第5章 環境の保全と創造をめざした参加型社会の基盤づくり

  第1節 自主的な活動の推進
   1 環境教育・学習の推進
   2 自発的な活動の支援
   3 環境情報の提供
  第2節 環境配慮のための基盤づくり
   1 環境影響評価
   2 公害防止協定
   3 経済的手法の活用
  第3節 調査・研究の推進



第1節 自主的な活動の推進

1 環境教育・学習の推進
 今日の多様化した環境問題に適切に対応し、かけがえのない環境を将来の世代
に引き継いでいくためには、県民一人ひとりが今までのライフスタイルを見直し
、「県民が生涯学習として取り組む環境に関する学習と実践」−環境教育−を推進
することが重要になっている。
 今後、地域住民、民間団体、事業者、学校、行政など多様な主体がそれぞれの
役割を分担しながら、学習や活動を進めていく必要がある。
 県においては、平成2年度に“福井県環境教育基本方針”を取りまとめ、この
基本方針に沿って、各種の情報の提供、指導者の育成等を行っており、次の事業
を実施している。
 (1) 福井県環境アドバイザー制度の実施
 “環境にやさしい人づくり”の推進を目的として、平成6年6月に「福井県環
境アドバイザー制度」を発足させた。
 この制度は、環境保全についての有識者や環境保全活動の実践者等を「環境ア
ドバイザー」として委嘱し、このアドバイザーを各種団体、学校等が主催する環
境問題に関する学習会、講演会等に講師として派遣または紹介するものであり、
平成8年度には、公民館、各種団体等に20回の派遣を実施した。
 今後は、地球温暖化問題やダイオキシン等の有害化学物質による環境汚染など
、幅広いニーズに対応できるよう、アドバイザーの充実や人材の育成に努めてい
く必要がある
 (2) 地域環境ジュニアパトロールの実施
 21世紀を担う小・中学生が、身の回りの環境を見つめ、問題意識を持つことに
よって、環境に対する意識を高めることを目的として、平成3年度から「地域環
境ジュニアパトロール」を実施しており、平成9年度は、県内各地から17グルー
プが参加した。
 参加グループは夏休み期間中に、身近な環境をテーマに自分たちの住んでいる
まちを調査し、問題点や提案等を話し合い、報告書としてとりまとめ、報告会で
活動結果を発表し合った。
 県では、グループからの報告書をとりまとめた活動報告集を作成し、関係機関
へ配布している。
 (3) 児童用環境教育副読本「かんきょうはみんなの仲間−ふくいの環境−」の
作成
 小学校高学年を対象に、ゆとりの時間、自由研究、体験学習の中で活用できる
教材を作成し、各小学校、市町村教育委員会等へ配布した。
 (4) 移動環境教室の実施
 学校等での環境学習を支援するため、移動環境教室を実施し、小・中学校を対
象に環境関連ビデオの視聴、大気環境測定車「みどり号」・電気自動車「みどり
号ミニ」の説明、環境関連パネルの説明等を行った。
 (5) 環境月間
 我が国では、平成3年度から6月の1か月間を「環境月間」として、よりよい
環境を創出する契機とするため、各種の催し等を実施している。
 本県においても、平成9年3月に「福井県環境基本計画」が策定されたことを
受け、県民一人ひとりの関心と理解をより一層深め、環境の保全に関する活動を
行う契機とするため、国と歩調を合わせて6月を「環境月間」と定め、県民、事
業者、行政が一体となって環境保全活動に取り組む「環境にやさしい参加型の社
会」をめざして、各種の行事を実施している。
(表3−5−1)
 ア クリーンアップふくい大作戦
 美化活動への取組を拡大しながら、地域の環境保全に関しての県民意識の啓発
を図ることを目的として、平成4年度から、県下一斉に地域住民が主体となって
美化活動を行う「クリーンアップふくい大作戦」を実施している。
 平成9年度は、6月1日(日)を統一行動日として、「生かそう 小さな汗 
私たちの環境に」をテーマに、市町村が設定した拠点地区等において、知事や市
町村長の参加のもと美化活動が行われたほか、県においても、自然公園環境美化
事業や海の浮遊ごみを回収する海面環境保全事業等を併せて実施した。
 その結果、統一行動日には、約65,000人の県民の参加が得られた。
 また、民間団体、企業においても、それぞれの団体活動を生かした特色ある美
化活動が展開された。
 イ 環境月間街頭キャンペーン
 環境月間の初日である、6月1日(日)に、「環境月間」と「環境の日」の趣
旨を広く県民に広めるため、街頭においてキャンペーンを行った。福井市の繁華
街に環境にやさしい電気自動車「みどり号ミニ」を配置し、花の苗を通行人に配
布して環境保全の大切さなどを呼びかけた。
 ウ ふくい環境展
 かけがえのない環境を守るために、県民一人ひとりが「地球規模で考え、足元
から行動する」意識を持つ契機とするため、福井市と共同で“この地球 守るの
は わたしたち”をテーマに「ふくい環境展」を開催した。
 平成9年3月に策定された福井県環境基本計画の紹介を中心に、ふるさと福井
自然100選の紹介、環境に関する簡易実験、環境にやさしいくらしの工夫紹介、
空き缶やペットボトルのリサイクルの紹介のほか、環境パネル、電気自動車、水
生生物の標本展示やビデオの放映を行った。
 また、小学校の4・5・6年生を対象に実施した環境保全啓発ポスターコンク
ールの最優秀賞作品、優秀作品10点を含む、計168点の入賞作品すべてを「ふく
い環境展」において展示した。
 この「ふくい環境展」は、一週間にわたって開催され、約5,000名の見学者が
訪れた。

