◆ふくいの巨木 63.池ノ河内のキタコブシ

 ●池ノ河内(イケノコウチ)のキタコブシ
    樹 種  キタコブシ(モクレン科)
    幹周り  1 m(叢生を1本と見て)
    樹 高  約15 m
    樹 齢  不明
    所在地  敦賀市池ノ河内
 池ノ河内地区は、敦賀市を流れる笙ノ川の源流にあって、地区の西寄りに四 方を山に囲まれた池ノ河内湿原がある。 標高300 mのこの湿原は、県内で唯一 の、古来よりの自然相を残す湿地帯として貴重な存在である。
 春になれば、湿原のあちこちでヒメザゼンソウ、カキツバタ、ミツガシワな どの花が咲き、特徴ある景観が出現する。特に、北海道や東北にしか見られな いミズドクサ、ヤナギトラノオの飛地的南限となっていることでも、池ノ河内 湿原は特異な面を示している。
 樹木では、モクセイ科のトネリコが1本あるのが珍しく、モチノキ科のミヤ マウメモドキは県内で最大の群落を作るのが見られる。
 この湿原に向かって、集落をあとにして上って来ると、左手にきれいに揃っ たハンノキ林が先ず見えてくるのであるが、大きなキタコブシは、この林の南 の外れに立っている。4月の中旬になると、四方に広がる枝々にこぼれるばか りに花をつけ、みごとな白の広がりが出現する。
 県内でキタコブシは、嶺北の山地で見られ、コブシは丹南の山地から海岸沿 いに散在するのが特徴となっている。
 今では、福井県内で人手の入らない土地は、まことに少なくなっている。こ の湿原こそ、このままの姿で未来に伝えてゆきたいものです。

(文:増永迪男 写真:吉澤康暢)



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