事業概要 図書内容 調査予測評価手法 参考文献 審査意見・見解 経過

(仮称)余呉南越前第一・第二ウィンドファーム発電事業

環境の保全の見地からの審査者の意見と事業者の見解

1 計画段階環境配慮書書
 (1) 福井県知事の意見と事業者の見解
 (1-2) 滋賀県知事の意見と事業者の見解
 (2) 環境大臣の意見
 (3) 経済産業大臣の意見と事業者の見解

2 環境影響評価方法書
 (1) 福井県知事の意見
 (2) 経済産業大臣の勧告



1 計画段階環境配慮書

福井県知事の意見事業者の見解
 本事業に係る計画段階環境配慮書に対する環境の保全の見地からの意見については、次のとおりです。  
1 全体的事項  
(1) 対象事業実施区域の絞り込み、風力発電設備および取付道路等の付帯設備の規模・位置または配置・構造(以下「風力発電設備配置等」という。)など事業計画の更なる検討に当たっては、影響を受けるおそれのある環境要素に係る影響を総合的に評価し、その結果を反映するとともに、その検討経緯および内容について、方法書以降の図書に具体的に記載すること。  本事業計画の検討に当たっては、環境への重大な影響を回避・低減するため、事業計画の更なる検討にあたっては、影響を受けるおそれのある環境要素に係る影響を総合的に評価し、措置を講じてまいります。また、それらの検討経緯及び内容については、方法書以降の図書へ適切に記載いたします。
(2) 2の個別事項について、本事業の実施による重大な影響等を回避または十分に低減できない場合は、風力発電設備配置等の再検討、対象事業実施区域の見直しおよび風力発電機の大幅な基数削減を含む事業計画の見直しを行うこと。  事業実施による重大な影響を回避又は十分に低減できない場合は、必要に応じ対象事業実施区域の見直し等を検討いたします。
(3) 環境保全措置の検討に当たっては、環境影響の回避・低減を優先的に検討し、代償措置を優先的に検討することがないようにすること。  環境保全措置の検討に当たっては、環境影響の回避・低減を優先的に検討し、代償措置を優先的に検討することがないようにいたします。
(4) 環境影響評価に係る調査、予測および評価(以下「調査等」という。)の方法および環境保全措置等の最新の知見ならびに既設の風力発電事業の稼働後の環境調査結果の入手に努め、得られた知見等を事業計画や今後の調査等に反映すること。
 また、今後の環境影響評価に係る手続きにおいて、住民等への積極的な情報提供、説明および意見の聴取に努めること。
 環境影響評価に係る調査、予測および評価(以下「調査等」という。)の方法および環境保全措置等の最新の知見ならぴに既設の風力発電事業の稼働後の環境調査結果の入手に努め、得られた知見等を事業計画や今後の調査等に反映いたします。
 また、今後の環境影響評価に係る手続きにおいて、住民等への積極的な情報提供、説明および意見の聴取に努めます。
2 個別事項  
(1) 騒音、超低周波音および風車の影
 事業実施想定範囲の周辺に複数の住居が存在しているため、それらに対する騒音および風車の影による影響が懸念される。このため、風力発電設備配置等の検討を行うとともに、「風力発電施設から発生する騒音に関する指針」(平成29年5月環境省)を踏まえ、最新の知見を考慮した信頼性の高い調査等を適切に行い、その影響を回避または極力低減すること。
 また、超低周波音についても、最新の知見を踏まえ適切かつ信頼性の高い調査等を行い、周辺住居等への影響を回避または低減すること。

 騒音、超低周波音及び風車の影の影響に関しては、風力発電設備の配置等の検討を適切に行うとともに、「風力発電施設から発生する騒音に関する指針」(平成29年5月環境省)を踏まえ、最新の知見も考慮した調査・予測及び評価を行い、周辺住居等への影響を回避または極力低減いたします。
(2) 動物(鳥類およびコウモリ類)
 事業実施想定区域およびその周辺では、イヌワシおよびクマタカ等の希少猛禽類や絶滅危惧種となっているテングコウモリ等の希少なコウモリ類の生息が確認されている。
 さらに、サシバやハチクマといった渡りを行う希少猛禽類をはじめ小型鳥類からコウノトリを含む大型鳥類までの多様な鳥類の大規模な移動が確認されていることから、この地域は全国的に重要な渡りの経路となっていると考えられる。
 そのため、事業の実施に伴う土地改変や環境変化による生息地の消失、風車への衝突事故および移動経路等の阻害等により、これら鳥類等への重大な影響が懸念される。
 これらのことから、現地調査の実施ならびにその調査結果を踏まえた予測および評価に当たっては、「猛禽類保護の進め方」(改訂版)(平成24年12月環境省)に基づくことはもちろん、鳥類等の生態や現地の状況に精通した専門家の意見を聴取し、その意見を反映すること。
 また、渡り鳥の調査については、個体数が最大になる時期を中心に十分な調査期間を設け、夜間の渡りも対象とするとともに、調査対象が福井県と滋賀県の県境を通過する全個体数の一部であること、渡りの経路は年によって変化することを十分に留意の上、渡りの実態を適切に把握し、影響を評価できる方法をとること。
 これらの結果を踏まえ、その影響を回避または極力低減すること。

