福井県みどりのデータバンク地域の自然環境情報
トップ> 地域の自然環境情報> 概要

概要

調査の背景

景観生態学的手法にもとづく生態系区分

流域環境カルテの整備


調査の背景

本県の自然環境情報は、個々の報告書などとして公表されているものの、情報が一元化されていないために、専門家以外は利用しにくいのが現状である。また、空間情報としての観点からは総括されておらず、必ずしも各種施策や地域づくりに十分反映されているとは言えない。これらの情報を、利用しやすい形で整備することにより、多様な主体が適切な自然環境保全に努力を払うことが期待できる。

同様の地域自然環境の分析は、近年複数の県で行われているが、そのほとんどが地域メッシュを単位として、自然の原生性もしくは希少性を尺度として広域的解析を行ったものであった。このような解析は、県全体の自然環境を客観的に概観する際に有効である一方、環境が平準化されてしまうこと、また評価尺度が一面的になりがちであることなど、不十分な面もあった。

そこで今回、景観生態学的手法にもとづく自然環境の把握と地域区分を試みることにより、既存の自然環境情報を地域単位で総括し、各地域の生態系における自然環境情報を地理情報システム(GIS)を用いて整備することとした。


景観生態学的手法にもとづく生態系区分

生物分布情報は県内で一様に得られている訳ではない。情報の集積密度には地域差があり、全く情報が得られていない地域も多い。このため地域の生物相は、近隣の自然環境が類似した地域の生物分布情報にもとづいて推定せざるを得ない。そこで今回、類似した自然環境のまとまりと見なせる地域区分(生態系区分)を決定し、生態系区分ごとにで生物分布情報を集約することとした。

類似した自然環境のまとまりを決定するため、景観生態学図を作成した。景観生態学図とは、地域におけるエコトープ(地形、土壌、植生などの要素が均一な地域の最小単位)の区分を示した図である。福井県全域について、地形区分と植生区分の組み合わせによってエコトープを作成し、類似したエコトープの整理・統合を行った結果、16種類のエコトープが抽出された(図1)。

景観生態学図

図1 景観生態学図

次に、最小の集水単位(尾根と流路で区切られた範囲)ごとに、エコトープの構成割合を求めた。さらに、エコトープの構成割合が類似した 最小の集水単位 をまとめることにより、23種類の生態系区分を決定した(図2)。

生態系区分

図2 景観生態学図にもとづく生態系区分

生態系区分ごとに、その特色と出現記録のある生物種等を取りまとめ、「生態系区分カルテ」を作成した。


流域環境カルテの整備

生態系区分は類似した自然環境をよく反映しているものの、地理的に分かり易い地域単位ではない。そこで、情報提供後の利用しやすさを考慮し、流域単位(図3)で各種情報を集約して「流域環境カルテ」を整備することとした。

流域区分

図3 流域区分

流域環境カルテへの情報の集約は下記のとおり行った(図4)。

1)生物分布情報の集約

 生態系区分単位で生物分布情報を集約する。

2)生態系区分と流域区分の重合

 生態系区分と流域区分を重合することにより、流域区分に生物分布情報を付与する。

3)すぐれた自然資源の抽出

 空間参照により、流域区分内に存在するすぐれた自然資源を抽出する。

4)地図情報の切り出し

 該当範囲の景観生態学図、衛星画像および参考となる土地規制等を流域区分ごとに抽出する。



流域環境カルテフロー

図4 流域環境カルテ作成の流れ