セクションW 実施手段 第33章 資金源及びメカニズム 第34章 環境上適正な技術の移転、協力及び対応能力の強化 第35章 持続可能な開発のための科学 第36章 教育、意識啓発、訓練の推進 第37章 開発途上国における能力開発のための国のメカニズム及び国際協力 第38章 国際的な機構の整備 第39章 国際法措置及びメカニズム 第40章 意思決定のための情報 ------------------------------------------------------------------------ 第33章 資金源及びメカニズム-------------------------------------------- アジェンダ21を地球的規模で実施していくためには、開発途上国が持続可能 な開発に向けて努力すると共に、先進国がこのような努力を支援していくことが 重要である。我が国は、先進各国の一員として環境と開発に関する国際協力にお いて率先した役割を果たしていくべきであると考える。 1.政府開発援助(ODA) 1992年6月に定めた「政府開発援助大綱」において明示されているとおり、我 が国の政府開発援助は、途上国の離陸へ向けての自助努力を支援することを基本 としており、広範な人造り、国内の諸制度を含むインフラストラクチュア(経済 社会基盤)及び基礎生活分野の整備等を通じて、これらの国における資源の効率 的かつ公正な配分や「良い統治」の確保を図り、もって健全な経済発展を実現す ることを目的として実施することとしている。その際、相手国からの要請、考え 方を十分勘案しつつ、開発途上国に関する情報の収集・分析を進め、開発政策等 の基本認識を相手国との間で共有するため、密接な政策対話を推進すると共に、 開発途上国の多様な発展段階及び援助需要に的確に対応するよう、有償資金協力 、無償資金協力及び技術協力の各援助形態並びにその他の協力の特性を最大限生 かし、その有機的連携・調整を図ることが重要である。 以上を踏まえ、我が国としては、UNCEDにおいて表明したとおり以下に示 す取組を重点的に実施していく。 @ 1992年度より5年間にわたり、環境分野への二国間及び多国間援助を 9、000 億円から1兆円を目途として大幅に拡充・強化することに努める。 A 政府開発援助の適切かつ計画的な実施を通じて、地球の緑、水、空気の保全 及び開発途上国の環境問題対処能力の向上に貢献していく。 B 環境分野の援助実施に当たっては、開発途上国との共同の努力が特に重要で あり、政策対話を通じ優良な案件の発掘、形成、実施を積極的に進める。 また、我が国は1993年6月に1993年から1997年の5年間のODA実績総額を 700〜750億ドルとする「政府開発援助の第5次中期目標」を策定するとともに 「開発途上国への資金協力計画」を発表し、今後5年間に概ね 1,200億ドル程 度(約束額ベース)の開発途上国へのアンタイドの公的資金協力を行う旨表明 したところであり、その着実な実施に努める。 2.多数国間開発銀行・基金 (1) 国際開発協会(IDA) IDA第10次増資交渉が、1993年7月以降3年間の融資財源として 130億S DRの資金補充を行うことで合意し、今後の活動の基本方針として貧困の削減 、途上国の経済調整と成長、さらに環境保護及び改善を掲げたことを歓迎する 。 @ 我が国としては、IDAを貧しい開発途上国への資金フローの重要な担い手 として高く評価し、全体の20%に当たる26億SDRを負担する。 (2) 地球環境ファシリティ(GEF) GEFは、地球環境問題に対する資金協力の面で中心的役割を果たすべきで あり、アジェンダ21に示された指針に従い、GEFの改革を急ぐことが必要 であると認識している。さらに、「気候変動に関する国際連合枠組条約」並び に「生物の多様性に関する条約」における資金供与制度と改革後のGEFとの 関係をいかに定めるかは重要な課題である。 @ 我が国は、GEFがアジェンダ21及び上記2条約に規定する条件を満たす よう、GEF参加国としてGEF改革に向けた議論に積極的に参画していく。 A 効果的で効率的な実施を確保するメカニズムの構築に対し、適切な資金が確 保される必要があり、我が国としても積極的な貢献を検討していく。 3.関連国際機関 (1) 国連環境計画(UNEP) UNEPは、国連組織における環境分野での活動を総合調整する機関として 、また、国際社会における環境保全促進のための触媒的役割を果たす機関とし て今後一層重要な役割を果すべきと認識している。我が国はその役割を高く評 価し、1993年度国連環境基金に 900万ドルを拠出し、また、管理理事会理事国 を務めるなど積極的支援を行っている。 @ 我が国としては、引き続きUNEPの活動を積極的に支援していく。 A 1992年10月、開発途上国及び移行期経済諸国に対する環境上適正な技術の移 転を促進するためのUNEP国際環境技術センターが我が国に開設された。同 センターは、ヒューストン・サミットにおいて当時の海部首相が日本への設置 を提唱したものであり、我が国としては同センターを引き続き積極的に支援し ていく。 (2) 国連開発計画(UNDP) UNDPは、各開発途上国にも職員を置いて国別の情報を把握するなど、アジ ェンダ21実施のための開発途上国の取組に対する国連システムによる支援を推 進する上で重要な役割を有している。我が国は従来よりUNDPへの資金協力に 努めており、1992年度はスウェーデン、米に次いで第3位の 9,211万ドルを拠出 した。UNDPは、今後とも現地事務所のネットワークを地域に生活する人のた めに活かし国連の現地レベルでの活動を地域のニーズに合致したものにするため の努力を強化する必要があると考えられる。 @ 我が国としてはUNDPの活動を引き続き積極的に支援していく。 A 特にUNDPが進めている「キャパシティ21」計画は、開発途上国におけ る環境問題に対する対応能力の強化に寄与するものとして高く評価しており、 1,000万ドルの拠出を行う旨表明したところであり、引き続きこのような活動を 支援していく。 (3) 国連大学(UNU) 国連大学は、国連組織の学術ネットワーク機関として、その本部及び世界各地 の研究・研修センターを通じ、アジェンダ21に示された行動の企画立案、実施 に要する人的資源の育成、政策志向の学術研究等を対象とするプログラム(「国 連大学アジェンダ21」)を実施していく予定である。 なお、本プログラムを策定するため、我が国の拠出金20万ドルを用い、アジェ ンダ21の枠組みの中でUNUとして何をすべきかについて、準備調査、有識者 会合を開催し、報告書にまとめた。 @ 我が国としては国連大学の地球環境問題に関する活動を引き続き支援してい く。 4.債務救済 深刻化する累積債務問題の解決策に向け開発途上国及び他の先進国と共に努力 することは我が国の国際的責務と認識している。 我が国としては、以下の取組を実施してきており、引き続き努力していく。 @ 開発途上国の自助努力を支援するためのODAの着実な拡充と開発途上国へ の資金フローの促進等を行っている。1987年から5年間に民間資金協力を含む 総額 650億ドル以上に及ぶ資金還流措置によりメキシコ、フィリピン、ヴェネ ズエラの「新債務戦略適用国」を支援し、同措置の終了後も、引き続きフィリ ピン(第2回)、アルゼンチンに対し、新債務戦略への支援を実施した。 A 低所得国については、債務救済無償援助やノン・プロジェクト無償資金協力 等の施策を実施している。 B 公的債務については「パリ・クラブ(債権国会合)」を通じた債務救済措置 を行っている。特に最貧国債務に関しては実質50%の債務削減措置である「新 トロント・スキーム」を適用し、低中所得国に関しては長期繰り延べによる特 別措置を適用している。 5.民間資金 資金協力、技術移転、及び人材開発等において政府の援助のみならず、民間企 業の協力また非政府組織(NGO)の活動が重要な役割を果すと認識している。 @ 我が国としては民間の活動を高く評価するとともに、第27章で記述している ような非政府組織(NGO)活動に対する支援を行っており、今後とも取り組 んでいく。 A 1993年5月、国及び民間の拠出に基づく「地球環境基金」が設置されたとこ ろであり、同基金は非政府組織(NGO)による地球環境保全活動への助成を 行うとともに、これらの活動の基盤となる情報、人材等の面を含め支援を行っ ていく。 --------------------------------------------------------end------------- 第34章 環境上適正な技術の移転、協力及び対応能力の開発------------------ A.国、地域的及び国際的に連結した国際的情報ネットワークの開発 経済開発の発展に伴って、特に開発途上国において顕著になりつつある環境問 題を改善し持続可能な開発を達成するためには、環境上適正な技術の普及が必要 不可欠である。また、特に、そのような技術及び技術を運用するための対応能力 が不足している国に対しては、適切な技術移転を促進するとともに、研修等の実 施を通じて技術移転を受ける側の対応能力の育成及び向上を図ることが大切であ る。 さらに、移転される技術が各地域の状況及び特性に応じたものである必要があ ることから、技術移転を受ける側のニーズを的確に把握し、既存の技術の中から 最も適した技術を選択できるよう、それらの技術に関する情報を登録し、関係者 が容易に利用できるような国際的な情報ネットワークを構築し、充実させる必要 がある。 開発途上国及び経済体制が移行過程にある国に対する環境上適正な技術の移転 を目的とするUNEP国際環境技術センターが、国連環境計画(UNEP)によ り我が国に1992年10月に設立された。本センターは、深刻な公害を克服してきた 経験を持つ我が国の提案により設立が決定されたものであり、我が国のみならず 世界各国の有する環境上適正な技術に関する情報をデータベースに集積し、研修 ・コンサルティング・調査研究等の活動を通じて、それらの移転に貢献するもの である。UNEP国際環境技術センターの施設は、大阪及び滋賀に設置され、そ れぞれ大都市並びに淡水湖沼及びその集水域の持続可能な環境管理の分野におけ る技術に関する情報を取り扱うこととなっている。 以上を踏まえ、以下に示す取組を重点的に実施していく。 @ UNEP国際環境技術センターを核として、国内の官民関係機関に蓄積され ている既存の環境上適正な技術と経験に関する情報のシステム化、個々のデー タベースのネットワーク化を促進する。 A 同センターへの支援を通じて、国連開発計画(UNDP)等の関係機関と連 携する国際的な技術移転ネットワーク作りに貢献する。 B.技術移転へのアクセスの支持及び促進 環境への負荷の少ない持続可能な発展を達成するためには、開発途上国におけ る環境保全の能力を強化することが必要不可欠である。そのためには、先進国等 が有する環境上適正な技術に対して開発途上国が必要な技術に適切にアクセスで きることが必要である。また、開発途上国に対する環境上適正な技術移転を促進 するためには、民間企業の移転活動に対する支援が必要である。 これまでも、我が国においては、開発途上国における環境と開発の両立に資す るべく、民間部門に蓄積された技術、ノウハウ等を活用した技術移転活動を促進 するとともに、環境上適正な技術について、試験的に特定の国の実状に即した形 でのモデル事業等を行っている。 また、多くの開発途上国を対象として、自然・社会・経済条件などに応じた一 般的な都市排水・汚染処理や排ガス対策に関する基本理念、技術指針の取りまと め及び制度等を整備して、その方向付けを行ってきた。 さらに、技術移転に関し、国連機関、特にユネスコにおいては、環境科学関連 の政府間の政府環境共同調査事業を実施している。我が国においても、日本がユ ネスコに拠出した信託基金拠出金により、関係省庁の協力の下、大学等の研究者 により環境保全のための技術開発、モニタリング技術の開発の研究活動、開発途 上国研究者の訓練等を実施している。また、それぞれの研究成果・データ等の情 報を参加各国に提供するためのネットワーク化が行われている。 以上を踏まえ、以下の取組を重点的に実施していく。 @ グリーン・エイド・プランの資金規模及び対象国数の今後の一層の拡充を図 ることにより、開発途上国への専門家派遣、我が国への研修生受け入れ、調査 協力、研究協力及びモデル事業等を中心に今後とも強化していく。 A 現在、各分野で個別に技術移転が行われている状況から、これらの断片的情 報を集めて整備していくことは有効であると考えられる。今のところ、知的所 有権により保護された技術に関し、万国工業所有権資料館等を通じて、環境上 適正な技術情報についてアクセス可能であるが、今後、民間企業が利用可能な 国内における移転可能な環境上適正な技術についての情報の整備を行うと共に 、移転先の環境状況、技術ニーズ・シーズ等について調査を行い、これらの情 報を整備していく。 B 企業による環境技術移転を促進していく枠組みを始めとして、環境上適正な 技術の移転を行っていく際の我が国の協力体制について検討を進める。 C 水質汚濁など、開発途上国の生活環境を改善するため、下水道整備のマスタ ープラン作りを支援する指針等を策定し、国際協力の円滑な推進を図る。 