福井県環境基本計画
第5部  重点プロジェクトと具体的目標  

   環境の現状と地域特性等を踏まえて、重点的に取り組むプロジェクトとその目標を設定
  します。
   なお、目標については数値化を原則としますが、数値化になじまない項目の場合は定性
  的な表現とします。


1 湖沼の水質浄化

 北潟湖および三方五湖は、ともに国定公園に位置し、漁業や農業のほか、観光資源や県民の憩い
の場としても親しまれ、本県の貴重な財産となっています。
 しかし、両湖は水の循環が悪く、生活排水や農業系・自然系などのいわゆる面的発生源からの流
入負荷による富栄養化が進行して、利水上の障害も指摘されています。

【下水道等の整備】
 ・北潟湖流域については、九頭竜川流域下水道(*1)事業に組み入れ、産業系・生活系の汚濁負荷
  量の削減を図ります。
 ・三方五湖流域については、美浜町公共下水道や三方町特定環境保全公共下水道(*2)、農業集落
  排水処理施設(*3)の全面供用開始に向けて、これらの整備を推進します。

【農畜産業排水対策の推進】
 ・側条施肥田植機等の利用による水田からの肥料の流出防止対策や肥料・農薬の適正使用、家畜
  ふん尿適正処理などの対策を推進します。

【水質浄化能力の回復と向上】
 ・富栄養化の原因となる窒素、燐を吸収するなど水質浄化のはたらきがあるヨシ等の植栽を両湖
  で行い、浄化機能を向上させます。
 ・三方湖等で発生するアオコ対策として、動物プランクトンを利用した除去技術を開発し、その
  実用化を図ります。
 ・河川が本来有する浄化機能を回復させるため、自然の浄化機能を活用する水路等の整備を推進
  します。

【底泥のしゅんせつ】
 ・湖沼内に堆積しているヘドロのしゅんせつ等を行い、ヘドロからの窒素、燐の溶出を防止し
  ます。


     (*1)流域下水道:2以上の市町村の区域における下水を処理するもの。
     (*2)特定環境保全公共下水道:公共下水道のうち、市街化区域以外の区域に設置さ
    れるもの。
     (*3)農業集落排水処理施設:農業用用排水の水質を保全するとともに農村生活環境
    の改善を図ることなどを目的として、農業集落におけるし尿・生活雑排水等を処理する施
    設であり、一種の下水道とみることもできる。

      ┏━   目標 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
      ┃                             ┃
      ┃ ○ 湖沼の水質                     ┃
      ┃   ・北潟湖および三方五湖のCOD(化学的酸素要求量) ┃
      ┃    について、環境基準を概ね100%達成します。   ┃
      ┃   ・平成14年度までに、北潟湖および三方湖の窒素および┃
      ┃    燐について、暫定目標を概ね100%達成します。  ┃
      ┃                             ┃
      ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛


2 都市中小河川の水質保全

 福井市の狐川や底喰川など都市近郊を流れる中小河川では、流域での宅地開発等に伴い、河川が
有する浄化能力を超える量の汚濁物質が流入し、かつて水遊びや魚釣ができた川が汚れ、本来の水
質を維持することができなくなっています。

【公共下水道の整備】
 ・増加する生活排水による汚濁を軽減するため、重点的、効率的な下水道整備を推進します。

【合併処理浄化槽への転換】
 ・合併処理浄化槽設置に対する補助制度を充実し、単独処理浄化槽の合併処理浄化槽への転換を
  促進します。

【生活排水対策モデル事業の推進】
 ・生活排水対策推進モデル事業を実施し、市町村と流域住民が連携した取組を促進します。

【水循環の確保】
 ・緑地の保全や雨水の地下浸透の促進などにより、都市地域における水循環の確保を図ります。

【水質浄化能力の回復】
 ・多自然型の川づくりを進めることにより、河川や水路自体の浄化能力の向上を図り、魚・昆虫
  などの水生生物や水辺植物等の生息・生育環境を復元します。

