福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
地形地質
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名   称 中池見盆地
学   名
分 類 1 地形地質
分 類 2
位   置
(2kmメッシュ番号)
敦賀市:中池見,余座(805)
選定理由 典型的な構造地形,地形形成史から見て典型的な地形
区   分 B(県レベルで重要なもの)
解   説  池見盆地は敦賀断層(木ノ芽断層,NNE 走向)の西側の山地が相対的に沈降してできた小盆地が埋積されたものである.北から順に内池見(奥池見),中池見,余座池見の3 つの盆地がある.内池見は100m から300m 程度の幅で標高は約49m である.中池見は直径が約500m の円形の盆地で,標高は約47m である.余座池見は幅約300m で標高は14 〜17m 程度で南方で木ノ芽川の氾濫原へと続いている.池見は,このように3 つの袋状の埋積谷からなり,構造運動による沈降地形と考えられている.中池見は盆地の中心部が凹状の沼となっていた.近年内池見の掘削やボ−リング調査が実施され,神代杉や泥炭層が厚く堆積しているのが確認できた.また,ボ−リング資料による年代として6.3m の深度で10,080 年前,16.3m では20,200 年前,19.3m で27,790 年前であると報告されている.これら年代は層序学的にも充分説明でき,堆積速度は1,000 年当りおよそ0.7 〜0.8m と見積もられる.内池見におけるボーリングによると未固結堆積物の厚さは30m 以上あり,上位20m はほとんど泥炭層である.深さ20.3m で27,600 年前のC14年代が測定されている.中池見の地表面は余座の平地に比して30m 以上高い.同様な埋積谷は北側の内池見にも見られるが,すでに堆積物の吐き出しが進行している.中池見では,堆積物の放出がほとんどなく,袋状埋積谷の状態が良く保存されている.近年の研究により,中池見に堆積している泥質堆積物には過去数10 万年の歴史が記録されていることが明らかになった.木ノ芽川に沿った樫曲,葉原近辺にも同様な地形が発達してるが,堆積物の放出が進行し,袋状埋積谷の様子は失われている.余座付近にみられる地形(余座池見)は,後背湿地であるが,その北側にある谷底低地にあたる中池見・内池見とともに一連の袋状地形である.この地形は,敦賀湾が陥没した際形成され,海水が進入し浅い入り江をつくりラグ−ン化された.
 その後,河川の堆積作用で土砂が埋積され,陸化したものと解される.従って堆積物は,粘土や泥で覆われ,その中にピ−トを挟んでいる.特に中池見や内池見は現在でもやや低湿である.なお,中池見から樫曲集落に至る谷間に洪積世の地層と思われる斜交層理の存在する礫混じりの砂層が見られ,この層理は中池見へ河川の水流が入り込んでいた痕跡である.余座池見は標高14 〜17m と低い.これらの3 つの池見は冬期には湖水化して鴨池となり,渡り鳥や水鳥の生息地となっていた.近年新8 号線バイパスの施工に伴う調査により,余座池見の山脚部に近い現場で地下の堆積状況を知ることができた.最上位0.5m までは礫層,その下位に固結度の高い赤褐色〜灰黒色の腐食物を多量に含む粘土層がおよそ3m ,そして基盤に到達する11m まではクサリ礫を含む礫層であった.敦賀市北部地域の葉原地区の新保・田尻には谷底平地が小規模ながら広がっている.田尻から五幡に至る峠(標高およそ230m )には崖錐性の小・中礫を含む白色〜灰白色の無層理・無化石の粘土層と,その上部に黒ボク層が薄く乗って,およそ3m 以上の厚さで峠を覆っている.峠から敦賀湾側の西域は急激な山麓斜面をなし,東側では平坦面が広がり峠から緩やかな勾配で谷底低地を形成しているが,山麓には,段丘面が存在し白色〜赤灰色の粘土で覆われている.新保では,木ノ芽断層に沿った谷地形と山麓に標高差400m 〜300m の扇状地性緩斜面が広がる.330m より下位に洪積層が分布し,上位は崖錐性の礫を粘土中に混在するが,下位は白色〜赤黄色の斜交層理が存在している.この緩斜面は新旧両者の扇状地性堆積物で構成されている.
保護の現状
 と留意点
 余座池見の盆地はかつて水田として利用されていたが,現在は埋め立てられて住宅地となっている.内池見には変電所が建設されている.また,3 つの盆地の西縁に国道8 号線バイパスが建設された.内池見や中池見の湿地は水田として利用されていたが現在は休耕田も多く,湿地性の植物が自生しそれに伴う動物群も見られる.貴重な盆地地形と湿地性生物等当該地区の自然環境の保全への配慮がなされる必要がある.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)