D 開発途上国における気候変動に関する観測・監視体制の整備及び充実を通じ た、アジア・太平洋地域気候変動ネットワーク整備を行うとともに、自動車排 ガス検査体制の整備等開発途上国の交通公害対策計画の策定への助言、指導及 び計画の実施促進への協力及び計画の実施促進への協力を行う。 E 人口密度が高いため、地震、火山の噴火等の自然災害が生じた場合の経済・ 社会的な被害が大きくなりがちなアジア地域を対象に地質調査等を行い、自然 災害による被害の軽減に役立つ自然災害図等を作成するための協力を行う。 F オゾン層保護基金等に対する拠出を拡充すること等により、開発途上国が地 球環境保全に関する技術を入手しやすい環境を整備する。 C.環境上適正な技術の開発・管理のための能力向上 環境への負荷の少ない持続可能な発展を達成するためには、開発途上国におけ る環境保全の能力を強化することが必要不可欠である。そのためには、開発途上 国における環境上適正な技術及び関連する技術の開発・管理のための能力向上が 重要な役割を果たす。 現在、我が国は、開発途上国に対して環境分野での研修生の受け入れや専門家 派遣等を行っている他、国内でも、環境関連技術開発のための啓発、普及活動、 環境関連技術開発のための体制を整備したところである。また、開発途上国の下 水道整備の分野においても政府開発援助(ODA)を通じて、研修生の受け入れ 、技術者の派遣等を行っているとともに、開発途上国の実情に即した材料、工法 等により開発途上国に適応可能な建設分野の環境改善技術の開発を推進している 。さらに農業分野においては、国際農林水産業研究センターにおいて、開発途上 国への研究者の派遣及び開発途上国からの研究者の招へいにより共同研究を実施 するとともに、その他の研究機関への研修生の受け入れを行っている。運輸部門 においては、自動車からの排出ガスの低減、海洋環境保全等について専門家派遣 、研修員の受け入れ等を行っている。国際機関においては、世界気象機関(WM O)の実施する気象業務の維持・強化・拡充計画への参加及びこれら計画に係る 開発途上国への援助活動の推進に努めている。 以上を踏まえ、以下の取組を重点的に実施していく。 @ 我が国の支援により中国等に設立されつつある環境センターを通じた協力に より、当該国における能力の向上に資するための人材育成等に努めるとともに 、他の開発途上国においても同様な協力の推進を図る。 A 国際協力事業団等を通じた各種分野での環境技術に係る研修生の受け入れ、 専門家派遣等の施策の一層の拡充を図る。 B グリーン・エイド・プランの資金規模及び対象国数の今後の一層の拡充を図 ることにより、開発途上国への専門家派遣、我が国への研修生受け入れ、調査 協力、研究協力及びモデル事業等を中心に今後とも強化していく。 C 開発途上国の総合的交通公害対策の実施に対して協力する「開発途上国公害 対策協力計画(エコ・トランスポート協力計画)」を実施する。 D.研究センターのネットワーク化の確立 環境上適正な技術の開発及び移転を促進するためには、先進国及び開発途上国 に存在する環境分野の研究センターのネットワーク化を確立し、情報・人材の交 流、共同研究等の活発化を図る必要がある。 以上を踏まえ、以下に示す取組を重点的に実施していく。 @ 我が国の無償資金協力によりタイ、中国及びインドネシアで整備が進みつつ ある研究研修センター、その他の既存の研究センターと、UNEP国際環境技 術センターとのネットワーク化を推進する。 A ユネスコ(UNESCO)による各研究機関における研究成果・データ等の 情報を参加各国に提供するためのネットワーク活動を支援するとともに、農業 分野における国際農業研究協議グループ(CGIAR)傘下の研究機関等を通 じた多国間の研究ネットワーク活動を支援する。 E.協力及び援助計画の支持 開発途上国における環境保全の推進のためには、開発途上国自身による環境上 適正な技術の開発及び技術情報の取得のための努力とともに、先進国による環境 上適正な技術移転の促進及びそれらの技術の導入に向けての開発途上国間の相互 協力に対する支援が非常に重要である。 以上を踏まえ、以下に示す取組を重点的に実施していく。 @ 開発途上国に対する技術移転に関する国際協力については、UNEP国際環 境技術センターをはじめとする国際機関を通じた多国間協力に加え、二国間の 援助も通じて積極的に実施していく。 A これまで、環境研究・研修分野における研究者・技術者の技能の向上及び習 得のため、タイに環境研究研修センター、インドネシアに環境管理センターを 無償資金協力で建設したところであるが、現在、中国についても同様のセンタ ーの設立計画が進行中である。これらのセンターでは、モニタリングや分析技 術の研修等のプロジェクト方式による技術協力も実施する。 B 国際協力事業団(JICA)は、関係省庁及び地方自治体等の協力を得て、 開発途上国等からの研修生に対する環境保全に関する集団研修の実施、及び我 が国の専門家の派遣等により、技術指導、開発途上国の環境問題への対処能力 向上に貢献していく。 C 国際連合地域開発センター(UNCRD)でも地域開発に関する計画担当者 の能力向上を図る研修を実施しており、特に近年は環境保全を重視した計画立 案に取り組んでおり、これを支援していく。 D 公益法人・民間企業等のレベルでの諸活動を支援していく。 E 我が国において環境保全に関する研修を終了した開発途上国等の専門家が、 帰国後、当該国の環境保全対策の能力向上に十分役立つようにするための施策 を検討する。 F.環境上適正な技術の管理のためのテクノロジー・アセスメント 開発途上国において、環境上適正な技術に関して適切な評価を行う能力を向上 することは、持続可能な開発を達成する上で極めて重要であり、これらに対する 支援を我が国として強化すべきである。 以上を踏まえ、以下に示す取組を重点的に実施していく。 @ 国際協力事業団(JICA)、公益法人等において環境上適正な技術に関す る研修事業を拡充・強化することにより、途上国の技術者のレベルの向上を図 り、もって開発途上国の技術評価能力の向上を支援する。 A 先進的な技術が必ずしも途上国の実情に適さない場合もあるため、民間団体 も活用しつつ、関係省庁及びJICA等において適正技術に関する調査研究・ 情報収集を推進し、その成果を途上国にフィードバックするよう努める。 B UNEP国際環境技術センター等における、途上国のニーズや条件に適した 技術評価に関する調査研究プログラムの実施を支援する。 G.協調的な措置及び提携 環境保全技術の大半は民間部門が有しており、環境上適正な技術の移転に当た って民間部門が果す役割が大きい。