 表3−5−1 環境月間行事実施結果(平成9年6月1日〜30日)
    実践テーマ   「広げよう やさしい配慮を 環境に」
   (サブテーマ)    みんなの力で 住みよい環境



 (6) その他の普及啓発
 ア 刊行物の発刊
 水、大気、自然、廃棄物など様々な環境とその問題点について、県民の理解と
認識を深めることを目的として、パンフレットの作成配布を行っている。平成8
年度に県において発行された関連の刊行物は、表3−5−2のとおりである。

 表3−5−2 ポスター、パンフレット等作成配布状況(平成8年度)

 イ ふるさとの空と水
 (ア) ふるさとの空
 環境庁では、星空を観察するという身近な方法によって、大気の観察活動を行
うことにより、大気環境に対する国民の関心を深める契機とするため、全国星空
継続観察(スターウォッチング・ネットワーク)を実施している。
 平成8年度の本県の参加状況は、表3−5−3のとおりである。

 表3−5−3 スターウォッチングの参加状況
───────────────────────────────────
               │  夏   期  │  冬    期
市町村  参 加 団 体 名   │─────────│──────────
               │平均等級│最大等級│平均等級│最大等級
───────────────────────────────────
福井市 福井県立児童会館   │  9.3   12.1 │
小浜市 小浜市        │  7.4   9.2 │  9.5   11.2
大野市 福井県自然保護センター│  9.4   10.5 │  9.4   9.4
───────────────────────────────────

 (イ) ふるさとの名水
 本県にはいくつかの名水があるが、特に、表3−5−4の3か所は昭和59年度
に環境庁の全国名水百選に認定されている。これは、古くから名水として引き継
がれており、地域住民等によってその水環境の保全が図られているものの中から
、優良な湧水や河川を100か所選定したものである。
 県では、これを機会に、水に対する関心を高める意味で、県内各地の優良な水
環境の保全を積極的に進めることにしている。