【環境基準の指定】
 ・ユスリカ(*1)が発生し、生活への影響が認められる中小河川について、環境基準の指定を行い、
  環境基準を維持・達成するための水質保全対策を推進します。また、水質が環境基準値を達成
  している河川についても、利水状況や水質の現況等に応じて環境基準を見直し、より一層きれ
  いな河川水質をめざします。

【水質シミュレーションの実施】
 ・汚濁発生源の状況や水量、水質調査等総合的な調査と水質シミュレーション(*2)を行います。

     (*1)ユスリカ:ハエ目ユスリカ科の総称であるが、水質の汚濁した河川や都市下水
    路に大発生し問題となる種は、吸血性のないセスジユスリカがほとんどである。
     (*2)シミュレ−ション:実験内容を数式モデルによって組立て、これをコンピュ−
    タ−処理することによって、実際の場合と同じ結果を得ようとする技術手法。計算による
    将来予測手法。


      ┏━   目標 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
      ┃                              ┃
      ┃ ○ 都市中小河川の環境基準                ┃
      ┃   ・都市中小河川について、順次、環境基準を設定し、   ┃
      ┃    環境基準を概ね100%達成します。         ┃
      ┃                              ┃
      ┃ ○ 下水道等の普及率等                  ┃
      ┃   ・平成12年度末における下水道(*1)の処理人口普及率を、┃
      ┃    平成7年度末の47%から概ね62%とします。    ┃
      ┃   ・平成12年度末における農業集落排水処理施設の着工  ┃
      ┃    地区数を、平成7年度末の89地区から139地区と  ┃
      ┃    します。                      ┃
      ┃   ・平成12年度末における漁業集落排水処理施設(*2)の  ┃
      ┃    完了地区数を、平成7年度末の9地区から18地区と  ┃
      ┃    します。                      ┃
      ┃                              ┃
      ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

     (*1)下水道:流域下水道、公共下水道、および特定環境保全公共下水道(市街化区
    域以外に設置される下水道)のこと。
     (*2)漁業集落排水処理施設:漁村の生活環境の改善を図ることなどを目的として、
    漁業集落におけるし尿・生活雑排水等を処理する施設であり、一種の下水道とみることも
    できる。

3 資源としての地下水の保全

 地下水は、温度が一定でその水質が良好であるため、飲み水などの生活用水をはじめ工業用水や
農業用水などの水資源として広く利用されています。特に、本県では水道水の約74%を地下水で
賄っており、極めて貴重な資源となっていますが、一部の地域では、地下水の汚染や冬期の地下水
位低下などの障害が発生しています。

【地下水汚染の未然防止】
 ・有害化学物質による地下水汚染を防止するため、水質汚濁防止法や公害防止条例による規制を
  徹底します。
 ・化学物質の有害性や特性(健康影響、生態影響、分解性、蓄積性)、環境に排出された場合の
  動態、排出抑制対策等に関する情報を化学物質対策マニュアルとして整備し、広く情報の提供
  を行います。
 ・事業者に対し、化学物質の適正な使用・管理・処理に関する指導を徹底し、これらの化学物質
  の生産・流通・使用・廃棄の過程からの環境への排出を低減します。
 ・地下水質の計画的な監視を行い、地下水汚染の早期発見と汚染原因の特定に努めます。

【汚染地下水の浄化】
 ・汚染の実態に応じ、汚染者負担の原則を基本とした汚染地下水の揚水、汚染土壌の除去などの
  浄化対策を進めます。

【地下水のかん養】
 ・水源地域において、複層林の造成や山地の保全、農地の保全を積極的に進め、「自然のダム」
  と呼ばれる森林や農地の水源かん養機能の維持・向上を促進します。
 ・都市緑地の保全や透水性舗装、雨水浸透ますの設置を進め、都市地域における雨水の地下浸透
  を推進します。

