事業概要 図書内容 調査予測評価手法 参考文献 審査意見・見解 経過

九頭竜川水系足羽川ダム建設事業


環境の保全の見地からの審査者の意見と事業者の見解


1 方法書
2 準備書
 (1) 福井県知事の意見と事業者の見解
 (2) 環境大臣意見
 (3) 国土交通大臣意見



1 方法書

福井県知事の意見と事業者の見解
知事の意見事業者の見解
 九頭竜川水系足羽川ダム建設事業に係る事業実施区域は、背後にブナ自然林が広範囲に分布し、クマタカ等の稀少猛禽類が生息する自然環境が豊かな地域であり、集水域には、特に自然環境を保全する必要がある地域として、福井県自然環境保全条例(昭和48年福井県条例第1号)により指定された楢俣自然環境保全地域が存在している。また、当該地域およびその周辺は、登山、渓流釣り、自然探勝などの場として、年間を通じ多くの利用者が訪れている。
 また、当該事業計画は、満水時には約94ヘクタールと広い範囲が水没するとともに、大規模なトンネル構造を有する導水施設を設置する計画となっている。さらに、洪水調整専用のダムであるため、洪水時にのみ一時的に貯水し、貯水量が大きく変動し、供用前には、試験湛水を行うこととしている。
 このような地域特性および事業特性を踏まえ、動植物および景観等への影響について、十分考慮する必要がある。
 このため、方法書に記載されている事項に加え、以下の事項に十分配慮し、環境影響評価を適切に行うことが重要である。
 
1.環境影響評価の実施に係る総括的事項について
(1) 当該事業計画は、環境影響評価が全国的に例がない洪水調整専用のダムに関する計画である。
 このため、環境影響評価の実施に当たっては、環境のみならず事業特性に精通した専門家からなる委員会を設けるなどにより、環境影響に係る専門家の意見を求めること。
 また、予測に関する知見が十分に蓄積されていない手法を用いる場合には、予測の不確実性の程度および不確実性に係る環境影響の程度を明らかにすること。
(1) 流水型ダムに精通した専門家を含む学識者14名よりなる技術検討委員会を事業者独自に設置し、これまでに15回の委員会・検討会を開催する中で、委員の助言を受けながら環境影響について検討を行ってきています。
 また、予測の手法を選定するにあたり、環境影響予測に関する知見が十分に蓄積されていない場合において、予測の不確実性の程度及び不確実性に係る環境影響の程度を勘案し、必要な場合は当該不確実性の内容を明らかにしました。
(2) 供用前の試験湛水は、生態系に与える影響の程度が著しいものとなるおそれがあることから、環境保全措置の検討に当たっては、その影響が最大限回避・低減されるよう実施方法について十分に検討すること。 (2) 試験湛水による、動植物及び生態系への影響について予測を行い、その結果、環境影響が無い、または影響の程度が極めて小さい場合以外には、事業者により実行可能な範囲内で環境影響をできる限り回避又は低減できるよう、環境保全措置を検討しました。その結果については、「6.1.7 動物」、「6.1.8 植物」及び「6.1.9 生態系」に記述しています。
2.環境影響評価の項目等について
(1) 貯水域等の活用として大規模な集客施設を設置するなど、環境影響の程度が著しいものとなるおそれのある事業を本事業と併せて実施する場合には、その影響についても環境影響評価を行うこと。 (1) 事業実施区域内等において、現時点で本事業と併せて実施する事業計画はないと聞いております。
(2) ダムの堤体の工事の影響については、工事内容によってその影響が異なることから、具体的な工事内容を踏まえて、適切に項目を選定すること。
 なお、事業実施区域は、大気汚染物質が滞留しやすい地形であることから、窒素酸化物等の影響について、十分考慮すること。
(2) 工事の影響については、工事内容をできる限り具体的に整理し、適切に項目を選定して環境影響評価を実施しました。
 窒素酸化物等の影響については、事業実施区域内には「自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法」策6条第1項に基づく窒素酸化物対策地域に指定されている地域はないため、予測・評価の対象となりません。
 なお、工事の実施においては、排出ガス対策型建設機械を積極的に使用するとともに、工事用車両のアイドリングストップの励行など、窒素酸化物等の負荷の低減に努めます。
(3) 事業実施区域周辺には、旧鉱山が存在し、地盤に自然由来の重金属等の有害物質が含有するおそれがあることから、以下により適切に項目を選定すること。
 特に、下流域に上水用の水源井戸などがあることから、人の健康に影響を及ぼさないよう十分な配慮が必要である。
@ ダムの堤体の工事および導水施設の建設の工事等により、河川および地下水の水質に影響を及ぼすおそれがあるため、その影響について調査・予測・評価の対象とすること。
A 建設発生土処分場の跡地の存在により、土壌汚染が生じるおそれがあるため、その影響について予測・評価の対象とすること。
@A 文献資料により、事業実施区域周辺における鉱山等の分布は確認していますが、現時点の事業者の現地調査では、事業実施区域内には鉱山跡地は確認していません。
 また、「3.1.2 水環境の状況」において、調査地域内の部子川等の河川では水質調査を行っており、健康項目の全てにおいて定量下限値未満、もしくは検出されていません。このため、重金属等の影響は想定されないことから、予測・評価の対象となりません。
