◆ふくいの巨木 34.粟田部の薄墨ザクラ

 ●粟田部(アワタベ)の薄墨ザクラ   ・県指定天然記念物
    樹 種  エドヒガン(バラ科)
    幹回り  4 m
    樹 高  約22 m
    樹 齢  約400年
    所在地  今立郡今立町粟田部
    管理者  花筺保勝会

 桜の名所でもある花筺(カキョウ)公園の、今立町保健センター裏のコンクリ ート舗装路を登る。右側の赤い鳥居は金刀比羅神社参道。スギ木立ちを登りつ めた所に、薄墨桜、孫桜の標板がある。階段から、よく手入れされたスギ林を 歩く。道は広くて歩き易い。下のあずまやを左に見、上のあずまやを過ぎると 15分程でしめ縄の張られた孫桜に着く。標高約130 m。幹回り2.9 m、樹皮は縦 の割れ目で老桜を思わせる。1568年、朝倉景盛(アサクラカゲモリ)が行司岳に 行司岳城(粟田部城)を築いた記念に、薄墨桜の新梢を移し植えたと伝えられ る。
 さらに歩いて10分程で、すり鉢状の凝灰岩の壁の前の斜面に、しめ縄を張り 竹垣をめぐらした薄墨桜に着く。周囲は開けており、開花時は背面のシラカシ の緑に映えて見事である。根元はコブ状にふくれ、根回り5.7m、樹皮も荒々し く縦の割れ目を見せている。根元に大きな穴があり空洞になっており、主幹も 中程まで続いている。標高約180 m。
 このサクラは、室町時代世阿弥(ゼアミ)作と伝えられる謡曲「花筺(ハナカタ ミ)」にうたわれているゆかりのサクラとされ、標板には樹齢500〜600年とある。
 伝説によると、男大迹皇子(オオトノノオウジ)が滞在されていた時は、花は 淡紅色で匂いは四方に満ちていたが、皇子が都へ上った後は、花の色が次第に 薄れ、いつのまにか薄墨桜と呼ぶようになったという。

(文:八田七郎右ヱ門 写真:吉澤康暢)



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