【過剰揚水の防止】
 ・地下水を散水しない効率的な消雪技術の開発とその普及に努め、冬季における地下水の過剰揚
  水を防止します。


      ┏━   目標 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
      ┃                             ┃
      ┃ ○ 地下水汚染地域の水質浄化              ┃
      ┃   ・地下水汚染地域のすべてについて、浄化基準(*1)を  ┃
      ┃    達成します。                   ┃
      ┃                             ┃
      ┃ ○ 有害化学物質による環境汚染の防止          ┃
      ┃   ・有害化学物質の環境への排出を規制し、新たな環境  ┃
      ┃    汚染を生じさせない。               ┃
      ┃                             ┃
      ┃ ○ 地盤沈下の防止                   ┃
      ┃   ・地盤沈下地域(*2)の地下水揚水量を、平成8年度レベ ┃
      ┃    ルに抑制します。                 ┃
      ┃   ・その他の地域については、現状の地下水位を低下させ ┃
      ┃    ない。                      ┃
      ┃                             ┃
      ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

     (*1)浄化基準:平成8年の水質汚濁防止法の改正に伴い、人の健康に係る被害を防
    止するために必要な限度として定められた基準。その数値は環境基準値と同一である。
     (*2)地盤沈下地域:「福井県地盤沈下対策要綱」に基づき指定された地域。9年2
    月現在、福井市南部地域の約14kuが指定されている。


4 自動車交通公害の改善

 本県の自動車保有台数は年約4%の割合で増加し、平成7年度には57万台(二輪車を含む。)
に達し、10年前に比べ約1.4倍となっています。
 大気汚染物質の排出や騒音の発生など、自動車は環境に対して大きな負荷を与えており、道路周
辺では二酸化窒素の環境濃度が住居地域の2倍以上の濃度となっています。また、騒音についても、
すべての時間帯で環境基準を達成している地点は全体の2割に満たない状況となっています。

【低公害車の普及】
 ・電気自動車、天然ガス自動車などの低公害車を普及するため、低公害車の率先導入や導入に
  対する優遇措置について検討を進めます。

【自動車の合理的利用】
 ・不要不急の自動車の使用や不必要なアイドリングの停止等、環境への負荷を減少する自動車の
  使用法について、積極的に普及啓発を行います。

【公共交通機関(*1)の活用】
 ・自動車に依存した交通体系から環境保全の視点を取り込んだ交通体系に移行するための方策に
  ついて、検討を進めます。
 ・公共駐輪場の整備やバス停の充実など公共交通機関の利便性、機能性を向上させるための施設
  整備を図り、徒歩や自転車利用などの人流対策を進めます。

【交通流の改善】
 ・バイパス道路の整備、交差点の改良、JRの立体高架化など交通インフラ(*2)の整備等により、
  交通流の円滑化を進めます。

【沿道の緑化】
 ・大気の浄化や騒音の低減を図るため、樹木の大気浄化能力(*3)を考慮した道路沿道の緑化を
  進めます。

【排出ガス影響の調査研究】
 ・発がん性物質が含まれることが指摘されているディーゼル排気微粒子による環境影響について、
  調査研究を進めます。

     (*1)公共交通機関:公共交通機関は大量に人員を輸送できることから、運輸省の資
    料によると、人を輸送するために要するエネルギ−でみると、鉄道を1とした場合、営業
    用バスは1.74、自家用乗用車は5.07となります。
     (*2)インフラ:道路・港湾・河川・鉄道・通信情報施設・下水道・学校・病院・公
    園公営住宅など、社会的経済基盤と社会的生産基盤とを形成するものの総称。インフラス
    トラクチャ−の略。
     (*3)樹木の大気浄化能力:大気浄化能力の大きい樹種としては、ポプラやケヤキな
    どがあるが、これらはまた大気汚染に感受性が高い(大気汚染耐性が低い)ことが知られ
    ている。


      ┏━   目標 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
      ┃                             ┃
      ┃ ○ 道路周辺の窒素酸化物                ┃
      ┃   ・道路周辺における窒素酸化物について、環境基準を  ┃
      ┃    概ね100%達成します。             ┃
      ┃                             ┃
      ┃ ○ 道路騒音                      ┃
      ┃   ・道路騒音について、要請限度(*1)を概ね100%達成し┃
      ┃    ます。                      ┃
      ┃                             ┃
      ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

     (*1)要請限度:騒音規制法に基づき、自動車騒音によって道路周辺の生活環境が著
    しくそこなわれている場合であって、かつ、超えた場合には都道府県の公安委員会に対し
    道路交通法による措置を取るよう要請する基準。


