福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
鳥  類
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名   称 カワウの集団営巣地
学   名
分 類 1 鳥類
分 類 2
位   置
(2kmメッシュ番号)
特定せず
選定理由 集団営巣地または集団ねぐら
区   分 B(県レベルで重要なもの)
解   説  本種は,海岸から内陸の水辺へと進出することによって,ウ科の中で最も分布を広げた鳥類である.全国で普通に見られたといわれている鳥だが,水の汚染,水辺の開発,人間による駆除や追い出しなどのため,1971 年には,全国で2 箇所の集団営巣地に数千羽が残るのみとなった.しかし,水質の改善や,放流魚などを含む魚類の増加のために,近年では,全国15 箇所前後の営巣地に30,000 〜35,000 羽が生息しているとみられている.本県でも,かつては数多く生息し,県内の河川で鵜飼に使われた時代もあった.その後,減少したが,1980 年代後半から多く観察されるようになった.嶺北地方の九頭竜川と嶺南地方の三方五湖,北川,南川に多い.湖沼や河川の下流域,中流域に生息する.水辺近くの林に,同種が集まって集団営巣地(コロニー)を形成し繁殖する.主に魚類を捕食しているが,稀にほかの水生動物も食べる.1 羽の個体が食べる魚類の量は,1 日に200 〜400g くらいになるという.本県での確かな繁殖の記録は,大飯町の冠者島だけである.1994 年6 月26 日に,サギ類の集団営巣地に混じって,繁殖中の4 巣が確認されている.本島は,陸地から約670m 離れ,面積約9,000 u,標高約34.7m の島で,そこの植生は暖温帯常緑広葉高木林である.琵琶湖の群れの一部が定着したと予想される.日本海側への本種の移動は,琵琶湖から若狭湾に出て,山陰か北陸に向かうルートが推定されている.これ以前にも,1976 年5 月に鯖江市氏家町のサギ類の集団営巣地内で数羽が観察されたことがあるが,繁殖については不明である.また,1995 年5 月21 日に,鯖江市住吉町の日野川の鯖江大橋上流右岸のヤナギ林にあるサギ類の集団営巣地内で,2 羽の個体が観察されている.1 羽が枝を引っ張っているのが観察されたが,繁殖はしなかったようである.
保護の現状
 と留意点
 本種は,現在,「鳥獣保護法」により捕獲,飼養,譲渡などが規制されている.また,大型で,主に魚類を採る肉食性であるため,その増減は生態系そのものへの影響が大きい.さらに,集団営巣地は,一度,破壊されると,そこを利用していた多くの個体に影響がでるので,慎重な対応が求められる.本種は,漁業への被害や,大量の糞で樹木を枯らし悪臭を発することなどから,追い払われることが多い.1980 年代後半頃から各地で漁業関係者との摩擦が大きくなったため,各地で,全生息数の1 割近い数が,直接,間接的に有害駆除されはじめた.そのため,群れがますます各地に分散し,逆に摩擦を拡大させている.福井県内でも1993 年には,小浜市の南川,北川,敦賀市の笙ノ川,黒河川において,春先にアユの稚魚,秋期にアマゴなどの放流稚魚を食害するという理由で,有害駆除されている.人間との摩擦が大きい鳥であり,また,集団営巣地では植生への影響の問題もあることから,保護についても難しいことが多い.少なくとも駆除によって被害が拡大することのないように,まず生息状況や被害状況を正確に把握する必要がある.そのため駆除以外の対応も検討すべきであろう.東京の上野動物園では,擬木に営巣しているので,状況によっては擬木の設置も考えられる.干潟に建設された鉄骨製の塔に営巣し,繁殖した例もあるので,集団営巣地の誘致は成功率が高いのではないかと思われる.

(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)