福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
昆 虫 類
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名   称 若狭湾島嶼と半島部
学   名
分 類 1 昆虫類
分 類 2
位   置
(2kmメッシュ番号)
小浜市:蒼島(1085),高浜町:鷹島(1147),音海(1156),若狭町(旧三方町):御神島(1015,1016),常神半島(1000,1001,1002,1015,1016),烏辺島(1004)
選定理由 生態学的に貴重なもの、希少種
区   分 A(全国レベルで重要、または県レベルで特に重要なもの)
解   説  若狭湾の島嶼と近接した半島域は日本列島のほぼ中央部に位置するので,本来は旧北区の昆虫相を示すのは当然であるが,東洋区系的要素がかなり強く影響するのが特徴である.特に,島の生物相の一般的特性として全体の生産価が維持される限り,個体数は少なくならないが種数は面積に反比例して減少する.いいかえると特定の種がしばしば極端に増加する.半島部も生物の移動からほぼ同様な状況にある.ここで生物地理学的に重要なことは,本項で取扱った島はすべて無人島で,特別の祭祀の機会か漁師の海岸での休息以外は入島がないことで,旧来の自然環境(生物相)が維持されているであろうことである.常神半島は基部に三方五湖の北方に位置し,常神・神子・小川の集落があるが山林産業に適しない“島”といってもよい隔離された漁村であった.次に述べる地域と共通してアミダテントウの北限地になっているほか暖地性昆虫の豊庫である.御神島(おんかみじま)は常神半島先端から約500m 西にあり,約0.4k u,標高195m .ヒメハルゼミの多産が有名で,ヒメアヤモンチビカミキリ,クロオビトゲムネカミキリなどの分布限界種を含め注目種が多数生息している.スダジイ,シロダモ,ヤブニッケイ,トベラを主とした典型的な照葉樹林である.烏辺島(うべじま)は,三方町世久津から北西1.2 q,周囲約2 q,標高95m の小島で,ヒメアヤモンチビカミキリ,ダルマクチカクシゾウムシが記録された.蒼島(あおしま)は,小浜市荒木の北方約1 q,面積0.02k u,標高44m .「蒼島暖地性植物群落」として国の天然記念物になっている.ナカジマシロアリの重要な分布地として記録された.チビクワガタもいる.鷹島は高浜町集落の沖合約200m ,標高38m の小島で,集落から泳いででも行ける場所であるが,自然はよく保全されている.音海(おとみ)は高浜町内浦半島の北端にあり集落は漁港基地であるが,北方に伸びる地域は豊かな照葉樹にはぐくまれ,それほど広い地域でないが暖地性の昆虫の豊庫である.クチキコオロギは短翅の大形の暖地性昆虫.マツムシモドキは分布北限.サシゲチビタマムシ,アミダテントウ,イチモンジハムシなどの顕著な照葉樹林に従属した昆虫を多数見ることが出来る.
保護の現状
 と留意点
 ここに掲げた島嶼とその他の小島は無人で海岸は急峻な岩場になっており,御神島,蒼島,鷹島は島頂に祠があって祭祀のための急な道がつけられているが,一般の観光客の入島は困難である.また,渡島には特別に船をチャーターしなければならないことが,開発を防げたのであろう.そのような理由で,現状では自然環境は良好に保全されている.常神半島,音海周辺は交通の便利化によって民宿・旅館を含め急速に開発が進行している.御神島などの自然は,もし自由に渡島できるならば(例えば定期船,歩道整備),観光業者の目標になりかねない.無人の島嶼については,国または県レベルで保全の管理を行う必要がある.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)