◆ふくいの巨木 24.雄島のヤブニッケイ

 ●雄島(オシマ)のヤブニッケイ
    樹 種  ヤブニッケイ(クスノキ科)
    幹回り  20〜70 cm
    樹 高  8〜17 m
    樹 齢  約300年
    所在地  坂井郡三国町雄島
    所有者  大湊神社

 雄島橋を渡り、板状節理の石段を登り切ると道は三つに分かれる。右の道を 70 m程行くと、そこにヤブニッケイの純林がある。
 ナチュラリスト稲本正が“日本の森林を旅する”と題して北海道から沖縄ま でを取材した中に取り上げた雄島の森、稲本氏は『海から岩場、海浜植物、照 葉樹林が殆ど人の手が入らないままに残されている。限りなく貴重な雄島の自 然に絶賛の拍手を送りたい。どこを見ても画になるこの島に想を残して次の取 材地に向かった』と書かれている。
 昼なお暗い雄島の森は常緑広葉樹林で、ヤブニッケイ、トベラ、タブノキ、 シロダモ、スダジイ等の照葉樹に覆われている。縄文時代、日本列島の海岸部 は雄島の植生と同じ森に包まれていたと考えられる。約1万年の昔、海蝕で切 り離された雄島は、海を隔てる事によって開発から守られたのであろう。そし て、雄島にある大湊神社の神官達も“島が神であり、神は島である”と雄島の 自然に一切手を触れずに代々引き継いでこられた。
 ヤブニッケイの幹や枝は、冬の強い季節風のためか捩(ネジ)れて南に傾いて いる。樹皮が滑らかなせいか、多くの心ない落書きの跡が残って痛々しい。
 林を抜けると視界が大きく広がって、日本海が一望できる。足元の板状摂理 が沈み込む岩場を囲む紺色の海、7月には岩場に群生したコオリユリの花が彩 りを添えてくれる。
 ヤブニッケイの葉は、クチンや蝋(ロウ)が蓄積して、光を反射し水分の発散 を防いでいる。葉と樹皮は薬用にし、黒く熟した実からは香料を採る。

(文:榎本二郎 写真:吉澤康暢)



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