 なお、ダム堤体等の設計段階において地質調査等と併せて、重金属等の有害物質の確認を行います。確認された場合は、関係機関等に確認のうえ、土壌汚染対策法及び水質汚濁防止法に基づき適切に対応します。
(4) 洪水時の貯水が長期にわたる場合には、水温および富栄養化等に影響を及ぼすおそれがあるため、その影響について予測・評価の対象とすること。 (4) 足羽川ダム供用後における洪水時の貯水は、過去50年間の実績降雨をもとに計算を行った結果、最大でも3日程度と短期間であることから、水温及び富栄養化等については予測・評価の対象となりません。
(5) ダムの堤体の下流では、地下水を利用しており、ダム堤体の存在および試験湛水により地下水の水位に影響を及ぼすおそれがあるため、その影響について予測・評価の対象とすること。 (5) ダム供用後は、洪水時以外はこれまでと同様に河川水をそのまま下流へ流す運用となります。試験湛水中においても全量を貯留することはなく、下流河川に必要な流量を放流します。
 また、ダム堤体下流の集落の井戸の水源は、山側からの地下水であると考えています。このため、予測・評価の対象となりません。
(6) 導水施設は、濃尾活断層系の一部を構成する温見断層を横断する計画となっていることから、以下により適切に項目を選定すること。
 @ 温見断層は、重要な地形及び地質として、現地調査を行うとともに、導水施設の建設の工事による影響についても予測・評価を行うこと。
 A 温見断層が形成された際に封じ込められた地下水は、溶存酸素量が少ないおそれがあるため、その影響について調査・予測・評価の対象とすること。
(6) @重要な地形及び地質の予測評価では、保全することが必要な希少性のあるものや学術上重要なものとして、温見断層は大野市温見地先が文献特に記載されておりますが、事業実施区域周辺では温見断層は文献等に記載されていないことから、予測・評価の対象となりません。
A地下水の水質調査では、溶存酸素が少ない地下水は確認されていません。なお、地下水に関しては工事の実施並びに土地又は工作物の存在及び供用において、環境の状況を把握するための環境監視を行う計画です。
(7) 森林が広範囲にわたり損なわれる場合には、二酸化炭素の吸収源に及ぼす影響が著しいものとなるため、その影響について予測・評価の対象とすること。 (7) 本事業により消失する森林面積は、池田町の森林面積と比べてもごくわずかであり、二酸化炭索の吸収源に及ぼす影響は小さいと想定されるため、予測・評価の対象となりません。
 なお、事業の実施にあたっては、CO2排出低減に資する低燃費型建設機械の使用により、温室効果ガスの発生の抑制に配慮します。
3.調査、予測および評価の手法について
(1) 平成16年福井豪雨により、事業実施区域およびその周辺は大きな影響を受けていることから、現地調査の結果については、豪雨の発生前後に分けて整理することなどにより、その影響の程度を明らかにすること。
 また、予測および評価に当たっては、福井豪雨の影響を十分に踏まえて、適切な時期および手法を採用すること。
(1) 福井豪雨による影響を考慮し、福井豪雨の前後に実施した調査結果を踏まえて、適切に予測・評価を行いました。その結果については、「6.1.4 水質」に記述しています。
(2) 予測の対象とする時期については、T期工事完成後の暫定運用段階とU期工事完成後の運用段階で予測の前提条件が大きく変化するおそれがあるため、暫定運用期間が長期にわたる場合には、暫定運用段階を含めること。 (2) T期工事完成後の段階よりも、U期工事完成後の運用段階の方が改変区域が広いこと、また、T期工事に関わるものは、すべてU期工事完成後の影響範囲内に含まれることから、予測対象の時期はU期工事完成後としています。
(3) ダムの堤体の工事等に伴う騒音・振動の影響の調査・予測・評価に当たっては、資材等の主要な運搬ルートが北陸自動車道、国道158号または県道武生美山線を経由し、その影響の程度が著しいものとなるおそれがある場合には、その沿道に面する地域も対象とすること。 (3) 工事用事両による騒音等については、資材等の主要な運搬ルート周辺における沿道の状況等を執案し、地域を代表して最も影響が考えられる地点を選定し、予測・評価を行いました。その結果については、「6.1.2 騒音」及び「6.1.3 振動」に記述しています。
(4) 事業実施区域周辺では、飲用水や温泉などとして地下水が広く利用されていることから、地下水の利用の状況の調査に当たっては、聴き取りを基本とし、この結果を踏まえ、地下水に係る予測・評価を行うこと。 (4) 地下水の利用の状況の調査は、住民からの聴取と合わせて現地での確認を行っており、これらの結果も考慮して、地下水に係る予測・評価を行いました。その結果については、「6.1.5 地下水の水質及び水位」に記述しています。
(5) 動植物および生態系の調査に当たっては、現地調査を基本とし、以下により適切に実施すること。
 特に影響を受ける貯水域、建設発生土処理場など土地の改変部分および下流河川については、十分な調査を実施すること。
 また、動物の重要な種および注目すべき生息地、植物の重要な種および重要な群落、地域を特徴づける生態系の選定に当たっては、文献等による調査および現地調査の結果を踏まえるとともに、その選定理由を明らかにすること。
 @ 調査時期については、調査対象種の生態等を十分考慮すること。
