事業概要 図書内容 調査予測評価手法 参考文献 審査意見・見解 経過

敦賀発電所3,4号機増設計画 環境影響評価

1 方法書
2 準備書


1 方法書についての環境の保全の見地からの審査者の意見と 事業者の見解および通商産業大臣の勧告

福井県知事の意見と事業者の見解
知事の意見 事業者の見解
 敦賀発電所3,4号機増設計画に係る事業実施区域は、 若狭湾国定公園の第2種特別地域に指定されている自然海岸である。 また、背後には西方が岳および蠑螺が岳を抱える自然環境が豊かな地域であり、 当該地域周辺は海水浴、釣り、登山、自然探勝などの場として、年間を通じ多くの利用者が訪れている。
 国定公園の特別地域は、自然の地形、植生の改変を極力抑制すべき地域であることから、 環境影響評価に当たっては、まず、事業計画において、切土工事・埋立工事等の敷地造成による地形の改変を 最大限抑制することが必要である。
 その上で、このような地域特性を踏まえ、動植物や景観への影響について、十分考慮する必要がある。
 また、温排水の影響については、当該事業実施区域の周辺海域に、 既設の発電所からの温排水も排出されていることから、これらの影響についても考慮する必要がある。
 このため、方法書に記載されている事項に加え、以下の事項に十分配慮し、 環境影響評価を適切に行うことが重要である。
 事業計画にあたっては、対象事業実施区域が若狭湾国定公園の第2種特別地域に 指定されていることから、方法書の作成段階において、切取、埋立工事等による地形の改変を 必要最小限とする観点から検討してきましたが、施設配置計画、埋立形状等についてさらに検討を行い、 埋立面積を可能な限り縮小するとともに、増設予定地近傍の海食洞の保全を図ることといたしました。
 (「9章 環境の保全のための措置」に記載)
 その上で地域特性を踏まえ、動植物や景観への影響を検討いたしました。
 (「8.8 陸生動物:重要な種及び注目すべき生息地」、「8.10 陸生植物:重要な種及び重要な群落」、 「8.13 景観:主要な眺望点及び景観資源並びに主要な眺望景観」に記載)
 また、温排水の影響については、2号機、もんじゅの温排水を含めた温排水拡散予測を行い、 2号機の環境影響評価に係る長期間の調査結果を踏まえ当該海域の状況を把握するとともに、 増設後の予測・評価を行いました。
 (「8.4.3 水温」に記載)
1 環境影響評価の項目等について
(1) 発電用の電気工作物以外の電気工作物(送電設備等)の設置など、 本事業と相互に密接な関連を有する事業であって、本事業と併せて実施されることにより、 環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある場合には、当該関連事業についても 環境影響評価を行うこと。 (1) 国定公園内の送電線については、設置計画の具体化に応じ、 送電線の設置事業者と協議を行い、環境調査等を実施いたします。
(2) 造成等の施工による一時的な影響については、 工事内容によってその影響が異なることから、具体的な工事内容を踏まえて、 以下により適切に項目を選定すること。
 特に、事業実施区域周辺海域は、浦底や水島などの海水浴場が点在し、また、 養殖や定置網等の各種の漁業が営まれていることから、水環境への影響に十分配慮する必要がある。
(2) 造成等の施工による一時的な影響については、埋立工事、切取工事、 土捨場の各工事内容に応じ、土砂粉じん、水の濁り、動物、植物、生態系について、項目を選定し、 第6章の項目選定表に反映するとともに予測・評価を行いました。
 @ 工事用仮設ヤードおよび土捨場の設置に伴い、粉じんの発生および濁水の流出の おそれがあるため、その影響について予測・評価の対象とすること。  @ 仮設用地および土捨場から発生する土砂粉じんの影響について、 予測・評価を行いました。
(「8.1.2 粉じん等」に記載)
 また同場所からの濁水の流出による影響について、浦底湾の養殖場、 水島等の海水浴場の水環境への影響について、予測・評価を行いました。
(「8.4.2 水の濁り」に記載)
 A コンクリートプラントからの排水、コンクリート打設が、 水の汚れに影響を及ぼすおそれがあるため、その影響について予測・評価の対象とすること。  A コンクリートプラント、コンクリート打設による排水については、 水素イオン濃度(pH)の影響が考えられますが、「2.2.6(7) 工事中の排水に係る事項」 に記載したとおり、仮設リサイクル型排水処理装置、仮設濁水処理設備を設置し、 中和処理により、排水中の水素イオン濃度(pH)を5.0以上9.0以下とした後、 排出する計画であることから、影響はほとんどないと考えられるため、 環境影響評価の項目として選定しないことといたしました。
 B 埋立工事に用いる土砂については、あらかじめ溶出試験を実施し、 その結果、有害物質が水質に影響を及ぼすおそれがある場合には、 その影響について予測・評価の対象とすること。  B 埋立工事に用いる土砂は、主に増設予定地点の山地の切取による花崗岩ですが、 有害物質の溶出試験を実施し、溶出はないことを確認しており、 影響はないものと考えられるため、環境影響評価の項目として選定しないことといたしました。
 (有害物質の溶出試験結果は、別紙−2参照) (略)
(3) 事業実施区域周辺には、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」 で国内希少野生動植物種に指定されているハヤブサ、「哺乳類及び鳥類のレッドリスト」で 絶滅危惧U類に指定されているヒナコウモリなどの生息が確認されており、 建設機械の稼動、切土工事、埋立工事および発破工事などが、 これらの重要な種および注目すべき生息地に影響を及ぼすことが懸念されるため、 その影響について予測・評価の対象とすること。
 また、植物の重要な種および重要な群落への影響についても、同様に、 予測・評価の対象とすること。
(3) ハヤブサ、ヒナコウモリ等の重要な動物種及び 注目すべき生息地に対する工事中の影響として、建設機械の稼働、 切土工事、埋立工事、発破工事等による騒音等の影響の予測・評価を行いました。
