第1章 前文------------------------------------------------------------ 地球環境問題は、人類の生存基盤を脅かす深刻な課題であり、各国が早急に協 力して取り組むことが必要である。すなわち、先進国が地球温暖化防止等につき 率先して環境保全に取り組むとともに、全地球的取組に向けて開発途上国に対す る支援を推進し、開発途上国の対処能力の向上を図ることにより、国際社会全体 として「持続可能な開発」の実現に向けて努力していくことが求められている。 我が国は、大規模な経済活動を営むと同時に、環境保全に関する経験と優れた 技術を有している。従って、我が国としては、良好な地球環境を将来世代にわた って継承していくため、自らの経済社会システムを環境への負荷の少ない持続的 発展が可能なものにつくり変えていくとともに、我が国の能力を生かして、国際 社会において我が国の占める地位に応じて、地球環境保全が国際的協調の下に積 極的に推進されるよう貢献を行っていきたいと考えている。 このような観点に立ち、我が国は「国連環境開発会議(UNCED)」の過程 において、特に先進国と開発途上国との橋渡し役を果たすことにより、合意形成 に向けて積極的な役割を果たすとともに、環境分野の政府開発援助(途上国援助 )を1992年度から5年間で9000億円から1兆円を目途として大幅に拡充 ・強化することを表明した。 また、UNCED後は、UNCEDで署名した「気候変動に関する国際連合枠 組条約」、「生物の多様性に関する条約」を締結するとともに、1993年11月には 「環境基本法」を制定し、地球環境を含む環境の保全の基本的理念とこれに基づ く基本的施策の総合的枠組みを定め、持続的発展が可能な社会の構築のための総 合的かつ計画的な施策の推進に努めることとした。 これらの努力を踏まえ、我が国としては今後、以下の取組を重点的に実施して いきたいと考える。 @ 地球環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築及び国民のライフ ・スタイル自体を環境配慮型に変えるための普及、啓発等に努力する。 A 地球環境保全に関する実効的な国際的枠組み作りへ積極的に参加、貢献する 。 B 地球環境保全に向け、「地球環境ファシリティ(GEF)」の改革を始めと する資金供与の制度の整備のための国際的取組に積極的に参画していく。 C 環境関連技術開発の推進に努めるとともに技術移転の促進等、政府開発援助 の適切かつ計画的な実施を通じて、開発途上国の環境問題対処能力の向上に貢 献していく。 D 地球環境保全等に関し、観測・監視と調査研究の国際的連携を確保し、その 実施に努める。 E 中央政府、地方公共団体、企業、非政府組織(NGO)等広範な社会構成主 体間の効果的な連携を強化する。 今後のUNCEDフォローアップは国連の「持続可能な開発委員会(CSD) 」を中心に討議を行っていくこととなる。同時に国連環境計画(UNEP)、国 連開発計画(UNDP)、世界銀行、その他の国際機関、OECD、GATT等 の多国間のフォーラムにおいても持続可能な開発に向けての様々な議論が行われ ている。我が国としては、そのような議論に積極的に貢献していくとともに、二 国間の政策協議を通じ、各国との政策調整を進めていきたい。 この行動計画は持続可能な開発を通じた地球環境の保全の実現に向けた我が国 としての重要な一歩を示すものである。我が国は今後ともこの分野における地球 規模での取組において主導的な役割を果たしていきたいと考えており、アジェン ダ21に掲げられている施策の着実な実施に向け、引き続き努力を重ねていく決 意である。従って、今後必要に応じこの行動計画の見直しを行うとともに、環境 上適正で持続可能な社会経済の構築に向け一層の努力を傾注していくことが必要 である。 --------------------------------------------------------end-------------