 表3−5−4 福井県の名水

 (ウ) 水生生物調査
 カワゲラ、トビゲラ等の河川に生息する水生生物を指標とした水質の簡易調査
は、一般の人にも親しみやすく、誰でも調査に参加できるという利点を持ち、ま
た、その結果が水質汚濁の長期的・複合的な影響を反映すると考えられている。
 そこで、環境庁は、全国の河川において一般市民等の参加を得て、水生生物に
よる簡易調査を実施している。
 本県では、平成8年度は小・中学校計12校の児童・生徒146人と1団体120人の
計266人の参加を得て調査を実施した。
 この結果、県内13河川の水質階級が把握され、また、参加者は、身近な河川の
水質を体験的に知るとともに、河川の水質保全の必要性や河川愛護の重要性に対
する認識をあらたにすることができた。(資料編表6−22 自発的な活動の支援
 (1) 環境保全に係る各主体間の連携
 環境の保全に責任を持てる人づくりに向けては、普及啓発の充実や環境教育・
環境学習の推進はもとより、県民や事業者が参加できる施策や組織などを充実す
ることが必要である。
 環境の保全に関しては、一人ひとりの行動が大切であるとともに、環境保全を
目的とした民間の環境保全団体や企業の活動が重要であり、既に本県においても
、様々な団体が活動を行っている。
 県では、平成6年度に環境保全に係る個人、団体、企業のネットワークと地域
に根ざした活動団体の育成を図ることを目的に、各主体が一体となって環境保全
活動に取り組むための推進母体として「環境ふくい推進協議会」を設立している
。
 環境基本計画の推進をはじめとして、県民参加による環境保全の取組みを拡大
することが今後ますます重要となることから、環境ふくい推進協議会の充実を図
り、県民、団体、企業間の連携強化に取り組むことによって、県民一体となった
環境保全推進のための体制づくりを進める。
 (2) 環境教育・学習の拠点整備
 環境教育・環境学習や環境情報の提供を通して、環境の大切さや人と環境との
関わりについて考え、環境の価値や環境問題の解決方法を等を見いだす能力や行
動力を育むうえで、環境教育の機会や学習の場が設けられていることが重要であ
る。
 環境科学センターをはじめ、自然保護センター、内水面総合センター等の関係
機関が連携し、生涯学習や学校教育など様々な面において、県民等のこうした環
境学習の取組みを支援していく。
 環境問題は、自然科学、社会科学等の分野も含めた総合的な視点に立って、科
学的データに基づいて取り組むことが重要であるとして、このような観点から、
県民等が学習できる拠点施設の整備が他県において進められつつある。本県にお
いても、自然観察等ができる学習フィールドを兼ね備えた学習拠点施設の整備等
について研究を進めて行くことが必要となっている。
 (3) 環境ボランティアの確保
 環境保全施策や地域における自主的活動を推進するためには、県民各自の行動
を促すことが大切である。このため、地域の実情に即したきめ細かな情報をもと
に、県民一人ひとりが、「自主的・自発的こころ」で環境保全活動に「参加」す
ることとなるよう、地域の核となる人材を育成し、地域住民が連携する体制づく
りについて、今後検討を進める。
 (4) 「環境にやさしい参加型社会」づくりに向けたプログラム
 県民等の環境保全活動を確実なものとするためには、環境保全活動の意義や行
政が進める施策について、県民等の理解を得ることが大切である。
 県は、普及啓発事業や、環境教育・実践活動に対する支援事業を進めているが
、県民等の着実な活動に結びつけていくためには、地域・学校・職場等の「場」
や、子供から大人までの「年齢」等の実情に即した施策を展開することが重要な
視点となっている。
 このため、県では有識者や環境保全団体、事業者、および公募による県民を委
員とする懇話会を設置し、現在、環境保全活動を促進するための施策のあり方に
ついて検討を行っており、懇話会の提言を踏まえたプログラムを策定し、施策を
進めていく。
 (5) 環境マネジメントの促進
 事業者は、規制の遵守、あるいは環境保全上の支障が生じて初めて対処すると
いう対処療法的な対応にとどまらず、予防的な観点から、環境への負荷の低減等
の取組みを積極的に行うことが求められている。
 この流れの中で、企業の経営管理の一部として、環境保全への取組みを効果的
に進めるための「環境マネジメントシステム」を企業内に構築する動きが広がっ
てきた。環境マネジメントシステムとは、@組織の経営者が自ら環境に関する方
針を決定し、それを組織の構成員に周知徹底するとともに、Aその方針に沿った
目標を立て、計画を作成、Bその実行のための組織内の体制や手続、マニュアル
類を整備、Cさらに取組の実行状況を監査して方針の見直しを行い、これを繰り
返し行うことによって取組みを推進していこうとするものである。(図3−5−
5)
 この環境マネジメントシステムが構築されているか否かを判断するための共通
の基準として定められたのが、1996年(平成8年)9月に発行された国際標準化
機構の国際規格ISO14001 であり、国内においても、これに対応する日本工業
規格JISQ14001が同年10月に制定されている。
 この規格については、非常に早い取組みがみられ、平成9年12月末現在におい
て全国で556件が取得し、県内では電気機械業や繊維工業などの9件が取得して
いる。
 県では、企業の自主的な環境保全活動への取組みが重要であるため、県内企業
における環境マネジメントシステムの導入状況について情報を収集している。ま
た、実際に環境マネジメントシステムを構築した事業所の専門家やその規格認証
のための審査の専門家を講師とした企業への研修会を開催するとともに、取得に
係る融資を行うなど、その普及支援に努めている。

