◆ふくいの巨木(9.上小池の大グリ)
●上小池(カミコイケ)の大グリ
樹 種 クリ(ブナ科)
幹回り 5.6 m
樹 高 約18 m
樹 齢 約300年
所在地 大野市上小池
所有者 藤部照代(福井市文京1丁目)
上小池の駐車場から自然研究路を500 mも下ると、大グリの木がある。 ここ
は、植物分布上ブナ−ミズナラ域に入るから、クリは植栽されたものであろう。
昭和38年の豪雪後30数軒が離村し、ただ1軒残っている出作り小屋の加藤留吉
さんの話では、「クリのなり年には一石(約200リットル)も採れた」という。
昔はなり木責めという小正月の行事があり、長老が大グリをナタでたたきなが
ら「ならぬと伐るぞ」と脅かす。「なります。なります。」と子供達が応える。
木の傷口にあずきがゆをぬり、みんなであずきがゆを頂く木まじないがあった。
初栗は栗ごはんとし、あとは湯煮をし 108毎に数珠(ジュズ)にして天日干しの
後「あま」に吊して勝栗(カチグリ)とした。残りの栗は砂の中にいけておき、
こわ飯に混ぜ「晴れ食」用とした。クリ材は建物の柱や基礎材として貴重なも
のであるが、それでも保存されてきたのは、食糧源として価値が高かったから
である。
上小池の人の戸籍は 150年前までは石川県の白峰村にあり、それまでは白峰
村の出作り地であった。集落が形成されたときには、この大グリはすでによく
実がなっていたということから、樹齢200年までは史実として決定できる。 こ
のように、集落の栄枯盛衰を見届けてきた老木である。クリは風雪に強いが、
煤煙や酸性雨には弱い。大グリの生存は、クリーンな空気と水があった証しで
あったことを忘れてはならない。
(文:写真 松村敬二)
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