事業概要 図書内容 調査予測評価手法 参考文献 審査意見・見解 経過


(仮称)福井県あわら洋上風力発電事業

環境の保全の見地からの審査者の意見と事業者の見解

1 計画段階環境配慮書書
 (1) 福井県知事の意見
 (2) 環境大臣の意見
 (3) 経済産業大臣の意見



1 計画段階環境配慮書

福井県知事の意見
 洋上風力発電は、国内で多数の事業が計画されているものの稼働例はわずかであり、海域の生物等への環境影響が十分に解明されていない事業である。
 (仮称)福井県あわら洋上風力発電事業は、海面からの最大高さが197〜260mに及ぶ風力発電機を最大37基設置する全国に稼働例のない大規模な事業計画である。
 また、同事業は、越前加賀海岸国定公園区域に隣接して多数の風力発電設備の設置が計画されていることから、自然公園内外の眺望点からの景観に重大な影響が懸念されるとともに、北潟湖は渡り鳥の飛来地または中継地および猛禽類の多様な地域として鳥獣保護区に指定されていることから、鳥類への影響が懸念される。
 さらに、事業実施想定区域およびその周辺は、沿岸部で複数の陸上風力発電所が稼働しており、環境影響の低減・回避のためには、これら事業との累積的な影響を考慮する必要がある。
 このため、方法書作成およびそれ以降の手続きにおいて、国内外の最新の知見・事例等の情報収集および他事業者との情報共有を適切に行うとともに、以下の事項に十分配慮し、環境影響評価を適切に行うことが重要である。
1 全般的事項
(1)  対象事業実施区域の絞り込み、風力発電設備および海底ケーブル等の附帯設備の規模・位置または配置・構造(以下「風力発電設備配置等」という。)など事業計画の更なる検討にあたっては、影響を受けるおそれのある環境要素に係る影響を総合的に評価し、その結果を反映するとともに、その検討経緯および内容について、方法書以降の図書に具体的に記載すること。
(2)  事業実施想定区域の周辺には、他事業者による複数の風力発電所が稼働中であることから、これらの風力発電設備等による累積的影響が懸念される。このため、既存の風力発電設備等に対するこれまでの調査等から明らかになっている情報の収集および他事業者との情報交換等に努め、本事業との累積的な影響について、調査、予測および評価を行い、その結果を踏まえ、風力発電設備配置等を検討すること。
 そのほか、2の個別事項について、本事業の実施により、重大な影響等を回避または十分に低減できない場合は、風力発電設備配置等の再検討、対象事業実施区域の見直しおよび風力発電機の基数削減を含む事業計画の見直しを行うこと。
(3) 環境保全措置の検討に当たっては、環境影響の回避・低減を優先的に検討し、代償措置を優先的に検討することがないようにすること。
(4) 環境影響評価に係る調査、予測および評価(以下「調査等」という。)の方法および環境保全措置等の最新の知見ならびに既設の風力発電事業の稼働後の環境調査結果の入手に努め、得られた知見等を事業計画や今後の調査等に反映すること。
  また、今後の環境影響評価に係る手続きにおいて、住民等への積極的な情報提供、説明および意見の聴取に努めること。
2 個別事項
(1) 騒音および風車の影
 風力発電機設置予定範囲の周辺に複数の住居が存在しているため、それらに対する騒音および風車の影による影響が懸念される。このため、風力発電設備配置等の検討を行うとともに、「風力発電施設から発生する騒音に関する指針」(平成29年5月環境省)を踏まえ、最新の知見を考慮した信頼性の高い調査等を適切に行い、その影響を回避または極力低減すること。
(2) 地形
 風力発電設備および附帯設備の海中への設置等により、海流および海砂の流れが変化し、堆積または浸食が生じ、事業実施想定区域の周辺に存在する海の作用による重要な地形である「越前松島」等に影響を及ぼすおそれがある。
また、砂浜の浸食は、そこに生育する海浜植物および海水浴場への影響も懸念される。
 このため、地形等について、具体化した事業計画および既存施設の知見等を踏まえ評価項目としての選定を検討し、影響が懸念される場合には、調査等を適切に行い、その影響を回避または極力低減すること。
(3) 動物(鳥類)
 事業実施想定区域周辺では、オオワシ、オジロワシ等の希少猛禽類の生息が確認されている。
 また、事業実施想定区域が隣接している陸域には、ガンカモ類の集団渡来地として指定されている国指定片野鴨池鳥獣保護区や、渡り鳥の飛来地または中継地および猛禽類の多様な地域として指定されている北潟湖鳥獣保護区があることから、この地域はノスリやガンカモ類等の主要な渡り経路となっている可能性がある。
 そのため、事業の実施に伴う風車への衝突事故および移動経路等の阻害等により、これら鳥類への影響が懸念される。
 これらのことから、現地調査の実施ならびにその調査結果を踏まえた予測および評価に当たっては、「猛禽類保護の進め方」(改訂版)(平成24年12月環境省)に基づくことはもちろん、鳥類等の生態や現地の状況に精通した専門家の意見を聴取し、その意見を反映すること。
 渡り鳥の調査については、個体数が最大になる時期を中心に十分な調査期間を設け、夜間の渡りも対象とするとともに、調査対象があわら市沖を通過する全個体数の一部であること、渡りの経路は年によって変化することを十分に留意の上、渡りの実態を適切に把握し、影響を評価できる方法をとること。
 これらの結果を踏まえ、その影響を回避または極力低減すること。
(4) 海域に生息・生育する動植物
 事業実施想定区域は、「生物多様性の観点から重要度の高い海域」(平成28年4月環境省)に選定されるとともに、この一部の海底には、海生生物の生息・生育環境の整備を目的とした魚礁が設置されている。
 そのため、事業の実施に伴う風力発電設備および附帯施設の海中への設置等により、海生生物への影響が懸念される。
 これらのことから、現地調査の実施ならびにその調査結果を踏まえた予測および評価に当たっては、専門家の意見を聴取し、その意見を反映すること。
 これらの結果を踏まえ、その影響を回避または極力低減すること。
(5) 景観
 以下の点を考慮し、眺望点等の選定、調査等を適切に行い、風力発電設備配置等の検討を含め、景観への重大な影響を回避および極力低減すること。
 その際には、関係自治体や地域住民および眺望点の利用者等の意見の把握に努めること。