 重要な植物種に対する工事中の影響については、重要な種の生育環境を含め、 伐採により生じる林縁部の微気象の変化による影響の予測・評価を行いました。
(4) 本事業に伴い、ばい煙発生施設を設置する場合には、 大気環境への影響に留意し、必要な項目を選定すること。 (4) ばい煙発生施設として補助ボイラー2缶を設置する計画ですが、 対象事業実施区域周辺における硫黄酸化物、窒素酸化物の環境濃度は低いこと、 利用率が低いこと、軽油を使用すること、年間の総排出量は建設機械からの 排出量に比べ少ないこと、建設機械の稼働による窒素酸化物の予測結果では、 周辺の住居地域への寄与は少なくなっていることから判断して、 影響はほとんどないと考えられるため、環境影響評価の項目として選定しないことといたしました。
(補助ボイラー及び建設機械等からの硫黄酸化物、窒素酸化物の排出量の比較は、別紙−3参照) (略)
(5) 事業実施区域周辺には、変化に富んだ自然海岸が存在していることから、 護岸、防波堤および埋立地の存在などにより、周辺海域における流況が著しく変化する場合には、 海岸線の侵食および土砂等の堆積による影響に留意し、必要な項目を選定すること。 (5) 護岸、防波堤及び埋立地の存在による周辺海域の流況の変化が、 海岸線の侵食及び土砂等の堆積により、立石岬の岩礁・門ヶ崎に与える影響について 予測・評価を行いました。
(「8.7 地形及び地質:重要な地形及び地質」に記載)
2 調査、予測および評価の手法について
(1) 文献やその他の資料による調査に当たっては、 「福井県のすぐれた自然(1999福井県)」や各種のレッドリストなど、 入手できる最新のデータを幅広く収集し、重要な知見について漏れがないようにすること。 (1) 文献その他の資料調査においては、「福井県のすぐれた自然」 (1999年、福井県)、「植物版 レッドデータブック」(平成12年、環境庁)、 「無脊椎動物(昆虫類、貝類、クモ類、甲殻類等)のレッドリストの見直しについて」 (平成12年、環境庁)等入手できる最新のデータを収集し、漏れがないようにいたしました。
(2) 工事の実施に伴う大気環境への影響の予測・評価に当たっては、 相当数の作業船などの船舶が長期間工事を行うことから、船舶から排出される排ガスの影響についても 十分考慮すること。
 また、船舶から排出される硫黄酸化物の影響についても予測・評価の対象とすること。
(2) 工事に伴い作業船から排出されるばい煙のうち、 窒素酸化物については、工事用機械、工事用車両からの排出量に 工事用船舶の排出量を加算して予測・評価を行いました。
 硫黄酸化物については、対象事業実施区域周辺における環境濃度は低いこと、 建設機械等からの排出量は窒素酸化物に比べて低く、 建設機械の稼働による窒素酸化物の予測結果では、 周辺の住居地域への寄与は少ないことから判断して、 影響はほとんどないものと考えられるため、 環境影響評価の項目として選定しないことといたしました。
(建設機械等の稼働による窒素酸化物と硫黄酸化物の排出量の比較は、別紙−4参照) (略)
(3) 道路交通による騒音・振動の影響については、 資材の搬出入の輸送経路沿いに多数の海水浴場が点在し、夏期には交通量が増大することから、 予測・評価の前提となる現況値として年間の変動を把握した上で、予測・評価を行うこと。 (3) 道路交通による騒音・振動については、四季において平日・休日の交通量、 道路交通騒音、道路交通振動の調査を行いました。
 予測・評価に当たっては、現地調査結果から年間の交通量の変化を把握した上で、 将来交通量の設定を行いました。
(「8.2 騒音」、「8.3 振動」に記載)
(4) 発電所の稼動に伴う水環境の影響については、 水質汚濁に係る環境基準が定められている全項目について調査を行った上で、 汚濁が進行するおそれのある項目について予測・評価を行うこと。 (4) 水質汚濁に係る環境基準が定められている各項目 (水素イオン濃度、化学的酸素要求量、溶存酸素量、n−ヘキサン抽出物質、大腸菌群数、全窒素、 全燐及びカドミウム等24項目)について調査を行いました。
(「8.4.1 水の汚れ」に記載)
 現地調査結果及び2号機の環境影響評価に係る長期間の調査結果では、当該海域においては、 汚濁の進行はみられないことから、水の汚れを指標とする項目を化学的酸素要求量とし、 予測・評価を行いました。
(「8.4.1 水の汚れ」に記載)
 また、カドミウム等24項目については、原子力発電所から排出されないこと 及び現地調査結果では、亜硝酸性窒素、硝酸性窒素以外は全て定量限界値未満であり、 亜硝酸性窒素と硝酸性窒素の和は、環境基準値(注)を十分下回っていることから、 影響はないものと考えられるため、環境影響評価の項目として選定しないことといたしました。
注:「人の健康の保護に関する環境基準」では、亜硝酸性窒素と硝酸性窒素の和が 10mg/リットル以下とされている。
(5) 温排水の影響については、事業実施区域の周辺海域において定置網、 採藻等の漁業が営まれていることから、当該海域に排出される既設の発電所からの温排水も含めて 予測・評価を行うこと。
 特に、水温については、水平および鉛直方向における1℃以上の上昇域の範囲を明確にすること。
 また、海域に生息する動物への温排水による影響については、冷却水に塩素を注入するなど、 生物付着防止剤を使用する場合における影響も含めて予測・評価を行うこと。
(5) 温排水の拡散予測は、3,4号機に2号機及びもんじゅの温排水を含め 数理モデルによるシミュレーション解析により実施し、予測結果は、 1℃以上の上昇範囲について海表面、海面下2m、海面下4mの北東流(10cm/s)、 南西流(10cm/s)及び恒流なしの各流れの条件における包絡範囲を記載しました。
 なお、放水口近傍については、水理模型実験により予測し、放水口から600m付近までの 水温断面分布を記載いたしました。
(「8.4.3 水温」に記載)