   特に季節変化に伴い移動や発生を繰り返す鳥類および昆虫類については、2週間間隔で確認される生物種が変化するため、調査時期に配慮すること。
 A 稀少猛禽類については、生息状況を網羅できる調査定点を設定するとともに、通年の調査を実施すること。
   特に事業実施区域内に生息する可能性が高いクマタカについては、営巣地を特定するなど行動圏、生活史を含む生態の調査を十分に行い、その結果をもとに予測・評価を行うこと。
 B 流況の変化に特に影響を受けやすい攪乱(かくらん)依存型の重要な種(タコノアシ等)については、必要に応じて、天神橋下流も調査範囲に含めること。また、影響の程度が著しいものとなるおそれがある場合には、予測・評価の対象とすること。
 C 旧鉱山跡など特殊な環境が存在する場合には、適切な調査手法を採用すること。
(5) @昭和60年から対象種等の生態の特性を踏まえて季節変化を網羅し、また有識者のアドバイスを受けながら現地調査を行っており、調査時期は適正であると考えています。
 また、充分な生態の調査結果に基づいて予測・評価を行いました。
 A猛禽類の重要な種及び生態系(陸域)上位性の注目種であるクマタカについては、「猛禽類保護の進め方〔特にイヌワシ、クマタカ、オオタカについて〕(1996環境庁自然保護局野生生物課編)」及び「ダム事業におけるイヌワシ・クマタカの調査方法(2001ダム水源地環境整備センター)」に示されている調査方法に基づき、猛禽類の繁殖ステージが包含されるように毎月1回程度(最大で4回)、1回あたり3日間〜5日間程度の調査を適切な地点で実施していますので、調査地点・調査時期については適正であると考えています。
 また、充分な生態の調査結果に基づいて予測・評価を行いました。
 B小規模な出水において、流水の調節は行いません。そのため、天神橋下流において、撹乱依存型の重要な種の主要な生育地である低水敷付近は、これまでと同様に撹乱を受けることとなり、影響の程度が著しいものとなる可能性はほとんどないと考えられることから、調査範囲は天神橋地点までとしました。
 以上の結果については、「6.1.7 動物」、「6.1.8 植物」及び「6.1.9 生態系」に記述しています。
 C文献資料により、事業実施区域周辺における鉱山等の分布は確認していますが、現時点の事業者の現地調査では、事業実施区域内には鉱山跡地は確認していません。
(6) 動植物および生態系の影響の予測・評価に当たっては、試験湛水を含めて行うこと。
 特に水生生物(水際の生物を含む)への影響については、流水域および止水域に生息または生育する種に分けて予測・評価を行うこと。
 また、大規模な改変に伴うクマ等の行動圏の変化や外来生物の侵入などによる生態系への影響についても配慮すること。
(6) 動植物及び生態系への影響については、試験湛水を含めて予測・評価を行いました。また、生態系(典型性)で、試験湛水による植生の変化についても予測・評価を行いました。
 水生生物に限らず、重要な動物・植物については、種ごとの生態を考慮して、改変に伴う行動圏を含む生息・生育状況の変化について予測・評価を行いました。しかし、外来生物の侵入は、その導入の経路が様々であり、ダム事業としての影響の把握は困難であると考えられます。
 以上の結果については、「6.1.7 動物」、「6.1.8 植物」及び「6.1.9 生態系」に記述しています。
(7) 景観への影響の予測・評価に当たっては、県道松ヶ谷宝慶寺大野線および住民が日常的に生活する空間についても、主要な眺望点として配慮すること。 (7) 「景観」における主要な眺望点は、不特定かつ多数の者が利用している景観資源を眺望する場所としました。
 なお、堤体等の設計にあたっては、「国土交通省所管公共事業における景観検討の基本方針(案)」(平成19年4月)に基づいて、また、頂いた意見を参考に検討します。
(8) 主要な人と自然との触れ合いの活動の場の調査・予測・評価に当たっては、足羽川およびその支川が多くの者の釣り場や水遊びの場として利用されていることから、その利用への影響も対象とすること。 (8) 調査地域内の足羽川等は全域で漁業権が設定され、「釣り場」における釣りは経済的活動に該当し、人と自然との触れ合いの活動には該当しないと考えることから、予測・評価の対象となりません。
 なお、「水遊びの場」は、人と自然との触れ合いの活動の場の項で予測・評価を行いました。その結果については、「6.1.11 人と自然との触れ合いの活動の場」に記述しています。
(9) 廃棄物等の予測・評価に当たっては、建設工事に伴う副産物に既存構造物の解体に伴う産業廃棄物および伐採木を含めること。
 また、試験湛水ならびにダムの堤体の存在および供用等において発生する堆積土砂および流木等も対象とすること。
 なお、廃棄物等は3R(発生抑制、再使用、再生利用)の観点が重要であるため、発生量、再使用量、再生利用量、中間処理量および減量化量を一連のものとして把握すること。
(9) 廃棄物等の予測・評価項目には、既存構造物の解体に伴う産業廃棄物及び伐採木を含めています。
 廃棄物は建設工事に伴い発生する副産物を対象としており、自然発生する土砂、流木については対象となりません。
 なお、試験湛水時、存在及び供用時における堆積土砂及び流木については、周辺への環境影響を考慮し、関係機関と調整を図りながら適切に対処します。
4 環境影響評価準備書の作成について
(1) 調査・予測の地点および時期等については、その選定の妥当性が確認できるよう、予測の前提条件を明記するなど、より具体的に選定理由を記載すること。