これらの技術は主として商業ベースで開発途 上国へ移転されているが、その移転に当たっては開発途上国における受け皿とし ての環境保全産業の育成が重要である。 以上を踏まえ、以下に示す取組を重点的に実施していく。 @ 開発途上国において適用可能な技術については、必ずしも最先端のものがふ さわしいとは限らないため、本邦企業に対し、伝統・慣習も踏まえた、それぞ れの国に適した技術の開発、すでに普遍化し一般に適用の容易な技術から順次 企業間の提携等を奨励し、もって技術移転の促進を図る。 A 民間部門における技術移転を円滑に推進するための方策を調査し、民間企業 が技術移転を行いやすい環境を整備する。 --------------------------------------------------------end------------- 第35章 持続可能な開発のための科学-------------------------------------- A.持続的管理のための科学的基盤の強化 持続可能な開発を推進するためには、長期的な視点に立って開発がもたらす社 会的・経済的及び自然的影響を予測し、今後我が国としてとりうる政策の選択の 幅を政策立案者、一般国民等に提供して、種々の不確実性を考慮に入れつつ最新 の科学的知見に基づいた環境と開発に係わる政策を形成する必要がある。このた め、環境の変化の機構の解明、科学的な予測及び持続可能な開発についての政策 立案に必要な科学的理解の強化を図るとともに、それらによる情報の適切な提供 手段を確立することが重要である。 以上を踏まえ、以下に示す取組を重点的に実施していく。 @ 我が国は、過去に深刻な公害を経験したことに伴い、国内の公害問題を解決 するためにその基盤となる科学的な研究を積極的に推進してきたところである が、今後はあわせて、地域から地球全体に及ぶ幅広い環境を一連のつながりを もったものとしてとらえ、持続可能な開発に向けた社会経済的アプローチ、長 期的な環境政策の形成、リスク管理、技術の評価、環境の観測・監視等、持続 可能な開発の達成に向けた研究を推進するとともに、これらの研究の実施及び 支援のため、人材の養成及び確保、研究開発基盤の強化等体制の充実を図る。 A 持続可能な開発に関連する政策についての合意形成に際し、一般国民等の理 解の充実を図るため、一般国民等に対しこれらの情報を必要に応じて適切に提 供するよう努める。 B 開発途上国に対し、公害問題の解決に資する科学的知見の積極的移転を図る ことにより、これらの諸国における公害問題の解決に貢献するとともに、一国 の領域にとどまることのない地球環境問題の特性を踏まえ、人文・社会科学的 視点を含めた国際的な共同研究を通じて世界の持続可能な開発の確保に資する 科学的な研究の推進を図る。 C 「地球圏・生物圏国際協同研究計画(IGBP)」「世界気候研究計画(W CRP)」「地球変動の人間的次元国際協同研究計画(HDP)」等の世界的 な研究計画及び「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」等の科学的評 価活動に対し、国際社会において我が国の占める地位を踏まえつつ、計画立案 の段階から積極的に参加し、自然科学研究に人文・社会科学的視点を含めた学 際的な研究等を実施する。さらに、我が国がアジア・太平洋地域の一員として 存在することを踏まえ、同地域における効果的な研究を推進するため、研究ネ ットワークの構成を始めとする地域協力に積極的に貢献する。 B.科学的理解の増進 持続可能な開発を推進するためには、気圏、水圏、地圏、生物圏等から構成さ れ、物質循環あるいはエネルギー循環を通じて成り立つ複雑な地球システムにつ いて、科学的な調査研究、観測・監視を推進することによってその基礎的な理解 を深めるとともに、人間活動とそれに伴う地球環境の変化の相互影響に関する理 解を深め、地球の環境浄化・修復能力に関する知識を得ることが必要である。 我が国においては、「地球科学技術に関する研究開発基本計画」及び「地球環 境保全調査研究等総合推進計画」等を踏まえ、これまで、地球及び地球の諸現象 に関する科学的理解の増大、人間活動と地球環境との相互関係等に関する総合的 な研究を推進し、また、その一層の充実に努めているところである。 以上を踏まえ、以下に示す取組を重点的に実施していく。 @ 地球に関する科学的知見を集積するための共通・基盤技術として、地球の広 範囲を短期間で観測できる人工衛星を始め、海洋観測、陸上観測、航空観測等 に必要となる地球観測技術の研究開発を推進する。 A 人工衛星に関する地球観測については、世界規模で、地球環境観測衛星の開 発・打ち上げ、衛星観測データの受信・処理及びその成果の流通等に関する地 上システムの整備、衛星観測データの利用促進等に関する施策を調整すること としている「地球観測衛星委員会(CEOS)」の活動に積極的に参加すると ともに、これらと十分な整合性を図った我が国の地球観測衛星に関する施策を 展開する。 B 各種観測技術を有機的に組み合わせ、全地球規模の観測・監視及び環境の変 化と密接な関係を有する特定地域の集中観測を行う組織的な観測体制の構築を 図り、特に、「世界気候観測システム(GCOS)」及び「世界海洋観測シス テム(GOOS)」等のグローバルなシステムの構築に向けた貢献を行う。 C 「地球環境モニタリングシステム(GEMS)」「全球大気監視(GAW) 計画」等の国際的なモニタリング計画に参加・連携して、我が国の国際的役割 を踏まえつつ、世界的な観測・監視に貢献する。 D 「地球圏・生物圏国際協同研究計画(IGBP)」「世界気候研究計画(W CRP)」「地球変動の人間的次元国際協同研究計画(HDP)」等の世界的 な研究計画との連携を図りつつ、地球的規模の諸現象の解明研究、人間活動と 地球環境の相互関係に関する研究をはじめ、自然科学に人文・社会科学的視点 を含めた学際的な研究等を積極的に推進する。特に、我が国としては、アジア 太平洋地域に重点を置いた調査研究を推進するとともに、当該地域の地球変動 研究に関するネットワークの構築を図る。 E 観測によって得られるデータを効率よく処理・解析し、地球環境問題等に適 切に対処できるデータ・セットの作成等を行うとともに、その成果に関するデ ータベースやディレクトリ・データベースの整備を図るほか、地球観測情報の 国際的なネットワーク構築に向けた貢献を行う。 C.長期的な科学的アセスメントの向上 持続可能な開発のための長期的な科学的評価のためには、環境と開発の諸問題 に関連したデータや統計の整備、評価手法の開発及びその利用の促進を図ること が必要である。 