 現地調査の実施ならぴにその調査結果を踏まえた予測および評価に当たっては、「猛禽類保護の進め方」(改訂版)(平成24年12月環境省)に基づくことはもちろん、鳥類等の生態や現地の状況に精通した専門家の意見を聴取し、事業者の実行可能な範囲でそのご意見を反映いたします。
 また、渡り鳥の調査については、個体数が最大になる時期を中心に十分な調査期間を設け、夜間の渡りも対象とするとともに、調査対象が福井県と滋賀県の県境を通過する全個体数の一部であること、渡りの経路は年によって変化することを十分に留意の上、渡りの実態を適切に把握し、影響を評価できる方法をとるように努めます。
 これらの結果を踏まえ、その影響を回避または極力低減いたします。
(3) 動物、植物および生態系
 事業実施想定区域およびその周辺では、自然植生、特定植物群落、福井のすぐれた自然に選定されている「栃ノ木峠のブナ林」およびカモシカ等の重要な生態系や動植物種の生息・生育が確認されている。また、事業実施想定区域の福井県側の大部分が保安林に指定されている。
 そのため、事業の実施に伴う森林伐採や土地改変によりこれらの希少な動植物の生息・生育環境や生態系の消失といった重大な影響が懸念される。加えて、当地域は過去に動植物等の現地調査が十分に行われていない地域であり、今後、適切な調査が行われなければ、現在未確認とされる希少な動植物の生息・生育環境が事業実施に伴い消失する懸念がある。
 このため、現地調査の実施ならびに調査結果を踏まえた予測および評価に当たっては、現地の状況に精通した専門家の意見を聴取し、その意見を反映すること。この現地調査により自然度の高い植生が存在する区域を明らかにするとともに、重要な種の生息・生育状況を把握すること。
 また、植生の変化に伴うシカの増加等による生態系などへの影響が懸念されるため、その影響についても調査等を適切に行うこと。
 これらの結果を踏まえ、その影響を回避または極力低減すること。

 対象事業実施区域およぴその周辺では、自然埴生、特定植物群落、福井のすぐれた自然に選定されている「栃ノ木峠のブナ林」およぴカモシカ等の重要な生態系や動植物種の生息・生育が確認されていること、対象事業実施区域の福井県側の大部分が保安林に指定されていること、加えて、当地域は過去に動植物等の現地調査が十分に行われていない地域であることを踏まえ、現地調査の実施ならぴに調査結果を踏まえた予測および評価に当たっては、現地の状況に精通した専門家の意見を聴取し、事業者の実行可能な範囲でその意見を反映します。現地調査を実施し、自然度の高い植生が存在する区域を明らかにするとともに、重要な種の生息・生育状況の把握に努めます。
 また、植生の変化に伴うシカの増加等による生態系などへの影響については、シカの糞塊密度調査を実施し、シカの生息密度の現状把握に努めます。
 これらの結果を踏まえ、その影響を回避または極力低減いたします。
(4) 景観
 事業実施想定区域の周辺には「福井ふるさと百景」選定地が存在し、また、長距離自然歩道からの景観および住居地など住民等が日常的に眺める景観への影響も懸念される。
 このため眺望点の選定や調査等に当たっては、関係自治体や地域住民および眺望点の利用者等の意見の把握に努め、眺望点等の選定および調査等を適切に行い、風力発電設備配置等の検討を含め、眺望景観への影響を回避または極力低減すること。
 なお、評価の手法として、「国立・国定公園内における風力発電施設の審査に関する技術的ガイドライン」も参照すること。

 「福井ふるさと百景」や、長距離自然歩道について、関係自治体等の意見も踏まえ、また眺望対象であるか眺望点(視点場)であるかの状況を把握し、眺望目的での視点場としての利用が把握できた場合には、眺望点として追加選定し、調査、予測及び評価を行い、眺望景観への影響を回避又は極力低減するよう検討してまいります。
 また、住居地等において住民が日常的に眺める景観についても配慮してまいります。
 なお、本事業の風力発電機は、国立・国定公園内には設置しないため、「国立・国定公園内における風力発電施設の審査に関する技術的ガイドライン」における評価基準の適用対象外であると考えておりますが、予測手法や環境保全措置に関してこのガイドラインを参照するよう努めます。
(5) 人と自然との触れ合いの活動の場
 人と自然との触れ合いの活動の場について、関係自治体、住民や利用者等への聞き取り等により適切に把握し、事業の実施に伴うそれら活動の場への影響について調査等を行い、その影響を回避または極力低減すること。

 人と自然との触れ合いの活動の場について、関係機関や地元住民への聞き取り調査並びに現地踏査及び利用者がいた際の聞き取り調査を実施し、利用環境、利用状況等の現況を把握すると共に、本事業による影響を極力回避・低減する環境保全措置を検討いたします。
(6) 工事の実施に伴う環境影響
 工事の実施に伴う環境影響について、影響を回避または極力低減するよう工事計画を含めた事業計画を検討するとともに、適切な調査等を行うこと。
 特に、森林伐採や土地改変に伴う土砂流出や濁水発生による水環境および動植物の生息・生育環境への影響が懸念される。このため、調査等を適正に行い、土砂流出の可能性が高い地域の土地改変の回避や土工量の抑制の検討を行うとともに、仮設沈砂池設置等の環境保全措置により濁水の発生を極力低減し、これらへの影響を回避または極力低減すること。

 工事の実施に伴う環境影響について、影響を回避または極力低減するよう工事計画を含めた事業計画を検討するとともに、適切な調査等を行います。
 森林伐採や土地改変に伴う土砂流出や濁水発生による水環境および勤樺物の生息・生育環境への影響の懸念については、調査等を適正に行い、土砂流出の可能性が高い地域の土地改変の回避や土工量の抑制の検討を行うとともに、仮設沈砂地設置等の環境保全措置により濁水の発生を極力低減し、これらへの影響を回避または極力低減するよう検討いたします。



滋賀県知事の意見事業者の見解
 本事業に係る計画段階環境配慮書に対する環境の保全の見地からの意見については、次のとおりである。
 本意見への検討の経緯および内容については、方法書以降の図書に適切に記載すること。
 