5 廃棄物の減量とリサイクル

 大量生産、大量消費、大量廃棄型の社会や経済性、効率性が優先している社会では、そのシステ
ム自体が廃棄物の発生を増大させ、さらに廃棄物の質の多様化を招いています。
 「廃棄物もまた資源である」との認識に立って、物づくりの段階から廃棄物の発生を極力抑制し、
リサイクルを促進する循環型の社会システムへの変革が求められています。

【廃棄物の発生抑制】
 ・容器包装リサイクル法の施行を契機に、県民に対し、ごみの減量化やリサイクルの意識啓発を
  さらに推進します。
 ・使い捨て製品の開発・製造の見直しや過剰包装の自粛などを、事業者に働きかけます。
 ・買物袋持参運動や過剰包装の自粛、使い捨て製品の使用自粛など、ごみの発生抑制について
  県民の理解と協力が得られるよう、普及啓発を進めます。

【リサイクルの推進】
 ・製造の段階から廃棄物の処理を念頭においた製品づくりなど、事業者のリサイクルへの取組を
  推進します。
 ・グリーンコンシューマー(*1)運動への支援や環境負荷の少ない商品(エコマーク商品)の情報
  提供を行います。
 ・事業者・消費者としての県の率先実行行動計画に基づき、県は再生品・省資源商品を率先して
  購入します。
 ・資源回収・再生業者の育成・支援など、回収、再生ルート等リサイクルシステムの活性化に
  ついて検討を進めます。
 ・道路の整備等公共事業において再生資材の利用を進めます。

【一般廃棄物処理施設の整備】
 ・環境への配慮を十分に行いながら、市町村等に対して、再利用・再生利用施設の整備や焼却
  余熱の利用などに関する指導・支援を行うとともに、地域の実情を考慮しながら広域的な一般
  廃棄物処理施設の整備を促進します。

【産業廃棄物処理施設の整備】
 ・産業廃棄物処理施設(中間処理、最終処分場)がいわゆる「迷惑施設」としてとらえられ、施
  設の確保が困難となっている状況を踏まえて、(財)福井県産業廃棄物処理公社の施設の充実を
  推進します。また、県民の信頼が得られる安全で安心な施設の整備を推進します。



     (*1)グリーンコンシューマー:商品やサ−ビスを購入する際に、品質や価格だけで
    なく「環境」の視点を重視し、なるべく環境への負荷の少ないものを選ぶ消費者のこと。


      ┏━   目標 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
      ┃                             ┃
      ┃ ○ ごみの年間排出量                  ┃
      ┃   ・平成12年度末におけるごみの年間排出量を、予想排出┃
      ┃    量39.6万トン(平成12年度末)から30%削減し、 ┃
      ┃    27.7万トンとします。             ┃
      ┃                             ┃
      ┃ ○ ごみの資源化                    ┃
      ┃   ・ごみのリサイクルの推進を図り、資源化率の向上に  ┃
      ┃    努めます。                    ┃
      ┃                             ┃
      ┃ ○ 産業廃棄物の排出量・最終処分量           ┃
      ┃   ・平成14年度末における産業廃棄物の排出量を、予想 ┃
      ┃    排出量161.5万トン(平成14年度末)から8% ┃
      ┃    削減し、148.6万トンとします。        ┃
      ┃   ・平成14年度末における産業廃棄物の最終処分量を、 ┃
      ┃    予想最終処分量78.1万トン(平成14年度末)  ┃
      ┃    から51.5万トンに削減します。         ┃
      ┃                             ┃
      ┃ ○ 建設廃棄物のリサイクル               ┃
      ┃   ・平成12年度末における建設廃棄物のリサイクル率を ┃
      ┃    80%とします。                 ┃
      ┃                             ┃
      ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛


6 まちの個性が活かされた景観の形成

 まちなみは、個々の建築物が連なり集まって構成されています。このため、人々の感性を満足さ
せる良好なまちなみ景観を形成するためには、道路や公共施設の整備はもとより、その地域に生活
する人々と行政が互いに協力し合って、景観上の配慮を行うことが必要となっています。