 特に河川に係る水質、動植物および生態系の対象地域を天神橋までとした理由について、具体的に明らかにすること。
(1) 予測の前提条件・選定理由は、環境影響評価準備書において、できる限り具体的に記述しました。
 なお、河川に係る水質、動植物及び生態系の対象地域を天神橋までにした理由は、福井市街地の汚濁負荷の影響の度合が、下流に行くほど本川との合流等によりダムの影響が小さくなるので、流域の規模から判断して、ダムの影響を適切に評価する対象地域として、天神橋地点までを選定しました。
(2) 現地調査結果の記載に当たっては、調査の手法とその結果が関連できるように整理すること。 (2) 環境影影響評価準備書における現地調査結果の記載に当たっては、調査の手法とその結果を関連付けて整理しました。
(3) ダムの堤体、分水堰および付替え道路等の位置や構造など、当該事業の内容の具体化の過程における環境の保全の配慮に係る検討の経緯およびその内容を明らかにすること。 (3) 環境保全措置並びに環境保全措置を講ずることとするに至った検討の状況を環境影響評価準備書に記載しました。
(4) 環境保全措置の検討に当たっては、環境保全措置についての複数案の比較検討、実行可能なより良い技術が取り入れられているかどうかの検討等を通じて、講じようとする環境保全措置の妥当性を検証し、これらの検討の経過を明らかにできるよう整理すること。 (4) 環境保全措置の検討に当たっては、環境保全措置についての複数の案の比較検討、実行可能なより良い技術が取り入れられているかどうかの検討、その他の適切な検討を通じて、事業者により実行可能な範囲内で、本ダム事業に係る環境影響ができる限り回避又は低減されているかどうかを検証しました。
 また、環境保全措置を講ずることとするに至った検討の状況を環境影響評価準備書に記載しました。
(5) 準備書は専門的な内容が多く、また、膨大な図書になる可能性があることから、作成に当たっては、図表や平易な用語を用いることなどにより、できる限りわかりやすい内容となるよう配慮すること。 (5) 環境影響評価準備書は、図表や平易な表現を用いることなどにより、できる限りわかりやすい内容となるよう配慮しました。更に、環境影響評価準備書を要約した要約書を作成するなど、内容がより分かりやすくなるように努力しました。




2 準備書

福井県知事の意見と事業者の見解
知事の意見事業者の見解
 九頭竜川水系足羽川ダム建設事業に係る事業実施区域は、谷間の河川を落葉広葉樹林などからなる森林が広く囲み、クマタカ等の希少猛禽類が生息する自然環境が豊かな地域となっており、この周囲の森林を集水域とする足羽川がその支川からの清流を集め、池田町から福井市へと流れている。また、当該地域およびその周辺は、登山、渓流釣り、自然探勝などの場として、年間を通じて利用者が訪れている。
 本事業計画は、通常時は湛水を行わない流水型ダムであることから、下流の流況は基本的に変わらないものとし、そこに生息・生育する動植物の生息・生育環境は、おおむね長期的には維持されるとしている。しかしながら、洪水調節地の面積は約94ヘクタールにわたっており、その中の動植物の生息・生育環境は、試験湛水時には一定期間水没し、供用後の洪水調節時にも短期間水没することとなる。また、これら貯水後の放流時には、下流河川水質の一時的な悪化も予測されている。さらに、ダム本体部分だけでなく、導水トンネルや堰等が設けられることから、これら施設の周辺の自然環境や地下水および下流域の河川等に影響が及ぶおそれがあるものである。
 こうした地域特性および事業特性を踏まえ、また、全国で初めて環境影響評価が実施される流水型ダム建設事業であることから、その予測結果には不確実性が避けられないことを念頭に、事業実施前に環境保全措置を十分に検討することはもとより、並行して実施するモニタリングの結果を速やかに環境保全措置に反映するなど、順応的対応を適切に行い、環境の保全に万全を期すことが必要である。
 さらに、事業の実施およびモニタリングにより得られた知見が、全国のモデルケースとして今後のダム事業の環境保全対策に有効に活用され、環境配慮が一層促進されるよう期待する。
 これらのことから、以下の事項について十分に配慮し、事業を適切に実施することが必要である。
 
T 全般的事項
 1 環境配慮・モニタリング
 環境影響評価法の趣旨である環境影響をできる限り回避・低減するとの観点から、予測の結果、影響が小さいとしていることをもって、環境保全措置の検討が行われていない動植物や河川域の生態系、その他の環境要素についても、できる限り環境の保全のための配慮およびモニタリングを行うこと。
 また、工事の実施に当たっては、環境保全措置等が適正に実施されるよう工事関係者への教育や指導など適切な施工管理を行うこと。
 さらに、工事が長期にわたるため、U期工事段階で予測の前提条件が大きく異なるおそれがあることから、U期工事開始前に動物および植物等の調査を実施し確認を行うとともに、この結果を踏まえ必要な環境保全措置を検討すること。
 工事の実施前、実施期間中及び供用開始後には、専門家の指導及び助言を得ながら、環境の保全のための配慮及びモニタリングを実施します。
 また、工事の実施に当たっては、工事事務所内に環境保全担当者を配置し、環境保全について、工事関係者へ教育、周知及び徹底を図ります。