@ 自然公園等の眺望点からの眺望景観  事業実施想定区域に隣接する沿岸部の公園区域には、公園計画に位置付けられている主要な眺望点が存在していることから、これらの眺望点の利用状況や公園計画の内容等を踏まえ、「国立・国定公園内における風力発電施設の審査に関する技術的ガイドライン」を参照し、主要な眺望方向および水平視野も考慮した客観的な予測および評価を行うこと。
  また、あわせて海岸線の利用動線である公園事業道路や長距離自然歩道についても現地調査等の上、眺望点として選定すること。

A その他の眺望点からの眺望景観
  事業実施想定区域の周辺に存在する「福井ふるさと百景」選定地、キャンプ場や海水浴場および住居地や主要な道路などの住民等が日常的に生活する場からの景観への影響が懸念されるため、これらについて配慮すること。
(6) 工事の実施に伴う環境影響
 工事の実施に伴う環境影響について、影響を回避または極力低減するよう工事計画を含めた事業計画を検討するとともに、適切な調査等を行うこと。
 また、工事中における水の濁り等により、海生生物の生息・生育環境への影響が懸念される場合は、汚濁防止膜の設置等の環境保全措置を講ずることにより、影響を回避または極力低減すること。

環境大臣の意見
 本事業は、電源開発株式会社が、福井県あわら市の地先の海域において、最大で総出力350,000kWの洋上風力発電所を設置するものである。
本事業は、再生可能エネルギーの導入・普及に資するものであり、適切な環境配慮がなされた上で実施された場合には、風力発電の大量導入につながり、地球温暖化対策に大きく寄与すると考えられる。
 一方、本事業の事業実施想定区域(以下「想定区域」という。)が隣接している陸域には、ガンカモ類の集団渡来地として指定されている国指定片野鴨池鳥獣保護区があり、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(平成4年法律第75号。以下「種の保存法」という。)に基づく国内希少野生動植物種に指定されているオオワシ、オジロワシ等の生息が確認されているほか、想定区域及びその周辺は、ノスリやガンカモ類等の主要な渡り経路となっている可能性があり、本事業の実施により、風力発電設備への衝突事故、移動経路の阻害、生息環境の変化による鳥類への重大な影響が懸念される。
 また、想定区域の周辺には、自然公園法(昭和32年法律第161号)に基づき指定された越前加賀海岸国定公園が位置し、同国定公園の利用施設計画に位置づけられた「波松園地」や「吉崎浜地線道路(車道)」等の主要な眺望点が存在していることから、本事業の実施により、これらの利用施設及び主要な眺望点からの眺望景観への重大な影響が懸念される。
 したがって、本事業計画の更なる検討に当たっては、以下の措置を適切に講じられたい。また、それらの検討の経緯及び内容については、方法書以降の図書に適切に記載されたい。
1.総論
(1) 対象事業実施区域の設定
 対象事業実施区域の設定並びに風力発電設備及び附帯設備(以下「風力発電設備等」という。)の構造・配置又は位置・規模(以下「配置等」という。)の検討に当たっては、現地確認を含む必要な情報の収集・把握を適切に行い、計画段階配慮事項に係る環境影響の重大性の程度を整理し、反映させること。
(2)累積的な影響
 想定区域の周辺には、既設の風力発電所が稼働中であることから、本事業とその風力発電設備等による累積的な影響が懸念される。このため、本事業との累積的な影響について、調査、予測及び評価を行うこと。
(3)事業計画の見直し