【地域の顔づくり】
 ・駅の周辺や商店街などを地域の顔に育てるとともに、それらを核とした周囲の景観づくりを
  進めます。
 ・地域のシンボルとなる河川・街路・公園・樹林や市街地を流れ地域の人々に親しまれる河川等
  においては、地域の顔となるよう景観整備に努めます。

【景観のネットワーク】
 ・地域の景観を形成する上で重要な要素である道路や鉄道について、それらの機能面に加え、
  景観の面に配慮した整備を進めます。
 ・堤防や護岸等の連続性によって景観を構成している河川・水路については、周辺との調和に
   配慮して、地域特性を活かした緑化、環境護岸、遊歩道、サイクリングロードなど、水辺と
  親しめる景観づくりを進めます。

【洗練された都市景観の形成】
 ・商業施設や業務施設等、都市的機能が集積している都市部については、建築物や都市施設の
  色彩やデザイン等について十分に配慮し、緑や水のあるオープンスペース等の潤いと安らぎの
  場づくりを進めます。
 ・住宅地については、緑化等によって落ち着きのある景観づくりを進めます。
 ・公園・広場の整備に当たっては、シンボル的な樹木の植栽、せせらぎの整備など、緑や水辺の
  演出によって自然とふれあえる施設を整備します。
 ・市街地面積に対する緑地面積の拡大を図り、さわやかな風や心地よい木陰を感じられる都市
  空間の整備に努めます。

【景観づくりへの住民の参加】
 ・景観は、そこに住む地域の人々によって形成されるものであり、良好な景観づくりには地域の
  人々の協力が不可欠なことから、地区計画(*1)・建築協定(*2)・緑地協定(*3)などの制度を
  積極的に活用し、地域の人々の景観づくりへの参加を促します。
 ・まちの美観をそこなうごみ・空き缶の散乱や不適切な屋外広告物の掲示を防止するための啓発
  事業に取り組みます。

     (*1)地区計画:土地や建物の所有者などの住民が主役となって、話合い、考えを出
    し合いながら地区の実情に応じたまちづくりの計画を作ることを言います。作成された地
    区計画案は、都市計画審議会を経て、市町村が都市計画として決定します。
     (*2)建築協定:建築基準法が全国一律の基準を定めているのに対して、地域の個性
    に合った住みよいまちづくりをするため、住民が合意に基づき基準を定め、お互いに守り
    合っていくことを約束する制度。建築基準法に根拠となる条文が規定されている。
     (*3)緑地協定:緑豊かな潤いのあるまちなみをつくるため、住民同士が話合い、ブ
    ロック塀を生け垣とすることや、植える樹木の種類、場所などのル−ルを約束するもの。


      ┏━   目標 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
      ┃                              ┃
      ┃ ○ 都市公園                       ┃
      ┃   ・平成12年度末における県民一人当たりの都市公園面積 ┃
      ┃    を、平成7年度末の12.35kuから14kuとします。┃
      ┃                              ┃
      ┃ ○ 道路の緑化                      ┃
      ┃   ・一般国道および県道の緑化済実延長を、平成4年度を  ┃
      ┃    100として、平成22年度に200とします。    ┃
      ┃                              ┃
      ┃ ○ 人にやさしい歩道                   ┃
      ┃   ・人口集中地区(*1)およびその他都市部の一般国道およ  ┃
      ┃    び県道の歩道延長に対する「人にやさしい歩道(*2)」  ┃
      ┃    延長の割合を、平成22年において平成4年度末の   ┃
      ┃    17%から概ね50%とします。           ┃
      ┃                              ┃
      ┃ ○ 広幅員歩道等                     ┃
      ┃   ・平成22年度における広幅員歩道等(*3)の延長を、平成 ┃
      ┃    4年度の74qから210qとします。        ┃
      ┃                              ┃
      ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