以上を踏まえ、以下に示す取組を重点的に実施していくこととする。 @ 我が国はこれまで、社会・経済活動や環境の状況に関して各種のデータや統 計を整備してきており、今後ともこれらの収集・整備を推進するとともに、収 集・整備項目の充実に努める。 A これらのデータを国内外の諸機関、一般国民等に対して必要に応じ円滑に提 供するよう努めるとともに、この分野での国連機関等との連携・協力を推進す る。 B 地球規模での環境変化の評価が可能となるよう、環境に関する観測・監視を 国際的な連携・協力のもとに実施するとともに、その精度の向上を図る。 C 地球上の各地域でのマクロ・スケールの社会資本整備に関し、環境への影響 を評価するための手法等の開発を図る。 D.科学的能力、基盤の形成 開発と環境に関する諸問題の解決のためには、各国、とりわけ開発途上国にお ける科学的な能力の向上が必要である。 我が国は、これまで、政府開発援助等のさまざまな手段を通じて開発途上国に おける基盤整備等に努めてきたところであるが、今後とも、特に開発途上国の人 材育成及び情報のネットワークに重点を置いた協力を推進し、これら地域の科学 的能力のより一層の向上に貢献することが必要である。 以上を踏まえ、以下に示す取組を重点的に実施していく。 @ 我が国の大学、国立試験研究機関等における人材の養成及び確保、研究開発 投資の拡充、研究開発基盤の強化、国際的な科学技術活動の強化等を図る。 A 特に、開発途上国の自助努力に対しては、人造りを中心に、相手国の国情に 応じたきめ細かな協力を行うことを基本的な考え方として、以下のような科学 技術協力の質的・量的拡充を図る。 (イ) 開発途上国との対話の機会の拡充、開発途上国及び我が国の科学技術に関 する案内情報を備えた窓口機能の強化。 (ロ) 研修員の受け入れ、専門家の派遣等の政府開発援助の技術協力の拡大、及 び資金協力等の緊密な連携の確保等。 (ハ) 人材の育成に対する協力の強化も研究協力の組織的かつ継続的な展開等。 (ニ) 研究協力と技術協力及び資金協力との緊密な連携の確保による協力の効率 的な実施 B 国立試験研究機関等を結ぶ情報ネットワーク、環境情報を始めとするデータ ベース、ディレクトリ等の拡充・強化を図ることによって、国内の科学技術情 報の流通を促進し、また、国際的に開放された情報網の構築を推進する。 C UNEP国際環境技術センターを支援し、開発途上国への技術移転の基盤と なる環境保全技術に関するデータベースの構築とその流通に努める。 D 科学技術を通して、我が国の近隣諸国の自立的・継続的発展に寄与するため 、「アジア科学協力連合(ASCA)」の科学技術政策フォーラムとしての機 能の強化を図るとともに、人材育成及び情報ネットワークに重点を置いたAS CAの協力プログラムの強化・拡充を図る。 E この他、科学技術に関する新たな政府間の協力は、関連する国内外の既存の プロジェクトとの連携並びに多国間協力枠組み及び二国間における科学技術協 力協定等の既存の国際約束に留意しつつ推進する。 --------------------------------------------------------end------------- 第36章 教育、意識啓発、研修の推進-------------------------------------- A.持続的開発に向けた教育の再編成 地球環境問題を始めとする現在の環境問題を解決するためには、国民や事業者 によって自主的かつ積極的に環境への負荷を低減するための取組が進められ、経 済社会システムを変えていくための働き掛けが行われることが不可欠である。 国民や事業者のこれらの自主的な取組を促進するためには、各主体によって、 人と環境との関わりなどについての基本的な知識が修得され、その理解が深めら れ、環境保全のための望ましい行動がとられるよう、地域、家庭、学校、企業等 や豊かな自然といった様々な場を通じ、人々の生涯にわたって、環境教育、環境 学習が進められていくことが求められている。 以上を踏まえ、以下に示す取組を重点的に実施していく。 @ 国民の環境教育に資する情報基盤を充実し、様々な媒体を活用して提供を図 るとともに、環境保全活動を推進するための人材の育成や環境学習等の拠点の 整備を進める。また、地域環境保全基金等を活用した地方公共団体の環境教育 事業の充実を図るため、環境教育に関する地方公共団体間のネットワークの充 実を図るとともに、環境教育に関するモデル市町村事業を進める。 A 豊かな自然の中でのふれあいを通じた環境教育、自然教育については、身近 な自然を活用した自然教育の推進拠点や、国立・国定公園の優れた自然の中で の自然体験滞在拠点を整備するとともに、これらにおける自然解説活動の充実 を図るため、自然解説に係る専門的人材やボランティアの育成及び管理運営体 制の充実を図る。 B 学校における環境教育については、従来から児童生徒の発達段階に応じて指 導してきたところであり、平成元年3月の学習指導要領の改訂によりその内容 の充実を図っており、教師用指導資料の作成・配布、教員の指導力の向上を図 るための環境教育シンポジウム・研究協議会の開催等の取組を一層進める。 C また、効果的な環境教育手法の開発に必要な調査研究の充実を図るとともに 、環境白書等の環境教育・環境学習の推進に資する各種情報の整備に努める。 D さらに、非政府組織(NGO)等の民間団体が実施する環境教育活動につい ても、国民に対する多様な学習機会を確保するため、引き続き支援を行う。 B.意識啓発の推進 国民や事業者における環境に関する理解を深めるためには、環境教育・環境学 習の推進とともに、広報活動など様々な手段による各主体の意識啓発が不可欠で ある。 以上を踏まえ、以下に示す取組を重点的に実施していく。 @ テレビ、ビデオ、パンフレットからポスター、記念切手に至るまで様々な媒 体を活用した情報提供、意識啓発事業を積極的に展開するほか、環境月間、自 然に親しむ運動、環境保全に功労のあった者の表彰の実施等、国民に対する各 種行事への参加機会のより一層の確保を図るとともに、環境に与える影響を最 小限に留めながら自然にふれることを目的とした観光であるエコツーリズムに ついて国内外での推進策を検討する。 これらの事業が地方においても活発に行われるよう、地方公共団体間のネッ トワークの整備や、地方公共団体職員の研修の一層の充実を図る。 A 環境基本法において、6月5日(世界環境デー)が「環境の日」と定められ たことを受け、国及び地方公共団体は、国民及び事業者の間に広く環境の保全 についての関心と理解を深めるとともに、積極的に環境の保全に関する活動を 行う意欲を高めるような環境の日の趣旨にふさわしい事業を実施するよう努め る。 