◆ふくいの巨木 13.荒島岳のブナ林

 ●荒島岳のブナ林
    樹 種  ブナ(ブナ科)
    幹回り  約3 m
    樹 高  約20 m
    樹 齢  不明
    所在地  大野郡和泉村・大野市

   かつてはブナは福井県の山地に最も普通に見られる樹木であったが、人間の 活動が盛んになるにつれて少しずつ伐採され、その生育地を狭めてきた。この 傾向は昭和30〜40年代で特に盛んになって、今では県下で見るべきブナ林は、 地図上で「点」として数えられるくらいになっている。
 しかし、ブナ林は、灰白色の幹の連なりの中に、下生えとしてチシマザサの 輝く緑を配し、多雪地帯の山地にみごとな景観を作っている。近年になって、 特にこの観点が再考されるようになり、福井のブナ林は貴重な景観資源である との見方も生まれている。人間の生活が更に近代化、機械化をされるにつれて、 福井の山地の残り少ないブナ林の必要性は、一段と高まることだろう。
 荒島岳1,524 mは、日本百名山の一つとして四季を通じて、全国より登山者を 迎えている山であるが、この山の登山道の周辺で典型的なブナ林を眺めること ができる。勝原スキー場よりのコースをとれば、その途中で美しいブナ林に入 る。その奥行の深い眺めに、ほっとした気分を味わうことになるだろう。また、 少々難コースになるけれども、荒島岳のブナ林が一段と厳しい姿を見せてくれ るのが冬期である。独立峰である同岳の頂上直下の林は、吹きつける季節風に よって純白に色どられる。

(文:増永迪男 写真:吉澤康暢)



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