1 全般的事項  
(1) 資源エネルギー庁が策定した「事業計画策定ガイドライン(風力発電)」を遵守すること。  事業の実施に当たっては「事業計画策定ガイドライン(風力発電)」を遵守いたします。
(2) 本事業の実施に当たっては、各種法令等を遵守し環境保全に配慮し、必要に応じて関係行政機関と十分に協議を行うこと。
 また、今後の手続に当たっては、広く地域住民や高時川流域の農業者、漁業者への積極的な情報提供や説明会を開催するなど、事業内容を丁寧に周知・説明して理解を得るよう努めること。
 本事業の実施に当たっては各種法令を遵守し環境保全に配慮し、必要に応じて関係行政機関と適切な時期に十分に協議を行います。
 また、高時川流域の農業や漁業という側面等からも不安を感じる住民がおられると認識していることから、今後の手続きに当たっては事業内容を広く丁寧に周知・説明し、理解を得るよう努めてまいります。
(3) 事業実施想定区域は、全域が「滋賀県イヌワシ・クマタカ保護指針」による「イヌワシ・クマタカの保護および生息環境保全ゾーン」に含まれており、国内希少野生動植物種に指定されているイヌワシやクマタカの生息お上び繁殖が確認されていることから、本事業の実施によりイヌワシやクマタカへの重大な影響が懸念される。
 また、事業実施想定区域は、サシバやハチクマ、ノスリ等、渡りを行う猛禽類が数多く通過する主要な経路に位置している可能性が高く、これらの個体の移動経路や高度によっては、衝突事故や移動の阻害等の深刻な影響を与えることが懸念される。
 2(4)により、猛禽類をはじめとする鳥類についてあらゆる環境保全措置を講じてもなお、重大な影響を回避または十分に低減できない場合には、本事業の取り止めも含めた事業計画の抜本的な見直しを行うこと。
 「滋賀県イヌワシ・クマタカ保護指針」における保護方策の基本的な考え方として『「イヌワシ・クマタカの保護および生息環境保全ゾーン」では、開発事業の計画、実施等の各段階において、既知の環境影響調査や現地調査等に基づく調査結果などを十分検討の上、回避→低減→代償の優先度で保全措置を検討・実施し、その生息に対する影響を可能な限り少なくするように努めるものとする。』と示されており、今後、現地調査を実施していく中で、イヌワシを含む希少猛禽類の営巣状況、生息状況等を把握し、その結果に基づいて、予測及び評価を実施するとともに、事業計画について慎重に検討したいと考えております。イヌワシやクマタカのほか、サシバやハチクマ、ノスリ等、渡りを行う猛禽類等の鳥類に対して、重大な影響を回避または十分に低減できるよう、環境保全措置を講じますが、あらゆる環境保全措置を講じてもなお、重大な影響を回避または十分に低減できない場合には、事業計画の抜本的な見直しを行います。
(4) 事業実施想定区域には、滋賀県水源森林地域保全条例に基づく水源森林地域が存在するなど、当該地域の森林は、地域社会にとって災害・水害の防止、水源の涵養、環境の保全を図る上で極めて重要な役割を有することから、その機能を阻害しないよう配慮すること。
 保安林は、水源の涵養あるいは土砂の流出の防備など指定の目的を踏まえ、その保全に努めるよう配慮すること。
 さらに、砂防指定地への影響を回避すること。
 対象事業実施区域に位置する森林について、災害・水害の防止、水漁の涵養等の機能を阻害しないよう関係機関と協議しつつ、事業計画において検討を進めてまいります。
 また、事業計画の検討にあたっては保安林の目的を踏まえ、その保全に努めるよう配慮いたします。
 さらに砂防指定地については関係機関と協議し、影響の回避に努めます。
2 個別事項  
(1) 水環境(水質)
 事業実施想定区域の流域および下流にある高時川の水環境については、造成等の施工による影響、地形改変による影響、植生の変化など事業によって生じうる土壌流亡の影響などにより、漁場環境、水産資源および農業への影響が懸念されることから、事業実施想定区域およぴその周辺の状況を十分把握のうえ、調査、予測および評価を行うこと。その結果を踏まえ、水環境への影響を回避または極力低減すること。
 なお、流域における水源涵養や湧水への影響など、物質循環の視点も含め、調査、予測および評価に努めること。

 対象事業実施区域の流域及び下流にある高時川の水環境については、対象事業実施区域及びその周辺の状況を十分把握のうえ、調査、予測および評価を行います。また、その結果を踏まえ、水環境への影響を回避または極力低減いたします。
(2) 騒音
 事業実施想定区域の近隣には珍療所や複数の住宅等が存在している。工事中および供用時において、騒音、振動や超低周波音による生活環境への重大な影響が懸念されることから、適切に調査、予測および評価を行うこと。その結果を踏まえ、騒音等の影響を回避または極力低減すること。

 工事中および供用時における騒音等の影響について、適切に調査、予測および評価を行います。また、その結果を踏まえ、騒音等の影響を回避または極力低減いたします。
(3) 動物
 事業実施想定区域内には、「伊吹・比良山地カモシカ保護地域」があるので、カモンカ(特別天然記念物)の生息に影響がないよう、適切に調査、予測および評価を行うこと。
 また、バットストライクに関しては、コウモリ相を把握し、飛翔高度にも留意した調査を実施して、影響を回避または極力低減すること。

