者は業者委託による中間処理(再生処理)を行い、最終処分量の削減と減量化・リサイクルに努めている。

表2 福井県の産業廃棄物および事業系一般廃棄物の発生抑制
平成12年度実績 産 業 廃 棄 物 事業系一般廃棄物
発生量 100%(100%) 100%
自己減量化量 44%(49%) 7%
自己中間処理後
再生利用量・有価物量
14%(15%) 5%
自己最終処分量 0%(4%) 0%
委託処理量 42%(33%) 88%
 上記の数字は、発生量を100%とした場合の割合。( )は平成7年度実績。
 なお、事業系一般廃棄物については平成7年度に調査がなか
った。

 平成12年度産業廃棄物リサイクル量は、1,671千トンであり、発生量の47%を占めている。
 種類では、がれき類が一番多く、平成7年度に比べ242千トン増加している。ばいじんも同じく83千トン増加している。

図13


ウ 産業廃棄物の処理状況
 平成12年度減量化量は168千3千トンであり、発生量の48%を占めている。
 業種別では、製造業や電気・水道業において減量化率が高く、リサイクル率が低い傾向である。
 種類別では、汚泥(紙パルプ業、染色業、下水道業)、廃プラ類、紙くず(製紙業)、木くず(木材業)が同様の傾向にある。

図14


 平成12年度最終処分量は165千トンとなっており、発生量の5%を占めている。
 種類別では、燃え殻が一番多く、平成7年度に比べ42千トン増加している。一方、建設系廃棄物のリサイクルの取組みと汚泥の脱水処理施設の整備が進んだことから、がれき類および汚泥が大幅に減少となっている。

図15


エ 産業廃棄物の県外搬出・県内搬入状況
 県内には管理型最終処分場が1ヵ所しかなく、また、大量に発生するばいじん(主として石炭火力発電所のフライアッシュ)の半分程度(10万トン)を県外のリサイクル施設に搬出しているため、県内から県外施設への搬出量(18万7千トン)が、県外から県内施設への搬入量(17万1千トン)を上回っている。
 なお、平成12年9月以降、県外から県内管理型最終処分場への搬入はない。

表3 産業廃棄物の平成12年度搬出・搬入実績(単位 千トン)
処 分 別 県外への搬出量 県内への搬入量
中間処理 85 69
再   生 102 8
安定型埋立 0 9
管理型埋立 12 85
合   計 187 171

オ 特別管理産業廃棄物の処理状況
 県内事業所から排出した平成12年度の特別管理産業廃棄物の委託処理量は、28,897トン(委託処理量全体の2%)で、5年間で約73%増加している。
 また、県内施設で処理された処理量は、16,807トンで、その割合は、平成7年度の17%から58%と上がっている。
 一方、県外から県内施設に搬入された処理量は14,650トンに対し、県内から県外施設に搬入された処理量は12,090トンとなっており、特別管理産業廃棄物の県域を超えた広域処理化を示している。

図16


カ 産業廃棄物処理体制の現状
 (ア)産業廃棄物処理の現状
    許可件数は、過去5年間で約1.9倍に増えている。
    特に、最終処分場や大規模事業場が多数立地している福井、二州保険所管内において、県外業者の許可申請が顕著である。
    また、中間処理の種類では建設系廃棄物のリサイクルを行う選別、破砕処理が急増している。

    「選別」  平成9年度末7件→平成14年1月29件
    「破砕」  平成9年度末54件→平成14年1月84件

表4 福井県の産業廃棄物処理業許可件数の推移
許  可  区  分 H14.2 H12.3 H11.3 H9.3
産業廃棄物収集運搬業 944 753 648 463
産業廃棄物処分量 144 118 110 85
特別管理産業廃棄物収集運搬業 125 108 100 84
特別管理産業廃棄物処分業 13 11 9 9
許可件数合計 1,226 990 867 641
 注1 特別管理産業廃棄物:爆発性、毒性、感染性を有する産業廃棄物

 (イ)産業廃棄物処理施設の現状
    産業廃棄物処理施設の許可状況について、平成10年度より焼却施設数が減少しているが、これは焼却施設の構造基準が強化されたことから、新規施設がなく、廃止・休止施設が多いためである。また、施設の種類では汚泥の脱水処理施設が大幅に増えている。