B 省資源・省エネルギー型のライフスタイルを啓発するために、全国各地にお いて、省エネルギー月間、リサイクル推進月間等を中心に作文・ポスター・標 語等のコンクール、講演会、シンポジウム、研修会、消費者啓発講座の開催や 各種普及啓発パンフレット等の作成配布など、省資源・省エネルギー国民運動 の一層の推進を図る。 C.研修の促進 環境保全施策を効果的に推進するためには、その役割を担う人材を計画的かつ 継続的に育成して、実施体制を充実強化する必要がある。 以上を踏まえ、以下に示す取組を重点的に実施していく。 @ 国及び地方公共団体の担当職員に対しては、行政及び技術の両面における研 修を実施してその資質の向上を図ることに加え、近年環境保全分野における国 際協力へのニーズが増大していることに対応するため、途上国からの研修員の 研修を担当する人材や途上国へ派遣されて協力活動を行う人材を育成するなど 、国際協力体制の充実強化を図る。 A 環境保全のための国民の自主的な取組を活性化するため、その活動の中心と なる指導者について、地方公共団体や関係の民間団体と協力して研修を行う。 また、自然解説活動の推進のため、ボランティアの育成や自然解説活動に係る 専門的知識や技術を有する指導者を養成するシステムを確立する。 --------------------------------------------------------end------------- 第37章 開発途上国における能力開発のための国のメカニズム及び国際協力---- A.アジェンダ21実施のための国内コンセンサスの形成及び対処能力向上戦略 の形成 我が国においては、1960年代後半より「公害対策基本法」「自然環境保全法」 を柱として、環境政策を進め効果をあげてきた。しかし、近年の都市・生活型公 害、廃棄物の排出の増大、地球環境問題に対する取組の必要性の高まりに対応し て、環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築と国際的な取組の推進 のため1993年11月「環境基本法」が成立したところである。 一方、開発途上国の持続的発展に向けた取組に対する援助のあり方に関しては 、政府の審議会等によって議論されてきた。その結果、1992年6月に「政府開発 援助大綱」を定め、その中で我が国の政府開発援助が地球的規模での持続可能な 開発の実現を目指したものであることを明確化した。 以上を踏まえ、以下に示す取組を重点的に実施していく。 @ 経済計画、国土利用計画等、既存の各種国家計画においても、持続可能な開 発の考え方を一層明確化する。 A 地方レベルの計画においても同様の総合的かつ計画的な環境保全の推進と各 種計画における持続可能な開発の考え方の明確化を図る。 B 開発途上国が持続可能な開発の実現のための政策、プログラムの導入を図る ことを支援するため、二国間及び多国間の各種協力を一層積極的に実施する。 C 各国の国別行動計画の作成等に関しては、二国間協力のほか、国連開発計画 (UNDP)の「キャパシティ21」等の多国間協力も活用し、また、世界銀 行がアフリカで提唱している「国家環境行動計画」策定に対する支援も引き続 き実施していく。 D 援助に関する途上国との政策対話においては、短期的な経済開発効果のみな らず、環境保全等、長期的な効果にも十分配慮する。 E 各種開発援助において持続可能な開発を実現するための方策を更に検討する 。また、必要に応じ二国間援助における援助案件形成のための調査等における 環境専門家の関与、援助実施機関の環境配慮ガイドラインの一層の充実を図る とともにそれらの的確な実施を徹底し、さらに多国間開発機関等における環境 配慮も徹底されるよう各国と協力する。 B.開発途上国における能力開発のための国のメカニズム及び国際協力 公害を克服しつつ経済成長を進めてきた経験を有する我が国は、人造り及び研 究協力等技術の向上・普及が長期的視野に立った自助努力の最も重要な要素であ ると考えており、このような認識に基づき政府開発援助大綱において、国造りの 基礎となる人造り分野での支援を重視すると共に、開発途上国自身の研究開発能 力及び適応能力を高める研究等技術の向上・普及をもたらす国際協力を推進する 旨明らかにしたところである。 以上を踏まえ、以下に示す取組を重点的に実施していく。 @ 環境分野における途上国の環境問題対処能力の向上のため、国際協力事業団 (JICA)は、関係省庁の協力を得て、開発途上国からの研究員に対する環 境保全に関する集団研修及び国別研修等を実施している。また、タイ、中国、 インドネシアにおいて開発途上国の公害対策の拠点となるセンターを設置(無 償資金協力)するとともに同センターへのプロジェクト方式技術協力の組み合 わせによる協力を推進している。さらに森林の減少・劣化を防止し、持続可能 な経営の促進を図るためのプロジェクト方式技術協力等を推進している。生物 多様性保全分野等においても協力の可能性を検討している。 A 我が国は、国連開発計画(UNDP)が開発途上国での環境問題対処能力の 向上のための国連システム内の先導的機関であるとの認識から、従来よりUN DPへの資金協力に努めてきたが、引き続き積極的に協力していく。特にアジ ェンダ21に基づき、開発途上国における環境問題に対する対処能力を育成・ 強化することを目的にUNDPが行う「キャパシティ21計画」を支援してい く。 B 我が国に設立されたUNEP国際環境技術センターの研修活動を通じた途上 国の環境分野における対処能力の向上における役割を重視し、支援していく。 C 国際連合地域開発センター(UNCRD)が行っている、地域開発に関する 計画担当官の能力向上を目指した研究調査・研修事業を支援していく。 D 国連食糧農業機関(FAO)が展開する、開発途上国の食糧・農業分野での 政策助言及び計画立案の能力の向上のための通常事業及びフィールド事業を支 援していく。 E 国連工業開発機関(UNIDO)が行う、開発途上国の工業発展のための専 門家の派遣、研修等の技術移転を重視し、支援していく。 F 世界気象機関(WMO)が実施する、開発途上国の気象業務維持・拡充計画 を支援していく。 G 上記の政府ベースの技術協力に加え、開発途上国における環境関連技術の普 及・向上のため、民間が有する公害防止技術等の開発途上国への移転を行う専 門家派遣、研修生受け入れ、現地研修、開発途上国との共同研究開発の実施、 調査協力等の施策(「グリーン・エイド・プラン」)を引き続き実施する。 --------------------------------------------------------end------------- 第38章 国際的な機構の整備---------------------------------------------- A〜C.国連総会、経済社会理事会、持続可能な開発委員会(CSD) UNCEDの真の評価は、その諸成果の実施をいかに着実に行い得るかにかか っており、国際社会においてはUNCEDフォローアップのあり方が重要な課題 である。この分野で国連が果たす役割はきわめて大きく、特に国連総会、経済社 会理事会、持続可能な開発委員会(CSD)の3フォーラムにおける審議は、U NCEDフォローアップに向けた国連システムの取組の中心に位置づけられるも のである。我が国としては、右3フォーラムのメンバー国として、以下の点に留 意しつつ積極的に参画していく。 @ 国連憲章に規定された経済社会理事会の任務、特にUNDP、UNEP並び にアジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)、欧州経済委員会(ECE)等 の国連機関及びFAO他の専門機関の活動を調整する機能は極めて重要であり 、UNCEDフォローアップにおいてもCSDの権限を十分配慮しつつ、重複 を回避し、効果的な体制を構築していく必要がある。 A 今次設立されたCSDはUNCEDフォローアップのための政府間機関とし て、UNCEDを受けて1997年までに開催される予定の環境特別総会につらな る一連の国際的な努力において中核的役割を果たすべきである。 B アジェンダ21は、審議すべき事項が多岐にわたっており、毎年すべての事 項を取り上げることは困難である。このような観点から1992年6月に開催され たCSD第1回会合においてアジェンダ21の全40章をクラスター毎に分類し た年度主題別作業計画が策定されたことを高く評価する。今後ともCSDにお いては各分野毎に優先順位を付して効率的・効果的にレビューを行うことが重 要であり、この観点から横断的な分野及び個別の環境分野(水・大気の汚染等 )とのバランスをとりつつ、CSD会合の長期的なスケジュールを踏まえて審 議を行っていくべきであると考える。 D〜G.国連事務総長、国連事務局、高級諮問評議会 国連事務局に関しては、政策調整・持続可能な開発局が国連総会第2委員会、 第3委員会、経済社会理事会、CSD等のアジェンダ21に関係の深い政府間フ ォーラムの事務局機能を果たすこととなり、明確な役割分担が確立されたこと、 及び高級諮問評議会については、国際社会全体として環境と開発の問題をいかに して取り組むべきかについて有識者が大所高所から協議する事務総長の諮問機関 として設立され、1993年の7月にメンバーが公式に明らかにされたことを歓迎す る。 我が国は以下の立場を踏まえ、国連の審議に積極的に参画していく。 @ 政策調整・持続可能な開発局が情報分野を担当する情報・政策分析局、開発 事業を担当する開発支援局との緊密な協力を行い、持続可能な開発の実現に向 けた国連における取組を推進していくことが不可欠であり、国連事務局がこの ような協力体制実現に向けて努力することを要請する。 A 高級諮問評議会については、その議論の成果を持続可能な開発の実現に向け た有効なインプットとするために、その効果的な取り扱いについて検討してい くことが重要と認識している。 H〜K.国連システム内の機関等 環境問題に対し、国連システムが効率的・効果的に取り組むためには、全地球 レベル、地域レベルにおいて各機関間の緊密な調整・連絡を確保することが必要 不可欠である。 以上の認識に基づき、我が国の立場は以下の通りである。 @ 国連システムが効率的・効果的にアジェンダ21を実施していくためには、 経済社会理事会を中心とする調整機能を十分活用していくことが重要である。 A 国連システム内の環境分野での調整機関であるUNEPの果たす役割が重要 であり、我が国としても引き続き支援していく。 B 国連諸機関の長から構成され各機関の事業活動の調整を目的とする行政調整 委員会(ACC)が、本分野において果たすべき役割は大きい。今般、ACC が、UNCEDのフォローアップに取り組むため「持続可能な開発のための機 関間委員会(IACSD)」を設置したことを評価する。 C 国連機関が世界銀行、アジア開発銀行等の国際金融機関との緊密な意見交換 を行い、十分な意思疎通を図っていくことは、アジェンダ21の実施において 極めて重要である。 また、アジェンダ21の着実な実施のためには国レベル及び地域レベルの努 力が不可欠である。以上の認識を踏まえ、我が国としてもUNCEDの諸成果 の実施に努力すると共にESCAP等の枠組みを利用し、地域レベルの協力を 推進していく。 L.非政府組織(NGO)との協力他 UNCEDには 1,400余りに及ぶ非政府組織(NGO)が出席し、積極的に参 画したことは記憶に新しい。「持続可能な開発」の実施のために、草の根レベル での市民の協力は不可欠である。 以上の認識に基づき、我が国の立場は以下の通りである。 @ CSDにおいて、非政府組織(NGO)が事務総長の推薦に基づいた経済社 会理事会決定に従って代表を出席させることができる旨合意され、第一回実質 会期において、積極的に議論に貢献したことを歓迎する。我が国は、アジェン ダ21の実施において「非政府組織(NGO)、科学界、民間部門及び地方の 団体が継続的、活動的、効果的に参加することの重要性(アジェンダ21第38 章5.)」を確認する。 A 1993年の経済社会理事会においては、非政府組織(NGO)ネットワークを 組織し、CSDの作業に貢献することが奨励されており、これにのっとり非政 府組織(NGO)が効率的かつ効果的にCSD活動に貢献することを期待する 。 --------------------------------------------------------end------------- 第39章 国際法措置及びメカニズム---------------------------------------- 国連環境開発会議(UNCED)においては、広範な分野にわたる環境と開発 に関する国際的な対応の枠組みが比較的短期間の交渉により成立したことの意義 は大きい。 現在、海洋汚染防止、オゾン層保護、有害廃棄物の国境を越える移動の規制、 生物種の保護、地球温暖化の防止等個々の環境問題に対処するための国際条約が 存在している。 今後は、国際社会がこのような既存の枠組みを着実に実施していくと共に、必 要に応じ、新たな枠組みの構築の可能性について検討していくことが重要である 。 