 対象事業実施区域内には、「伊吹・比良山地カモシカ保護地域」があることを踏まえ、カモシカ(特別天然記念物)の生息に影響がないよう、適切に調査、予測および評価を行います。
 また、バットストライクに関しては、コウモリ相を把握し、飛翔高度にも留意した調査を実施して、影響を回避または極力低減するよう努めます。
(4) 動物(鳥類)
 イヌワシやクマタカは、それらの生息を支える生物多様性の豊かさの指標として重要であるだけでなく、両種とも希少性が高く絶滅のおそれが懸念されることから特別に保護が必要とされる国内希少野生動植物に指定されている。なかでもイヌワシは全国的に生息個体数が少なく、特こ近畿地方以西の西日本では希少性が極めて高いことから、個体群の存続に個体単位の厳重な保護が必要な状況にある。滋賀県内では、現在、生息が確認されているイヌワシはわずか4つがいであり、その1つがいが事業実施想定区域の近傍に営巣し、その行動圏が同区域を含む範囲に広がっているものと推測されている。また、イヌワシと同様に希少性が高いクマタカも、複数のつがいが事業実施想定区域およぴその周辺に生息していると推測されている。そのため、本事業の実施に伴う環境改変や風力発電設備の設置により、イヌワシやクマタカの生息や繁殖への影響、衝突事故(バードストライク)の発生、飛翔行動の阻害等の重大な影響が懸念される。
 これらのことから、希少性が特に高いイヌワシやクマタカへの影響を評価するに当たっては、行動園、生息場所利用、行動様式について、繁殖期を含む年間にわたる調査を最低2年間は実施すること。特にイヌワシに対しては、本事業の実施に伴う樹木の伐採による環境改変が行動様式を変化させる可能性が想定されることから、環境改変後の影響についても的確に予測および評価を行うこと。クマタカについては事業実施想定区域およぴその周辺に営巣している可能性もあることから、営巣地の確認と繁殖状況を可能な限り正確に把握し、事業の影響について予測および評価を行うこと。
 また、渡りを行う猛禽類についても、その移動経路や高度は気象条件により大きく変化することを考慮し、この地域における渡りの時期、移動経路、高度等の実態を正確に把握したうえで、その影響について評価を行うこと。
 さらに、本事業の実施による猛禽類をはじめとする鳥類に対する影響と、環境保全措置を想定した場合の影響の低減については、客観的かつ可能な限り定量的に評価を行うこと。また、その結果を踏まえた環境保全措置を講じることにより、これら鳥類への影響を回避または極力低減すること。
 なお、現地調査等を行う場合には、猛禽類に関する既存の調査結果や資料、「猛禽類保護の進め方(改訂版)」(平成24年12月環境省自然環境局野生生物課)、「滋賀県イヌワシ・クマタカ保護指針」(平成14年7月滋賀県琵琶湖環境部自然環境保全課)、鳥類の生態や地元の状況に精通した専門家の意見等を踏まえて、適切な調査方法を十分に検討したうえで、イヌワシやクマタカの調査に熟練した現地調査員により実施すること。また、調査結果についても鳥類の生態に精通した専門家からの意見聴取を行ったうえで、予測および評価を行うこと。

 本事業の実施による猛禽類をはじめとする鳥類に対する影響と、環境保全措置を想定した場合の影響の低減については、客観的かつ可能な限り定量的に評価を行い、その結果を踏まえた環境保全措置を講じ、鳥類への影響を回避または極力低減するよう検討いたします。
 イヌワシやクマタカの生息や繁殖への影響、衝突事故(バードストライク)の発生、飛翔行動の阻害等の重大な影響が懸念されることから、イヌワシやクマタカについては、対象事業実施区域の利用状況や行動等を把握するよう調査を実施いたします。特にイヌワシに対しては、繁殖期を含むよう調査時期を設定することとし、また、本事業の実施に伴う樹木の伐採による環境改変が行動様式を変化させる可能性が想定されることから、環境改変後の影響、事業実施における行動圏に与える影響についても予測および評価を行います。また、クマタカについては対象事業実施区域およびその周辺に営巣している可能性もあることから、繁殖状況や営巣地を可能な限り正確に把握し、事業の影響について予測および評価を行います。
 また、渡りを行う猛禽類についても、その移動経路や高度は気象条件により大きく変化することを考慮し、この地域における渡りの時期、移動経路、高度等の実態を正確に把握するよう努め、その影響について評価を行います。
 なお、現地調査等を行う場合には、猛禽類に関する既存の調査結果や資料、「猛禽類保護の進め方(改訂版)」(平成24年12月環境省自然環境局野生生物課)、「滋賀県イヌワシ・クマタカ保護指針」(平成14年7月滋賀県琵琶湖環境部自然環境保全課)、鳥類の生態や地元の状況に精通した専門家の意見等を踏まえて、適切な調査方法を十分に検討したうえで、イヌワシやクマタカの調査に熟練した現地調査員により実施し、調査結果についても鳥類の生態に精通した専門家からの意見聴取を行ったうえで、予測および評価を行います。
(5) 植物・生態系
 事業実施想定区域には、重要な植物群落が分布しており、土地の改変などにより重大な影響が懸念される。また、植生の変化に伴うシカ等の増加により、生態系や地域社会への影響、希少植物の減少・消失が懸念される。
 このため、専門家等からの助言を踏まえて適切な調査、予測および評価を行うとともに、道路や草地ができることによる林緑効果にも配慮して、事業による影響を回避または極力低減すること。
 また、風力発電事業の工事(資材運搬用および管理用に設置される道路を含む)に関して、土地改変による自然環境への影響について調査、予測および評価を行い、土地の改変量を最小限に抑えること。

 今後実施する植物調査においては、専門家からの助言を踏まえて適切な調査を実施し、重要な植物群落や希少植物に対する予測および評価を行い、林緑効果にも配慮して事業による影響を回避または極力低減します。
 また、植生の変化に伴うシカの増加等による生態系などへの影響については、シカの糞塊密度調査を実施し、シカの生息密度の現状把握に努めます。
 また、風力発電事業の工事(資材運搬用および管理用に設置される道路を含む)に関して、土地改変による自然環境への影響について調査、予測および評価を行い、土地の改変量を最小限に抑えるよう努めます。
(6) 景観
 風力発電設備が、見る人に対して圧迫感や威圧感を与える影響が懸念される。このため、景観への影響の調査、予測および評価を行い、その結果を踏まえ、影響を回避または極力低減すること。
 また、対象地西側のスキー場からの景観への影響についても、評価の対象とすること。