     (*1)人口集中地区:1 当たりの人口密度が4,000人以上である国勢調査区が隣接
    し合って、人口5,000人以上の地域を構成している場合に、この地域を「人口集中地区」
    (略して「DID」)と言う。
     (*2)人にやさしい歩道:人口集中地区およびその他都市部の一般国道や県道の歩道
    について、透水性舗装やカラ−舗装を行う事業の名称。
     (*3)広幅員歩道等:幅員が概ね3m以上の歩道および自転車歩行者道のこと。


7 生物多様性の保全

 本県は、豊かで多様な自然環境に恵まれ、その中で、多くの種類の野生動植物が生息・生育して
います。
 しかし、近年の都市化の進展や各種の開発事業等によって、野生動植物の生息・生育地である森
林や緑地、湿地等が減少しつつあります。

【自然特性の明確化】
 ・地形・地質、植生、鳥獣、昆虫、両生・爬虫類、陸水生物、景観といった自然特性ごとに自然
  環境の現状を詳細に調査し、保全すべき地域や種を明らかにした「自然環境管理計画」を策定
  し、多様な自然環境の保全に努めます。

【希少な種の保全、保護】
 ・本県における希少で保護上重要な野生動植物種を選定し、その保全に努めます。
 ・イヌワシ(*1)、ヤシャゲンゴロウ(*2)等「種の保存法」で指定された絶滅のおそれのある種に
  ついて、生息状況の把握に努めるとともに、生息環境に関する調査・研究を行い、その保護
  対策を進めます。

【ビオトープ】
 ・開発事業の実施に際しては、動植物の生息・生育環境に配慮し、多様な動植物の生息・生育
  空間として貴重な河川・湖沼・自然海岸や湿地・ため池等の確保に努めます。
 ・環境を緑と水が織りなす連続的な空間として整備し、野鳥や昆虫、水生生物などの身近な生き
  物が生息し、移動しやすい空間づくりを進めます。

     (*1)イヌワシ:ワシタカ目ワシタカ科の鳥類。全長約85cm、翼の開張は約2m、
    飛翔力に優れ、黒褐色をした山ワシで、国の天然記念物にも指定されている。
     (*2)ヤシャゲンゴロウ:甲虫目ゲンゴロウ科の昆虫。水生で、今庄町夜叉ヶ池だけ
    に生息する固有種である。

      ┏━   目標 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
      ┃                             ┃
      ┃ ○ 自然植生の保全                   ┃
      ┃   ・植生自然度(*1)が9から10の地域について、原則と ┃
      ┃    してすべて保全するよう努めます。         ┃
      ┃                             ┃
      ┃ ○ 希少な種の保全・保護                ┃
      ┃   ・平成10年度までに福井県版レッドデータブック(*2) ┃
      ┃    を作成し、希少種の保全・保護を図ります      ┃
      ┃                             ┃
      ┃ ○ ビオトープ                     ┃
      ┃   ・多様な動植物の生息・生育空間として貴重な河川・  ┃
      ┃    湖沼・自然海岸や、湿地・ため池等の改変を最小限に ┃
      ┃    とどめます。                   ┃
      ┃   ・開発行為によってやむを得ず失われる動植物の生息・ ┃
      ┃    生育空間を復元するため、代償措置としての自然環境 ┃
      ┃    の創出等により、ビオトープを確保します。     ┃
      ┃                             ┃
      ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

     (*1)植生自然度:土地の自然性がどの程度残されているかを10ランクに区分して
    指標化したもの。
     (*2)レッドデ−タブック:絶滅の危機にある野生生物の現状を記録した資料集のこ
    とをいい、国際自然保護連合が、1966年以来発行している。日本では、平成3年の環
    境庁「日本の絶滅のおそれのある野生生物(脊椎動物、無脊椎動物編)」をはじめ、植物、
    地形などについても関係機関等から発行されている。


8 自然とのふれあいの増進

 本県は変化に富んだ豊かな自然に恵まれていますが、今日、都市化が進展する中で、ふるさとを
構成する重要な要素である身近な緑や小川等の減少に伴い、自然とふれあう機会が少なくなってき
ています。
 また、人間との関わりの中で形成・維持されてきた、身近な動植物の生息・生育環境である田畑・
里山・里地等の自然や、鎮守の森・社寺林等の保全が求められています。

