ふくいの巨木:はじめに
○ はじめに・・・
福井県は、古くから山紫水明に恵まれ豊かな自然景観を誇っています。春は
小さな緑に生命の息吹を感じ、夏は深緑の渓谷に遊び、秋は燃えるような紅葉
に郷愁を抱き、そして冬は白銀の山々に無垢の心を取り戻します。
その中で、悠久の時の流れとともに育まれた巨樹・巨木林は、日々の生活の
中で地域の象徴的存在として畏敬の念をもたれてきました。そして、種々の伝
説を生み、時には信仰の対象となったり、人々に安らぎと潤いを与えてきまし
た。
また、巨樹・巨木林を育む森林は、利水や国土の保全機能を有し、さまざま
な面で私達の生活とかかわってきたほか、野生生物の繁殖や生息の場所として
重要な自然環境を形成しています。
さらに、風雪に耐えたその年輪には過去の気候や環境の状況が記録され、そ
の土地の環境指標となりうるもので、学術的にも貴重な存在となっています。
このような巨樹・巨木林を保存し、次の世代へと引き継ぐことは私達の大き
な責務でありますが、その実態は不明のまま時代の流れとともに消失しつつあ
ります。そこで、このたび全県的に調査を実施して本書にまとめました。
本書が貴重な記録として長く残され、かつ県民が巨樹・巨木林に対する認識
を深め、自然保護の普及啓蒙に寄与することができれば幸いです。
終わりに、本書の作成に携わっていただきました方々に感謝の意を表します。
平成4年3月
福井県知事 栗 田 幸 雄
○ あとがき
自然環境の重要性が叫ばれて、すでに全国レベルでの植生調査も終わり、そ
の追跡調査も進められている。
一方、昭和63年にはあまり関心がなかった巨木調査も実施された。
本県でも、各市町村から申請のあった巨木について、高さや幹周りなどを測
定することになったが、降雪時になり奥山に行くことにができずに、平地を中
心に調査した。
調査をしていく中で、多くの申請もれを発見して、拡大していくばかりであ
った。奥山の巨木は別として、調査はほぼ終了することができた。
この調査を通して、巨木に対する意識の変化を感じた。巨木は単なる太い木
だけでなく、先祖の人々が長らく生活を共にしてきた歴史的なもので、その生
活史を樹形の中に多く読みとることができた。
神社・仏閣には多くの巨木があり、それらにはしめ縄がまかれて、「神が宿
る神木」としてあがめられている。それらの巨木と相対した時は、巨木から伝
わってくる畏敬の念で、頭が自然と下がってしまった。
この調査を終えた時、各調査員が巨木から受けたこの様子を、後世に残した
いとのことから「ふくいの巨木」の発刊となった。
全巨木をと考えたが、それは予算上の関係から代表的な巨木を、県下一円に
なるように選定した。
この書物の性格上、写真が命なので、特に吉沢康暢先生にお願いしました。
お忙しいにもかかわらず、お引き受けいただきたいことに対して感謝いたしま
す。
◆ 参考文献 ◆
巨樹・巨木林調査報告書−甲信越・北陸版−(環境庁)
牧野新日本植物図鑑(北隆館)
原色樹木大図鑑(北隆館)
日本植物誌(大井次三郎・至文堂)
日本老樹名木天然記念樹(帝国森林会編著)
最新園芸大図鑑・全七巻(誠文堂新光社)
福井県大百科事典(福井新聞社)
福井県神社誌(福井県神職会編)
各郡市町村誌等(各市町村教育委員会)
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