 眺望景観への影響につきまして、適切に調査、予測及び評価を行い、その結果を踏まえて、影響を回避または極力低減するよう、配置や塗装色について検討してまいります。
 計画地西側のスキー場について、眺望利用の状況を把握し、眺望点として追加選定いたします。
(7) 人と自然との触れ合いの活動の場
 余呉のブナ林、栃ノ木峠の水源地などのトレッキングコースやスキー場が知られており、地元活動団体へのヒアリングを実施するなどにより現状を把握し、予測および評価を行うこと。

 トレッキングコースやスキー場を含めた主要な人と自然との触れ合いの活動の場について、現況調査及び地元自治体や地元活動団体等への聞き取り調査によって現況を把握し、それらの結果を踏まえた予測・評価を行います。
(8) 文化財・伝承文化
 事業実施想定区域には、埋蔵文化財包蔵地(栃ノ木砦遺跡)が所在するため、遺跡区域とその周辺も含め調査、予測および評価を行うこと。
 また、事業実施想定区域は、西側に北国街道が通る歴史的にも重要な地域であることから、保護すべき文化が存在しないか、住民の生活、生業、信仰において重要な場所になっていないかを調査、予測および評価を行うこと。

 対象事業実施区域における埋蔵文化財及び保護すべき文化等に係る対象物について、既存資料等を調査の上、教育委員会等の関係機関の指導に従い、適切に対処いたします。




環境大臣の意見
 本事業は、株式会社グリーンパワーインベストメントが、滋賀県長浜市及び福井県南条郡南越前町において、最大で総出力170,000kWの風力発電所を設置するものである。
 本事業は、再生可能エネルギーの導入・普及に資するものであり、地球温暖化対策の観点からは望ましいものである。
 一方、本事業の事業実施想定区域及びその周辺は、希少猛禽類であるイヌワシ及びクマタカの生息が確認されているほか、サシバ及びハチクマ等の渡り経路となっている可能性があることから、本事業の実施により、風力発電設備への衝突事故及び移動経路の阻害等による鳥類への重大な影響が懸念される。加えて、本事業の事業実施想定区域は、自然環境保全法(昭和47年法律第85号)に基づく自然環境保全基礎調査で選定された特定植物群落及び植生自然度が高いとされた植生、森林法(昭和26年法律第249号)に基づく保安林等が存在するなど、自然環境の保全上重要な地域であることから、これら地域における植物及び生態系への重大な影響が懸念される。
 また、本事業は、これまで国内では例が少ない大規模な陸上風力発電事業であり、最大50基の風力発電設備を設置することが想定される計画であることから、特に鳥類及び土地の改変に伴う自然環境に対する影響については、慎重かつ丁寧な環境影響評価を実施することが重要である。
 したがって、本事業計画の更なる検討に当たっては、以下の措置を適切に講じられたい。また、それらの検討の経緯及び内容については、方法書以降の図書に適切に記載されたい。
1.総論
(1) 対象事業実施区域の設定
 対象事業実施区域並びに風力発電設備及び取付道路等の附帯設備(以下「風力発電設備等」という。)の構造・配置又は位置・規模(以下「配置等」という。)の検討においては、計画段階配慮事項に係る環境影響の重大性の程度を整理し、反映させること。加えて、事業実施想定区域の福井県側には保安林が広く分布していることから、関係行政機関等と十分な協議・調整を行った上で、改変を想定しない範囲については対象事業実施区域から除外すること。
(2) 事業計画等の見直し
 上記のほか、2.により、本事業の実施による重大な影響等を回避又は十分に低減できない場合は、風力発電設備等の配置等の再検討、対象事業実施区域の見直し及び基数の大幅な削減を含む事業計画の見直しを行うこと。
(3) 環境保全措置の検討
 環境保全措置の検討に当たっては、環境影響の回避・低減を優先的に検討し、代償措置を優先的に検討することがないようにすること。
2.各論
(1) 騒音等に係る環境影響
 事業実施想定区域の周辺には、複数の住居が存在しており、工事中及び供用時における騒音による生活環境への影響が懸念される。このため、風力発電設備等の配置等の検討に当たっては、「風力発電施設から発生する騒音等測定マニュアル」(平成29年5月環境省)及びその他の最新の知見等に基づき、住居への影響について適切に調査、予測及び評価を行い、その結果を踏まえ、風力発電設備等を住居から離隔すること等により、騒音等による生活環境への影響を回避又は極力低減すること。
(2) 風車の影に係る環境影響
 事業実施想定区域の周辺には、複数の住居が存在しており、供用時における風車の影による生活環境への影響が懸念される。このため、風力発電設備の配置等の検討に当たっては、住居への影響について適切に調査、予測及び評価を行い、その結果を踏まえ、風力発電設備を住居から離隔すること等により、風車の影による生活環境への影響を回避又は極力低減すること。
(3) 鳥類に対する影響
 事業実施想定区域及びその周辺は、希少猛禽類であるイヌワシ及びクマタカの生息が確認されているほか、サシバ及びハチクマ等の渡り経路となっている可能性がある。また、本事業は国内では例が少ない大規模な陸上風力発電事業であり、最大50基設置することが想定される計画であることから、本事業の実施により、風力発電設備への衝突事故及び移動経路の阻害等による鳥類への重大な影響が懸念される。このため、風力発電設備の配置等の検討に当たっては、当該地域における鳥類の生息状況に精通した専門家等からの助言を踏まえた鳥類に関する適切な調査、予測及び評価を行い、その結果を踏まえた環境保全措置を講ずることにより、鳥類への影響を回避又は極力低減すること。
(4) 植物及び生態系に対する影響
 事業実施想定区域には、自然環境保全法に基づく自然環境保全基礎調査の第2回・第3回調査(特定植物群落調査)で特定植物群落に選定されている「栃ノ木峠のブナ-オオバクロモジ群集」及び「栃ノ木峠附近のブナ林」、第6回・第7回調査(植生調査)において植生自然度が高いとされた植生、森林法に基づき指定された保安林、滋賀県水源森林地域保全条例(平成27年滋賀県条例第6号)に基づく水源森林地域等が存在することから、本事業の実施により、植物及び生態系への重大な影響が懸念される。このため、風力発電設備等の配置等の検討に当たっては、現地調査により自然度の高い植生等が存在する区域を明らかにした上で、植物及び生態系への影響について予測及び評価を行うこと。また、その結果を踏まえ、既存道路及び無立木地等を活用することにより、自然度の高い植生等の改変を回避又は極力低減すること。
(5) 土地の改変に伴う自然環境に対する影響
 事業実施想定区域及びその周辺には、砂防法(明治30年法律第29号)に基づき指定された砂防指定地、森林法に基づき指定された保安林等が存在している。また、本事業は、風力発電設備を当該区域の尾根沿いに最大50基設置する計画が想定されるが、当該尾根付近は、風力発電設備の設置の際に活用できる既設道路等が少ないことから、大規模な造成工事や道路工事に伴う土砂崩落及び河川・沢筋等への土砂又は濁水の流出等による動植物の生息・生育環境等への影響が懸念される。このため、風力発電設備等の配置等の検討に当たっては、専門家等からの指導・助言を踏まえ、土砂崩落及び土砂流出の可能性の高い箇所の改変を回避するとともに、複数案の比較・検討に基づく既存道路の活用等により土地の改変量を最小限に抑えるなど、動植物の生息・生育環境等への影響を回避又は極力低減すること。