 図3−5−5 環境マネジメントシステムのモデル

3 環境情報の提供
 (1) 環境情報の活用
 複雑化する環境問題に的確に対応するとともに、地域環境を長期的に良好な状
態で保全し、質的に高めていくには、環境の現況に関する正しい認識や問題点の
把握と、これらをもとにした合理的な施策等の推進が重要である。
 さらに、環境保全に関する意識調査によると、県民は、環境問題の重要性は認
識しているものの、環境保全活動に取り組むに当たって障害となる点として、「環
境問題についての知識・情報が少ない」ことをあげ、行政に対し“環境情報の提
供”や“環境教育の推進”などの施策の充実を求めている。
 このため、大気や水質等の「公害」、植物や動物等の「自然環境」、文化財や
風景等の「生活文化環境」および土地利用や人口等の「社会条件」に関する情報
等の多種多様な環境情報を体系的に整備し、行政内部での活用はもとより、県民
・事業者もこれらの情報を有効に活用できる「環境情報の共有化をめざしたシス
テム」を構築し、情報化時代に対応した総合的な環境行政の推進を図る必要があ
る。
 (2) 環境情報システムの整備
 環境情報システムは、多種多様な環境情報を総合的・体系的に収集管理し、そ
れらの情報を用いて環境を総合的に評価、解析、提供するなどの機能を有するも
のでる。
 県では、これまで大気の常時監視データや公共用水域の常時監視データをコン
ピュータで処理するとともに、環境情報の総合的整備として、昭和60年度に「環
境利用ガイド事業」、昭和63年度に「広域環境資源情報基盤整備事業」を実施し
てきた。
 また、平成4年6月には、環境情報の広域的な活用の推進を図るため、パソコ
ン通信による環境情報ネットワークシステム「みどりネット」を整備し、平成8
年1月にはインターネットへの接続も行っている。
 このシステムは、環境科学センターのホストコンピュータに蓄積された各種の
環境情報を電話回線やインターネットを通じて提供するシステムで、利用者が任
意に環境に関する情報を検索できるほか、広報したい情報を入力することができる
などのネットワーク機能を有している。

 ┌── 環境情報提供内容────┐
 │・県内の大気および水質等の状況│ (ホ−ムペ−ジのアドレス)
 │・環境保全活動事例      │     : http://www.erc.pref.fukui.jp/
 │・環境科学センターの業務案内 │  (パソコン通信の電話番号)
 │・環境関連イベント情報 等  │     : 0776-52-7122
 └───────────────┘


 (3) 環境情報の共有化
 広範囲におよぶ環境行政を合理的に進めるためには、環境の現況を客観的に評
価し、問題点の把握と対応策について多方面から解析を行うことが必要である。
また、県民・事業者等への円滑な情報の提供や県内部における有効活用、行政事
務の効率化などを図ることが必要である。
 このような視点に立って、様々な環境関連情報を一元的に管理し、分かりやす
い・使いやすい情報の提供等をめざして、「環境関連情報の収集・加工」、「画
像処理」、「解析・予測・評価」、「情報提供」等の機能を持つ「環境情報共有
化システム」のあり方について、今後検討を進めることとしている。