 付着生物防止剤としては、復水器冷却水系に海水電解で発生させた 次亜塩素酸ソーダを注入する計画であり、海域に生息する動植物の生息・生育への影響について、 予測・評価を行いました。
(「8.4.4 付着生物防止剤」に記載)
(6) 動植物および生態系の調査に当たっては、現地調査を基本とし、 その調査時期については、調査対象種の生態等を十分考慮すること。
 また、動物の重要な種および注目すべき生息地、植物の重要な種および重要な群落、 地域を特徴づける生態系の選定に当たっては、文献等による調査および現地調査の結果を 踏まえるとともに、その選定理由を明らかにすること。
 なお、地域を特徴づける生態系として、海岸から典型的に垂直的推移がみられる植生を含めること。
 さらに、特に重要な種については、行動圏、生活史を含む生態の調査を十分に行い、 その結果をもとに予測・評価を行うこと。
(6) 動植物及び生態系の調査については、文献等の調査により 現状の知見をもとに地域特性を概括的に把握した上で、現地調査を実施いたしました。 現地調査時期は、調査対象種の生態等を考慮しています。
重要な種等の選定においては、文献等の調査及び現地調査結果を踏まえ選定し、 選定理由を明らかにいたしました。
 なお、海岸から垂直的推移が見られる植生についても考慮いたしました。
(「8.10 陸生植物:重要な種及び重要な群落」、「8.12 地域を特徴づける生態系」に記載)
 さらに、重要な種については、陸生動物としてヒナコウモリ、猛禽類、 陸生植物として渓流沿いに生育する腐生植物等、海生動物として若狭湾が分布の南限である ムツサンゴを対象に、生息・生育状況、生息環境等の詳細な調査を行い、 その結果をもとに予測・評価を行いました。
(「8.8 陸生動物:重要な種及び注目すべき生息地」、「8.9 海域に生息する動物」、 「8.10 陸生植物:重要な種および重要な群落」に記載)
(7) 海域に生息する動物のうち底生生物の調査に当たっては、 底質の状況(岩礁、砂地など)により生物相が異なることから、 目視による底質の把握を行った上で、その状況に応じた適切な手法を用いること。 (7) 底生生物の調査は、岩礁域等に生息するアワビ、サザエ等の メガロベントス、砂質や砂泥質に生息する環形動物、軟体動物等のマクロベントスを対象といたしました。
 当該海域の底質の状況については、2号機の環境影響評価に係る長期間の 観測結果により把握しており、岩礁域ではベルトトランセクト法による潜水目視観察、 砂地ではスミス・マッキンタイヤ型採泥器により調査を行いました。
(「8.9 海域に生息する動物」に記載)
(8) 埋立地周辺に存在している藻場については、 その消滅が予想されることから、予測・評価に当たっては、環境の保全のための措置を十分検討すること。 (8) 埋立により、増設計画地点前面海域に分布するガラモ場の一部が 消失することとなりますが、環境保全のための措置として水深が比較的浅い場所については、 捨石式傾斜堤護岸を設置することといたしました。
(「8.9 海域に生息する動物」に記載)
(9) 景観への影響の予測・評価に当たっては、 事業実施区域が敦賀半島突端部に位置することから、若狭湾国定公園の利用計画上の施設 および対岸の道路などについても、主要な眺望点として考慮すること。 (9) 景観への影響の予測・評価においては、 若狭湾国定公園の利用計画上の施設及び対岸の道路等を含めた眺望候補地点から視認性、 眺望性等を考慮して主要な眺望点を選定いたしました。
(「8.13 主要な眺望点及び景観資源並びに主要な眺望景観」に記載)
(10) 主要な人と自然との触れ合いの活動の場については、 年間を通じた利用状況等および自然環境の豊かさに着目して選定すること。 (10) 主要な人と自然との触れ合いの活動の場は、 搬出入経路沿い及び対象事業実施区域周辺に海水浴場、登山道等の活動の場が点在していることから 搬出入車両によるアクセス道路の交通量への影響及び工事による影響を考慮し、 利用状況及び自然環境の豊かさに配慮してこれらの活動の場を選定いたしました。
(「8.14 主要な人と自然との触れ合いの活動の場」に記載)
3 環境影響評価準備書の作成について
(1) 調査・予測の地点および調査期間等については、 その選定の妥当性が確認できるよう、より具体的に選定理由を記載すること。 (1) 調査地点、調査時期、予測地点、予測対象時期について 選定理由を明確にいたしました。
(8章の各項目に記載)
(2) 環境保全措置の検討に当たっては、環境保全措置についての複数案の比較検討、 実行可能なより良い技術が取り入れられているかどうかの検討等を通じて、 講じようとする環境保全措置の妥当性を検証し、これらの検討の経過を明らかにできるよう整理すること。 (2) 環境保全措置については、複数案の比較検討、妥当性、 検討の経過等を整理いたしました。
(「9章 環境の保全のための措置」に記載)
(3) 準備書は専門的な内容が多く、また、膨大な図書になる可能性があることから、 作成に当たっては、図表を用いるなど、できる限り住民にわかりやすい内容となるよう配慮すること。 (3) 準備書及び要約書の作成に当たっては、図表を用いる等 住民にできるだけわかりやすい内容となるように努めることといたしました。



通商産業大臣の勧告
1.環境影響評価項目について
(1)ばい煙発生施設を設置することにより、ばい煙による大気環境への影響が 懸念される場合には、項目を選定すること。
(2)発電所の稼働に伴う水環境の影響については、水質汚濁に係る環境基準が 定められている項目について調査を行った上で、必要な項目について予測及び評価を行うこと。
(3)冷却水中に付着生物防止剤を注入せざるを得ない場合は、 その理由等を明確にした上で、海域に生息する動植物の生息及び生育への影響の程度について、 予測及び評価を行うこと。
(4)埋立工事に用いる土砂については、あらかじめ溶出試験を実施し、 その結果、有害物質が水質に影響を及ぼすおそれがある場合には、 その影響について予測及び評価の対象とすること。
