事業概要 図書内容 調査予測評価内容 参考文献 審査意見・見解 経過

敦賀LNG基地建設事業環境影響評価

環境の保全の見地からの審査者の意見と事業者の見解


知事の意見 事業者の見解
 事業予定地のうち中池見は、かつては水田として稲作が営まれていたが、 軟弱な地盤のため大規模な土地改良は行われず、現在はその約5分の4において耕作の放棄や休耕田化が進んでいる。 その結果、遷移段階の異なる複数の植生タイプが存在し、多種多様な動植物相がみられる。特に現在も草刈りや 田起こしといった人為が加えられている管理休耕田には、希少な動植物が生息・生育している。
 このような、かつては県下で一般的にみられた農村の自然が残された中池見は、学術的にも貴重な動植物の 生息・生育地として、また、身近な自然に親しむ場として近年その価値が高まっている。
 しかしながら、当地の自然は、人為と自然との微妙な動的バランスの上に成り立っており、放置すれば 遷移が進んで最終的にはヤナギ、ハンノキ林など本来の植生に移行し、これに伴って動物相も変化していく と考えられる。また、土地改良、転作、除草剤の使用等の営農行為によっても、当地の自然は容易に改変 されるものである。
 このような中池見の自然を保護するためには、自然度の高さを尺度として人間の干渉をなるべく排除する という一般的な自然保護の手法はとり得ない。
 以上のような中池見の現況を踏まえ、環境影響評価準備書では、希少な動植物の生息・生育環境を 環境保全エリアとして中池見の一部に残し、植生が遷移しないよう現状に近い状態で維持管理する環境保全対策が 示されている。
 しかし、工事が長期にわたることや、環境保全エリアの実現のためには不確定な要素も多いと考えられることから、 環境保全エリアの整備および維持管理に当たっては万全を期す必要があるとともに、自然環境および 生活環境への影響を極力最小化するため、以下の対策を講ずることが重要である。
 当社は、環境にやさしいクリーンエネルギーである天然ガスの普及・促進に努めることで環境の保全に 寄与したいと考えております。また、「地域および地球規模での環境保全は、エネルギー事業者にとって 極めて重要な使命である。大阪ガスグループは、我々のあらゆる活動が環境と深くかかわっていることを 認識し、その事業活動を通じて環境との調和をはかり、エネルギーの効率利用を実現する。」という 環境基本理念のもと、「環境行動指針」を掲げ、全社で環境問題に取り組んでおります。
 敦賀LNG基地建設事業の実施に当たりましては、事業予定地の置かれている状況を十分認識し、 福井県環境基本条例の精神である「豊かで美しい福井の環境の保全と創造」を踏まえて、環境の保全に適切な 配慮を行うこととしております。
 自然環境および生活環境への影響を極力最小化するため、以下の対策を講じてまいります。
第1 自然環境の保全に関すること
1 環境保全エリアの整備について
(1) 環境保全エリアの整備に当たっては、次の(2)から(7)までについて、専門家の指導、助言のもとに行うこと。


(1) 環境保全エリアの整備に当たりましては、次の(2)から(7)までについて、 動植物に関する高い知見を持った専門家、移入・移植等の経験を有する専門家、事業予定地の 自然環境に詳しい専門家等の指導、助言のもとに実施いたします。
(2) 動植物の移入・移植に当たっては、あらかじめその生息・生育環境や移入・移植予定地の 環境条件等の特性を十分に調査検討すること。 (2) 動植物の移入・移植に当たりましては、まずそれらの現在の生息・生育環境の特性を十分に把握し試験的な 移植等を行うこととあわせて、移入・移植予定地の環境条件の特性を十分に調査・検討いたします。また、基地エリア 造成工事による影響の程度についてもあわせて調査・検討いたします。
(3) 移入・移植の過程においては、その状況を把握し、評価するため、十分な時間を かけて必要な環境調査を行い、その結果を県および市へ報告すること。 (3) 移入・移植の過程におきましては、その状況を適宜把握し、その定着・活着状況を評価するため 十分な時間をかけて必要な環境調査を行い、その結果を県および市へ報告いたします。なお、具体的な 報告内容につきましては、今後協議させていただきます。
(4) 基地エリアの本格工事の着手に当たっては、(2)および(3)の調査結果を十分に 踏まえて行うこと。 (4) 基地エリアの本格的な埋立による造成工事など、本格工事の着手に当たりましては、移入・移植 する動植物の生息・生育環境の特性および移入・移植予定地の環境条件の特性の調査結果、ならびに、 移入・移植とその定着・活着状態を評価するための調査結果を十分に踏まえて実施いたします。
 移入・移植の調査および移入・移植は、3年程度の期間をかけて行います。
(5) 環境保全エリアの渇水対策のために必要な措置を講ずること。 (5) 渇水時においても環境保全エリアの平地部の環境が湿潤に保たれるよう、水位・水量の管理を 行うとともに、ポンプによる送水設備や水の一時貯留設備などを設けます。
(6) 緩衝地帯においても、平地部および周辺集水域と一体となって多様な生態系が 形成されるよう、湿生動植物が生息・生育しやすい環境として整備すること。 (6) 基地エリアの造成終了後、緩衝地帯においても、環境保全エリアの平地部および周辺集水域と 一体となって、湿生動植物が生息・生育しやすい環境を含む多様な生態系が形成される環境となるよう 整備いたします。整備後の一例を図7−2−1(略)に示します。本例の場合、整備後の環境保全エリアの 平地部の面積は、約1ha増加し、約3.3haとなります。
(7) 地域住民等が身近な自然に親しむ場として、また、環境学習および調査研究の 場として利用できるよう、必要な施設を整備すること。 (7) 環境保全エリアには、地域の住民の方々が身近な自然に親しんでいただける場として、また、 環境学習および調査研究の場として利用していただけるようにするため、木道や管理棟など、必要な設備を 整備いたします。
2 環境保全エリアの維持管理について
(1) 環境保全エリアの平地部については、必要かつ十分な水量を確保することが重要であることなどから、 平地部の水量および水質について十分な水管理を行うとともに、整備後当分の間は、土壌の栄養状態等 動植物の生息・生育環境を定期的に監視し、必要に応じ再移植等適切な措置を講ずること。