第2節 環境配慮のための基盤づくり

1 環境影響評価
 各種事業等の実施の前にその事業等がどのような環境影響を及ぼすかを評価し
、環境への配慮を求める取組みとして、県では、@個別の開発事業等に対する環
境影響評価、A計画策定等に係る環境配慮、B許認可等に際しての環境配慮の行
政指導を実施している。

 (1) 環境影響評価
 環境影響評価(環境アセスメント)は、環境に大きな影響を及ぼすおそれのあ
る開発事業等の計画策定や実施に際して、その環境影響について事前に十分な調
査、予測および評価を行い、その結果を公表して、地域住民の意見を聴いた上で
、地域の環境に配慮した適切な環境保全対策を講じようとするものであり、環境
汚染の未然防止のための重要かつ有効な手段である。
 環境影響評価は、国においては、閣議決定による環境影響評価実施要綱、公有
水面埋立法などの個別法および各省庁通達等に基づき実施されている。県では、
平成4年12月1日からは「福井県環境影響評価要綱」を施行するとともに、環境
基本条例第13条においてその推進を図ることを規定している。県の要綱では、国
要綱等の制度では対象となっていない事業の追加と国要綱では規定されていない
事後監視等の手続を追加し、大規模な事業について行われるよう措置している。
 本県の要綱の手続および対象としている事業は、図3−5−6および表3−5
−7のとおりである。
 ア 環境影響評価の審査
 平成8年度には、レクリエーション施設の建設と道路の建設に係る環境影響評
価が実施されており、県は、これらに対して審査を行い、環境保全の見地からの
意見を述べた。その概要は次のとおりである。
────  環境保全の見地からの意見の概要   ─────
[レクリエーション施設]                
 ・供用後の農薬使用による影響の低減対策の実施     
 ・改変による土壌生産性の低下の防止          
 ・貴重な植物の保護管理の実施             
 ・調整池等の自然環境との調和への配慮         
 ・工事中の濁水対策                  
 ・工事中の大気汚染および騒音等の防止対策   他   
[道路]                        
 ・供用後の大気汚染、騒音等の防止への配慮       
 ・パーキングエリア等からの排水による水質汚濁防止対策 
 ・地盤沈下防止のための地下水による消雪の禁止     
 ・残土の適正処理                   
 ・工事中の大気汚染、水質汚濁および騒音等の防止対策  
 ・貴重な動植物への配慮                
 ・景観および植生再生の観点からの法面緑化等の対策 他 
────────────────────────────

 また、このほか「公有水面埋立法」など個別法に基づく環境影響評価について
も審査を行っている。

 図3−5−6 福井県環境影響評価要綱の手続の流れ
    (資料:環境政策課)