2.調査、予測及び評価手法について
(1)事業実施区域周辺には、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する 法律」で国内希少野生動植物種に指定されているハヤブサ、「哺乳類及び鳥類のレッドリスト」で 絶滅危惧U類に指定されているヒナコウモリなどの生息が確認されており、建設機械の稼働、切土工事、 埋立工事及び発破工事等が、これらの重要な種及び注目すべき生息地に影響を及ぼすことが 懸念されるため、その影響について予測及び評価の対象とすること。  また、植物の重要な種及び重要な群落への影響についても、同様に、予測及び評価の対象とすること。
(2)動物の重要な種及び注目すべき生息地、植物の重要な種及び重要な群落、 地域を特徴づける生態系の注目種等の選定に当たっては、文献等による調査及び現地調査の結果を 踏まえるとともに、その選定理由を明らかにすること。
(3)動植物の調査及び予測に当たっては、 既設2号機の設置に伴い創成した緑地における長期間の植物の生育状況を十分考慮するとともに、 創成した緑地及びその周辺の自然環境における動植物の生息及び生育状況を考慮して、 予測及び評価を行うこと。
(4)海域の調査に当たっては、既設2号機の環境影響評価に係る 長期間の観測結果を有していることから、当該結果と現地調査により得られた結果とを 比較することにより当該海域の状況を十分に把握する必要がある。 さらに、保全措置の検討に当たっては、これらの結果を反映すること。
(5)工事の実施に伴う大気環境への影響の予測及び評価に当たっては、 相当数の作業船などの船舶が長期間工事を行うことも考えられることから、 船舶から排出されるばい煙の影響についても十分考慮し、船舶からのばい煙の発生による 大気環境への影響が懸念される場合には、予測及び評価を行うこと。
(6)道路交通による騒音及び振動の影響については資材等の搬出入の 輸送経路沿いに多数の海水浴場が点在し、夏期には交通量が増大することから、 予測及び評価の前提となる現況値として年間の変動を把握した上で、予測及び評価を行うこと。
(7)事業実施区域周辺には、変化に富んだ自然海岸が存在していることから、 護岸、防波堤及び埋立地の存在などにより、周辺海域における流況が著しく変化する場合には、 海岸線の浸食及び土砂等の堆積による影響に留意し、必要な項目を追加すること。
(8)主要な眺望点の選定に当たっては、対象事業実施区域周辺の4地点を 景観調査地点として選定しているが、眺望地点として国定公園の利用計画上の施設及び 対岸の道路などが存在するため、そこからの眺望についても検討し、 主要な眺望点が存在する場合には調査地点に追加すること。



2 準備書についての環境の保全の見地からの審査者の意見 (福井県知事の意見および環境大臣の意見) および経済産業大臣の勧告

福井県知事の意見と事業者の見解
知事の意見 事業者の見解
 敦賀発電所3,4号機増設計画の事業実施区域は、 陸域が若狭湾国定公園の第2種特別地域および海面が普通地域に指定されている自然海岸であり、 また、事業実施区域の周辺は、すぐれた自然景観を有するとともに、 海水浴および自然探勝等の自然との触れ合いの場として、多くの利用者がある。
 本事業は、連続した自然海岸において、大きな改変面積を伴うものであり、 工事施工箇所において現況の自然景観が人工的景観に変化するものである。
 環境影響評価準備書(以下「準備書」という。)においては、 環境影響評価方法書段階よりも海面の埋立面積を縮小することにより開発面積を減らし、 海食洞の保全が図られているが、国定公園は、すぐれた自然の風景を永続的に保全し、 自然との触れ合いを享受できるよう後世に残すという目的で指定されており、 自然の地形や植生の改変および公園利用への影響を極力抑制すべき地域であることから、 国民の生活に不可欠なエネルギーの安定供給という公益性を有する事業であっても、 これらへの影響について更なる低減の検討が必要である。
 このような地域特性を踏まえ、環境影響評価の視点としては、 @自然地形等の改変は必要最小限にとどめること、 A人工構造物は極力周辺の自然景観と調和させること、 B長期にわたる環境のモニタリング調査体制が取られること、等の確認が特に重要である。
 また、事業実施区域内には、生物の多様性が高い小渓流(西部渓流)が存在するとともに、 周辺には、希少動物であるヒナコウモリ等が生息するなど、自然環境が豊かな地域であることから、 重要な動植物の保全は言うまでもなく、地域の生態系の保全に十分配慮する必要がある。
 さらに、既設の発電所からの温排水が排出されている海域に、 新たに毎秒214立方メートルの温排水が排出されることなどから、 海生生物への影響について十分評価する必要がある。
 これらのことから、以下の個別事項について、環境影響評価法の趣旨に基づき、 県内外の専門家の意見を聴取しつつ、最新の環境保全技術の導入に努めるなど、 可能な限り環境への影響を回避・低減するよう十分検討し、事業に反映することが必要である。
 なお、事業実施に伴う植生、動植物種、生態系、潮間帯生物、底生生物、動植物プランクトン、 卵・稚仔等への影響については、長期的かつ体系的にモニタリング調査を実施し、必要に応じて、 適切な保全措置を講じる必要がある。また、これらの調査結果については、 貴重種の乱獲防止に留意しつつ、広く公開されるとともに、 さまざまな分野の研究活動に利用されるよう配慮することが必要である。
 3,4号機の建設・運転に際しては、対象事業実施区域が若狭湾国定公園に位置し、 当該地域の一部及び周辺に重要な動植物が確認され、また、 周辺にはすぐれた自然海岸が存在する等豊かな自然環境を有することから、 環境の状況を適切に把握するとともに、その保全に万全を期すことといたします。
 準備書においては、埋立面積の縮小、切取、伐採範囲の必要最小限化、海食洞の保全等により、 自然の地形や植生の改変及び公園利用への影響を可能な限り回避又は低減する計画としていましたが、 準備書に対する知事意見を踏まえ、環境の保全について更なる検討を行いました。