表5 福井県の産業廃棄物処理許可施設数の推移
種    別  H14.2   H10.3   H8.3  公共関与 注1
汚泥の脱水処理施設 32( 7) 34 27
汚泥の焼却施設 8( 3) 10 9 公社、鯖江
廃油の油水分離施設 3( 1) 3 3
廃油の焼却施設 10( 4) 8 7 公社
廃酸・廃アルカリの中和施設 2( 0) 1 1
廃プラスチックの破砕施設 8( 6) 7 6 公社
木くず類の破砕施設 注3 12(12) 公社
がれき類の破砕施設 注3 57(55) 公社
廃プラスチックの焼却施設 34(20) 52 46 公社
シアン分解施設 3( 1) 3 3 公社
その他産業廃棄物焼却施設 20(11) 24 12
最終処分量(安定型) 注4 10(10) 11 10 公社、小浜、上中
最終処分量(管理型) 3( 1) 4 4 公社
合     計 注5 179 128 109
 注1 公社:福井県産業廃棄物処理公社 小浜:小浜市(区域内のみ) 上中:上中町(区域内のみ)
     鯖江:鯖江広域衛生施設組合(区域内の下水汚泥のみ、一般廃棄物処理施設での処理)
 注2 ( )は自社施設を除いた業者・公共施設数
 注3 木くず、がれき類の破砕施設は平成13年2月から許可施設となっている。
 注4 この他に、平成9年の廃棄物処理法以前に設置された施設許可のいらない産廃業者の最終処分場(安定型)が1施設ある。
 注5 合計の数字については焼却施設の許可種別の重複があるため一致しない。


7 産業廃棄物の将来予測
 下記の方法により、発生量、リサイクル量、最終処分量を見込む。

図17


表6 福井県の産業廃棄物業種別発生予測量(単位 千トン)
業  種  平成12年度   平成17年度   平成22年度 
製 造 業 1,093 1,069 1,055
建 設 業 1,051 1,113 1,159
電気・水道業 910 1,117 1,256
そ の 他 476 493 511

図18

備考 リサイクル率=リサイクル量(資源化量+有価物量)÷(排出量+有価物量)

図19


 なお、将来予測結果について、リサイクル率や最終処分率が下がる理由としては、今後10年間の発生増加量の4分の3を含水率が極めて高い下水汚泥が占めているためである。下水汚泥は、排出現場での脱水により発生量の95%程度が減量化されるため、リサイクル率、最終処分率がともに1%前後と低いためである。


8 産業廃棄物の産廃物処理、リサイクルの課題
 これまでの「第5次産廃計画」による事業の取組みで明らかになった点や、産業廃棄物の処理状況、リサイクルの現状と将来予測、県民パブリックコメント制度による意見を踏まえると、以下の課題がある。

ア ひっ迫する産業廃棄物処理施設不足の解消
@ 埋立処分の平成12年度実績では、管理型最終処分量の6割が県外処分場で埋め立てられている。平成12年度半ばに県内の管理型最終処分場が1つになったことから、県外処理の割合は今後増える可能性もあるが、県外の最終処分場の受け入れが難しくなっているなか、最終処分場の整備は早急に行っていく必要がある。
 また、安定型最終処分場について、現状は数量的な残余容量に不足はみられないが、地域偏在や取引形態などもあり、利用実態に則した施設の整備が望まれる。
A 環境に配慮した焼却施設の改造も、改造内容によって施設許可が必要であるが、産業廃棄物処理施設全体への不信感から、地元住民の理解が得られず、施設整備が困難となっており、平成14年12月の焼却施設基準の完全施行等に伴い、焼却施設の処理能力が不足する可能性がある。

イ リサイクル施設の整備促進
B ここ5年間で、選別や破砕処理施設が増えたことにより、安定型最終処分場に埋め立てていた産業廃棄物(がれき類、廃プラスチック類など)の最終処分量が急激に減っている。一方、中間処理に伴う燃え殻、下水汚泥やばいじんなど、リサイクルできなければ管理型最終処分場に埋め立てる必要がある産業廃棄物が増えており、それらをリサイクルする施設が県内施設だけでは十分でない。
C 従来施設許可が必要ではなかった処理能力5トン/日以上の木くずまたはがれき類の破砕(リサイクル)施設について、平成13年2月から廃棄物処理法の改正により施設許可になったが、産業廃棄物処理施設全体への不信感から、りサイクル施設の整備が進まない可能性がある。

