福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
地形地質
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名   称 越前町の古期岩石
学   名
分 類 1 地形地質
分 類 2
位   置
(2kmメッシュ番号)
越前町(旧越前町):白浜,高佐,茂原(885,911)
選定理由 希少な鉱物・岩石を産出する地点,その他地質学的に貴重な地点
区   分 A(全国レベルで重要、または県レベルで特に重要なもの)
解   説  越前町白浜の山中の石灰岩・チャートの互層は,30m ×20m のサイズの大きなブロックであり,周りはジュラ紀のスランプ性堆積物である.互層を成す石灰岩は,正確に言えば,石灰岩の破片でできた砂岩である.砂粒には石炭紀,二畳紀の紡錘虫化石が含まれている.一方,チャートの方には,スポンジの骨針が多量に含まれる.古生代末の珊瑚礁等の周囲に堆積した地層である.この石灰岩の中から,本邦で初めて,正延性玉髄類(正玉髄・水玉髄)が見つかった.玉髄とは,シリカ(SiO2 )でできた繊維状の結晶であり,鉱物学的には石英である.自然界では負延性玉随が圧倒的に多く出現するが,正延性玉随,特に水玉随は世界的にも数カ所から報告されているにすぎないので,この地点は地質学的に重要である.一方,越前町の海岸部の高佐地区には黒色頁岩層が南条山地の“飛地”のように分布している.本地区の珪質頁岩には二畳紀放散虫化石が含まれている.この岩石は層状であり,野外では一見チャート様である.層内は無構造であるが,地層によっては,葉理や級化構造が発達することがある.顕微鏡で観察すると,石英脈が多数発達し,かなり珪化しているが,本来は砕屑性の石英や斜長石を含む細粒頁岩である.露頭内での褶曲も見事であり,これも貴重である.この岩石からFollicucullus 属,Deflandrella (?)属,Ishigaum (?)属,Entactinia (?)属など二畳紀後期の放散虫化石が多産するので,この地層の堆積年代は二畳紀後期(今から約2 億5 〜6 千万年前)である.この放散虫群集は,超丹波帯(古生代二畳紀に大陸棚付近に堆積した地層)の砕屑岩に含まれる化石種と酷似する.
 一方,近年日野山東の林道沿いの砕屑岩より超丹波帯の優勢種を含む放散虫化石群集が発見された(71 ).このことにより,超丹波帯は南条山地の北端に沿っても分布することが判明した.兵庫県山崎から福井県赤礁崎(178 )まで舞鶴帯の南端に沿って北東方向に断続的に分布する超丹波帯が,そのトレンドを東西方向に転換する位置として,高佐の二畳系は重要になってきた.南条山地には緑色岩が広く分布するが,その一部と思われるものが上記の地点のすぐ北側に露出している.枕状溶岩であり,低度の変成作用を受けている.嶺北最西端の緑色岩であり,南条山地,丹生山地,および甲楽城断層との関係を知る上で重要な露頭である.露頭では,薄緑ないし緑色の,棒状あるいは枕状の,岩石が集まったように見える.これは枕状溶岩と呼ばれ,かつての海底火山活動により噴出した玄武岩ないし安山岩である.地質年代ははっきりしないが,南条山地や丹波帯に発達する同様な岩石は石炭紀ないし二畳紀と考えられているので,この地点の枕状溶岩も同年代(2 〜3 億年前)であろう.
保護の現状
 と留意点
 白浜の石灰岩は山中にある露頭であるので,当面失われる心配はない.かつては,セメント材料として,石灰岩を採掘していた.高佐の二畳系チャートの露頭は海岸線から10m ほど沖合いに孤立する岩礁である.枕状溶岩の露頭は海岸に接した岩礁である.付近は越前加賀海岸国定公園に指定されているため大きな人為的改変はないと思われる.今後埋め立てや岩礁取り除きなどは避けるべきである.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)