 表3−5−7 福井県環境影響評価要綱対象事業

  事業の種類 │         規  模  等  の  要  件
────────┼─────────────────────────────── 
 1 道   路│ @高速自動車国道の新設、改築
        │ A4車線以上で 10km以上の道路の新設、延長、拡幅
────────┼─────────────────────────────── 
   ダ   ム│ @湛水面積 200ha以上のダム新築
 2      │ A湛水面積 100ha以上の堰の新築、改築
   河川工事 │ B土地改変面積 100ha以上の湖沼開発、放水路新築
────────┼─────────────────────────────── 
 3 鉄   道│ 新幹線鉄道の建設、改良
────────┼─────────────────────────────── 
 4 飛 行 場│ 滑走路 2,000m以上の飛行場の新設、2,000m以上の滑走路
        │ 増設、500m以上の滑走路延長(延長後 2,000m以上のものに限る。)
────────┼─────────────────────────────── 
 5 埋立、干拓│ @面積 50haを超える公有水面埋立、干拓
        │ A面積 50haを超える土地改良事業としての埋立、干拓
────────┼─────────────────────────────── 
 6 土地区画 │ 面積 100ha以上の土地区画整理事業
   整理事業 │
────────┼─────────────────────────────── 
 7 流通業務 │ 面積 100ha以上の流通業務用地の造成
   用地造成 │
────────┼─────────────────────────────── 
 8 住宅用地 │ 面積 100ha以上の住宅用地の造成
   造  成 │
────────┼─────────────────────────────── 
 9 工業用地 │ 面積 50ha以上の工業用地の造成
   造  成 │
────────┼─────────────────────────────── 
 10 農用地造成│ 面積 500ha以上の農用地の造成
────────┼─────────────────────────────── 
 11 発 電 所│ 発電所の新設、増設(火力15万kW以上、地熱1万kW以上、
        │ 水力3万kW以上、原子力)
────────┼─────────────────────────────── 
 12 工場等の │ 原料もしくは燃料の使用量が重油換算 10 kl/時以上または
   建  設 │ 排水量が 10,000m
3
/日以上の工場等の新設、増設
────────┼─────────────────────────────── 
   廃棄物処理│ @処理能力 100t/日以上の一般廃棄物焼却施設の新設、増設
 13      │ A処理能力 100 kl/日以上のし尿処理施設の新設、増設
   施設   │ B新設、増設後の面積5ha以上または容積25万m3以上の廃棄物最終
        │  処分場
────────┼─────────────────────────────── 
   レクリエー│ @面積 50ha以上のゴルフ場、スキー場用地造成
 14      │ A面積 50ha以上の運動・レジャー施設用地造成
   ション施設│ B面積 50ha以上の公園事業による施設用地造成
────────┼─────────────────────────────── 
 15 その他の │ 1〜14の対象事業以外の事業で、環境に及ぼす影響が対象事業
   事   業│ と同等以上と知事が認定するもの
                                    
   (資料:環境政策課)

 イ 環境影響評価の事後監視
 環境影響評価が実施された事業については、予測の不確実性等を考慮して、影
響の重大性や不確実性の程度に応じ、工事中や供用時の環境の状態や環境への負
荷の状態、環境保全対策の効果を調査し、その結果に応じて、必要な対策を講ず
ることが重要である。このため、県要綱では、事後監視を規定し、その結果につ
いて県が事業者から報告を受けるとともに、職員による立入調査や必要に応じて
対策の指示ができることとなっている。
 この事後監視として、稼働している原子力発電所および火力発電所については
、周辺海域における水温などの水質状況や大気汚染物質の排出状況などについて
、また、現在建設中の火力発電所については工事の進捗状況と騒音等の状況につ
いて報告を求めている。また、これらの事業に対しては、県として立入調査等を
適宜実施し、環境保全対策等の実施状況を確認している。
 (2) 計画策定等に係る環境配慮
 上位計画・政策における環境配慮については、中央環境審議会において「政府
としてはできるところから取り組む努力をしつつ、国際的動向や我が国での現状
を踏まえて、今後具体的な検討を進めるべきである。」とされているが、県にお
いても、平成7年3月に公布、施行している環境基本条例第10条で、県の施策の
策定等に当たっての環境配慮を規定している。
 このため、県では、計画や政策の策定に当たって環境への配慮が行われるよう
、土地利用基本計画や都市計画等の計画策定などに際して、環境の保全の見地か
ら所要の調整を行っている。
 (3) 許認可等に際しての環境配慮の行政指導
 森林法に基づく林地開発の許可や国土利用計画法に基づく土地売買等の届出な
ど県が関与する許認可等の手続に際しては、環境汚染の未然防止の観点から、所
要の調整を行っている。
 (4) 環境影響評価に関連する審査状況
 これらの環境影響評価に関連する審査等の状況の内訳は、表3−5−8および
表3−5−9に示すとおりであり、その件数は164件であった。
 (5) 環境影響評価の実施に必要な情報の充実
 環境影響評価の実施に際して、事業者による適切な環境影響評価の実施や住民
等の適切な意見の形成などのために、行政による環境情報の収集・提供が重要と
なる。このため、県では環境影響評価を支える基盤の整備の一環として、環境影
響評価に関連した情報を、「みどりネット」(インターネット、パソコン通信)
などを通じて提供している。

 表3−5−8 環境影響評価等審査業務内訳(平成8年度)
                    (資料:環境政策課)

 表3−5−9 環境影響評価等審査件数の推移
    *:同一事業    (資料:環境政策課)

