福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
昆 虫 類
[先頭ページ] [前のページ] [次のページ]
名   称 敦賀市中池見湿地
学   名
分 類 1 昆虫類
分 類 2
位   置
(2kmメッシュ番号)
敦賀市:中池見(805)
選定理由 生態学的に貴重なもの、生物学的な多様性(種数)を保持している自然
区   分 A(全国レベルで重要、または県レベルで特に重要なもの)
解   説  面積約25 ヘクタールの,周囲を低山に囲まれた湿地で,海抜は約50m .敦賀市の北東に位置し,市街地から徒歩30 分程の位置にありながら,その地形が谷津地形のいわゆるおぼれ谷であるために,近代耕作や開発を困難にしてきた.また,本県は大まかに嶺北と嶺南に区分されるが,その境界地域は旧北区と,日本海側での東洋区系の生物地理的要素の進入が見られる.この中池見がちょうどそのような位置にあり,しかも前記の理由等から自然豊かな状態で残されたという点において,非常に興味深い貴重な場所と言える.今回の調査,および,文献記録から,中池見から採集された総昆虫種数は1,372 種を数える.県全体の記録種数7,366 種と比べても,このわずか25 ヘクタールの湿地が,いかに豊富な昆虫相を有しているかが分かる.分類群で見てみると,特にトンボ目の53 種は県内での既知記録96 種の実に55.2 %を占める.また,バッタ目では56 種,58.9 %,カメムシ目でも201 種,32.7 %を占める.中池見での注目すべき昆虫としては,カマキリ目ではヒナカマキリとヒメカマキリ,バッタ目では暖地性のクチキコオロギ,ヒメスズ,アシジマカネタタキ,ツチイナゴの記録も注目される.カメムシ目ではウシカメムシ,オオツノカメムシ,ヨコヅナツチカメムシや,今回の調査で初めて福井県から採集されたトゲミズギワカメムシの分布が注目される.また,現在分布域が減少しつつあるオオコオイムシの密度が,おそらく福井県随一であろうことも,特筆に値する.コウチュウ目ではミヤタケダルマガムシ,コガタノゲンゴロウ,ゲンゴロウ,ガマキスイ,セボシヒメテントウ,アラキヒメテントウ,ナカイケミヒメテントウ,クチキオオハナノミ,イッシキキモンカミキリ,イチモンジハムシ,ヤノトラカミキリ,オオシロオビゾウムシの分布が注目される.
保護の現状
 と留意点
 中池見の種多様性は,この狭い湿地に様々な環境がモザイク的に存在することにあるといわれている.そして,そのモザイク環境の維持には,人為的な力が不可欠であり,人の手が加わらなければ,全体が一様なヨシ原になってしまい,生物の多様性は失われてしまうとも言われている.近年,耕作面積の減少により,天筒山の頂上から見ると,多くの部分はヨシ原となってしまっている.しかし,細かく見ていくと,一様に見えるヨシ原の中にも水質や土壌の違いにより,いろいろな環境が点在していることが分かる.人工的なモザイク環境も重要であるが,この湿地自体にモザイク環境を作り得る潜在的能力があるように思われる.また,この湿地,それを取り囲む低山を含めた全体の保護が種の多様性を維持する上で必要と思われる.30 年ほど前,どこにでも見られたゲンゴロウは,現在県内で数カ所でしか見られないほど希少種となってしまったが,中池見は常にゲンゴロウの観察できる県内唯一の場所である.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)