 U期工事の実施に当たっては、モニタリングの状況を踏まえ、新たな環境への影響が懸念される場合には、専門家の指導及び助言を得ながら、適切に対応します。
 2 環境影響評価書の記載
 (1) 対象事業の目的および内容において、事業規模の根拠や現行計画に至る環境配慮の経緯を明らかにするとともに、造成計画、施設計画、道路計画、排水計画および廃棄物処理計画等の環境影響評価の前提となる工事計画および供用後の施設運用計画等を整理して記載すること。  評価書作成に当たっては、事業規模の根拠や現行計画に至る環境配慮の経緯等について記載しました。
 また、工事計画、施設運用計画などの影響評価に必要な事項は、適宜記載しています。
 (2) 環境影響評価準備書の内容が複雑で長大であることから、簡略化や重点化を図るなどにより、わかりやすいものとすること。  評価書作成に当たっては、よりわかりやすい図書となるよう努めました。
U 個別事項
 1 大気質・騒音
 工事関係車両の運行に伴う粉じんによる影響について配慮すること。
 また、建設機械の稼働および小型車を含む工事関係車両の運行に伴う騒音について、できる限りその低減を図るとともに、あらかじめ県等の関係機関と協議の上、事業実施段階で調査を行い、その結果に応じた環境保全措置を講じること。
 工事の実施に当たっては、工事用車両のタイヤの洗浄等を行うなど、大気環境に係る影響の低減に努めます。
 建設機械の稼働及び工事用車両の運行に伴う騒音については、低騒音型建設機械の採用、工事用車両の運行台数の平準化など、騒音に係る影響の低減に努めるとともに、工事実施期間中には騒音のモニタリングを実施します。モニタリングの結果、環境への影響が懸念される場合には、適切に対応します。
 2 水質
 (1) 工事の各段階において裸地面積の最小化による濁水の発生抑制を図るとともに、濁水処理施設および沈砂池について必要な規模の確保と適正な維持管理により、排水中の浮遊物質量(SS)をできる限り低減すること。  工事の実施に当たっては、工事の各段階における裸地面積の最小化に努めます。
 また、工事実施期間中における濁水処理施設及び沈砂池の設置に当たっては、現場条件及び濁水の発生量等を考慮して、必要な規模の設備を設置するとともに、適正な維持管理を行うことにより、河川に流出する浮遊物質量(SS)の低減に努めます。
 (2) 試験湛水および洪水調節時においては、水の濁りが一時的ではあるものの現状に比べ大きくなることが予測されており、かつ、その予測結果自体に不確実性があることから、水の濁りの低減手法について、試験湛水の実施および供用開始までにさらに検討を行うこと。
 また、工事中および供用時における下流河川水質への影響を的確に把握するため、あらかじめ県等の関係機関と協議の上、継続的な水質モニタリングを実施すること。
 試験湛水及び洪水調節時における水の濁りに対する環境保全措置の実施に当たっては、新たな知見の情報収集等を行うとともに、専門家の指導及び助言を受け、影響の低減に努めます。
 また、工事の実施前、実施期間中及び供用開始後には、専門家の指導及び助言を得ながら、継続的に水質のモニタリングを実施します。
 (3) 試験湛水に伴う放流による下流河川における水温の低下およびその後の急激な上昇が予測されていることから、魚類や底生動物等への影響を考慮し、水温の変化による影響の低減手法について、試験湛水の実施までにさらに検討を行うこと。  試験湛水時における水温に対する環境保全措置の実施に当たっては、新たな知見の情報収集等を行うとともに、専門家の指導及び助言を受け、水温変化の低減に努めます。
 (4) 試験湛水時の貯留水および放流水の水質は、その時々の降雨状況などの気象条件等の影響を受けることから、試験湛水時の気象条件等に即した対応をとり、水質等への影響をできる限り低減するよう環境保全措置等を講じること。  試験湛水の実施に当たっては、あらかじめ試験湛水計画を作成するとともに、気象条件等に即した対応をとるなど、できる限り水質等への影響の低減に努めます。
 3 地下水
 導水施設の施工に当たり、地下水の水位および水質への影響を考慮の上、高透水ゾーンの把握および具体的な施工方法の選定を的確に行うことにより、環境保全措置の効果を高めること。また、予測された地下水の影響範囲および事業実施区域周辺における地下水について、水位および水質のモニタリングを実施すること。  導水施設の施工に当たっては、地下水の水位等への影響を考慮し、高透水ゾーンの把握ならびに地質条件等にあった適切な施工方法を選定するなど、地下水の水位等への影響の低減に努めます。
 また、工事の実施前、実施期間中及び供用開始後には、地下水の水位等のモニタリングを実施します。
 4 動物
 (1) クマタカについては、事業実施区域の近傍で繁殖が確認されていることから、生息地の改変および工事の実施による影響について、事業の各段階において、環境保全措置等を十分に検討すること。また、事後調査およびモニタリングの結果について県に報告するとともに、その結果に応じ、工事の一時中止等の適切な環境保全措置等を実施すること。  クマタカについては、工事実施期間中に繁殖成功率が低下する可能性のある5つがいについて、つがいの生息状況や生息環境の状況に応じ、専門家の指導及び助言を得ながら環境保全措置及び事後調査を実施します。
 事後調査については、その結果を公表します。