ウ 産業廃棄物処理施設への不信感の払拭
D 産業廃棄物処理施設での問題解決を図るために県の指導要綱を平成8年に制定したが、施設設置者と地元住民との合意形成が困難になっており、新たな合意形成のための取組みが求められている。
E 不適正処理を防止するため、行政期間による迅速かつ厳正な処分が必要である一方、優良な産業廃棄物業者の育成を図ることも必要である。  
F 産業廃棄物処理施設への信頼性を得るため、施設の積極的な情報開示が必要である。
G 産業廃棄物処理施設への委託困難や平成13年4月から施行された野外焼却の原則禁止に伴い、巧妙かつ悪質化している不適正処理や不法投棄を防止する必要がある。

エ 循環型社会の構築に必要な取組み強化
H 安全で信頼される産業廃棄物処理施設の整備を進めるためには、安全性を追求する環境関連技術の向上とそれを支える施設づくりが必要であるが、民間では、資金面や人材育成面で対応が困難になっている。
I 福井県内の循環資源(廃棄物等で有用なもの)の発生実態に即した製造や流通体制を確立するため、環境関連産業の創造と振興が必要である。
J 「福井県リサイクル製品認定制度」や公共工事の建設汚泥のリサイクルを促進する「産業廃棄物再生利用業者指定制度」の実施、さらに、循環諸法の1つであるグリーン購入法の趣旨を踏まえた行政の積極的な購入により、リサイクル製品の普及拡大を図る必要がある。
K 建設リサイクル法や食品リサイクル法の本格的な施行に伴い、関係機関との連携を強化し、法趣旨の普及啓発を充実するとともに、多数のリサイクル推進政策の体系化が必要である。


9 産業廃棄物の目標値の設定
 「第5次産廃計画」で策定した平成19年度の減量化・リサイクル率、最終処分率の目標値をさらに上げて、平成22年度目標値を設定する。
 また、発生量の目標値は今後増加する廃棄物の発生状況を踏まえ見直しを行った。

@産業廃棄物発生量
  福井県の産業構造は、発生抑制の取組みが難しい中小零細企業が多い。また、紙パルプ業、染色業または下水道業から発生する含水率の高い汚泥の占める割合が高く、今後10年間の増加量の4分の3が下水汚泥と見込まれる。このため、発生抑制効果の高い多量排出事業者の大部分を占める建設業や製造業の発生量予測値の5%を削減目標に設定する。
  なお、平成17年度中間目標値は、発生量予測値の2%を削減目標に設定する。

平成12年度発生量 353万トン

発生量削減の方策
   ・生産工程、建設工程、流通体制の見直し
   ・環境に配慮した商品の製造や販売
   ・発生抑制、排出抑制の10%削減目標の設定
目標値

平成17年度目標値 374万9千トン
(平成17年度予測値 379万2千トン)
平成22年度目標値 387万トン

図20


A産業廃棄物リサイクル率
  福井県の産業構造は、含水率の高い汚泥を発生する紙パルプ業、染色業または下水道業の占める割合が高く、また、今後10年間の増加量の4分の3が下水汚泥と見込まれるが、汚泥の減量化率は平成12年度実績値で83%となっており、平成12年度リサイクル率47%は今後相対的に逓減することになる。
  国のリサイクルの目標値は、平成17年度までに47%に引き上げ、以後継続し、平成22年度の目標値も47%としている。
  そこで、従来埋立処分されている廃棄物のその半分程度を再資源化し、国の目標値と同じリサイクル率47%台を目指す。
  なお、平成17年度中間目標値は、リサイクル推進センターの取組みが平成18年度以降と見込まれることから、平成17年度予測値に対し、20千トンの上乗せ目標とする。

平成12年度リサイクル率    47.3%

リサイクル推進の方策
 平成22年度予測値に対し
  ・排出事業者のリサイクルの取組み   +20千トン
  ・民間処理業者のリサイクルの取組み  +20千トン
  ・リサイクル推進センターの取組み    +20千トン
目標値


平成17年度リサイクル率目標値    46.7%
平成22年度リサイクル率目標値    47.0%
(平成22年度予測値    45.7%)

図21


B産業廃棄物最終処分率 
   従来埋立処分されている廃棄物の半分程度を再資源化し、最終処分量を減らす。

平成12年度最終処分率    4.7%

発生量削減の方策、埋立量削減の方策
  平成22年度予測値に対し、
   ・排出事業者のリサイクルの取組み    △20千トン
   ・民間処理業者のリサイクルの取組み  △20千トン
   ・リサイクル推進センターの取組み    △20千トン
目標値

平成17年度リサイクル率目標値    3.9%
平成22年度リサイクル率目標値    2.8%
(平成22年度予測値   4.4%)

図22