福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
昆 虫 類
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名   称 刈込池とその周辺(幅ヶ平)
学   名
分 類 1 昆虫類
分 類 2
位   置
(2kmメッシュ番号)
大野市:刈込池、幅ヶ平、小池、上小池(38)
選定理由 生態学的に貴重なもの、生物学的な多様性(種数)を保持している自然
区   分 A(全国レベルで重要、または県レベルで特に重要なもの)
解   説  刈込池は大野市の北東部,岐阜県境の願教寺山の北西側に位置する.標高は1,115m .周囲400m ,水深最大4.5m ,ブナの原生林に囲まれた腐植栄養型・高原型の湖沼である.池の南側には,願教寺山の火山活動と願教寺川等の浸食によって形成された幅ヶ平と称する台地状の緩斜地が広がり,良好なブナ林となっているが,近年,幅ヶ平以外では標高1,100m 付近までの一帯にわたって伐採が進行している.しかし,現在でも本地域は,昆虫類にとって優れた生息環境を残している.全般的に本州中部の山岳地域の昆虫相を示す傾向があり,生物地理学上注目すべき種も多数産する.特に山地性種の多い点では県下第一級である.また,刈込池には,高地性トンボ類など,貴重な水生昆虫も生息している.全体的には極めて豊かな自然の残る貴重な環境であるといえよう.生息する貴重な種としては,県下唯一の産地であるキベリタテハ,クジャクチョウなど高地性のチョウ類,ハネダハラアカハナバチなど本地域が基準産地,或いは全国的にわずかな分布地の一つとなっている多くのハチ類などが挙げられる.アムールムツボシタマムシなどの高地性・山地性の貴重なコウチュウ類も極めて多い.また,刈込池には分布南西限,またはそれに近いルリイトトンボ,カラカネイトトンボが生息する.このように貴重な種が数え切れないほど分布する本地域は,良好な自然環境が,全国的にも高いレベルで残されているといえる.なお,福井県では,本地域を含む刈込池一帯の台地250ha (願教寺山を含む)を昭和53 年に買い上げ,県有地として自然環境の保全につとめている.
保護の現状
 と留意点
 本地域は,県が買い上げる以前は民有地で,主にオウレン畑に利用されてきた.オウレン畑は自然林が必要なため,幅ヶ平一帯は未だ伐採を免れており,豊かなブナの原生林が残されている.また,上小池から自然探求路が整備されており,気軽にこのすばらしい環境を満喫できる場所でもある.ただし,往時と比べれば,本地域および周囲における開発や自然林の伐採は進行してしまった.昆虫相も低下の道をたどっていることは否めない.刈込池の周辺は,景観保護の目的で昭和53 年と平成元年に民有地を県が買い上げ,さらに自然保護法によって白山国立公園の第1 種特別地域に指定される等,自然環境の保全が図られている.本地域が環境教育・情操教育にも最適であり,家族で気軽に訪れることができる場所だからこそ,極力,この豊かな自然を手つかずのまま残し,貴重な昆虫相と共に,次代へ伝えていこうとする姿勢が重要となってくる.見た目にはきれいになったとしても,自然に手を加えることは必ず環境への影響を伴うものである.貴重な昆虫類の生息域をこれ以上失わないためには,自然探求路や公園等の整備などに当たっても,細心の注意を払うことが必要である.
 




(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)