 (2) 希少猛禽類の事後調査やモニタリングに当たっては、調査員の存在が営巣等に影響を与えることのないよう、調査地点および調査方法等について十分に配慮すること。  猛禽類の調査に当たっては、調査員の存在が営巣等に影響を与えることのないよう、調査地点、調査方法等について十分に配慮します。
 (3) アジメドジョウの避難場所の整備に当たっては、漁業者等の専門的知識を有する者への聞き取りなどにより、環境保全措置の確実性を高めるとともに、生態に対応したモニタリングを実施すること。  アジメドジョウの避難場所の整備に当たっては、専門的知識を有する者への聞き取り等を行うことにより、環境保全措置による効果の確実性の向上に努めます。
 また、環境保全措置の実施後には、事後調査を実施します。
 (4) 事業実施区域およびその周辺において確認されており、環境保全措置の対象となっていない重要な種、特に調査範囲内で繁殖の可能性があるオオタカやサシバ等の希少猛禽類については、生態を考慮した継続的な調査を行い、その結果を県に報告するとともに、環境の保全のための必要な配慮を行うこと。  環境保全措置の実施対象となっていないオオタカやサシバ等の希少猛禽類を含む重要な種については、生息状況の継続的なモニタリングを実施します。
 モニタリングの結果、環境への影響が懸念される場合には、専門家の指導及び助言を得ながら、環境の保全のための必要な配慮を行います。
 (5) 現地調査において確認されていない重要な動物種について、事業実施前および実施中の調査等において確認された場合には、環境の保全のための必要な配慮を行うこと。  工事実施前、実施期間中に実施する環境に関するモニタリングにおいて、新たに重要な種が確認され、環境への影響が懸念される場合には、専門家の指導及び助言を得ながら、環境の保全のための必要な配慮を行います。
 5 植物
 (1) エゾナニワズなど植物の移植等の代償措置の実施に当たっては、種ごとの特性の確認などにより、植物の環境保全措置の確実性を高めるとともに、保全対象種の生態に対応したモニタリングを実施すること。  エゾナニワズなどの植物の環境保全措置の実施に当たっては、保全対象種の生態的特性を踏まえ、専門家の指導及び助言を得ながら実施することにより、環境保全措置による効果の確実性の向上に努めます。
 また、環境保全措置の実施後には、事後調査を実施します。
 (2) 事業実施区域およびその周辺において確認されており、環境保全措置の対象となっていない重要な植物種については、生態を考慮した継続的な調査を行い、その結果を県に報告するとともに、環境の保全のための必要な配慮を行うこと。  環境保全措置の実施対象となっていない重要な種については、生育状況の継続的なモニタリングを実施します。
 モニタリングの結果、環境への影響が懸念される場合には、専門家の指導及び助言を得ながら、環境保全のための必要な配慮を行います。
 (3) 現地調査において確認されていない重要な植物種について、事業実施前および実施中の調査等において確認された場合には、環境の保全のための必要な配慮を行うこと。  工事実施前、実施期間中に実施する環境に関するモニタリングにおいて、新たに重要な種が確認され、環境への影響が懸念される場合には、専門家の指導及び助言を得ながら、環境保全のための必要な配慮を行います。
 6 生態系
 環境保全措置と併せて実施する対応に示された措置に加え、自然植生の再生を基本とした植栽や外来種対策などを実施し、改変地や試験湛水および洪水調整後のダム洪水調節地内において、生態系が保全・再生するよう配慮すること。  工事や試験湛水による改変後には、早期に植生が回復するよう、在来種を基本とした植栽を行います。
 また、供用開始後のダム洪水調節地内の植生について、モニタリングを実施します。
 植栽する樹種の選定、植栽箇所、外来種の取り扱い等の検討にあたっては、専門家の指導及び助言を得ながら実施するなど、生態系の保全・再生に努めます。
 7 人と自然との触れ合いの活動の場・景観
 (1) レクリエーションとしての釣りおよび地域住民の日常的な自然との触れ合いの活動の場としての足羽川およびその支川の利用の実態を把握するとともに、その状況に応じ、影響の低減のための配慮を行うこと。  釣り及び地域住民の日常的な自然との触れ合いの活動については、利用状況の把握を行うとともに、必要に応じて適切に対応します。
 (2) 主要な人と自然との触れ合いの活動の場とされている龍双ヶ滝へのアクセス道路からの景観について、工作物、改変地および洪水調節地と周辺景観との調和を図ること。  「国土交通省所管公共事業における景観検討の基本方針(案)」(平成21 年4 月)等により、良好な景観形成への取り組みに努めます。
 8 廃棄物等
 (1) 事業の実施に当たっては、多量に発生する発生土および汚泥について、工事の各段階において発生の抑制および再利用の促進を図ること。
 また、工事の実施までに、県等の関係機関と協議の上、具体的な処理計画を作成し、報告すること。
 工事の実施に当たっては、建設発生土や建設汚泥をはじめとする建設副産物について、工事の各段階において発生の抑制及び再利用の促進を図ります。
 また、処理計画については関係機関と協議するとともに、関係法令等を遵守し、適切に対応します。
 (2) 事業実施区域周辺には旧鉱山が存在し、自然由来の重金属等の有害物質が地盤中に含有しているおそれがある。このため、事業の実施に伴い発生する発生土および汚泥の処分ならびに再利用による土壌汚染等を防止するため、事業実施区域の土壌、発生土および汚泥の有害物質の含有状況の確認を行い、県等の関係機関に報告すること。  建設発生土や建設汚泥の処分ならびに再利用に当たっては、関係機関と協議するとともに、関係法令等を遵守し、適切に対応します。