【自然公園】
 ・県民がいつでも身近な自然に親しむことができるよう、自然公園内における施設整備を進めま
  す。
 ・海の生物とのふれあいの場を整備するとともに、特に海中公園地区においては、ふれあい拠点
  の整備を進めます。

【小動物とふれあえる空間】
 ・身近な自然とのふれあいを高めるため、自然観察の森やホタル・メダカ等の小動物とふれあえ
  る空間の整備を進めます。

【多様性に富む森林】
 ・自然体験や環境学習の場として利用することができるよう、原生的な森林の保全、広葉樹林等
  多様な森林の整備を進めます。
 ・生活空間にあるシンボル的な樹木や森を保全し、身近な自然とふれあえる場の確保に努めます。
【里地自然】
 ・二次的自然が多く、農林水産等さまざまの人間活動を通して自然と人間が関わりを持ち、また、
  ふるさとの風景の原型でもある里地自然について、生物の生育・生息環境の保全や景観への
  配慮を進めます。
 ・過疎化や高齢化が進行している地域を中心に、森林、農地等の有する環境保全能力の維持を
  図り、雑木林等の二次的自然を保全します。
  また、里地の身近な野鳥や野草等と親しめるよう、広場や遊歩道、自転車道等の整備を進め
  ます。


      ┏━   目標 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
      ┃                              ┃
      ┃ ○ 里地・里山の保全                   ┃
      ┃   ・里地・里山の豊かな緑やきよらかな水を保全し、野鳥  ┃
      ┃    や昆虫など身近な動植物が生息しやすく、人々が身近  ┃
      ┃    に自然とふれあえる空間を確保します。        ┃
      ┃                              ┃
      ┃ ○ ふれあいの場                     ┃
      ┃   ・フナやメダカが泳ぎ、素足で水遊びが楽しめる川の   ┃
      ┃    実現をめざします。                 ┃
      ┃   ・市街地等に残っている社寺林・巨木・名木など、親し  ┃
      ┃    みのある緑の保全に努めます。            ┃
      ┃                              ┃
      ┃ ○ 自転車道の整備                    ┃
      ┃   ・平成12年度の自然とふれあえる自転車道の整備延長を ┃
      ┃    平成7年度の70qから95qとします。       ┃
      ┃                              ┃
      ┃ ○ 長距離自然歩道の整備                 ┃
      ┃   ・中部北陸自然歩道の整備を、平成12年度までに完了  ┃
      ┃    します。                      ┃
      ┃   ・近畿自然歩道については、平成14年度の完了をめざし、┃
      ┃    整備を進めます。                  ┃
      ┃                              ┃
      ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛


9 地球環境保全への取組


 地球環境問題は、人類共通の国際的な課題ではありますが、その解決のためには、地域において
もそれぞれの立場に応じて、環境への負荷の低減を図るための行動に取り組むことが求められてい
ます。

【地球温暖化対策】
 ・公共施設の整備に当たっては、太陽光発電システムや太陽熱利用などクリーンエネルギーの
  利用・導入に努めます。
 ・ごみ焼却の余熱など未利用エネルギ−の公共施設での有効利用を進めます。
 ・県民、事業者に対し、より一層の省資源・省エネルギ−を呼びかけるとともに、低利の資金
  融資制度などの活用により、生産工程内でのソーラーシステム装置の導入などを進めます。
 ・リサイクル、コンポスト化の推進により、廃棄物の焼却に伴う二酸化炭素の排出量の削減に
  努めます。

【オゾン層保護対策】
 ・フロン回収ルートおよび回収フロンの輸送体制の整備など、早急に回収システムを確立します。
 ・フロン回収の支援策として、廃家電品などの最終処分を担う市町村および一部事務組合に対し、
  フロン回収機および回収用ボンベの設置に対する補助を行います。