(1) 環境保全エリアの平地部につきましては、平地部の水量および水質について十分な水管理を 行うとともに、整備後当分の間は、土壌の栄養状態等動植物の生息・生育環境を定期的に監視し、生育の 悪い植物については再移植を行うなど、適切な維持管理に努めます。
(2) 6つの環境類型ごとに現在の主な植生タイプを復元し、現状に準じた維持管理を 行うこと。また、植物の遷移過程が確認できるエリアを確保すること。 (2) 6つの環境類型(水田型環境、低茎革原型環境、高茎草原型環境、水路型環境、池沼型環境、 樹林型環境)に現在の中池見の主な植生タイプを復元し、現状に準じた維持管理を実施いたします。 また、図7−2−1(略)に示すよう植物の遷移過程が確認できるエリアを確保いたします。
(3) 専門的な知識を有する者が維持管理を行うよう、維持管理体制を整備すること。 また、環境保全エリアの運営に当たっては、地域住民、学識経験者、関係機関等の意見を反映させるための 協議会を設けるなど、適切な措置を講ずること。 (3) 動植物に関する専門的な知識を有する者が維持管理を行うよう、維持管理体制を整備いたします。 また、環境保全エリアの運営に当たりましては、地域の住民の方々、学識経験者、関係機関等の意見を 反映させるための運営協議会を設け、維持管理等がより適切に行われるようにいたします。
(4) 移入・移植に伴う動物相や植生の変化を記録し、保存するとともに、県および 市へ報告すること。 (4) 移入・移植に伴う動物相や植生の変化を記録し、保存するとともに、県および市へ報告いたします。 なお、具体的な報告内容につきましては、今後協議させていただきます。
(5) 環境保全エリアの周辺集水域については、里山としての環境が維持されるよう 適正に管理を行うとともに、平地部と一体的に維持管理を行うこと。 (5) 環境保全エリアの周辺集水域につきましては、里山としての環境が維持されるよう下刈り、 ツル切りなどの管理を行うことにより、多様な生態が形成されるよう努めるとともに、平地部と一体的に 維持管理を行い、環境保全エリアの水環境が常に良好に保たれるよう努めてまいります。
3 基地エリアおよび周辺環境の整備について
(1) 調整池および直接放流水路の造成に当たっては、周辺の自然環境との調和に十分配慮するとともに、 湿生動植物の生息・生育環境を創出すること。また、タンク周辺の貯蔵エリアおよび機器・用役エリア等に おいても、昆虫等移動性の動物の生息地として緑地や止水域を確保することにより、事業地全体として 多様な生態系のネットワークが形成されるよう配慮すること。

(1) 調整池および直接放流水路の造成に当たりましては、周辺の自然環境との調和に十分 配慮するとともに、近自然工法を採用するなど、湿生動植物の生息・生育できる環境となる施設を配置 いたします。図7−2−2(略)にその一例を示します。
 また、タンク周辺の貯蔵エリアおよび機器・用役エリア等におきましても、昆虫等移動性の動物の生息地 として緑地や止水域を確保することにより、事業地全体として多様な生態系のネットワークが形成される よう配慮いたします。
(2) 土地造成工事に伴う改変部およびその周辺については、地形・地質および水質 の変化を記録し、保存するとともに、県および市に報告すること。 (2) 土地造成工事に伴う改変部およびその周辺につきましては、地形・地質および水質の変化を記録 し、保存するとともに、県および市に報告いたします。なお、具体的な報告内容につきましては、今後 協議させていただきます。
(3) 切土等土地改変部の緑化に当たっては、在来種を使用するなど、周辺の自然 環境との調和に十分配慮するとともに、基地外周部は高木による修景緑化を行うこと。 (3) 切土等土地改変部の緑化に当たりましては、在来種を使用することにより、周辺の自然環境との 調和を保つことはもとより、緑化樹木が野鳥等の飛来の場となるように十分配慮いたします。 また、基地外周部は高木による緑化を行うことにより事業予定地周辺部からの修景に努めます。
(4) タンクおよび港湾施設の配色に当たっては、周辺の自然景観との調和に十分 配慮するとともに、県および市と協議すること。 (4) タンクおよび港湾施設の配色に当たりましては、周辺の自然景観との調和に十分配慮すると ともに、県および市と協議いたします。
第2 公害の防止に関すること
1 大気汚染の防止について
(1) ばい煙発生施設の維持管理を適切に行うなど、窒素酸化物の排出量のより一層の低減を図ること。


