福井県環境基本計画
 第3部 長期的な目標

  第1 長期的な目標

    環境基本条例の趣旨にてらし、豊かで美しいふるさと福井の環境を将来の世代へ引き継ぎ、
   また持続的に発展していける社会を築くという考え方に立って、以下の長期的な目標を設定
   します。

   (1) 健康で文化的な生活を営むことができる環境

     環境は、大気、水、土壌および生物等の間を物質が循環し、生態系がバランスを保つ
    ことによって成り立っています。今日の環境問題の多くは、本来環境が有している復元
    能力を超える負荷が環境に加えられることによってもたらされたものです。
     したがって、将来にわたり健康で文化的な生活を営むことができる環境を維持・形成し
    ていくため、自然の持つ再生能力や浄化機能の回復と向上を図るとともに、事業活動や
    日常生活からの汚染物質や廃棄物の発生を減少させる施策を推進します。

   (2) 自然と共に生きることができる環境

     自然は、人類の生存基盤としての役割を果たしていますが、われわれ人類もまた自然を
    構成する一員であることを深く認識し、多様な生物が生息・生育できる環境を確保する
    ことが必要です。
     本県の有する豊かで多様な自然環境を、県民共有の貴重な財産として保全・活用し、
    将来にわたって自然と共に生きることができるよう、自然の形態や地域の社会的条件に
    応じた総合的・計画的な施策を推進します。

   (3) 快適な日常が実感できる環境

     生活水準の向上や余暇時間の増大により、人々の価値観が多様化し、これまでの利便性
    や経済性を超えて、生活の質を重視する時代に変化してきています。
     とりわけ、地域の個性が活かされたまちなみや緑と親しむことができる公園など、アメ
    ニティ(*1)資源が保全・確保され、活かされたまちは、快適で住み良い環境であるととも
    に、地域のアイデンティティ(*2)を高め、訪れる人々にとっても魅力となります。
     そこで、草花や虫の音など四季の移ろいが実感できるとともに、星が見える夜空など、
    人と自然、都市と自然が溶け合い、住んで、心がやすらぐ環境づくりに向けた施策を推進
    します。

     (*1)アメニティ:一般的には「快適環境」と訳されるが、「本来の環境、環境のあ
    るべきすがた」とも解釈される。
     (*2) アイデンティティ:本来、「自己が環境や時間の変化にかかわらず、連続す
    る同一のものである」との哲学分野の用語であったが、近年、汎用語となり、「主体性」
    と解されることが多い。

   (4) 地球環境保全への貢献

     今日の私たちの日常生活や事業活動は、資源とエネルギ−の大量消費に支えられていま
    すが、こうした活動が地球環境に大きな負荷を与え、その結果、地球の温暖化、オゾン層
    の破壊、酸性雨などの直接的な影響や、砂漠化の進行、野生生物の減少などの間接的な
    影響をもたらしています。
     このため、地球環境問題の解決をめざし、「地球規模で考え、足元から行動する」との
    理念に基づき、地域からの取組を推進します。

   (5) 環境の保全と創造をめざした参加型社会の基盤づくり

     都市生活型公害から地球環境問題までの今日のさまざまの課題に取り組むためには、
    県民・事業者・行政すべての主体が自らの行動を環境に配慮したものに変えていくことが
    必要です。
     そこで、各主体の公平な役割分担のもと、協力・連携して、環境に配慮した自律的・
    積極的な取組が行われるよう誘導するため、環境学習の推進や指導者の育成、環境技術に
    関する調査研究等の施策を推進します。

  第2 長期的な目標を実現するために

    地球温暖化やオゾン層破壊などの地球環境問題から、廃棄物問題や生活排水による水質
   汚濁などの身近な問題に至るまで、今日の環境問題は私たちの生活様式や社会経済システム
   と深く関わっています。
    例えば、現在の私たちの消費生活の豊かさは、かなりの部分が海外に依存していますが、
   化石燃料や食料などの消費財を一方的に輸出あるいは輸入することは、地球環境の物質収支
   バランスを破壊し、土壌などの地球環境を悪化させるとの指摘もなされています。
    人類がこれからも存続していくためには、地球の資源と環境が有限であることを前提と
   して、持続的な活動が続けられるようにしていく必要があります。
    言いかえれば、第1で掲げた長期的な目標を達成するためには、生活の利便性や物質的な
   豊かさの追求に重きを置くこれまでの考え方を見直すことにより、大量生産、大量消費と
     大量廃棄によって成立している現在の社会経済システムを少しずつでも変えていく努力が
   求められています。
    しかしながら、これらの問題が社会のあり方そのものにかかっていると力説してみても、
   日常生活のなかで、自らは何をなすべきかあるいは自らに何ができるかといったことについ
   て、多くの人々にとって具体的には見えてこないというのが実情です。
    そこで、第4部以降では、長期的な目標達成へのステップとして、10年後を目途にした
   施策を展開するとともに、具体的目標を掲げた重点プロジェクトに取り組むことにより、
   さまざまの環境問題の解決をめざします。


[目次へ戻る][次へ進む]