◆ふくいの巨木(8.越前大仏のアカシデ)

 ●越前大仏のアカシデ
    樹 種  アカシデ(カバノキ科)
    幹回り  5.9 m
    樹 高  約20 m
    樹 齢  約300年
    所在地  勝山市片瀬(大師山中腹)
    所有者  相互不動産株式会社

 越前大仏裏に仏母寺(ブツモジ)という禅寺がある。寺の北側の谷川に沿った 山道を、つづらおりに2キロほど登るとアカシデの大木がある。根元には、笏 谷石で作られた小さな祠(ホコラ)があり、御神体は福徳の弁財天である。片瀬 町民の言い伝えでは、根元の穴には今も白蛇が棲みついているという。御神木 として、いつも清酒と卵が供えてある。この林相は、イヌシデ、ウラジロノキ、 クヌギ、コナラ、アベマキの落葉樹林で、中には直径50cmのイヌシデが2本も 生育している。アカシデの巨木の樹皮は滑らかでひきしまっている。灰褐色の 美しい木肌なのに、下部はボディービルをしている人の筋肉のように木筋の凸 凹が激しく、縦に裂刻が入って右旋回をしている。木に登ろうとすると足が挟 まってとれないことがある。所々に、長い風雪や虫害で癌状の瘤があり、樹液 が涙のようにしみでていたいたしい。
 材は、心・辺材共に黄白色で、緻密で堅く弾性があって割裂しないので家具 材として重宝がられている。
 アカシデは陽樹なので、南斜面のこの山地では枝は北張りが短く、南張りが 長い。新葉に先だって花穂が垂れさがり、注連縄(シメナワ)の四手に見立てら れて「シデ」の名が付けられている。暮れには、村民によって太いしめ縄が周 囲5.9メートルの木に張られ、御神木として信仰されている。

(文:写真 松村敬二)


 
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