経済産業大臣の意見事業者の見解
1.総論  
(1) 対象事業実施区域の設定
 対象事業実施区域並びに風力発電設備及び取付道路等の附帯設備(以下「風力発電設備等」という。)の構造・配置又は位置・規模(以下「配置等」という。)の検討においては、計画段階配慮事項に係る環境影響の重大性の程度を整理し、反映させること。加えて、事業実施想定区域の福井県側には保安林が広く分布していることから、関係行政機関等と十分な協議・調整を行った上で、改変を想定しない範囲については対象事業実施区域から除外すること。

 風力発電設備等の配置等の検討に当たっては、計画段階配慮事項に係る環境影響の重大性の程度を勘案した上で必要な情報の収集・把握を行い、方法書以降の現地調査を踏まえ、計画に反映させるよう検討いたします。
 また、今後の手続きにおいては、保安林等について関係機関と協議・調整した上で、改変を想定しない範囲を削除いたします。
 なお、配慮書以降の事業計画の変更の経緯は「第7章7.2 7.2.2 2.配慮書提出後の検討の経緯」に記載いたしました。
(2) 事業計画等の見直し
 上記のほか、2.により、本事業の実施による重大な影響等を回避又は十分に低減できない場合は、風力発電設備等の配置等の再検討、対象事業実施区域の見直し及び基数の大幅な削減を含む事業計画の見直しを行うこと。

 上記のほか、2.により、本事業の実施による重大な影響等を回避又は十分に低減できない場合は、風力発電設備等の配置等の再検討、対象事業実施区域の見直し及び基数の大幅な削減を含む事業計画の見直しを行います。
(3) 環境保全措置の検討
 環境保全措置の検討に当たっては、環境影響の回避・低減を優先的に検討し、代償措置を優先的に検討することがないようにすること。

 環境保全措置の検討に当たっては、環境影響の回避・低減を優先的に検討し、代償措置を優先的に検討することがないようにします。
2.各論  
(1) 騒音等に係る環境影響
 事業実施想定区域の周辺には、複数の住居が存在しており、工事中及び供用時における騒音による生活環境への影響が懸念される。このため、風力発電設備等の配置等の検討に当たっては、「風力発電施設から発生する騒音等測定マニュアル」(平成29年5月環境省)及びその他の最新の知見等に基づき、住居への影響について適切に調査、予測及び評価を行い、その結果を踏まえ、風力発電設備等を住居から離隔すること等により、騒音等による生活環境への影響を回避又は極力低減すること。

 風力発電設備等の配置等に当たっては、「風力発電施設から発生する騒音等測定マニュアル」(平成29年5月環境省)及び最新の知見等に基づき、住居への影響について適切に調査、予測及び評価を行い、その結果を踏まえ、風力発電設備等を住居から離隔すること等により、騒音等による生活環境への影響を回避又は極力低減いたします。
(2) 風車の影に係る環境影響
 事業実施想定区域の周辺には、複数の住居が存在しており、供用時における風車の影による生活環境への影響が懸念される。このため、風力発電設備の配置等の検討に当たっては、住居への影響について適切に調査、予測及び評価を行い、その結果を踏まえ、風力発電設備を住居から離隔すること等により、風車の影による生活環境への影響を回避又は極力低減すること。

 風力発電設備の配置等の検討に当たっては、風車の影による住居への影響について適切に調査、予測及び評価を行い、その結果を踏まえ、風力発電設備等を住居から離隔すること等により、風車の影による生活環境への影響を回避又は極力低減いたします。
(3) 鳥類に対する影響
 事業実施想定区域及びその周辺は、希少猛禽類であるイヌワシ及びクマタカの生息が確認されているほか、サシバ及びハチクマ等の渡り経路となっている可能性がある。また、本事業は国内では例が少ない大規模な陸上風力発電事業であり、最大50基設置することが想定される計画であることから、本事業の実施により、風力発電設備への衝突事故及び移動経路の阻害等による鳥類への重大な影響が懸念される。このため、風力発電設備の配置等の検討に当たっては、当該地域における鳥類の生息状況に精通した専門家等からの助言を踏まえた鳥類に関する適切な調査、予測及び評価を行い、その結果を踏まえた環境保全措置を講ずることにより、鳥類への影響を回避又は極力低減すること。

