◆ふくいの巨木 32.磯前神社のタブノキ

 ●磯前神社のタブノキ
    樹 種  タブノキ(クスノキ科)
    幹回り  4.5 m
    樹 高  約26 m
    樹 齢  約250年
    所在地  南条郡河野村河野
    管理者  磯前神社

 国道305号線河野村役場前に、クロマツなど常緑樹の緑豊かな海浜公園が続 いている。その一角に人魚姫の像が海に向き、手をかざしている。漁村にふさ わしく、漁業と人々の生活をイメージしているまなざしが感じられる。ここよ り細い路地に入り、通伝寺(ツウデンジ)横から狭い階段が180段続く。 12月に はスイセンやヤブツバキの匂う階段である。登りつめた所に楼門があり、左側 のスダジイの大木と並んで立っている。海からの高さが40 mで神域であること と、急峻な崩落から守るために保護されてきたことが想像できる。狭い範囲で あるけれども、タブノキ、スダジイ、ヤブツバキなどの暖地性常緑広葉樹林を 形成している。ヤブツバキの花にはヒヨドリやメジロがよく訪れる。
 タブノキは、嶺南から三国町にかけての海岸でよく見かけ、大木も多い。日 本海側では青森県まで、太平洋側では岩手県中部以南に分布している。黒い果 実を多数つけ、鳥類によって海岸沿いに分布したものであろうといわれている。 葉と樹皮に粘りけがあり、水を加えて粘液とし、線香を固めるのに用いられた。 葉は蚊取線香、樹皮は仏事用の線香、八丈島では黄八丈(織物)の色染めに用 いられた。材は柔軟で、器具、家具、建築などに用いられる。
 祭神は大己貴神(オオナムチノカミ)で、北前船(キタマエセン)交易の海上交 通に従事する人達の信仰が厚く、奉納された灯篭には、海上無難、家内安全と 船乗り達の祈りが刻まれている。

(文:写真 八田七郎右ヱ門)



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