福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
地形地質
[先頭ページ] [前のページ] [次のページ]
名   称 池河内の盆谷、阿原ヶ池・湿原
学   名
分 類 1 地形地質
分 類 2
位   置
(2kmメッシュ番号)
敦賀市:池河内(729)
選定理由 典型的な構造地形,地形形成史から見て典型的な地形
区   分 A(全国レベルで重要、または県レベルで特に重要なもの)
解   説  池河内湿原は,敦賀の3 大河川の一つ笙の川の源流部に当たり,断層による地殻運動によって造られていた盆谷が堰止められ,ここに池が出現したのである.谷の頸部に埋積した砂礫は谷を塞いで池をつくり,その後も周囲の山地からの土石流や山地が崩壊して,砂礫,土砂が流出し池を埋め立て,扇状地を形成していった.このように,池河内付近は笙の川の源流部であるが,単なる侵食谷でなく構造性の盆谷である.そこに周辺から水が湧き出て,阿原ケ池と湿原をつくった.阿原ケ池を含む池河内の湿原そのものは,池河内の北東から笙の川に流入する一支谷からの土石流堆積物によって頸部が堰止められ形成された.洪積世に属する堆積物の一部がクサリ礫として残っている.阿原ケ池および湿原は,かつては今より広域であったが,山麓沿いに小扇状地が形成され,現在に至ったと考えられる.池の水はその扇状地から供給されている.現在残存する南西部の阿原ケ池と湿原も次第にその規模が縮小されて行っている.湿原には水苔が1m 以上の深さに成長しているところもあり,その下位には泥質で炭化したピ−ト層が存在している.阿原ケ池や湿原を涵養している地下水は,周囲の扇状地様堆積層から供給されている.この扇状地様堆積物は,南側では巨礫を含む砂礫層から構成されている.砂礫層の堆積構造から推定すると,大きな崩壊に伴う土石流が存在した.なお,この後背山地はそれを物語るように急崖な山斜面をなしている.湿原の北西部には段丘状の面が2 段にわたって存在している.下位の面は田畑で耕地となり,上位の面は山麓に点在し,クサリ礫やクロボク層を包含している.これらの堆積層は,西部の新保地区から池の河内に達する林道の峠にまで分布している,以上のことから池の発生は,洪積世後期と推定される.当時の池の規模は現在の山麓平坦面をおおよそ埋め尽くしていたのであろう.小規模な湿原ではあるが,植性ではここを本邦植物相の北限,南限とする貴重な植物が存在している.池河内の湿原地域と扇状地平坦面は,沖・洪積層の崖錐性堆積層からなり,その周囲の山地は中生層の堆積岩類からなる.池河内を源流とする笙の川は断層の破砕帯が侵食を受けて河道を形成した.北西の池河内口から池河内に達する大略直線に走る谷には,断層の破砕帯が各所に見られ,チャ−トと角閃ヒン岩のずれが確認できる.以上のように池河内の盆谷は,地層の地塊化による断層運動によって生じた盆谷と言えよう.
保護の現状
 と留意点
 県自然環境保全地域に指定され保護されている.山地に構造的に形成された盆谷は,地質・地形上からも重要であり,特に植物については南北両限の植相が存在している.冬季を除けば,四季を通じて多くの人が,観察や散策に訪れる.今後とも,自然環境保全に十分留意する必要がある.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)