 風力発電設備等の配置等の検討に当たっては、専門家等からの助言を踏まえ、鳥類に関する適切な調査、予測及び評価を行い、その結果を踏まえ、適切な環境保全措置を講ずることにより、鳥類への影響を回避又は極力低減いたします。
(4) 植物及び生態系に対する影響
 事業実施想定区域には、自然環境保全法に基づく自然環境保全基礎調査の第2回・第3回調査(特定植物群落調査)で特定植物群落に選定されている「栃ノ木峠のブナ-オオバクロモジ群集」及び「栃ノ木峠附近のブナ林」、第6回・第7回調査(植生調査)において植生自然度が高いとされた植生、森林法(昭和26年法律第249号)に基づき指定された保安林、滋賀県水源森林地域保全条例(平成27年滋賀県条例第6号)に基づく水源森林地域等が存在することから、本事業の実施により、植物及び生態系への重大な影響が懸念される。このため、風力発電設備等の配置等の検討に当たっては、現地調査により自然度の高い植生等が存在する区域を明らかにした上で、植物及び生態系への影響について予測及び評価を行うこと。また、その結果を踏まえ、既存道路及び無立木地等を活用することにより、自然度の高い植生等の改変を回避又は極力低減すること。

 風力発電設備等の配置等の検討に当たっては、専門家等からの助言を踏まえた現地調査により自然度の高い植生等が存在する区域を明らかにした上で、植物及び生態系への影響について予測及び評価を行います。また、その結果を踏まえ、既存道路、無立木地を活用すること等により、自然度の高い植生等の改変を回避又は極力低減いたします。
(5) 土地の改変に伴う自然環境に対する影響
 事業実施想定区域及びその周辺には、砂防法(明治30年法律第29号)に基づき指定された砂防指定地、森林法に基づき指定された保安林等が存在している。また、本事業は、風力発電設備を当該区域の尾根沿いに最大50基設置する計画が想定されるが、当該尾根付近は、風力発電設備の設置の際に活用できる既設道路等が少ないことから、大規模な造成工事や道路工事に伴う土砂崩落及び河川・沢筋等への土砂又は濁水の流出等による動植物の生息・生育環境等への影響が懸念される。このため、風力発電設備等の配置等の検討に当たっては、専門家等からの指導・助言を踏まえ、土砂崩落及び土砂流出の可能性の高い箇所の改変を回避するとともに、複数案の比較・検討に基づく既存道路の活用等により土地の改変量を最小限に抑えるなど、動植物の生息・生育環境等への影響を回避又は極力低減すること。

 風力発電設備等の配置等の検討に当たっては、専門家等からの指導・助言を踏まえ、土砂崩落及び土砂流出の可能性の高い箇所の改変を可能な限り回避いたします。また、既存道路の活用や地形を加味した設計の検討等により土地の改変量を最小限に抑えるなど、動植物の生息・生育環境等への影響を回避又は極力低減いたします。
 以上の検討の経緯及び内容について、方法書以降の図書に適切に記載すること。  




