福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
地形地質
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名   称 越廼村茱崎の地層、生痕化石、炭酸塩団塊(ノジュール)
学   名
分 類 1 地形地質
分 類 2
位   置
(2kmメッシュ番号)
越廼村:茱崎(876)
選定理由 古生物学的に重要な地点,特異な地質構造が見られる地点
区   分 B(県レベルで重要なもの)
解   説  本地域の離水した波食棚には,新生代新第三紀中新世の国見累層の下部層がきわめて良好に連続的に露出している.茱崎付近では細粒砂岩〜砂質泥岩からなる細粒堆積物と礫混じりの中〜粗粒砂岩からなる粗粒堆積物の不規則な互層からなり,粗粒堆積物の基底や粗粒堆積物内では下位層を削りこむチャネル構造が数多く存在する.細粒岩は潟性の堆積物と考えられ,粗粒岩は河川性のチャネルに堆積したものと考えられる.この細粒砂岩中には垂直型の生痕化石や多くの炭酸塩ノジュールが含まれている.生痕化石は直径が約2 〜3cm で長さは30 〜50cm に達する.通称軍艦島と呼ばれる駐車場においても上部の砂質泥岩中に特に高密度に産出し,この層準の北側では数cm 間隔に1 つの割合で生痕化石が認められる.観察したものの中では,分岐しないものが多いが2 分岐する場合もある.これらの観察からこの生痕は甲殻類によりつくられたものと考えられる.この上の泥岩中には,層理面に平行に発達する生痕も存在する.越廼村茱崎の駐車場から海側に露出する中新世堆積岩のうち,細粒砂岩にはボール状の塊がいくつか存在する.これらは炭酸塩によって岩石が丸く固められたものであり,炭酸塩ノジュールと呼ばれている.産状がよく分かり,教育的にも貴重である.炭酸塩ノジュールは砂質泥岩に特徴的に発達するもので,直径が野球ボール大で層理方向にやや潰れた球形をしている.葉理がノジュール内部まで連続することから地層の初生的な構造ではなく堆積後に形成された二次的なものと考えられる.また,ノジュールの核となるものは残されていない.ノジュールの明確な形成過程は不詳だが,ノジュールが発達する岩相が砂質泥岩に限られることは形成過程を考える上で重要である.炭酸塩ノジュールの産状は以下の通り:1 )ほぼ完全な球形をなす,2 )複数個の団塊が結合している場合がある,3 )周囲の砂岩中のラミナがそのまままっすぐに団塊を通り抜けていることがわかり,これらの団塊は砂岩が圧密・固結後に形成されたことが推定される.この地点の蜂の巣状風化も同様に解釈される.このような団塊の形成には,水の流入,鉱物との反応,新しい鉱物(方解石)の沈殿,というプロセスが必要である.
保護の現状
 と留意点
 越前加賀海岸国定公園内の景勝地として,駐車場も作られている.学問的に興味深い露出については,コンクリートで埋めてしまわないような配慮が必要である.


 (図上のNO.101ポイント)


(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)