(1) ばい煙発生施設の適切な維持管理を行うとともに最新技術の導入等を検討すること により、窒素酸化物の排出量をより一層低減するよう努めます。
(2) 操業開始前後におけるメタンおよび非メタン炭化水素の環境濃度の把握に 努めること。 (2) 操業開始前後において、メタンおよび非メタン炭化水素の環境濃度測定を実施いたします。 なお、具体的な監視場所、監視頻度等につきましては、今後関係機関と協議させていただきます。
2 水質汚濁の防止について
(1) 冷排水による海生生物への影響について、調査研究を行うこと。

(1) 冷排水による海生生物への影響につきましては、専門の調査機関に委託し、調査研究を 実施いたします。
(2) 次亜塩素酸ナトリウムの注入については、その挙動について十分な監視を行い、 その結果を踏まえて極力注入量を抑えること。 (2) 次亜塩素酸ナトリウムの注入につきましては、残留塩素の挙動を把握するために放水口や 放水管等の途中段階において十分な監視を行うとともに、その結果を踏まえ注入量を最少限に抑えます。
(3) 木ノ芽川への排水については、放流先において支障を生じないよう水質および 水量について適正な管理を行うこと。 (3) 木ノ芽川への排水につきましては、放流先において支障を生じないよう、基地の出口において 水質の生活環境項目(水素イオン濃度、生物化学的酸素要求量、化学的酸素要求量、浮遊物質量、 溶存酸素量、大腸菌群数、n−ヘキサン抽出物質の7項目)および水量の測定を行うとともに、適正な 管理を実施いたします。なお、具体的な監視場所、監視頻度等につきましては、今後関係機関と協議 させていただきます。
3 工事中の公害の防止について
(1) 土地造成工事の前後において、事業予定地周辺の地下水位を定期的に監視すること。

(1) 土地造成工事の前後において、事業予定地周辺の地下水位を定期的に監視いたします。 なお、具体的な監視場所、監視頻度等の詳細内容につきましては、今後関係機関と協議させていただきます。
(2) 粉じん、濁水、騒音および振動の発生により環境保全上支障が生じないよう、 工事の平準化を図るなど適切な対策を講ずること。 (2) 工事の実施に当たりましては、下記の対策を講じます。
  粉じんの飛散防止のため、適宜散水を行い、また残土を場外搬出する際は必要に応じてシートで覆う などの対策を実施いたします。
  工事中に発生する濁水につきましては、沈砂池等を設けて処理を行います。
  工事が一時に集中しないよう工事の平準化に配慮いたします。
  資材等の搬出入の際には、車両が短期間に集中しないよう配慮いたします。 なお、具体的な搬出入道路、時間帯等につきましては、今後関係機関と協議させていただきます。
  建設機械や工事用車両の点検・整備を励行いたします。
  伐採した樹木は資材として活用し、また枝葉等は集じん装置を備えた焼却炉により焼却いたします。
 以上のほか、適宜、測定あるいは監視を行い、環境保全上支障が生じないよう万全の対策を講じます。
(3) 工事が長期間に及ぶことから、逐次、最新の低公害工法、低公害設備の導入を 図ること。 (3) 工事が長期間に及ぶことから、逐次、最新技術の導入を検討し、最適な低公害工法、 低公害設備を採用することで、環境への負荷の低減に努めます。
第3 その他
(1) 冷熱エネルギーの利用効率を高めるための技術の開発および導入を推進することにより、 冷排水の排出量の抑制および燃料として使用するLNG消費量の削減など、環境への負荷の低減に 努めること。
(1) LNGの冷熱エネルギーの利用効率を高めるなど、省エネルギー技術の開発および導入を 推進することにより、冷排水の排出量の抑制および燃料として使用するLNC消費量の削減など、 環境への負荷の低減に努めます。
(2) 工事中および供用後において、予測し得なかった問題が生じた場合は、 速やかに県および市へ報告するとともに、適切な措置を講ずること。 (2) 工事中および供用後において、予測し得なかつた問題が生じた場合は、速やかに県および 市へ報告するとともに、適切な措置を講じます。

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