 自然地形等の改変については、敷地レベルを上昇させること等により残土量の低減と 埋立面積のさらなる縮小を図ることとしました。
 人工構造物の自然景観との調和については、建屋の色彩と緑化計画について再検討を行い、 自然景観に可能な限り影響を与えない計画といたしました。
(「第9章 環境の保全のための措置」に記載)
 また、環境の把握については、工事中及び供用後において重要な動植物の影響の把握に加え、 当該地域の生態系、温排水による海生生物への影響を把握することとし、 長期的かつ体系的に事後調査及び環境監視を実施する計画といたしました。
 事後調査及び環境監視の結果は、県及び関係市町に報告するとともに、 貴重種の乱獲防止に配慮して、当社各事業所において閲覧できるようにいたします。 また、さまざまな分野の研究活動への利用について協力いたします。
 なお、これらの調査結果により、環境に影響を及ぼす新たな事実が判明した場合には、 速やかに関係機関に報告するとともに、適宜協議を行い、適切な措置を講じることといたします。
(「第10章 事後調査及び環境監視」に記載)
1 自動車による騒音・振動、排出ガス
 工事用資材等の運搬道路沿いは、学校等が存在するとともに、夏期には交通量が増大することから、 自動車による騒音・振動および排出ガスについては、 準備書で講じることとしている保全措置を遵守するとともに、工事中において実施する測定結果を踏まえ、 必要に応じて、資材等の運搬車両の運行計画を見直すなど適切な保全措置を講じること。
 なお、業務用連絡車両等については、可能な限り低公害車等の導入に努めること。
(1) 工事用資材等の陸上輸送においては、車両数の平準化、 夜間は原則として資材輸送を行わない等の保全措置を遵守するとともに、交通規則の遵守、 安全運転の徹底と交通監視員を適宜配置する等の措置により、 運搬道路沿いの生活環境の保全に万全を期することといたします。
 また、西浦小中学校前において、騒音、振動及び窒素酸化物の測定を工事の状況に応じ 適宜行うこととしており、その結果を踏まえ、必要に応じて資材等の 運搬車両の運行計画を見直すことといたします。
 なお、業務用連絡車両については、可能な限り低公害車等の導入に努めることといたします。
(「9.3 環境への負荷のさらなる低減対策」に記載)
2 水温
 温排水の放水方式として水中放水を採用しているが、表層放水についても 拡散予測計算を実施し、水温の上昇範囲を明らかにするなど、採用の検討経過を環境影響評価書 (以下「評価書」という。)に記載すること。
 また、近接する関西電力(株)美浜発電所の温排水との重畳についての検討結果も記載すること。
(1) 3,4号機を表層放水とした場合、2〜4号機及びもんじゅ運転時における温排水の拡散について、 数理モデルによるシミュレーション解析を行いました。その結果、1℃温排水拡散予測範囲は、 水中放水の場合の約1.6倍となり、当地点の海域条件においては、水中放水の採用が適切であることを 検証いたしました。
 また、美浜発電所の温排水との重畳については、2号機、もんじゆ、美浜発電所1〜3号機を含めた シミュレーション解析を行っており、3,4号機の温排水は、2号機、もんじゅとは重畳しますが、 美浜発電所とは重畳しないことを確認しています。
 (「環境影響評価書資料編」に記載)
3 重要な地形・地質
(1) 埋立地の造成に伴い、海流および海砂の流れが変化し、 近傍にある海食洞が浸食または土砂の堆積等の影響を受けるおそれがあるため、その影響について、 水理模型実験により予測・評価を行い、その結果を評価書に記載すること。
 また、その結果、保全措置を講じる必要が生じた場合には、藻場および岩礁生態系の創出に効果があり、 景観にも配慮した潜堤(リーフ)の採用を検討すること。
 なお、潜堤の設置工事に当たっては、あらかじめ水質および海生生物等への影響について、 予測・評価を行うこと。
(1) 埋立地の造成による海食洞の浸食及び土砂の堆積の影響については、 水理模型実験により予測・評価を行いました。
 実験結果によれば、現状の地形と埋立後の地形における波高分布、海食洞付近の波による流れ (流向及び流速)は大きな変化が認められず、海食洞の浸食及び土砂の堆積の影響はないものと考えられ、 潜堤等の保全措置の必要がないことを確認いたしました。
(「9.1.7 その他の環境保全措置の検討」に記載)
4 陸生生物
(1) 事業実施区域およびその周辺で確認された重要種48種のうち、 準備書では9種について予測・評価しているが、残りの種についても、専門家の意見を聴取し、 類似事例を収集したうえで、適切に予測・評価を行い、その結果を評価書に記載すること。 (1) 対象事業実施区域及びその周辺で確認された重要種48種について、専門家の意見聴取等により、 予測・評価を行いました。
(「8.8 陸生生物:重要な種及び注目すべき生息地」に記載)
(2) カモ類の重要な渡来地となっている猪ヶ池については、 隣接地に仮設用地が計画されていることから、建設機械の稼働等による騒音などが鳥類に影響を及ぼさないよう、 適切な保全措置を講じることとし、その内容を評価書に記載すること。 (2) 猪ヶ池に隣接する仮設用地は、現在グランドとなっている半分を用いて伐採木の処理等を行う 計画としております。使用にあたっては、騒音源となる伐採木の処理に用いる破砕機は、 猪ヶ池から離れた浦底湾側に配置する等、猪ヶ池に飛来するカモ類等に影響を 及ぼさないよう十分配慮いたします。
(「9.1.3 仮設用地の検討において配慮した事項」に記載)
 また、工事中において調査を行い、必要に応じて適切な保全措置を溝じることといたします。
(「第10章 事後調査及び環境監視」に記載)
(3) 事業実施区域の近傍で繁殖しているヒナコウモリについては、 コロニー形成場所の改変による直接的な影響はなく、騒音や光による影響は小さいとされているが、 工事中および供用後において調査を行い、専門家の意見を聴取し、必要に応じて、保護対策を講じること。 また、その旨を評価書に記載すること。 (3) ヒナコウモリのコロニー形成状況については、工事中及び供用後において調査を行い、 専門家の意見を聴取し、必要に応じて保護対策を講じることといたします。