2 環境影響評価方法書

                       
福井県知事の意見
 本事業に係る環境影響評価方法書に対する環境の保全の見地からの意見については、次のとおりです。
 (仮称)余呉南越前第一・第二ウィンドファーム発電事業は、出力最大170,000kWと国内最大級の風力発電事業であり、かつ、尾根に最大50基の風力発電機を設置する全国に例の少ない事業計画である。
 また、本事業に係る事業実施区域およびその周辺は、水源かん養保安林が福井県域のほぼ全域に広がり、また、ブナ林の特定植物群落が存在するとともに、イヌワシやクマタカといった希少猛禽類の生息が確認されている自然環境が豊かな地域である。
 特に、滋賀県との県境部は、動植物の生物地理学的な境界線として重要であり、さらに、サシバといった渡りを行う希少猛禽類をはじめ小型鳥類からコウノトリを含む大型鳥類まで多様な鳥類の大規模な移動が見られており、全国的に重要な渡りの経路となっていると考えられる地域でもある。
 一方、風力発電事業の実施に伴う、騒音、バードストライクおよび景観への影響については、全国的に課題として報告されているところである。
 さらに近年、気候変動によるゲリラ豪雨や集中豪雨が全国的に発生しており、森林の伐採や地形改変による多量の濁水の発生や土砂流出が懸念される。
 このような地域特性および事業特性を踏まえ、水の濁り、動植物(特に鳥類)および景観への影響について、十分考慮する必要がある。
 このため、方法書に記載されている事項に加え、以下の事項に十分配慮し、環境影響評価を適切に行うことが重要であり、その評価結果から重大な環境影響が回避または十分に低減できないと考えられる場合には、風力発電設備配置等の再検討、事業実施区域の見直しおよび風力発電機の大幅な基数削減を含む事業計画の見直しが必要である。
1.環境影響評価の項目について
 工事の実施による影響要因として、切土工事により発生した残土を対象事業実施区域内に撒きだすことによる影響について検討し、必要に応じて撒きだし作業および撒きだし地の存在を影響要因として抽出し、環境影響評価を実施すること。また、工事中の建設機械の稼働に伴う動物への影響についても対象項目とするよう検討すること。
2.環境影響評価の調査、予測および評価の手法について
(1) 窒素酸化物の評価については「大気汚染に係る環境基準」との整合性が図られているかどうかを評価することとしているが、現地調査の調査期間は通年ではないことから、調査結果の代表性の検討を行った上で予測・評価を行うこと。
  なお、その検討結果を準備書に記載すること。
(2) 施設の稼動による騒音および低周波音の調査、予測および評価に当たっては、住居等における残留騒音等の現況を的確に把握できる調査地点・時期等を選定するとともに、既存風力発電事業における事後調査結果等の最新の知見を収集し、複雑な地形や気象等を考慮した適切な予測手法および低周波音の評価比較値の追加設定を含む評価方法の選定を行うこと。
  また、予測結果については、予測地点以外の住居等における影響についても、住民等が十分に理解できるよう、準備書の記載に配慮すること。
(3) 水の濁りについては、取付道路等を含む施設の配置や構造および土砂流出防止措置などの事業計画を考慮し、必要に応じ地形改変および施設の存在を影響要因に加えること。
  また、事業実施区域周辺の河川水は、漁業利用や農業用水として利用が行われている。このことから、水の濁りに係る調査地点等の選定に当たっては、これらの利水や水生生物等への影響および具体的な事業計画を考慮するとともに、降雨時の水質を適切に把握するため、調査頻度や測定回数を増やすこと。
  予測に当たっては、地形地質・利水等の地域特性および具体的な事業計画を踏まえた予測条件および予測地点の選定を行うこと。
(4) 動物(鳥類およびコウモリ)に係る調査方法の詳細および影響の評価に当たっては、鳥類等の生態や現地の状況に精通した専門家その他の環境影響に関する知見を有する者(以下「専門家等」という。)の意見を聴取し、その意見を反映すること。
  希少猛禽類および渡り鳥に係る調査について、次の事項に特に留意すること。
 @ 希少猛禽類
   予備的に生息状況の調査を実施するとともに、その途中経過や結果について専門家等の意見を聴取し、必要に応じて定点観察調査の地点等を修正すること。
   なお、調査期間中に繁殖が確認されなかった場合は、専門家等の意見を聴取し、必要に応じて調査期間を延長すること。
   予測および評価に当たっては、行動圏および生活史を含む生態を把握した上で、行うこと。
 A 渡り鳥
   猛禽類、ガン・カモ・ハクチョウ類、小鳥類の各種の渡りのピークとなる時期を十分に含む期間に、夜間も含めてレーダー調査を実施し、風車の羽の回転範囲内外を通過する鳥類の実態を把握すること。
   また、降雨や風向・風速等の気象条件によって、渡りルートが変わることから、それら複数の条件を含むように調査日を設定すること。
   定点観察調査については、調査員の能力が調査精度を大きく左右するため、調査地点の半数以上の地点で、熟達調査員を2名配置する調査体制とすること。
   また、これらの調査の詳細結果を準備書に記載し、バードストライク等について累積的な影響も含めて評価し、その回避または低減の方法を具体的に示すこと。
(5) 動物、植物および生態系について、準備書に調査の実施日時、調査方法、確認された全種のリストを記載し、環境省および福井県のレッドリストに記載された種および自然植生について影響評価を行い、回避または低減の方法を具体的に示すこと。
  特に、小型哺乳類のニホンヤマネおよびニホンモモンガについては、専門家等の意見を聴取し、風力発電設備とその周辺の尾根部および取付道路等の付帯設備場所を中心に巣箱を設置すること。また、巣箱の利用状況から生息状況を把握し、影響評価を行うこと。
(6) 植物相および植生の調査については、風力発電機の設置を予定している全ての尾根に調査地点を配置すること。また、植生の調査については、春の現地調査を追加するとともに、尾根以外の斜面での調査を追加すること。また、調査方法の詳細について、専門家等の意見を聴取し、その意見を反映すること。さらに、シカの生息密度調査の結果を踏まえ、重要な植生や希少植物が生育する場所では、シカが増える可能性のある森林伐採を最大限回避すること。
  また、自然環境を改変する場所については、外来植物の侵入状況の把握およびその対策の方法について、準備書に記載すること。
(7) 景観について、日野川渓谷、夜叉ヶ池、幽玄の滝、昇龍の滝、池河内湿原、板取宿、大門地区および水島についても、調査地点に加えること。
  眺望の確認を行う際は、季節、時間を変えたフォトモンタージュ法を行うこと。その際、風力発電機に加え、施工による森林伐採や取付道路の設置についても考慮するとともに、撮影ポイントを広角的にとらえた写真による評価を行うこと。
  その評価に当たっては、「国立・国定公園内における風力発電施設の審査に関する技術的ガイドライン」(環境省・平成25年)を参照すること。
3.環境影響評価準備書の作成について
(1) 本事業における風力発電機の位置、出力、基数等および工事内容等の事業計画を明らかにした上で、調査、予測、評価結果を記載すること。
(2) 調査および予測の地点および時期等については、その選定の妥当性が確認できるよう、予測の前提条件を明記するなど、より具体的に選定理由を記載すること。
(3) 現地調査結果の記載に当たっては、調査の手法とその結果が関連できるように整理すること。
  なお、希少野生動植物種の生息または生育状況の記載に当たっては、営巣地を明らかにしないなど、保護の観点に十分配慮すること。
(4) 環境保全措置の検討に当たっては、環境への影響の回避または低減を優先して検討し、代償措置を優先的に検討することがないようにすること。
  また、環境保全措置についての複数案の比較検討、実行可能なより良い技術が取り入れられているかどうかの検討等を通じて、講じようとする環境保全措置の妥当性を検証し、これらの検討の経過を明らかにできるよう整理すること。
(5) 準備書は専門的な内容が多く、また、膨大な図書になる可能性があることから、作成に当たっては、図表や平易な用語を用いることなどにより、できる限りわかりやすい内容となるよう配慮すること。




経済産業大臣の勧告
 方法書では、設置する風力発電機の規模や配置等が確定していないことから、これらを可能な限り明確にした上で、それを踏まえた調査、予測及び評価を実施すること。


事業概要 図書内容 調査予測評価手法 参考文献 審査意見・見解 経過

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