福井県みどりのデータバンク すぐれた自然データベース
昆 虫 類
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名   称 美浜町耳川上流域のハチ類
学   名
分 類 1 昆虫類
分 類 2
位   置
(2kmメッシュ番号)
美浜町:粟柄谷(927,928),折戸谷(902),黒谷(902)
選定理由 生物学的な多様性(種数)を保持している自然
区   分 B(県レベルで重要なもの)
解   説  耳川は,美浜町と三方町の境,雲谷山(786.9m )の東側の耳川断層によって粟柄谷岸壁の断崖を作る深い渓谷を持つ.この谷の東は野坂山(913.5m ),三国山(876.8m )が南へと延び,更に県境へと山稜が連なっている.東西の山々は850m 内外の定高性をもった山稜が連らなるため,山地の林相は垂直分布を顕著に示している.特に,上流は標高の割に深山の趣を現している.高度の上昇に伴って昆虫相も変化に富んで行く.ミズナラ,ブナの枯木や朽木に棲息する小形甲虫も多い.ハチも多種の狩りバチが生息する.福井県の動植物分布は,木ノ芽峠を境に南限と北限が交叉する.この重要なポイントも最近の開発で劣化して来た.今後,これを補う地域として耳川上流は貴重なポイントとなって来た.採集の頻度が増す度に,当地の採集品目が挙がって来ている.ウスキギングチ,ニトベギングチ,オタネギングチ,コイケギングチ,ジンムヨコバイカリなど,今まで奥越地方でしか採集されなかったハチも存在する.コウライヨコバイカリがこの地区で採集されたのが機で,ヨコバイカリバチ亜属の改訂(ハクサン,オオノ,タカネの決定)が出来た.キマダラハナバチ(Nomada 属)でも狩りバチ同様である.ヤマト,エサキキマダラハナバチなども他所ではなかなか採れないが,ここでは採ることが出来る.名田庄村で最近採集された極々珍品ムロタギングチバチの生存可能性を秘める地点として密かに期待もできる.
保護の現状
 と留意点
 耳川は,渓流釣りのメッカとして県外までも良く知られている.深い淵(ふち)と速い清流は魅力的である.耳川源流より中流まで特に谷が深く,断崖もあり,人を拒む自然が残る.川全体が町や山林所有者で管理されて,産業廃棄物もない.森林組合を中心に,杉林の整備造林が進められている.杉林の増加と浅い谷沿いでは蔓,雑草,雑木等が多くなり,本流に比べて従来のものが次第に単一化してきている.出来るだけ代償林化の進行を抑えてほしい.最近見晴らし台,休憩所の設置が見られる.周りの木々が伐採されても,地形を余り変化させないことが望ましい.ガレ場補修工事が近年始まっている.行き過ぎの無いようにに望みたい.また,枯木を危険のない程度に昆虫の住みかとして残してやる事も良案である.





(C) 福井県自然保護課
出典「福井県のすぐれた自然(動物編、植物編、地形地質編)」(1999年 福井県自然環境保全調査研究会監修 福井県発行)