 (6) 環境影響評価制度の課題および充実
 国では、閣議決定の環境影響評価実施要綱による行政指導の限界や許認可等へ
の反映の必要性、さらに、環境影響評価のできる限り早い段階での実施等、中央
環境審議会の答申を踏まえて、従来の要綱に比べて制度を充実させた環境影響評
価法を平成9年6月に公布し、2年以内に施行することしている。

 ┌─ 環境影響評価法の主な特徴───────────────────────┐
 │ ○ 対象事業の拡大                           │
 │ ○ 事業規模に満たない事業であっても環境影響評価の実施の必要性を個別に判│
 │  定する仕組み(スクリーニング)の導入                 │
 │ ○ 早い段階から手続が開始されるよう、調査の方法について意見を求める仕組│
 │  み(スコーピング)の導入                       │
 │ ○ 意見提出者の地域限定を撤廃し、意見提出の機会を方法書段階と準備書段階│
 │  の2回設けるなど、住民参加の機会の拡大                │
 └─────────────────────────────────────┘


 こうした国の動向を踏まえ、本県においても、関係課(室)による連絡会議の
開催、中部ブロックの各自治体の担当者会議の開催および環境影響評価に関する
研修への職員の派遣など、制度に関する情報の収集を行うとともに、新たな制度
についての検討を進めている。

2 公害防止協定
 公害防止協定は、地域の状況や個別の企業の内容に応じたきめの細かい環境保
全対策を盛り込むことができ、法令や条例による一般的な規制を補完するものと
して有効な手段である。
 (1) 協定締結の促進
 本県では、福井県公害防止条例第53条で「事業所は、県または市町村から公害
防止協定の締結について申出を受けたときは、その申出に応じなければならない
。」旨規定しており、県は、臨海工業団地であるテクノポート福井に立地する企
業または複数の市町村にまたがる広範囲な地域に影響を及ぼすおそれのある企業
について、当事者として協定の締結を進めている。
 協定の内容としては、企業の操業形態等の条件に応じたきめ細かい個別的な公
害防止対策を規定するとともに、立入調査や公開の原則、住民に損害を与えた場
合の無過失損害賠償責任についても規定を設け、公害防止対策の実効性の確保な
どを図っている。
 また、多くの市町村においても、公害防止協定や自然環境、農薬使用等の環境
保全対策に関する環境保全協定を事業者と締結しており、その締結件数も年々増
加している。県は、公害防止協定等の内容等について市町村から協議を受けた場
合、必要に応じ指導・助言を行い、市町村における協定締結を支援している。
 平成8年度中に県が新たに締結または改正した協定数は17件であり、これまで
に締結した公害防止協定数は計64件となっている。また、市町村が締結した公害
防止協定数は平成8年度末現在20市町村384件、環境保全協定数は5市町村5件
となっている。(資料編表6−13 経済的手法の活用
 (1) 融資制度による支援
 公害の発生を未然に防止するためには、公害関係法令等を遵守することはもと
より、事業者自らが、工場等の公害発生源について、公害防止対策を積極的に講
じていくことが必要である。
 また、地球的規模での環境問題に対応するため、脱フロン化の推進、太陽熱等
新エネルギーの活用、既存エネルギーの有効活用等、環境保全に向けての積極的
な取組みが期待されている。
 本県では、これらの資金需要に柔軟に対応するため、公害防止施設等の整備促
進および生活環境の保全に向けての積極的な取組みの促進を図ることを目的とし
て、昭和46年10月に定められた「福井県公害防止施設等整備資金融資要綱」を改
め、平成6年4月より「福井県中小企業環境保全対策資金融資要綱」を定めてい
る。
 この制度の概要は、以下のとおりである。
 @ 融資対象者
   県内において引き続き1年以上同一の事業を営んでいる中小企業者
 A 融資対象経費
   公害防止に必要な機械設備および工場移転のための建物等を取得するため
に必要となる  設備資金(別に定める)
   環境保全に必要な機械設備を取得するために必要となる設備資金(別に定
める)
 B 融資の条件
 ア 融資限度
   原則として、100万円以上3,000万円以内で、かつ、所要事業資金の80%以
内
 イ 融資期間
   7年以内(据置期間1年以内を含む)
 ウ 融資利率
   年 2.1%(平成10年1月26日現在)
 エ 保証料
   年 0.7%(保証料は県が補給)
 オ 担  保
   福井県信用保証協会の定めるところによる
 カ 取扱金融機関
   福井県信用保証協会が約定を締結している金融機関であって、知事が別に
指定するもの