 (3) 廃棄物等の処理、再利用および処分等に当たって、新たな環境影響が生じないよう適切に管理すること。また、再利用等の促進に当たり、新たな環境影響が生じるおそれがある場合には、その影響に対する環境保全措置を検討するとともに、県等の関係機関と協議すること。  廃棄物等の処理、再利用および処分等に当たっては、新たな環境影響が生じないよう、関係法令等を遵守し、適切に対応します。
 なお、再利用等の促進に当たり、新たな環境影響が生じるおそれがある場合には、専門家の指導及び助言を得るとともに関係機関と協議を行い、適切に対応します。
 9 その他
 工事中または供用後において環境に影響を及ぼす新たな事実が判明した場合には、県および関係市町に報告するとともに、必要な配慮を行うこと。  工事実施期間中または供用開始後において環境に影響を及ぼす新たな事実が判明した場合には、その内容に応じて、専門家の指導及び助言を得ながら、適切に対応します。




九頭竜川水系足羽川ダム建設事業環境大臣意見
 足羽川ダム建設事業(以下「本事業」という。)は、国土交通省近畿地方整備局が、足羽川、日野川及び九頭竜川の下流地域における洪水被害の軽減を目的に、九頭竜川水系足羽川の支川となる部子川の福井県今立郡池田町小畑地先に洪水調節専用の足羽川ダムを建設するとともに、水海川、足羽川、割谷川及び赤谷川に導水トンネル及び分水堰から成る分水施設を建設しようとするものである。
 対象事業実施区域は、九頭竜川水系足羽川の上流域にあり、周囲のブナ、コナラ等の落葉広葉樹林やスギ・ヒノキ植林ではクマタカの営巣が確認される等、多様性豊かな自然が維持されている。
 本事業により設置されるダムの湛水面積は約94ha、各支川をつなぐ導水トンネルの総延長は約16kmに及び、事業の実施によって重大な環境影響を与える可能性があることから、以下の措置を適切に講じるよう評価書に記載されたい。
1.最新の調査結果の反映
 本事業については、環境影響評価準備書の作成より、既に3年半が経過し、地域の自然環境の状況については、変化が生じている可能性がある。自然環境の状況については可能な限り最新データの把握に努め、環境影響評価において前提とされている調査結果から大きな変化が認められる場合には、予測及び評価の再検討を行うこと。
2.U期工事着工前の環境保全措置等の再検討
 本事業は、T期工事とU期工事に分けて計画され、U期工事は約13年かけて実施されるT期工事終了後に着工することとされている。このことから、U期工事の着工前に、T期工事の施工状況や事後調査の結果等を踏まえ、環境保全措置等の内容について再検討を行うよう努めること。
3.堤体等の詳細設計における環境配慮
 今後、堤体及び流木止等の河道内の附帯施設の詳細設計を行うに当たっては、表流水の流れ、水生生物の移動等を維持するため、当該事業地の上下流の連続性の確保に努めること。
4.試験湛水時の放流水温変動への対応
 試験湛水時には、放流水の水温に変動が生じることが予測されている。河川水温の変化による水生生物への影響は、知見が少なく不確実性が大きいため、水温変動の低減及び把握に努めるとともに、何らかの影響が懸念される場合には、有識者の助言を受けて、必要な措置を講ずること。
5.野生動物の保全
(1)クマタカ
 本事業は、事業実施区域及びその周辺に生息するクマタカの生息環境の一部を改変するとともに、営巣が確認されている場所に近い区域で実施されるものであることから、クマタカの繁殖等生息に対する影響が懸念される。このため、工事中において、周辺地域も含めた生息状況についての事後調査を行い、事業実施によるクマタカの繁殖等、生息への影響が確認された場合は、猛禽類に詳しい専門家の指導及び助言を得ながら、工事を一時中断する等の環境保全措置を確実に実施すること。また、事後調査を行うに当たっても事前に有識者の意見を聴取し、クマタカの繁殖に影響を与えることがないよう努めること。
(2)クマタカ以外の猛禽類
 イヌワシ、ハヤブサ、サシバ、オオタカ、ハチクマ、ツミ、ハイタカ、ノスリ、チョウゲンボウ等の猛禽類についても、それぞれの繁殖地、生息適地、採餌環境等が、本事業の施工によって、直接的又は間接的な影響を受けることが予測されていることから、工事中及び供用後において、周辺地域も含めた生息状況について環境監視を行い、評価書の予測結果と異なる影響が確認された場合は、猛禽類に詳しい有識者の指導及び助言を得ながら、適切な措置を講ずること。
(3)アジメドジョウ
 アジメドジョウの濁水影響に対する環境保全措置として、退避用シェルターの設置を行うこととされているが、当該措置は、ダム建設事業での実績がなく不確実性が高いため、事前に実験等を行い、詳細な実施計画及び事後調査計画を策定すること。
6.建設発生土及び伐採木の発生抑制並びに有効利用
 本事業の施工に伴う建設発生土は約430万m3が予定されており、その全量が事業実施区域内で処理されることとされているが、工事及び残土処分の詳細計画を策定するに当たっては、建設発生土の発生抑制及び有効利用に努めること。
 また、施工に伴い伐採される支障木は約6万m3が予定されているため、環境保全措置の検討を行い、伐採の詳細計画を策定するに当たっては、伐採範囲及び伐採量を最小限とし、伐採材の有効利用に努めること。
