第2節 本県の環境行政の展開
平成9年12月、県は、「美しく たくましい 福井を」を基本理念と
する「ふくい21世紀ビジョン(福井県新長期構想)」を策定した。このビジョンで
は、「安全で安心な、環境と調和した社会の創造」を重点戦略として掲げるとともに
、「環境と調和した社会づくり」のための総合的な施策を体系化した。
1 環境基本条例
私たちは、資源やエネルギーを消費することによって、豊かで便利な生
活を営んでいるが、一部の地域では、生活排水等による都市中小河川の水質汚濁が進
み、また、押し寄せる都市化の波によって、身近な緑や水辺が減り、トンボやメダカ
の姿を見る機会も少なくなってきている。また、地球の温暖化など地球規模の環境問
題についても、地域における取組みが重要視され、期待されている。
こうしたことから、県では、規制を中心とした従来の環境保全対策では十分な対応が難しくなっているとして、平成7年3月、
地球環境時代にふさわしい新たな枠組みとして「福井県環境基本条例」を制定した。
この条例では、環境は有限なものであり、私たちは生存基盤としての
環境を将来の世代も含めて共有していることや、環境を健全で恵み豊かなものとし
て維持することが人間の健康で文化的な生活に欠くことができないものであること
、さらに、環境が人間の活動による環境への負荷によって損なわれてきていること
などを踏まえ、環境の保全に取り組む上での3つの基本理念を定めている。
《基本理念》
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@豊かで美しい環境の恵沢の享受と継承
A環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築
B地球環境保全の推進 |
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(市町村における取組み)
恵み豊かな環境を保全し、継承していくためには、県だけでなく、それぞれの市町村においても、地域の特性を踏まえ、条例など制度的な仕組みを整備し、行政と住民が一体となった取組みを進めていくことが重要である。
平成10年度末現在、福井市、武生市、大野市、鯖江市の4市が既に環境基本条例を制定しており、県としては、今後もこうした動きが拡大するよう、市町村に対し積極的に働きかけていく。
2 環境基本計画
環境基本条例の基本理念にのっとり、環境の保全に関する諸施策を総合的かつ計画的に推進するため、同条例第11条に基づき、平成9年3月に「環境基本計画」を策定した。
同計画は、21世紀半ばを展望し、環境基本条例の3つの基本理念の実現のため、環境行政全体の道筋を明らかにしたものであり、長期的な目標や目標実現に向けた施策、各主体の役割および計画を効果的に推進していくため
の方策等を定めている。
県では、この計画を、 すべての主体の自主的・積極的な環境保全の取組みを促進するための計画、 社会経済システムを構築するための方向と対応を明らかにするための計画、 県が策定する各種計画や個別実施計画、
指針等に対する基本的方向を示すための計画として位置付け、計画に沿った施策の推進を図っている。
《環境基本計画の体系》
【環境基本計画がめざすもの】
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この計画は21世紀半ばを展望し、環境基本条例の基本理念の実現のため策定したものである。
《環境基本条例の3つの基本理念》
@ 豊かで美しい環境の恵沢の享受と継承
A 環境の負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築
B 地球環境保全の推進 |
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【 長期的な目標 】
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@健康で文化的な
生活を営むこと
ができる環境 |
A自然と共に生き
ることができる
環境 |
B快適な日常が
実感できる環境
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C地球環境保全
への貢献
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D環境の保全と創造
をめざした参加型
社会の基盤づくり |
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↓
【長期目標達成のステップである施策の展開】
↓
【10の重点プロジェクト と 37の具体的目標】
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@湖沼の水質浄化
A都市中小河川の水質保全
B資源としての地下水の保全
C自動車交通公害の改善
D廃棄物の減量とリサイクル |
Eまちの個性が活かされた景観の形成
F生物多様性の保全
G自然とのふれあいの増進
H地球環境保全への取組
I環境教育・環境学習の推進 |
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【計画推進のために】
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○ 行政・県民・事業者等の役割 ○ 各主体間の連携 ○ 計画の推進体制 |
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3 環境政策推進会議