(「第10章 事後調査及び環境監視」に記載)
(4) 事業実施区域が行動圏の一部と見られるハヤブサについては、 事業実施区域およびその周辺において営巣は確認されていないが、 工事中および供用後において調査を行うこと。
 調査により営巣等が確認された場合においては、専門家の意見を聴取し、必要に応じて、 保護対策を講じること。また、その旨を評価書に記載すること。
(4) ハヤブサの生息状況については、工事甲及び供用後において調査を行うことといたします。
 また、調査により営巣等が確認された場合には、専門家の意見を聴取し、 必要に応じて保護対策を講じることといたします。
(「第10章 事後調査及び環境監視」に記載)
(5) ヒダサンショウウオについては、事業実施区域の沢において幼生が確認されていることから、 工事中および供用後において生息状況の調査を行い、専門家の意見を聴取し、必要に応じて、 保全措置を講じること。また、その旨を評価書に記載すること。 (5) ヒダサンショウウオの生息状況については、工事中及び供用後において調査を行い、 専門家の意見を聴取し、必要に応じて保全措置を請じることといたします。
(「第10章 事後調査及び環境監視」に記載)
(6) 事業実施区域で生息が確認されているモリアオガエルについては、 水溜り等の設置による産卵環境の確保が計画されているが、専門家の意見を聴取し、 類似事例を収集したうえで、適切に実施するとともに、工事中および供用後において調査を行い、 専門家の意見を聴取し、必要に応じて、保護対策を講じること。また、その旨を評価書に記載すること。 (6) モリアオガエルの産卵環境を確保するための水溜りは、専門家の意見を聴取するとともに、 類似事例を収集し、生息確認場所付近に設置することといたしました。
(「8.8 陸生生物:重要な種及び注目すべき生息地」に記載)
 また、産卵状況については、工事中及び供用後において調査を行い、専門家の意見を聴取し、 必要に応じて保護対策を講じることといたします。 (「第10章 事後調査及び環境監視」に記載)
(7) 法面および緑化マウンド等の緑化に当たっては、 敦賀2号機造成時に実施した緑化の実績を十分検証して実施すること。特に、施工区域は、若狭湾に面し、 冬季の季節風を直接受ける環境条件の厳しい地域であることを十分考慮すること。
 また、可能な限り木本類を主体とした自然植生構成種により実施するとともに、鳥類、 昆虫類が生息しやすくなるよう配慮すること。
 さらに、厚層基材吹付工法については、緑化工事着手までに現地において複数の手法による 比較実験を行った上で実施すること。
 なお、これらのことを踏まえて準備書に記載されている緑化計画を見直すこととし、 その旨を評価書に記載すること。
(7) 緑化計画にあたっては、2号機の緑化経験の反映、最新の緑化技術の導入を図るとともに、 鳥類や昆虫類の生息空間を確保するため、郷土種で木本類を主体とし、多様な生物環境の復元に配慮して、 樹種を選定することといたします。
 また、法面の緑化に用いる厚層基材吹付工法については、 工事着手までに現地において複数の工法について比較実験を行い、専門家の意見を聴取するとともに、 関係機関と協議を行い緑化内容を決定することといたします。
 なお、植栽後は、適切な生育管理を行うとともに生育状況について調査を行うことといたします。
(「9.1.5 緑化計画の検討において配慮した事項」に記載)
(8) 重要な種の移植および播種については、 個別の種ごとに生育環境を十分把握するとともに、専門家の意見を聴取し、類似事例を収集したうえで、 適切に実施すること。
 また、移植および播種した後の生育状況を調査するとともに、専門家の意見を聴取し、必要に応じて、 適切な保全措置を講じること。
(8) 重要な種の生育環境については、現地調査により、個別の種ごとに把握しています。
 重要な種の移植及び播種については、専門家の意見を聴取するとともに、類似事例を収集したところ、 センブリ、ホンゴウソウ、ヒナノシャクジョウ、キンラン、オオバノトンボソウの5種の移植等は 困難と判断されます。それ以外の種については、類似環境に移植するとともに、可能な限り播種を行い、 保全に努めることといたします。
(「8.10 陸生植物:重要な種及び重要な群落」に記載)
 また、移植及び播種した後の生育状況を調査するとともに、専門家の意見を聴取し、 必要に応じて適切な保全措置を講じることといたします。
 (「第10章 事後調査及び環境監視」に記載)
5 海生生物
(1) 埋立地の造成に伴い、約21haの藻場が消失することから、 捨石式傾斜堤護岸については、専門家の意見を聴取し、類似事例を収集したうえで、 より良好な海藻等の生育基盤となるような構造とすること。
 また、人工藻場の造成については、周辺海域が自然環境豊かな地域であることから、 その造成の是非を含め、専門家の意見を聴取し、慎重に検討すること。
(1) 捨石式傾斜堤護岸については、海藻のより良好な生育基盤とし、着生の促進を図るために、 護岸の一部を現状の濃密藻場の範囲を避けてさらに緩傾斜構造にするとともに、 消波ブロック等の表面に海藻の着生床を取付ける構造といたしました。
 また、人工藻場については、自然地形の改変を可能な限り抑制する観点から、専門家の意見を踏まえ、 新たな改変を伴う造成は行わないことといたしました。
 (「9.1.7 その他の環境保全措置の検討」に記載)
(2) ムツサンゴについては、濁りの拡散範囲および温排水の拡散範囲内に生息が 確認されていることから、工事中および供用後において生息状況の調査を行い、専門家の意見を聴取し、 必要に応じて、保全措置を講じること。 (2) ムツサンゴの生息状況については、工事中及び供用後において調査を行い、 専門家の意見を聴取し、必要に応じて保全措置を講じることといたします。
 (「第10章 事後調査及び環境監視」に記載)
