福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
地形地質
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名   称 大島半島宮留の超塩基性岩とオリビンサンド
学   名
分 類 1 地形地質
分 類 2
位   置
(2kmメッシュ番号)
大飯町:宮留(1096)
選定理由 希少な鉱物・岩石を産出する地点,地形形成史から見て典型的な地形
区   分 A(全国レベルで重要、または県レベルで特に重要なもの)
解   説  小浜湾を西から囲む大島半島は,高浜町と砂州でつながった陸ケイ島である(191 ).大島半島には,石英閃緑岩・閃緑岩・ハンレイ岩・輝石岩・超塩基性岩が広く分布している.特に大島半島最東端の大飯町宮留から赤礁崎に向かう遊歩道沿いの露頭では,北西から南東に向かって超塩基性岩の形成過程を代表する岩石変化が露出する.この岩石変化は,地殻からマントル上部への変化の縮図を見ていると解釈できる.また,ハンレイ岩がグラニュライト化した片麻状構造を呈する部分もある.赤礁北東では層状カンラン岩が露出している.地殻からマントル上部への変化を,歩きながら連続的に観察・調査できる地域は非常に稀である.学術的にも教育的にもたいへん価値の高い貴重な地域である.宮留を含む大島半島は,大部分が超塩基性岩類におおわれている.そこから供給される砂粒の堆積によって形成された宮留の砂浜の砂は,カンラン石(olivine )の粒子を多量に含む.砂浜は,カンラン石の色によって,オリーブ色になっており,この砂はいわゆる“オリビンサンド(olivine sand )”の典型である.大飯町大島宮留から赤礁崎間の遊歩道沿いの砂浜は,このオリビンサンドで形成されている.オリビンサンドが海浜砂として分布するのは,本邦では本地域のみであろう.全国的にみても貴重な場所である.砂浜の砂は細粒で,水深の浅い入り江ではみごとなリップルマーク(ripple mark =漣痕)が発達する.ここでみられるリップルマークの波形はほぼ対称形で,前後に動揺する波の振動作用によって形成されたことを物語っている.
保護の現状
 と留意点
 一帯は若狭湾国定公園に指定されている.宮留−赤礁間は大島半島でも特に観察や教育活動に適した場所である.遊歩道の設置によって,最も北西に分布するハンレイ岩はやや観察しにくくなってしまったが,それでも歩きながらの自然観察路としては最適な場所である.あまり大規模に手を加えると景観上だけでなく,砂の堆積作用にも影響するものと思われる.超塩基性岩を産する地域は,本邦でも限られており,従ってオリビンサンドの堆積している場所はさらに限られている.宮留のオリビンサンドは,波の静かな小浜湾の入り江に堆積しており,観察には最適である.今まで大島半島宮留−赤礁間には簡易な遊歩道があっただけであるが,近年は休憩施設が建てられたり,また半島の北側にはオートキャンプ場もオープンした.前回の調査時点と比べ,小規模ではあるが人工施設が増えている.しかし自然改変にはいたっていない.今後とも保全を図っていく必要がある.


 (図上のNO.179ポイント)


(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)