 上記のほか、2.により、本事業の実施による重大な影響等を回避又は十分に低減できない場合は、風力発電設備等の配置等の再検討、対象事業実施区域の見直し及び基数の削減を含む事業計画の見直しを行うこと。
(4)関係機関等との連携及び地域住民等への説明
 本事業計画の今後の検討に当たっては、関係機関等と協議・調整を十分に行い、方法書以降の環境影響評価手続を実施すること。特に、想定区域に隣接する地域では、自然再生推進法(平成14 年法律第148 号)に基づく自然再生事業が実施されていることから、北潟湖自然再生協議会と協議・調整を十分に行うこと。また、地域住民等に対し丁寧かつ十分な説明を行うこと。
(5)環境保全措置の検討
 環境保全措置の検討に当たっては、環境影響の回避・低減を優先的に検討し、代償措置を優先的に検討することがないようにすること。
(6)最新の知見の反映
 洋上風力発電事業の環境影響については十分に解明されていない点があることから、本事業の実施の検討に当たって、最新の知見及び先行事例の知見の収集に努めること。
2.各論
(1)風車の影に係る影響
 想定区域の周辺には、複数の住居が存在しており、沿岸付近の住居の近隣に風力発電設備が設置される場合には、稼働時における風車の影による生活環境への影響が懸念される。このため、風力発電設備の配置等の検討に当たっては、住居への影響について適切に調査、予測及び評価を行い、その結果を踏まえ、風力発電設備を住居から離隔すること等により、風車の影による生活環境への影響を回避又は極力低減すること。
(2)鳥類に対する影響
 想定区域が隣接している陸域には、ガンカモ類の集団渡来地として指定されている国指定片野鴨池鳥獣保護区があり、種の保存法に基づく国内希少野生動植物種に指定されているオオワシ、オジロワシ等の生息が確認されているほか、想定区域及びその周辺は、ノスリやガンカモ類等の主要な渡り経路となっている可能性があり、本事業の実施により、風力発電設備への衝突事故、移動経路の阻害、生息環境の変化による鳥類への重大な影響が懸念される。このため、風力発電設備の配置等の検討に当たっては、専門家等からの助言を踏まえた鳥類に関する適切な調査、予測及び評価を行い、その結果を踏まえ、環境保全措置を講ずることにより、鳥類への影響を回避又は極力低減すること。
(3)海生生物に対する影響
 想定区域は、「生物多様性の観点から重要度の高い海域」(平成28年4月環境省)に選定されており、本事業の実施により、海生生物への影響が懸念される。このため、風力発電設備等の配置等の検討に当たっては、水の濁り等による海生生物への影響について、専門家等の助言を踏まえ、適切な調査、予測及び評価を行うこと。また、その結果を踏まえ、工事中における水の濁り等により、海生生物の生息・生育環境への影響が懸念される場合は、環境保全措置を講ずること。
(4)景観に対する影響
 想定区域の周辺には、自然公園法に基づき指定された越前加賀海岸国定公園が位置し、同国定公園の利用施設計画に位置づけられた「波松園地」や「吉崎浜地線道路(車道)」等の主要な眺望点が存在していることから、本事業の実施により、これらの利用施設及び主要な眺望点からの眺望景観への重大な影響が懸念される。このため、風力発電設備等の配置等の検討に当たっては、現地調査により利用施設及び主要な眺望点からの眺望の特性、利用状況、利用者の意見等を把握した上で、フォトモンタージュ等を作成し、垂直見込角、主要な眺望方向及び水平視野も考慮した客観的な予測及び評価を行い、その結果も踏まえ、眺望景観への影響を回避又は極力低減すること。また、事業計画の具体化並びに調査、予測及び評価に当たっては、管理者及び地方公共団体その他の関係機関並びに地域住民等の意見を踏まえること。