7.温室効果ガス排出量の削減
 本事業の施工に当たっては、「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」に基づく特定調達品目等の使用、効率的な施工計画の策定、低炭素型建設機械の使用等により、温室効果ガスの排出量削減に努めること。
 また、供用時においても、管理施設への省エネルギー機器の導入等により、温室効果ガスの排出量削減に努めること。




九頭竜川水系足羽川ダム建設事業国土交通大臣意見
T.送付された環境影響評価書についての国土交通大臣意見は、以下のとおりである。
1.本事業については、原石山の位置、付替道路のルートの検討にあたってクマタカの生息環境として重要性が高いと考えられる範囲の保全を考慮する等、環境影響の低減に向けた取り組みが見られるところであるが、事業の実施にあたっては、環境保全技術の開発の進展等に鑑み、実行可能な範囲内で新技術を取り入れるよう、より一層の環境影響の低減に努めること。
2.環境保全措置等の実施にあたっては、今後の流水型ダム事業において、その結果が保全対象動植物の生態に関する科学的知見の基礎資料として活用できるよう実行可能な範囲内で配慮すること。
3.今後、事業実施に伴い必要となる環境に関する調査及び対策等については、内容及び費用を公表すること。
U.環境大臣意見を勘案した国土交通大臣意見は、以下のとおりである。
1.最新の調査結果の反映
 本事業については、環境影響評価準備書の作成より、既に3年半が経過し、地域の自然環境の状況については、変化が生じている可能性がある。自然環境の状況については可能な限り最新データの把握に努め、環境影響評価において前提とされている調査結果から大きな変化が認められる場合には、予測及び評価の再検討を行うこと。
2.U期工事着工前の環境保全措置等の再検討
 本事業は、T期工事とU期工事に分けて計画され、U期工事は約13年かけて実施されるT期工事終了後に着工することとされている。このことから、U期工事の着工前に、T期工事の施工状況や事後調査の結果等を踏まえ、環境保全措置等の内容について再検討を行うよう努めること。
3.堤体等の詳細設計における環境配慮
 今後、堤体及び流木止等の河道内の附帯施設の詳細設計を行うに当たっては、表流水の流れ、水生生物の移動等を維持するため、当該事業地の上下流の連続性の確保に努めること。
4.試験湛水時の放流水温変動への対応
 試験湛水時には、放流水の水温に変動が生じることが予測されている。河川水温の変化による水生生物への影響は、知見が少なく不確実性が大きいため、水温変動の低減及び把握に努めるとともに、何らかの影響が懸念される場合には、有識者の助言を受けて、必要な措置を講ずること。
5.野生動物の保全
(1)クマタカ
 本事業は、事業実施区域及びその周辺に生息するクマタカの生息環境の一部を改変するとともに、営巣が確認されている場所に近い区域で実施されるものであることから、クマタカの繁殖等生息に対する影響が懸念される。このため、工事中において、周辺地域も含めた生息状況についての事後調査を行い、事業実施によるクマタカの繁殖等、生息への影響が確認された場合は、猛禽類に詳しい専門家の指導及び助言を得ながら、工事を一時中断する等の環境保全措置を確実に実施すること。また、事後調査を行うに当たっても事前に有識者の意見を聴取し、クマタカの繁殖に影響を与えることがないよう努めること。
(2)クマタカ以外の猛禽類
 イヌワシ、ハヤブサ、サシバ、オオタカ、ハチクマ、ツミ、ハイタカ、ノスリ、チョウゲンボウ等の猛禽類についても、それぞれの繁殖地、生息適地、採餌環境等が、本事業の施工によって、直接的又は間接的な影響を受けることが予測されていることから、工事中及び供用後において、周辺地域も含めた生息状況について環境監視を行い、評価書の予測結果と異なる影響が確認された場合は、猛禽類に詳しい有識者の指導及び助言を得ながら、適切な措置を講ずること。
(3)アジメドジョウ
 アジメドジョウの濁水影響に対する環境保全措置として、退避用シェルターの設置を行うこととされているが、当該措置は、ダム建設事業での実績がなく不確実性が高いため、事前に実験等を行い、詳細な実施計画及び事後調査計画を策定すること。
6.建設発生土及び伐採木の発生抑制並びに有効利用
 本事業の施工に伴う建設発生土は約430 万m3が予定されており、その全量が事業実施区域内で処理されることとされているが、工事及び残土処分の詳細計画を策定するに当たっては、建設発生土の発生抑制及び有効利用に努めること。
 また、施工に伴い伐採される支障木は約6万m3が予定されているため、環境保全措置の検討を行い、伐採の詳細計画を策定するに当たっては、伐採範囲及び伐採量を最小限とし、伐採材の有効利用に努めること。
7.温室効果ガス排出量の削減
本事業の施工に当たっては、「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」に基づく特定調達品目等の使用、効率的な施工計画の策定、低炭素型建設機械の使用等により、温室効果ガスの排出量削減に努めること。
 また、供用時においても、管理施設への省エネルギー機器の導入等により、温室効果ガスの排出量削減に努めること。

事業概要 図書内容 調査予測評価手法 参考文献 審査意見・見解 経過

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