池ヶ原湿原は、勝山市の奥越高原牧場の北側にあります。この湿原は、牧草地造成のための工事で、一時はかなり破壊されましたが、昭和59年にふるさと公園として、県によって木道や休憩施設が整備され、湿原の様相を取り戻しています。地元の人は、昔からこの湿原を「葦田」と呼んで、かやぶき屋根や雪囲いの材料とするために、毎年ヨシ刈りを行っていたそうです。又、勝山藩の城主が、ここで菖蒲の花見をしたという記録も残っています。今では見られませんが、かつてはカキツバタなどが群生していたと考えられます。
周囲約1kmのこの湿原は、乾燥化のために東側と南側は2mを越すヨシが繁茂していますが、中央部は緑のじゅうたんを敷きつめたようにオオミズゴケが生えています。木道を歩いていくと、ランの仲間のトキソウ、カキラン、ミズチドリをはじめミカヅキグサ、モウセンゴケなどの貴重な湿原植物を観察することができます。
湿原の一角には、周囲をヨシで囲まれた50m四方ほどの四角い池があり、水面にはヒルムシロ、水中には食虫植物のノタヌキもが繁茂しています。5月末から6月にかけて、この池はよいトンボの観察地となります。美しいコバルトブルーに身を包んだエゾイトトンボや体長30ミリほどの小さなアジアイトトンボが、周囲のヨシ原を中心に見られます。また、9月に入ると大型でルリ色に輝くオオルリボシヤンマのなわばり防衛や産卵を見ることができます。このトンボは大型のトンボの中では近くで観察できる種類で、その美しい姿や生命の営みである交尾や産卵を観察するには最適です。そして、上空には避暑から帰ってきたアキアカネが群れをなして飛び交う様子が見られます。このアキアカネが少なくなり始めると池ヶ原湿原にもまもなく冬が訪れます。
所在地 | 勝山市平泉寺町池ヶ原 |
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湿地タイプ | 低層湿原 |
面積 | 1.5ha |
標高 | 609m |
保護区指定 | 奥越高原自然公園特別地域 |