【酸性雨対策】
 ・酸性雨の監視を行うとともに、土壌・植物などの生態系、文化財等の建築物に対する影響に
  ついて、調査・研究を進めます。


      ┏━   目標 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
      ┃                             ┃
      ┃ ○ 二酸化炭素排出量                  ┃
      ┃   ・二酸化炭素の排出量を、平成12年度以降、平成2年 ┃
      ┃    レベル(*1)に抑制するよう努めます。        ┃
      ┃                             ┃
      ┃ ○ 硫黄酸化物排出量                  ┃
      ┃   ・硫黄酸化物の排出量を、平成6年レベル(*2)に抑制  ┃
      ┃    するよう努めます。                ┃
      ┃                             ┃
      ┃ ○ 窒素酸化物排出量                  ┃
      ┃   ・窒素酸化物の排出量を、平成6年レベル(*3)に抑制  ┃
      ┃    するよう努めます。                ┃
      ┃                             ┃
      ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

     (*1)平成2年レベルの二酸化炭素排出量:県内のエネルギ−消費量をもとにして、
    二酸化炭素排出係数などを考慮して、算出した。(216万トンC/年、793万トン
    CO2/年)
     (*2)平成6年レベルの硫黄酸化物排出量:大気汚染物質排出量総合調査結果および
    燃料販売実績などをもとに試算した。(0.9万トンSO2/年)
     (*3)平成6年レベルの窒素酸化物排出量:固定発生源については大気汚染物質排出
    量総合調査結果などをもとにして、移動発生源については幹線道路の交通量などをもとに
    して、各々試算した数値を加算した。(1.5万トンNO2/年)


10 環境教育・環境学習の推進


 環境にやさしい生活様式や社会経済システムを実現するためには、県民一人ひとりが人間と環境
との関わりについて、科学的知見に基づく理解と認識を深めることが必要となっています。

【教育・学習拠点の整備】
 ・「人間と環境の関わりについて考え、学ぶ拠点」、「環境情報の収集・提供の拠点」となる
  施設のあり方などについて検討を進めます。

【環境学習の充実】
 ・体験や環境調査を通して環境への理解と認識を深めるため、環境アドバイザ−の充実や人材の
  育成を図るとともに、自然観察会や地域環境ジュニアパトロール(*1)等の事業を進めます。

【学校等での環境教育】
 ・子供の頃から環境に関する認識を高め、環境保全に対する責任と役割を果たす態度や能力を
  形成するため、学校における体系的な環境教育のあり方について検討します。
  特に、自然の中でのふれあいや地域での実践活動など、家庭や地域社会と連携した体験に基づ
  く環境教育をより一層推進します。

【環境情報の充実と活用】
 ・利用者のニーズに応じた、正確で分かりやすい情報を整備します。
 ・インターネットを利用した環境情報システム「みどりネット(*2)」を充実し、利用しやすい
  効率的な情報の提供に取り組みます。


     (*1)地域環境ジュニアパトロ−ル:県内の小中学生が、主に夏休み期間中に、身近
    な環境問題などをテ−マに調査研究などを行う活動。
     (*2)みどりネット:環境に関する情報をパソコン通信ネットワ−クで常時提供して
    いるシステムの名称。福井県が全国に先駆けて構築した独自のシステム。


      ┏━   目標 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
      ┃                             ┃
      ┃ ○ 環境アドバイザー、フォレストサポーター(*1)など環境 ┃
      ┃   教育の指導者を拡充します。             ┃
      ┃                             ┃
      ┃ ○ 平成12年度までにナチュラリスト(*2)を概ね     ┃
      ┃   10,000人に拡充します。            ┃
      ┃                             ┃
      ┃ ○ 森や海などとのふれあいを通した体験学習や環境学習の ┃
      ┃   機会や場を充実します。               ┃
      ┃                             ┃
      ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

     (*1)フォレストサポ−タ−:本県特有の森林特性や、森林・林業の現況の解説、ま
    た野外体験学習の指導などをボランティア活動として行う指導者のことを言い、県が認定
    し、登録する。
     (*2)ナチュラリスト:一般には、自然に関心を持って積極的に自然に親しむ人や自
    然の動植物を観察・研究する人のことを指すが、県では、これらの人々を「ナチュラリス
    ト」として登録することにより、福井のすぐれた自然環境を県民が自ら守り育てていこう
    とする活動を支援している。


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