 また、この福井県中小企業環境保全対策資金制度のほか、公害防止のための融
資制度として表3−5−10がある。

 (2) ごみの有料化、課徴金、デポジット制度
 ごみ処理手数料の有料化については、福井県ごみ減量化等推進懇話会において
議論してきた。懇話会では、減量化の効果は期待でき、賛成であるという意見が
ある一方、住民の理解が得られない、不法投棄を誘発するおそれがあるという反
対意見があり、今後も継続して検討を進めていく必要がある。

  表3−5−10  環境を保全するための融資制度


第3節 調査・研究の推進

 (1) 環境の将来の予測のための調査・研究の充実
 環境基準の達成状況を把握するため、大気汚染の状況や公共用水域の水質汚濁
の状況などを常時監視するとともに、発生源の監視調査を実施している。これら
の結果に基づいて公共用水域における類型指定計画や大気観測局の適正配置計画
等の策定を行い、環境保全政策を適正に実施することとしており、今後とも、環
境の状況把握や将来予測をするためのシミュレ−ション技法の開発など、調査・
研究の充実に努める。
 さらに、地球環境問題に関する調査・研究の一つとして、県では、昭和48年度
から酸性雨モニタリング調査、土壌・植生モニタリング調査などを独自に実施し
てきたが、今後は、酸性雨による生態系への影響など、時間的広がりを持つ環境
問題に対する地球環境問題に関する基礎的デ−タについても調査・研究を進めて
いく必要がある。

 (2) リモ−トセンシング等の最新技術の導入
 従来からの環境監視モニタリング手法では、限定された調査地点近傍の環境状
況の把握にとどまってしまうという課題がある。これに対して、環境を多面的に
把握できるリモ−トセンシングなどの最新技術が近年注目されつつあり、本県で
は、リモ−トセンシングの技法を用いて一部、湖沼の水質状況の把握などに試験
的に取り組んでいる。今後とも、リモ−トセンシングなど最新技術の導入を進め
て、生活環境や自然環境等のモニタリングの充実に努める。

 (3) 総合的な環境指標の開発
 環境基本計画に定められた長期目標達成に向けて、施策の効果的な実施を図る
ためには、目標の達成状況や目標と施策の関係を具体的に示す総合的な環境指標
が有効である。
 そこで、環境基本計画の実行や進捗状況の点検、計画の見直し等に活用してい
くため、総合的な環境指標の開発を進め、施策への反映に努める。

 (4) 県の試験研究機関の共同研究体制の整備、産官学による共同研究
 現在、県の試験研究機関9機関による環境技術会議が設置され、環境関連の調
査研究の調整を行っている。これまで、社寺林等における杉枯れの問題や湖沼の
浄化について共同研究を行ってきたところであり、今後とも、県の試験研究機関
の共同研究体制の整備を図っていく。
 産官学による共同研究の例として、県立大学、環境科学センタ−がナホトカ号
重油流出事故後の微生物を利用した重油除去、分解実験において実施している。
今後とも、このような事例を踏まえて、福井県科学技術振興会議を通じた産官学
による共同研究を進めていく。

 (5) 環境と地域経済、環境と地域文化等の総合的な研究
 複雑化する環境問題に的確に対応するとともに地域環境を良好な状態で保全し
、質的に高めていくには、環境の現状に関する正しい認識や問題点の把握と、こ
れらをもとにした合理的な施策の推進が重要である。そこで、自然科学はもとよ
り、社会・人文科学の分野を含めた学際的な観点から、環境と地域経済、環境と
地域文化の関係などについて、総合的な研究に取り組む先進的な自治体がみられ
ており、本県においても、今後このような視点に立った研究体制の充実を図って
行くことが大切である。