複雑多様化する環境問題に適切に対応していくためには、公害の防止や自然環境の保全に加え、地球環境問題、廃棄物、省資源・省エネルギー、景観などについて、幅広い観点から検討を加えるとともに、庁内各部局が
相互に連携し、調整を図りながら、施策を推進することが必要である。
そこで、平成10年10月1日、全庁的な体制の下、環境の保全に関する施策の総合的な調整と推進を図ることを目的として、環境基本条例第24条1項の規定に基づき、「福井県環境政策推進会議」を設置した。
この会議は、副知事を議長に、環境主管部長および各部次長等で構成されており、また、会議を補佐し、施策の円滑な推進を図るため、企画調整部会をはじめ、湖沼の水質保全や廃棄物、化学物質等の個別課題に関して
調査研究を行う専門部会が設置されている。
《環境政策推進会議の概要》
4 環境影響評価条例
環境影響評価は、大規模な開発に先立って、事業者自らが環境への影響を調査、予測および評価し、その結果に基づき適正な環境配慮を行うための手続きであり、環境保全を図る上で重要かつ有効な手段となっている。
本県においては、平成4年11月に福井県環境影響評価要綱を制定し、その運用を図ることにより、県内の環境保全に一定の成果をあげてきている。
こうした中、福井県環境基本条例で、環境影響評価の推進を規定するとともに、福井県環境基本計画においても環境影響評価制度のより一層の充実に向けて検討を進めることを明らかにしている。
一方、国においては、平成9年6月に「環境影響評価法」を制定し、より早い段階からの住民関与の手続の付加や対象事業の拡大等を図っている。
こうしたことから、本県においても、環境影響評価制度のより一層の充実を図るため、平成10年8月、環境影響評価制度の見直しについて、県環境審議会に諮問した。
環境審議会では、制度の形式、住民参加の機会と手続き、対象事業などを中心に、県民意見の聴取等も行いながら審議が進められ、平成10年12月、知事に答申がなされた。
その内容は、@要綱に替えて条例による制度とすること、A対象事業の範囲を拡
大すること、B住民等の意見を求める手続きを導入するなど住民参加の機会を拡大すること、C事後調査の実施手続きを充実すること、など、本県における環境影響評価制度の充実を図るための措置を求めるものとなって
いる。
県では、この答申を踏まえ、できるだけ早い段階から環境影響評価の手続きが開始され、かつ住民参加の機会の拡大を図るための手続きとして、“スクリーニング”や“スコーピング”の手法を導入したうえで、平成11
年3月、「福井県環境影響評価条例」を制定、公布しており、同年6月の円滑な施行を目指して所要の作業を進めている。
5 県における環境負荷低減に向けた取組み
県は消費者・事業者として経済活動に占める割合が大きく、また、県民、事業者および市町村に対し、自主的・積極的な行動を求めるためにも、県自らが率先して環境負荷の低減に向けて取り組む必要がある。
そこで、環境基本計画に示された県の役割を果たすための具体的な取組みの一つとして、平成9年3月に、県の各機関が通常の行政活動の中で環境保全に取り組む計画「環境保全率先実行計画−エコロジカルな行政をめ
ざして−」を策定した。
平成10年10月に設置した環境政策推進会議の企画調整部会において、同計画の進行管理を行っているが、同部会では、平成9年度における計画の進捗状況を踏まえながら、計画を推進する上での問題点の整理、重点的な
取組み事項の設定、推進方策、職員の意識醸成に関する具体的な仕組みづくりを進めている。
また、環境マネジメントシステムとしてのISO14001については、自治体自身の環境負荷の低減、職員の環境保全に対する意識の向上等を目的に、その認証を取得する動きが活発化してきており、本県においても、福井市
をはじめ4市が認証取得に向けた取組みを進めている。
県としても、認証取得によって、環境配慮に対する基準の明確化による信頼性の確保、システム確立による責任の明確化と事務の効率化等が期待できるほか、県内の自治体や企業、さらに県民による自主的な環境保全活動
の促進に繋がるものと考え、できるだけ早い時期での認証取得に向けて、現在、体制づくりをはじめ、様々の検討を開始している。
6 廃棄物の減量化とリサイクルの推進
平成9年から10年にかけて、「容器包装リサイクル法」や「家電リサイクル法」が整備され、資源循環型社会づくりへの仕組みづくりが活発化する中で、県としては、平成9年12月に策定した「ふくい21世紀ビジョン」に
掲げる「ごみ減量化・リサイクル日本一」をめざす施策を計画的に推進していく。
県では、これまで、「第5次福井県産業廃棄物処理計画(平成10年3月)」や、「福井県廃棄物減量化・再生利用推進計画(平成5年3月)」などに基づき、廃棄物対策を進めてきたが、平成11年度には、新たに、県民・
事業者・行政が、それぞれの役割を分担しながら、相互協力のもと、廃棄物の発生および排出の抑制、リサイクルの推進を目的とする「福井県ごみ減量化・リサイクル日本一推進計画(仮称)」を策定することとしている。
今後、より多くの県民・事業者が、廃棄物の減量化やリサイクルの推進に向けて、具体的な行動に移れるよう、市町村や事業者による廃棄物の減量化、資源化や適正処理の周知徹底、再生品の需要拡大などの施策を積極的
に推進する。
また、廃棄物をめぐる問題の中で特に住民の間に不安の大きいダイオキシン問題については、「福井県ごみ処理広域化計画」に基づき、市町村に対し、ダイオキシンの発生抑制対策として、分別の徹底、適正な燃焼管理、
施設の改善等を指導するとともに、小規模施設の集約化を図ることによるごみ処理の広域化等の対策を推進していく。
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