◆ふくいの巨木(6.薬師の大イチョウ)

 ●薬師の大イチョウ       ・勝山市指定天然記念物
    樹 種  イチョウ(イチョウ科)
    幹回り  7.7 m
    樹 高  約20 m
    樹 齢  約500年
    所在地  勝山市野向町薬師神谷
    所有者  白山神社

 勝山駅から北谷行きのバスに乗り、栃神谷で下車し、滝波川の橋を渡ると白 山神社が見える。「大イチョウ」は、この境内の奥の院にある。高さ数 mで大 小8本の大枝に分岐し、そこには常緑性のツルマサキ、オシャグジデンダ等が 着生し一段と荘厳さを増している。イチョウの木は雌雄異株(シユウイカブ)で あるが、この木は雄株である。イチョウは、シダ植物(胞子植物)と被子植物 (種子植物)の中間の裸子植物に属するが、その中でもマツ類と異なり受精の 際精子ができるので、ソテツと並んでシダ植物に近く、植物系統学上大切な植 物である。
 大きな乳こぶ「乳柱」が2本たれさがり、この雫を受けると心なしか乳の味 がする。乳柱の皮や木を煎じて飲用すると良く乳がでるようになるとの「言い 伝え」から「子育ての木」「乳母神(ウバシン)」の宿る御神木としてあがめら れてきた。
 ギンナン(種子)は、焼いたり茶碗蒸しに入れたりして食べるが、生食する と下痢をする。種皮の汁は、柿渋の代用として用いられたこともある。葉は本 に紙魚(シミ)をつかせないため、「しおり」として好んで用いられたものであ る。材は緻密で柔軟、光沢があり、加工が容易で狂いが少ないため、床板、将 棋板、将棋の駒、碁盤、印板、木魚等の彫刻材として好評である。
 境内に薬師如来を祀る薬師堂がある。この堂を建立した別当円長坊がこの木 を植えたといわれているから、約500年の樹齢がたっている。

(文:松村敬二 写真:吉澤康暢)



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