(3) 温排水の拡散範囲が広範囲になることから、供用後、 周辺海域における水産資源への影響について、漁獲量の変化、漁場の移動等の状況を含めて、 総合的に把握すること。
 また、特に卵・稚仔については、外海からの取水となるため、 沖合性の卵・稚仔が取り込まれる可能性があることから、本県の水産業上、 重要な種の孵化時期に配慮しつつ、調査を行うこと。
(3) 温排水による周辺海域の水産資源への影響を総合的に把握するため、 供用後において潮間帯生物、底生生物、動植物プランクトン、卵・稚仔等に加え、 水産資源の状況について調査を行うことといたします。
 卵・稚仔調査については、水産業上重要な沖合性の種の孵化時期を考慮して行うことといたします。
 なお、調査の方法、時期等については、関係機関と協議いたします。
(「第10章 事後調査及び環境監視」に記載)
6 生態系
(1) 生態系として選定し、準備書で予測・評価しているハヤブサおよびテンについては、 予測・評価に用いた餌動物の選定理由など、客観的なデータまたは判断の根拠を明らかにし、 評価書に記載すること。 (1) ハヤブサ及びテンについては、予測・評価に用いた餌動物の選定理由とその根拠となるデータ及び 文献等に基づく知見を整理いたしました。
(「8.12 地域を特徴づける生態系」に記載)
(2) 重要な植物種が生育しているとともに、多様な生態系を有する西部渓流については、 取水堰の設置等による影響が及ばないよう十分配慮すること。
 また、工事中および供用後において、西部渓流域の動植物の生息状況を調査し、 必要に応じて、保全措置を講じること。
(2) 西部渓流からの取水は、渓流の水文環境の変化を生じさせないよう渓流出口の最下流部から行い、 取水堰は必要最小限の規模といたします。
(「第2章 対象事業の内容」に記載)
 西部渓流域の動植物の生息状況については、工事中及び供用後において調査を行い、 必要に応じて保全措置を講じることといたします。
(「第10章 事後調査及び環境監視」に記載)
7 景観
(1) 準備書で選定された景観資源8地点のうち、事業実施区域内に位置する猪ケ池、 明神崎および明神崎の自生モクゲンジについて、予測・評価を行い、その内容を評価書に記載すること。 (1) 対象事業実施区域内に位置する景観資源として、猪ヶ池、明神崎及び明神崎の自生モクゲンジについて、 予測・評価を行いました。
(「8.13 主要な眺望点及び景観資源並びに主要な眺望景観」に記載)
(2) 事業実施区域と敦賀湾を挟んで対岸を縦断する国道305号は、 越前加賀海岸国定公園の主要道路であること、また、対岸に居住する住民にとっては、 事業実施区域の眺望が日常的に接する景観となることから、国道305号を主要な眺望点とした 景観の予測・評価を行うこと。
 さらに、若狭湾国定公園の主要道路である一般県道竹波立石縄間線から、 土捨場が視認される区間があるため、当該地点からの景観について予測・評価を行い、 評価書に記載すること。
(2) 国道305号からの眺望については、越前加賀海岸国定公園の利用者及び 対岸に居住する住民を対象とした主要な眺望点として、増設予定地のほぼ正面に位置するかれい崎荘を選定し、 予測・評価を行いました。
 また、一般県道「竹波立石縄間線」から土捨場が視認される場所として、猪ヶ池から発電所の区間を選定し、 予測・評価を行いました。
(「8.13 主要な眺望点及び景観資源並びに主要な眺望景観」に記載)
(3) 建屋等の色彩計画については、公園利用者の眺望景観となる立石岬遊歩道、 新日本海フェリーおよび対岸など、中・遠景による比較検討を行い、 自然公園の風致景観の保護に最大限配慮した色彩に選定し直すこと。 (3) 建屋等の色彩については、遠景からの眺望において人工構造物が目立たないよう明度を 下げるとともに、周辺環境と調和する色彩について再選定を行い、 自然景観に可能な限り影響を与えない計画といたしました。
(「9.1.7 その他の環境保全措置の検討」に記載)
8 人と自然との触れ合いの活動の場
(1) 海水浴および自然探勝など、人と自然との触れ合いの活動の場が、 資機材等の運搬道路と近接することから、工事の実施や交通量の増加が、 触れ合いの活動の場の利用性や快適性に与える影響について、予測・評価を行い、 必要に応じて、保全措置を検討すること。 (1) 資機材等の運搬道路沿いの海水浴場、自然探勝路等人と自然との触れ合いの活動の場の 利用者に対して、車両の運行時は道路を横断する人へ最大限の配慮を行う等の措置を請じることとし、 工事中及び供用後における利用性や快適性に与える影響について、予測・評価を行いました。
(「8.14 主要な人と自然との触れ合いの活動の場」に記載)
(2) 主要な人と自然との触れ合いの活動の場となっている野鳥観察地の猪ケ池 および西方が岳〜蠑螺が岳登山道に仮設用地が近接していることから、 これによる野鳥観察利用への影響や登山道の利用性や快適性への影響について、予測・評価を行い、 必要に応じて、保全措置を検討すること。 (2) 仮設用地に近接している猪ヶ池及び西方が岳〜蝶螺が岳登山道の利用者に対して、 工事車両の運行において利用者の出入を妨げない等の最大限の配慮を行う措置を溝じることとし、 利用性や快適性に与える影響について、予測・評価を行いました。
(「8.14 主要な人と自然との触れ合いの活動の場」に記載)
9 廃棄物等・残土
 建設工事に伴い多量に残土が発生することから、その抑制を図るため、 発電所の安全運転に支障を及ぼさないことを前提に、 発電所敷地レベルの嵩上げを行うことを含めて対策を検討し、 その結果を評価書に記載すること。
 また、コンクリート殻および伐採木の廃棄物等については、工事着手までに、関係機関と協議の上、 リサイクルを基本とした処理計画を作成し、県および関係市町に報告すること。
(1) 残土量を低減するため、発電所の安全運転に支障を及ぼさないことを前提に、 土地造成計画について再検討を行い、発電所敷地高さの嵩上げや新開閉所の用地面積の縮小等により 残土量を低減いたしました。