経済産業大臣の意見
1.総論
(1)対象事業実施区域の設定
 対象事業実施区域の設定並びに風力発電設備及び附帯設備(以下「風力発電設備等」という。)の構造・配置又は位置・規模(以下「配置等」という。)の検討に当たっては、現地確認を含む必要な情報の収集・把握を適切に行い、計画段階配慮事項に係る環境影響の重大性の程度を整理し、反映させること。
(2)累積的な影響
 本事業の事業実施想定区域(以下「想定区域」という。)の周辺には、既設の風力発電所が稼働中であることから、本事業とその風力発電設備等による累積的な影響が懸念される。このため、本事業との累積的な影響について、調査、予測及び評価を行うこと。
(3)事業計画等の見直し
 上記のほか、2.により、本事業の実施による重大な影響等を回避又は十分に低減できない場合は、風力発電設備等の配置等の再検討、対象事業実施区域の見直し及び基数の削減を含む事業計画の見直しを行うこと。
(4)関係機関等との連携及び地域住民等への説明
 本事業計画の今後の検討に当たっては、関係機関等と協議・調整を十分に行い、方法書以降の環境影響評価手続を実施すること。特に、想定区域に隣接する地域では、自然再生推進法(平成14年法律第148号)に基づく自然再生事業が実施されていることから、北潟湖自然再生協議会と協議・調整を十分に行うこと。また、地域住民等に対し丁寧かつ十分な説明を行うこと。
(5)環境保全措置の検討
 環境保全措置の検討に当たっては、環境影響の回避・低減を優先的に検討し、代償措置を優先的に検討することがないようにすること。
(6)最新の知見の反映
 洋上風力発電事業の環境影響については十分に解明されていない点があることから、本事業の実施の検討に当たって、最新の知見及び先行事例の知見の収集に努めること。
2.各論
(1)風車の影に係る影響
 想定区域の周辺には、複数の住居が存在しており、沿岸付近の住居の近隣に風力発電設備が設置される場合には、稼働時における風車の影による生活環境への影響が懸念される。このため、風力発電設備の配置等の検討に当たっては、住居への影響について適切に調査、予測及び評価を行い、その結果を踏まえ、風力発電設備を住居から離隔すること等により、風車の影による生活環境への影響を回避又は極力低減すること。
(2)鳥類に対する影響
 想定区域が隣接している陸域には、ガンカモ類の集団渡来地として指定されている国指定片野鴨池鳥獣保護区があり、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(平成4年法律第75号。以下「種の保存法」という。)に基づく国内希少野生動植物種に指定されているオオワシ、オジロワシ等の生息が確認されているほか、想定区域及びその周辺は、ノスリやガンカモ類等の主要な渡り経路となっている可能性があり、本事業の実施により、風力発電設備への衝突事故、移動経路の阻害、生息環境の変化による鳥類への重大な影響が懸念される。このため、風力発電設備の配置等の検討に当たっては、専門家等からの助言を踏まえた鳥類に関する適切な調査、予測及び評価を行い、その結果を踏まえ、環境保全措置を講ずることにより、鳥類への影響を回避又は極力低減すること。
(3)海生生物に対する影響
 想定区域は、「生物多様性の観点から重要度の高い海域」(平成28年4月環境省)に選定されており、本事業の実施により、海生生物への影響が懸念される。このため、風力発電設備等の配置等の検討に当たっては、水の濁り等による海生生物への影響について、専門家等の助言を踏まえ、適切な調査、予測及び評価を行うこと。また、その結果を踏まえ、工事中における水の濁り等により、海生生物の生息・生育環境への影響が懸念される場合は、環境保全措置を講ずること。
(4)景観に対する影響
 想定区域の周辺には、自然公園法(昭和32年法律第161号)に基づき指定された越前加賀海岸国定公園が位置し、同国定公園の利用施設計画に位置づけられた「波松園地」や「吉崎浜地線道路(車道)」等の主要な眺望点が存在していることから、本事業の実施により、これらの利用施設及び主要な眺望点からの眺望景観への重大な影響が懸念される。このため、風力発電設備等の配置等の検討に当たっては、現地調査により利用施設及び主要な眺望点からの眺望の特性、利用状況、利用者の意見等を把握した上で、フォトモンタージュ等を作成し、垂直見込角、主要な眺望方向及び水平視野も考慮した客観的な予測及び評価を行い、その結果も踏まえ、眺望景観への影響を回避又は極力低減すること。また、事業計画の具体化並びに調査、予測及び評価に当たっては、管理者及び地方公共団体その他の関係機関並びに地域住民等の意見を踏まえること。
以上の検討の経緯及び内容について、方法書以降の図書に適切に記載すること。


事業概要 図書内容 調査予測評価手法 参考文献 審査意見・見解 経過



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