この分野における我が国の基本的立場は以下の通りであり、今後とも引き続き 関連国際法の形成及び実施プロセスに積極的に参画していく。 @ 環境分野については、国連環境計画(UNEP)が中心となって、個々の国 際条約の連携・調整を図り、既存の枠組みでは対処できない問題に関して新た な国際法形成のイニシアティブをとっていくことが重要である。さらに、国際 法委員会及び国際的非政府組織(NGO)(「国際自然保護連合(IUCN) 」等)が専門的知見等を活かして有益な貢献を行っていくことに期待する。 A 大規模な環境破壊を防ぐための措置の検討については、武力紛争時のみでな く平時において発生する大規模な環境破壊の問題も含め、UNEPを中心とし た検討が行われるとともに国連総会及び第6委員会における検討についても追 求されるべきであると考える。 B 原子力の安全管理のための国際協力の強化については、国際原子力機関(I AEA)等、既存の枠組みにおける協力の強化にまず重点を置くべきであると 考える。我が国としては、原子力の安全確保は世界共通の課題であることから 、原子力安全条約(仮称)の早期成立に向けて積極的に対応している。この条 約については、原子力の安全性は、第一義的に原子力施設を有する各国の責任 において確保されるべきであることから、各国の主権、自主性、自助努力等を 尊重した奨励的性格のものとすべきであると考える。 C 個々の環境関連条約間で、あるいは貿易問題等との関連で、今後、調整を必 要とする問題が多く生じることが想定される。このような問題に対処するため には、既存の枠組みの下にある紛争解決手段の活用及び一層の強化が重要であ るが、さらに既存の紛争処理メカニズム間における調整についても検討すべき であると考える。 --------------------------------------------------------end------------- 第40章 意思決定のための情報-------------------------------------------- A.データ格差の解消 持続可能な開発を実現させるためには、その意思決定の拠り所となる正確かつ 適切な情報を計画的かつ継続的に収集・整備する必要がある。 以上を踏まえ、以下の取組を重点的に実施していく。 @ 大気、公共用水域の水質、地下水、土壌等の環境の汚染状況や、生物相を含 む自然環境の状況に係る監視・観測・調査について体制、内容及び手法を充実 強化しつつ継続的に実施するとともに、地球規模の環境変化に係る情報につい ては、広域の均質なデータを周期的かつ長期的に観測することの可能な人工衛 星の利用も含め、国際的な連携・協力の下に長期的視野に立った監視・観測を 実施し、あわせて、地球全体の地理情報整備を進める上で必要となる国際協力 のあり方の検討及び技術開発を行う。 A 高性能センサーの開発等、質の高い情報を得るための基盤となる調査研究や 国際共同研究を積極的に推進する。 B 持続可能な開発のための指標として、環境・経済統合勘定を付加した新たな 国民経済計算体系を含め、環境要素が適切に評価された指標体系の開発を進め る。 C 個々の情報の所在に係る環境情報源情報を整備し、情報の全体像を明らかに することにより、持続可能な開発の検討に必要でありながら整備の遅れている 情報の整備を促進する。 D 国際的な情報整備ネットワークに積極的に参加、協力する。 B.情報の利用可能性の向上 意思決定のために必要な情報が広く入手できるよう、環境の状況、環境への負 荷、環境保全のために講じる施策や諸活動に関する情報を、個人及び法人の権利 利益の保護に十分配慮しつつ適切に提供するとともに、これらの情報を総合化し 、環境の実態把握と環境改善のための意思決定に結びつける機能を一層充実する ことが必要である。 このため、政府においては、1)「環境白書」の毎年度の国会への報告・公表、 2)環境情報源情報の整備、3)OECD等とも連携した、環境指標構築手法の開発 などが行われている。また、地方公共団体においても、環境情報の整備、市民へ の情報提供が進められており、民間においても環境保全活動に関するデータベー スの作成などの活動が行われている。 国際的な活動としては、「UNEP/GRID(地球資源情報データベース) つくば」において地球資源に関する情報の整備・提供を開始し、国際的・学際的 な地球環境研究に寄与するため、地球環境に係るデータベースや情報ネットワー クに関する取組を行い、開発途上国に対して環境情報整備に関連した技術協力を 実施してきたところである。また、人工衛星からの地球環境データに関するカタ ログ情報及び地球科学技術の成果に関するディレクトリ情報の流通を目的として 「CEOS−IDN(地球観測衛星委員会・国際ディレクトリネットワーク)」 を運用してきたところである。 以上を踏まえ、以下に示す取組を重点的に実施していく。 @ 環境の状況をはじめとする環境情報のより一層の公開を進め、環境の情報へ のアクセスを容易にするための努力を引き続き行う。 A さらに、 (イ) 「UNEP/GRIDつくば」を通じ、特にアジアにおける環境情報機能 を強化するためのネットワークとしての機能を果たすとともに、世界の社会 経済データ等のデータベースを重点的に構築し、他の地球環境研究プログラ ムと整合性を持たせたネットワークの構築を進める。 (ロ) 環境情報データベース及び関連情報データベースの一層の拡充・強化、そ の低コストでの提供を進める。 (ハ) 民間団体(外国の団体も含む)の環境保全活動に必要な、情報の収集、整 理、提供を適切に行う。 (ニ) 地球観測衛星からの観測データに関するデータ・ネットワークについて、 アジア太平洋地域への整備を進める等、その整備・拡充を図る。 (ホ) 地球全体の地理情報整備のための国際協力のあり方について検討し、技術 開発を行う。 (ヘ) 環境資源勘定等の持続可能な開発の指標に関しては、その開発・整備を支 援するデータの整備を進める。 B 国内外の環境に関する情報を収集し、環境情報の総合化、意思決定への利用 をさらに促進するために、国及び地域において環境情報を収集、整備、解析を 行う中核的な機能を担う組織の一層の拡充強化を図るとともに、このような取 組を行う民間活動を支援する。 C これらの組織間において、環境情報の相互利用の充実と、これを支援するネ ットワーク基盤の整備を図る。とりわけ、環境情報の整備に関する知見を蓄積 しており、地域の住民のニーズに最も近い地方公共団体の果たす役割の強化を 図っていく。 --------------------------------------------------------end-------------