(「8.15.2 残土」、「9.1.3 仮設用地計画の検討において配慮した事項」に記載)
 また、工事中に発生するコンクリート殻、伐採木等については、 リサイクル等により最終処分量を可能な限り減少するように努めるとともに、 工事着手までに関係機関と協議を行い、処理計画を策定し、県及び関係市町に報告いたします。
(「8.15.1 産業廃棄物」に記載)
10 その他
 工事中または供用後において環境に影響を及ぼす新たな事実が判明した場合には、 県および関係市町に報告するとともに、適切な措置を講じること。 (1) 工事中及び供用後に実施する調査において、環境に及ぼす新たな事実が判明した場合には、 速やかに県及び関係市町に報告するとともに、適宜、関係機関と協議を行い、 適切な措置を講じることといたします。
(第10章 事後調査及び環境監視」に記載)


環境大臣の意見
1.計画地周辺海域は、本発電所の他に2号機、 もんじゅを含めて複数の発電所の取放水が行われ、それらの影響を重複して受ける海域であることから、 発電所の取放水による水温及び海生生物への影響について、慎重に対応することが必要である。
 このため、周辺海域の水温及び海生生物の環境監視に当たっては、 取放水がそれらに与える影響について十分確認することにより、影響予測の妥当性を検証し、 必要に応じ適切な対策を講じること。また、その旨、評価書に記載すること。
2.海食洞については、波浪による浸食を防止するための具体的な措置を検討し、 検討結果を評価書に記載すること。また、事業実施後においても検討結果の検証を行い、 その結果に基づき、必要に応じて適切な措置を講じること。また、その旨、評価書に記載すること。
3.陸生動物について、準備書では重要種とされた48種のうち、 9種について予測・評価を行っているが、残りの種についても、 専門家の意見を聴取して適切に予測・評価を行い、その結果を評価書に記載すること。
4.計画地及びその周辺においては、ヒナコウモリ、ハヤブサ等、 重要な生物種が確認されており、事業実施に当たっては、以下に掲げる措置を講じるとともに、 その旨、評価書に記載すること。
(1) 事後調査及び環境監視の実施に当たっては専門家の指導・助言を得ること。 また、事後調査及び環境監視の結果、自然環境へ影響が確認された場合においては、 専門家の指導・助言を得るとともに、関係機関と調整し、適切な措置を講じること。
 事後調査等の結果及び講じた措置については、適切に公表すること。
(2) 対象事業実施区域で高い頻度で飛翔が確認されたミサゴについては、 ハヤブサと同様、工事中及び供用後において、環境監視を行うこと。
(3) ヒナコウモリのコロニー形成時の工事については、 騒音の影響に対する予測の不確実性を補うため、専門家の指導・助言を得ながら発破作業時の目視観察、 試験発破等を行うなど、慎重に進めること。
(4) 陸生植物の移植に当たっては、専門家の指導・助言を得ながら慎重に行うこと。
(5) 工事中において、新たに希少な動植物が確認された場合は、 専門家の意見を聴取し、現地調査を実施した上で、これらの種の生息環境に対する影響が最小限となるよう、 適切な環境保全対策を講じること。
5.発電所の色彩については、計画地が若狭湾国定公園であることを考慮して、 周辺の風致及び景観と著しく不調和とならないよう、更に検討すること。 また、その旨、評価書に記載すること。  
6.本事業により大量の残土が発生することから、残土発生量の削減に向けて、 更に工事計画の検討を行うこと。また、その旨、評価書に記載すること。


経済産業大臣の勧告
1.海食洞については、 海岸構造物による波の影響等を受けるおそれがあるため、水理模型実験を行い、 海食洞の保全上必要があれば、適切な波浪低減対策等を講じること。 また、その検討結果を環境影響評価書に記載すること。
2.環境省レッドリストにおいて準絶滅危惧種に指定されている ミサゴについては、対象事業実施区域内及び周辺において高い頻度で飛翔が確認されたため、 工事中及び供用後に環境監視を行うこと。また、その旨を環境影響評価書に記載すること。
3.若狭湾が分布の南限であると考えられているムツサンゴの生息地は、 工事中の濁りの拡散予測範囲内で確認されているため、供用後と同様に工事中においても ムツサンゴの生息状況について環境監視を行い、その結果、必要に応じて保全措置を講じること。 また、その旨を環境影響評価書に記載すること。
4.西部渓流域は、重要な動植物の生息・生育地であるため、 改変せずに保全することとしているが、最下流に取水堰を設置する計画となっていることから、 その設置に当たっては、動植物の保全に支障を及ぼさないよう十分配慮すること。 また、工事中及び供用後において、西部渓流域の動植物の生息・生育状況について環境監視を行い、 必要に応じ保全措置を講じること。
 これらについては環境影響評価書に記載すること。
5.緑化マウンド及び仮設用地の植栽樹種については、 計画地点の植生、立地環境への適応性、類似地点での実績等を考慮し、選定すること。
 原子炉建屋周辺斜面部の植栽樹種については 実験により選定するとともに、斜面上部の林縁部については可能な限り除根せず残すこととし、 また、斜面小段部については緑化を行うこと。
 これらについては環境影響評価書に記載すること。
6.発電所計画地が若狭湾国定公園内にあることから、 建屋等の色彩については、自然公園の風致景観の保護に配慮し、 眺望景観の保全に支障を及ぼさないよう検討を行うこと。
 また、その検討結果を環境影響評価書に記載すること。
7.残土については、発電所敷地レベルの嵩上げ及び 新開閉所敷地面積の縮小等による残土発生量の更なる削減を行うこととし、 その結果を環境影響評価書に記載すること。
8.事後調査及び環境監視の実施並びにその結果、 自然環境への影響が確認された場合においては、専門家の指導・助言を得て、 適切な措置を講じること。また、その旨を環境影響評価書に記載すること。

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